大鉄人戦記   作:雑草弁士

27 / 64
第026話:迷惑千万な異界の軍勢

 シグコン・シップ艦橋(ブリッジ)の主スクリーンに、苦り切ったブライト大佐の顔が映っている。それを眺めている弁慶の顔もまた、困り切った表情だ。『わたし』はブライト大佐に報告する。

 

 

『こちらで収容したナラティブガンダムとヨナ少尉だが。ナラティブガンダムに搭載されていたNT-Dシステム……。ニュータイプ・デストロイヤー・システム、表向きはニュータイプ・ドライブ・システムとなっていたがね。それはとりあえず暫定的にだが、一部機能を封印できたよ』

 

『一部機能封印? 消してしまうわけには、いかなかったのか?』

 

『ソフトウェア全体のバランスを考えるとね。それ以前に、下手に(さわ)れないブラックボックスだ。うかつに消すと、ナラティブガンダムが全システム再インストールしないと動かせなくなる可能性の他、証拠も無くなるかもと思うと、ね……。

 ミシェル女史は?』

 

 

 『わたし』が問題の人物の名前を出すと、更にブライト大佐の表情は苛立ちを増す。

 

 

『黙秘を続けている。こうなれば本気で彼女を拘束し、ルオ商会と直接話した方がいいかもとすら思う。ルオ商会は、開店休業状態であったロンド・ベル隊に資金援助と部隊を動かすことの上層部への根回し、そして戦力としてのナラティブガンダムの調達、その専属パイロットの手配を申し出て来たんだ。

 おかげで有名無実化していた独立行動権を回復する事ができて、思う様に動けることにはなったが。ただしフェネクスを捕獲するという最終目標と、そのためにいざと言う時はミシェル嬢の『意見』を聞いてくれるように、との申し送りがあったんだ』

 

「だがその戦力であるナラティブガンダムが、ヤバいシロモノだった……。そればかりかミシェルは、何かしら思惑はあったにせよ。あんな戦闘中のヤバいときに、部隊司令であるブライト大佐の職分を犯してまで口出しを……」

 

『ルオ商会への借りは、たしかに大きい。だが、だからと言って限度がある。……しかし本気でルオ商会と直接話したいところだが、それは危険かも知れんとも思う。

 わたしはΖガンダムとΖΖガンダムのフル・サイコフレーム化を打診されたとき、黙認したからな。ヒュッケバインNextと百式Rに関しても、サイコフレーム搭載を表ざたにされたら……』

 

 

 やれやれ、後ろ暗いのはこちらも同じだからな。更に言えば、アムロ大尉は脱走の罪があるし、シャア大佐はそれこそ第二次ネオジオン抗争の張本人。カミーユ君にファさん、シグコン・シップの艦橋(ブリッジ)要員は厳密にはオーガスタ研から拉致したも同然で、救出したなんて言い分は聞いてもらえるはずも無い。

 シロウに関しては脱走した強化人間で、ヒュッケバインNextは彼が乗り逃げした、ぶっちゃけ盗品だ。キャンベル大将とかはたぶん承知の上で、パーツ入手とか色々手を回してくれているが……。

 

 

『ヨナ少尉に関しては、今は眠っている。脳神経と精神に、相当な負担がかかった模様だ。ただ、基本的には身体に異常は無いよ』

 

『それは良かった。だが……事情聴取はまだしばらくは、無理そうだな』

 

「話は変わるんですがね、ブライト大佐。今後我々は、どうする予定なんです?」

 

 

 弁慶の疑問に、ブライト大佐は頷いて答える。

 

 

『先ほどキャンベル大将と遠距離レーザー通信で連絡が取れた。GEAR本部より、いちど本部で電童のチェックとデータウェポンの調査をしたいとの事なんだ。わたしたちはその要請により、地球の日本へと向かう事になる』

 

「了解です。例の交渉団を乗せたトリチゲンⅣは?」

 

『あれの護衛は、カジマ大佐の第42独立戦隊に任せる。トリチゲンⅣは既に当宙域を離脱し、逃げ切っているからな。今しがたカジマ大佐たちは、それを追いかけて出立するところだ』

 

 

 わたしが(センサー)を向けると、第42独立戦隊の旗艦カイラム級ガーランドⅡと、僚艦の生き残りであるクラップ級1隻が、こちらに挨拶の発光信号を送りつつ発進するところだった。こちらの旗艦であるラー・カイラムからも、『航海の無事を祈る』と発光信号が発せられる。

 同時にミネバ派(非公認)ネオ・ジオンの部隊も、その母艦が発光信号を出して発進して行く。彼らはこれから、ジオン共和国へと合流するのだ。今後機械帝国ガルファと戦う中で、彼らと(くつわ)を並べる事もあるだろう。

 

 そして『わたし』たちは、地球へ向かう航路を取った。

 

 

 

*

 

 

 

 地球への航宙の間、『わたし』と弁慶は人払いをした部屋で、ベガ女史と内密に話をしていた。理由は、あの騎士GEAR凰牙の操縦士(パイロット)である、アルテアについて訊くためである。

 

 ベガ女史は、前回の件があったためか、素直に話してくれた。それによればあのアルテアは、惑星アルクトス王家の皇子で、彼女の兄であるとの事だ。当然ながら北斗少年からすれば、伯父という事になるか。

 そして凰牙はもともとアルテアの専用機であったらしいのだが……。ベガ女史は、苦悩を押し殺した口調で語る。

 

 

「何故兄が、惑星アルクトスを滅ぼしたガルファ皇帝に従って、しかも全宇宙の知的生命体を滅ぼさんとしているかはわかりません。ですが、それを許すわけにはいきません」

 

「……なあワンセブン」

 

『ああ。彼は洗脳でもされているのではないのかね? GEARと言う物は、操縦士(パイロット)を自ら選ぶ傾向でもあるのだろう? 電童の反応からして。

 であるならば、だ。データウェポンを使役できるGEARを自身の戦力として用いる必要性から、その操縦士(パイロット)もろとも支配下に置くのは当然の成り行きでは?』

 

「!! まさか、そんな……。でも……。いえ、確かにその可能性はあります。ありますが……」

 

 

 ベガ女史は、傍目から明らかなほどに狼狽(うろた)える。ただ、上げて落とす事になるのは申し訳ないが、釘を刺しておこう。

 

 

『ただ、仮にそれが正しかったとしてだ。今の彼が敵である事は、間違いが無い。救えれば救いたいものだが、彼を救うためにそれ以上の犠牲を被ることは、許容できない』

 

「……わかって、います。それに兄が洗脳されている、という事自体が、仮定でしかありませんものね」

 

「おう。けどよ、せいぜいできる限り、って程度で申し訳ないんだが。だけどできる限り、って範囲では、俺たちも力を貸すぜ」

 

「ありがとう、ございます……」

 

 

 ベガ女史は、部屋を立ち去る。弁慶は大きく溜息を吐くと、言った。

 

 

「なあワンセブン。間違った情報で間違った判断を下す危険性は、分かる。けどよ、相手の情報がまったく何もない時はよ。あくまで未確認情報だっていう前振りを置いた状態でいいから、時と場合によっちゃ話してくれねえか?

 まあ、俺たち関係の話のときは、色んなパターンの話があり過ぎて情報が交錯、錯綜してたのは理解する。けど今回は、お前さんの反応からして、アルテアって奴が洗脳されてるのは、『物語』ではその通りなんじゃねえのか?」

 

『……そうだ。だがこの話はこの場限りにしてくれ。アルテアが洗脳状態にあるのかどうか、そしてその洗脳が解けるものなのか否か、それの判断を誤ると致命的なことになる。

 けれど、通常では予想できない敵が『物語』で語られていた場合など、その敵の性質や弱点は、『あくまで予想として』情報を出す事を検討しよう。あくまで不確定情報として、な』

 

「頼むぜ」

 

 

 まあ、頼りにしすぎて失敗するのはマズイけれども、だからと言って存在する情報をまったく活用しないのも、問題か。前世の原作アニメ他の情報ってのは、扱いが難し過ぎるな。

 

 

 

*

 

 

 

 幸いなことに、我々は襲撃に遭う事もなく、地球へと降下できた。ちなみにヨナ少尉は、未だ目を覚まさない。とりあえずナラティブガンダムは、地上にも対応しているB型装備に換装してはいるのだが周囲の意見では、彼が目を覚まして出撃を望んだ場合には予備機のジェダを貸与した方がいい、との意見が強い。

 それに着用していたパイロット・スーツにも問題がある。どうやらサイコ・スーツと言うらしいが、サイコフレーム材が仕込まれていた。たぶん『機体に積まない事でサイコフレーム使用の隠ぺいを図った』のではないかとも思うが。着脱も一人ではできない代物だし、着ると歩けもしなくなる。いつの時代の宇宙服だ。あまり原作知識は深く無いのだが、『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』って……。

 

 閑話休題(それはともかく)。とりあえずここまでの旅程に於いて、『わたし』は自分の機体(からだ)を若干ばかり改修している。骨格(フレーム)の各部に、サイコフレームを配置したのだ。ことに頭脳部分の周辺には、特に念入りに大量のサイコフレームを装備した。

 ……『わたし』に使えるかどうかは、定かでは無い。『わたし』は『わたし』自身のことを、人工知能(AI)だと認識している。たとえ前世が存在して、魂を持っていたとしても、だ。だが先日の戦いのさなか、装備品ではなく荷として積まれていただけであったサイコフレーム資材が、たしかに『わたし』の意志に反応したのだ。

 

 もし『わたし』にサイコフレームが使えるとしたならば。この世界でも実用化されている超AIたちにも、サイコフレームは使える可能性があるかも知れない。

 

 ……!?

 

 

『ブライト大佐! 国際警察機構エキスパートより、近隣の地球連邦軍に発せられた救援要請を受信した! 繰り返す、国際警察機構エキスパートよりの救援要請を受信した!』

 

『了解した! こちらでも確認している! 総員に告ぐ! 国際警察機構エキスパートが、日本の東京は新宿にて正体不明の敵と遭遇! 近隣の連邦軍に救援を求めて来た! 我々が一番近い! 全艦、最大戦速でそちらへ向かう! 総員、戦闘配置だ!』

 

 

 ブライト大佐は、幸い今の時刻はラー・カイラムの艦橋(ブリッジ)に居てくれた。……しかし、国際警察機構、か。彼らについては、探査機(プローブ)やハッキングによる情報収集でも、ほとんど情報を得られていない。彼らと敵対するBF団という国際犯罪結社についても、同様だ。

 今まで野良機械獣による被害だと思われていたものが、そのごく一部がBF団による怪ロボットの襲撃結果であったり、連邦軍による迎撃と思われていたのが、国際警察機構の隠密裏の働きであったのでは、という話もある。本当に噂レベルでしか無いのだが。ただし、国際警察機構という公的な組織があるのは本当だ。内幕は鉄のカーテンの向こう側なのだが。

 

 そしてシグコン・シップ、真ドラゴン、ラー・カイラムの3隻は、最大戦速で東京の新宿へと向かった。

 

 

 

*

 

 

 

 新宿の街は、大変な状況に陥っていた。あるビルは崩れ、火を噴いている。あるビルは跡形もなく吹き飛んでいた。そしてまたあるビルは、2つに折れて隣のビルにぶつかり、そちらにも被害を広げている。

 

 そんな中で、警視庁のロボット刑事課『ブレイブポリス』に所属する、超AIロボットたちが市民を避難させ、あるいはその有様を作り出した敵機を攻撃している。そして国際警察機構の巨大ロボットが、彼らに協力して敵を攻撃していた。

 何故それが国際警察機構のロボットだと判るかと言うと、結局は『わたし』の前世のアニメ知識だ。その巨大ロボットの名は、GR-1……草間大作少年操る、ジャイアント・ロボであった。いや、この世界で草間大作少年が操っているのかは不明だが。しかし敵味方識別信号で味方であるからには、国際警察機構の所属であるのは間違いないだろう。

 

 そしてシグコン・シップとラー・カイラムから、機動部隊各機が発進する。『わたし』も『飛行ワンセブン』形態で、シグコン・シップを離艦した。そして『わたし』は総員にテキストメッセージを送る。

 

 

【新宿の街を襲っている『敵』連中なんだが、観測したところによると何らかのバリアを持っている。こいつらに対しては、もしかすると一部のビーム兵器は減衰させられる可能性がある。

 可能であれば実弾兵器か、ゼロ距離でのビームサーベルなどが効果的、かもしれん。すまんな、確実な情報ではなくて】

 

『いや、構わん。ありがとうよ』

 

 

 弁慶が、通信映像の中でサムズアップして来る。『わたし』が異世界における『物語』の情報を、なるべくあたりさわりの無い形で出したのに気付いたのだろう。そして竜馬が笑う。

 

 

『へへへ、ならば叩き斬ればオッケーってこったなあ! ゲッタアアアァァァ、トマホオゥク!!』

 

『こちらも了解した。まずは試しにメガビーム砲で通るかやってみる。駄目ならミサイルを使う』

 

『わたしも同じく、だ』

 

 

 リ・ガズィBWSのアムロ大尉とシャア大佐が、そう言うなりメガビーム砲を発射する。ちなみにシャア大佐のリ・ガズィのバックウェポンシステムは、先日壊れたので予備部品から組み上げた新造品だ。

 そのビームは吸い込まれる様に、敵機に命中した。そして敵機は爆散する。しかしその瞬間、確かに一瞬だけバリアが可視化し、そしてビームに突き破られるのが『わたし』のセンサーで『()』えた。『わたし』はその解析映像を、各機に転送する。

 

 

『ワンセブン! どうやらメガビーム砲クラスの破壊力がありゃあ、雑魚っぽい奴らは撃墜できそうだな!』

 

【ああ、シロウ。だが奥にいる敵戦艦は、相応にバリア出力も高いだろう】

 

 

 そうなのだ。この敵は、1隻の巨大戦艦を中核にした1個戦闘集団であるのだ。横長の形をした、前から見るとX字型に近いその艦体は、全高はおそらく400mほど、全幅は1,400mはあるだろう。

 その周囲には、全長100m程度の小型艦艇が何隻も浮いており、その周囲を無数の小さな人型機動兵器が護っている。……いや、もうはっきりと言ってしまおう。

 

 この巨大戦艦の名は、アニメ知識ではあるが、『ゲア・ガリング』と言う。周辺にいる人型機動兵器は、『オーラ・バトラー』だ。バイストン・ウェルの軍勢……。ガルファ相手で大変なときに、なんて迷惑な奴らがやって来たんだ。

 

 本気で、『わたし』の機体(からだ)には存在しないはずの胃が、キリキリと音を立てて痛んだ気がした。




ジャイアント・ロボ参戦です。だけど今回の相方であるブレイブポリスは、ファンの方には申し訳ありませんがスポット参戦です。いや、警視庁のロボを引き抜いて戦線に投入するのはちょっと(笑)。

そして新登場の敵陣営は、とりあえず『聖戦士ダンバイン』よりバイストン・ウェルはクの国陣営。たぶん間違いなく、アの国陣営も地上の何処かにいますね。そして『聖戦士ダンバイン』主人公は、今いったい何処にいるのか。久しぶりのリアル系の参戦となるのか。主人公ワンセブンの、無いはずの胃は保つのか。

いや、それで言うならブライトさんの胃壁もピンチっぽいんですがね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。