大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第002話:リアル系主人公との邂逅

 機械獣軍団が、人々を襲っている。人々の住む、街を襲っている。『わたし』は『飛行ワンセブン』形態で出せる限りの速度で、飛翔していた。単純に最高速度と言う面から見れば、格闘戦用のロボット形態で翼を広げた『戦闘飛行ワンセブン』形態の方が速い。だがあの形態は消耗が激しいだけでなく、現状機体(からだ)の修復再建が完了したばかりで、各種試験(テスト)が完了していないのだ。

 『わたし』は焦る気持ちを抑えて、巡行形態である『飛行ワンセブン』のまま全速力で飛び続ける。まあ『飛行ワンセブン』形態であっても、改良強化後の『わたし』は大気圏内でもマッハ6を出せるのだが。無論衝撃波が地表にダメージを与えない様に、今現在は超高空を飛行している。

 

 先行偵察に送り出したシグコン・ジェットⅡが、映像を送って来る。その映像中では、1機の機動兵器が8体もの野良機械獣を相手取って、必死に街を護っていた。『わたし』はその機体を知っている。

 

 ……ヒュッケバインだ。スーパーロボット大戦シリーズで、リアル系主人公の乗機となる事が多々ある、あのPT(パーソナルトルーパー)である。

 

 いや、『わたし』が知っているヒュッケバインとは、若干形状が違う。とはいえ、確実にこれはヒュッケバインの系列機だろう。そのヒュッケバインらしき機体は、ところどころで操縦に危うさはあるものの、総じて順調に機械獣と渡り合っている。

 いや、まずい! 逃げ遅れた子供がいる! 機械獣の1体がそちらに向き直り、右手と一体になっている戦斧からビームを放とうとしている! ヒュッケバインもそれに気付き、子供……少女との間に機体を割り込ませた。だがヒュッケバインは華奢なPT(パーソナルトルーパー)だ。動きは鈍いが破壊力は高い機械獣の攻撃が直撃したら、ただでは済まない。

 

 そうはさせるか。

 

 次の瞬間、その機械獣に『わたし』が遠隔操作したシグコン・ジェットⅡが機銃とミサイルを連射しつつ吶喊する。シグコン・ジェットⅡはしょせんリモコンの小型ジェット/ロケット両用機に過ぎない。機械獣を少々よろめかせる程度の攻撃力しか無いのだ。だがそれで構わない。

 シグコン・ジェットⅡの攻撃により、機械獣に隙が出来た。ヒュッケバインがフォトン・ライフルを撃つ。機械獣は爆散した。ヒュッケバインの操縦士(パイロット)が機体の外部スピーカーで叫ぶ。

 

 

『そこの子供! 走れ! そのままだと死ぬぞ!』

 

 

 少女は一瞬びくりとすると、必死に後ろを向いてよたよたと走り出す。『わたし』はシグコン・ジェットⅡを操り、機械獣を少女から遠ざけようとするヒュッケバインを援護した。シグコン・ジェットⅡのカメラを回転させて見遣ると、少女の行く手に母親らしき人物が現れる。彼女は少女を抱きかかえ、必死に走り去って行った。

 そして『わたし』本体のメインカメラに、目標の街が映る。1体爆散したので、残り7体になった野良機械獣どもも、また。充分に『わたし』の射程距離内だ。わたしはマルチロックすると、対空・対地両用ミサイルを一斉に撃ち放った。一発の外れもなく、全弾命中。

 

 野良機械獣どもは、4体が爆散し、3体が半壊状態になる。ヒュッケバインはすかさずフォトン・ライフルやビーム・ソードで半壊した機械獣を片付けて回った。

 

 

 

*

 

 

 

 そして『わたし』は中空にホバリングすると、街中にある学校のグラウンドに着陸した。そのまま翼をたたんで『要塞ワンセブン』形態になると、シグコン・ジェットⅡを回収する。ヒュッケバインは、先ほどの戦闘を手助けしたのが『わたし』であることに気付いたらしいが、それでも警戒する様子を崩さない。

 

 ……なんというか、何かに怯えている野良犬か野良猫を思わせるな。

 

 と、ヒュッケバインがこちらに通信を送って来る。

 

 

『……危ないところを助けてもらって、礼を言う。だが、済まんが俺はこの辺でオサラバさせてもら……』

 

『そうはいかんな。おとなしく投降しろ、プロトタイプ046号』

 

『!?』

 

 

 うん。気付いてはいたんだ。機械獣との戦闘中に、街の周辺にいくつかの機動兵器の反応が隠れてるって事を。ヒュッケバインと『わたし』を取り囲む形で、多数の……1個中隊12機のMS、RGM-89ジェガンが出現する。ただし部隊マークは無い。機体番号なども描かれていない。

 ヒュッケバインはフォトン・ライフルを構えようとしたが、ジェガンどもは一糸乱れぬ動きでビームライフルを向けて来る。下手な動きをすれば、ヒュッケバインは滅多撃ちにされるだろう。

 

 

『ち……。くそ、街が野良機械獣に襲われてるのを見て、仏心を出したのが仇となるたあな……』

 

 

 ヒュッケバイン操縦士(パイロット)のその言葉を聞き、『わたし』は少し悲しくなる。だから『わたし』は、ヒュッケバインに向けてテキストメッセージを送ってやる。あちらのスクリーンには、こちらからのメッセージ文字列が流れているはずだ。

 

 

【その様な悲しい事を言わないでくれ。君のやった事は間違っていない。機械獣に殺されようとしていた少女を庇ったあの姿には、『わたし』は感銘を受けた】

 

『!?』

 

【いいか、今から周囲のジェガンたちに機体異常が発生する。そうしたら、すかさずこちらの上に飛び乗れ】

 

 

 ジェガンの操縦士(パイロット)……こいつらの指揮官らしき奴は、今度はこちらに向かい、オープン回線と外部スピーカーの両方で言葉を放つ。

 

 

『そちらの不格好な箱型の大型機。何処ぞの試作機か? まあそんな事はどうでも良いか。運が無かったな、こいつに出くわすとは』

 

 

 そしてジェガンの半数が、こちらにビームライフルを向けた。残り半数は、きっちりヒュッケバインに銃口を向けたままだ。

 

 

『お、おい! てめえら! 用があるのは俺だけだろうが!』

 

『フン、それで話が通るとでも思ったか? 貴様とその機体を見られてしまった以上、どこの部隊かは知らんが生かして帰すわけにはいかんのだ。無論のこと、この街の連中もな』

 

『な、なんだと!?』

 

 

 そんなところだろうとは思っていた。大体にして、こいつらは気に食わない連中だったんだ。ヒュッケバインの彼が必死で機械獣から街を護っている間、じっと身を潜めてヒュッケバインが消耗するのを待っていた連中だしな。だがセンサーでそれは分かっていたんだ。

 はっきり言って、気に食わない。貴様ら、軍人だろうに。民間人を護らない軍人に、存在する意味など無い。

 

 ……いいだろう。貴様らはどうにでもなれ。

 

 

 

*

 

 

 

 『わたし』は、超高指向性の常識外れに強大な電磁パルス(EMP)を、いきなり12機のジェガンに叩き込んだ。ジェガンは本来は大気圏外でも使用されるMSである。だから核爆発級の電磁パルス(EMP)ですら耐えられる様な造りになっているのだ。だがそれにも、限度がある。

 まあいくら『わたし』でも、兵器として造られているMSの電磁シールド処理を破れるほど強烈な電磁パルス(EMP)攻撃は、準備なしで行えるものではない。これは最初から奴らが隠れ潜んでいる事を、センサーで知っていた事。そして奴らの目的がろくでもない物である事を想定して、かなりの時間をかけてロックオンしていた事。奴らがこちらを取り囲んで、まったく動かなかった事などが上手く行った理由だ。

 

 うん、上手く行ったんだ。強烈な電磁パルス(EMP)で、12機のジェガンは1機残らずシャットダウンした。そればかりか、誘導電流が発生してジュール熱が生まれ、コクピット内は蒸し焼きになった模様。一部機体はミサイルなどが誘爆して吹っ飛んだしな。

 怒りにかられて、やり過ぎたかも知れんなあ。だが、やっておかなければこいつら、この街の人々も殺していた可能性が高い。

 『わたし』はヒュッケバインにテキストメッセージを送る。

 

 

【ずらかろう。上に跳び乗れ】

 

『あ、お、おう! 世話んなる!』

 

 

 ヒュッケバインが『わたし』の『背中』に乗ったのを確認して、『わたし』は翼を広げて『飛行ワンセブン』形態になる。そして浮上。

 

 

【落ちない様に、しっかり捕まっているんだ】

 

『わ、わかった!』

 

 

 『わたし』はヒュッケバインを振り落とさない様に注意しながら、飛翔した。置き土産に、残ったジェガンにミサイルを一連射。万が一にでもこいつらが生き残りでもしたら、この街が危なくなる。

 ジェガンが跡形もなく吹っ飛んだのを見届けて、『わたし』たちはその場を立ち去ったのだった。

 

 

 

*

 

 

 

 そうして『わたし』たちは、とある山中に着陸した。『飛行ワンセブン』形態から『要塞ワンセブン』形態になると、『背中』に乗っていたヒュッケバインが地面に降りる。ヒュッケバインはそのまま駐機姿勢になり、コクピット・ハッチを開いた。

 機体から降りて来たのは、少年期を過ぎたかどうか、青年期に差し掛かったかどうか、という20歳直前ぐらいの男性である。パイロットスーツのヘルメットを脱ぎつつ、彼は(おもむろ)に口を開く。

 

 

「……サンキュ。『あんた』なのか『あんたら』なのかは分らんが、礼を言うよ。おかげで助かった」

 

『そう、だな。『わたし』は1人だから、『あんた』でかまわんだろう。こちらも先ほど言った通り、君の行いには感銘を受けた』

 

「よせやい。単なる勢いだ」

 

『勢いだとしても、だ。このご時世、あの様に危機に陥った子供を救う事を躊躇なくできる君は、誰はばかることなく賞賛されてしかるべきだ』

 

「だからよせって。俺は調子に乗りやすいんだ」

 

 

 そして『わたし』は変形を始める。『要塞ワンセブン』形態からゆっくりと立ち上がり、『戦闘ワンセブン』……つまりロボット形態へと変形する。

 

 

「な!? え!? と、特機(スーパーロボット)だと!? 飛行形態とか妙に不合理っぽいと思ったら……」

 

『『わたし』の名は、ワンセブン……。人は『わたし』を、『大鉄人17(ワンセブン)』と呼ぶ……』

 

「え゛!? って言うか、噂になってる超AI、なのか!? 人が操縦してるんじゃなしに!? しかも特機(スーパーロボット)級の超AIロボット!?」

 

『そうだな。君たちの認識では、『わたし』は超AIだと言ってもいいだろう。まあ『わたし』個人としては、超だろうが何だろうがAIはAIで、どう区別するべきかわからんのだがね。

 それで『わたし』は君を何と呼べば良いかね?』

 

 

 驚いて目を白黒させていた彼は、だが表情を曇らす。

 

 

「あ、いや……。名前なんて無えしなあ……。俺、強化人間でさ。強化人間って、わかるか? そんなわけで、過去の記憶も消されちまって欠片も無えし……。あるのは番号だけだ。プロトタイプ046号、ってな」

 

『……悪い事を訊いてしまったかな』

 

「気にすんな。……って、あんたホントに人間が乗って操縦してるんじゃないのか? とんでもなく人間臭いんだが」

 

『残念ながら、わたしは存在の一欠片まで金属と電子部品と電子情報のカタマリだとも』

 

 

 まあ、うん。『わたし』が他所の世界の人間男性が生まれ変わった、転生したなんて事を言って、混乱させることも無いだろう。しかし彼をどう呼んだものかね。

 

 

「あー、そうだ。今後社会に紛れ込んで暮らす上で、偽名とか必要になるよなあ……。良けりゃああんた、俺になんか名前付けてくれねえか?」

 

『む。『わたし』が、かね?』

 

「おう」

 

 

 むむむ、これは困った。『わたし』にはネーミングセンスとか無いんだが。……046号、4と6、か。

 

 

『……046号からの連想でしか無くて申し訳ないのだが、四郎(シロウ)というのはどうかな。姓はわたしの恩人の一人から借りて、佐原(サハラ)とでも』

 

「シロウ・サハラ、か。うん、いい響きじゃねえか。ありがとよ、ワンセブン!!」

 

 

 046号、いやシロウはニパっと笑った。わたしの顔は金属製なので笑い返せないため、代わりにサムズアップを返してやる。

 

 

『どういたしまして、だ。よろしくな、シロウ』

 

「おう、そんで……」

 

 

ぐぎゅるるるるるる~……。

 

 

 そしてシロウが盛大に腹の虫を鳴かす。

 

 

「うう、しまった。研究所を脱走してからこのかた、サバイバルキットに入ってたカロリーバー4本食いつくして以来、何も食ってねえ……」

 

『……よければ『わたし』に乗り込みたまえ。『わたし』には超生産能力があるからな。その辺の草木や土からでも、素材変換して食料を作り出せる。30分もあれば、食事が出せるぞ』

 

「ホントか!? な、何から何まで済まねえ……」

 

『気にするな、シロウ』

 

 

 これがその後、長い長い付き合いになるシロウとの出会いだった。




あけましておめでとうございます。
このオリジナルのスパロボ世界主人公は、強化人間です。レベルが上がれば、『強化人間9』になります。むっちゃ強いです。レベルが上がれば。
ちなみに連邦軍が何処からか手に入れたオーバーテクノロジー機体であるヒュッケバイン(?)に乗ってます。ソレで研究所から脱走してきました。
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