東京は新宿でのゲア・ガリング率いるビショット軍との一戦から、3日が経過した。今現在、我々ロンド・ベル隊旗下の艦隊は北米シャイアン基地へと向かっている。そこへ行く前に、電童チーム一同はいったん星見町に寄って、そこへ降ろして来た。
ただ、これでお別れというわけでは決して無く、一段落ついたらまた星見町に迎えに行く事になっている。それはそうだろう。電童チームには、おそらく人類圏のあちこちに散らばっている、データウェポンを集める使命がある。そのためにはフットワークが軽い我々と共に移動するのが、おそらく一番の近道だ。
「んで、俺たちがアムロ大尉をここから救出したんで、その重要性は無きに等しくなったってぇワケか。んで、当時アムロ大尉を幽閉してた連中の派閥から、キャンベル大将の派閥に今は管轄が移ってるワケかよぉ」
『そういう事だな、シロウ。そのおかげで、正直助かった』
「ほんとになあ……」
何が助かったかと言うと、このシャイアン基地にとある客人が保護されたと言うニュースが、キャンベル大将の伝手を通じてロンド・ベル隊に飛び込んで来たのである。その発端は、シャイアン基地がバイストン・ウェル勢のはぐれ部隊と思われる敵に襲われた事だ。
その内訳は、ブル・ベガー型オーラ・シップ1隻を中核とする、レプラカーン1機、ビランビー2機、ドラムロ3機という編成のオーラ・バトラー隊に襲撃された事だった。編制から言って、たぶんドレイク軍だろう。
あいかわらずそこまでの防衛線力を置いていなかったシャイアン基地は、配備されていたジムⅢで立ち向かったのだが、残念ながらそのジムⅢはビームライフル装備だったのだ。専用のミサイルポッドとマシンガンでもあれば、それでも立ち向かえたのだろうが。
そう、オーラバリアのせいである。通常オーラバリアは実体弾兵器にも若干の効果は見込めるが、そこまで強く作用しない。しかしながら射撃用のビーム兵器に対してはかなりの効果を発揮するのだ。そしてシャイアン基地のジムⅢは、主力武器のビームライフルをほぼ封じられる。なんとか低空に降りて来たレプラカーンの油断を突き、ビームサーベルで撃墜したものの、ビランビー2機とドラムロ3機にいい様にしてやられる事となった。
そして窮地に陥った基地を救ったのは、これもまたバイストン・ウェル勢のはぐれ部隊ではないかと思われる、オーラ・シップ1隻を中核とするウィング・キャリバー2機、オーラ・バトラー2機の部隊だった。オーラ・バトラー数では圧倒的に劣るその部隊であったが、その練度は中々の物で、先の敵部隊と互角以上に渡り合う。
更に決定的な事が起こる。後者の、味方として出現した部隊に、増援が現れたのだ。増援はたった1機のオーラ・バトラーであったが、その実力は尋常では無く、あっと言う間に全ての敵機を撃墜する。勢いづいた味方は、あっという間に襲撃者のオーラ・シップであるブル・ベガー型を撃沈した。
で、シャイアン基地を救援したオーラ・シップの一行は、この基地に客人待遇で留め置かれる事になる。キャンベル大将の派閥やそれに近い連邦軍には、彼らがバイストン・ウェルという異世界から転移してきた存在だ、という事実は知らされていた。情報の出どころは、勿論のこと我々であるが。
『その客人たちの写真が、これだ』
「ショウによりゃ、こいつらショウの仲間だってぇ話だよな」
そう、その客人たちの乗って来たオーラ・シップはゼラーナである。ウィング・キャリバー2機はフォウであり、オーラバトラー2機はボチューンだ。そして増援に来た機体は、ダンバインである。要はアニメ原作で言う、ゼラーナ隊だ。
ゼラーナ艦長であり、ボチューンのうち1機の
彼らの映像を見せた時、ショウは彼らが無事だったことに喜びのあまり、かなり興奮して半ば頭の中が熱暴走している状態だった。自分の今の立場を忘れ、ビルバインで向こうに合流しようとしたほどである。まあ、すぐに落ち着きはしたが。
我々は今現在、キャンベル大将からの命令の
他にも交渉できそうな相手と言えば、まずはシーラ女王のグラン・ガラン一派、そしてエレ女王のゴラオン一派だろう。これはアニメ知識ではなく、ショウからの情報だ。ただし彼女らは一国を率いる立場であるし、やはり戦国時代的な考えの持ち主でもあるだろう。プラスの方向にバイアスの掛かったショウの意見だけで、先入観を持つべきでは無いな。
何にせよ、これらは今何処に居るのかの情報が無い状態だ。今現在、衛星写真とレーダーや各種センサー類で捜索をしている。なるべく早く見つけて、接触を取らねばなるまい。うかつに地球連邦軍の部隊と交戦でもされてしまっては、その落としどころが難しくなってしまう。
一方で、まったく交渉できそうにない相手は新宿をとりあえずと言った風情で攻撃しやがったビショット王のゲア・ガリング一派。どうやらあの地域がショウと関係がありそうだ、という理由の薄い推測だけで、考えなしに攻撃したらしいんだが。
もう1つ、こちらも交渉する余地の無さそうな相手が、ドレイク王のウィル・ウィプス一派だ。こいつらはイギリスはベルファスト基地付近に出現したんだが、未確認の機動兵器と未確認の巨大戦艦の戦闘集団に、ベルファスト基地は慌てて戦力を出したのは理の当然だろう。それでも連邦軍側は、定型文的に相手の素性を誰何した。比較的、紳士的なやり方であったと言えよう。
だがこの中世時代脳みそ連中は、交渉はまずは殴ってからだ、とばかりに攻撃を仕掛けて来やがったのだ。
幸いなことに、あくまで偶然ではあるのだが……ベルファスト基地には
もっともドレイク一派……ドレイク軍は、そこまでダメージを受けたわけでは無いとも聞く。今回はほんの小手調べ、戦力を温存しようと撤退したに過ぎない模様だ。実際ベルファスト基地とその戦力は大ダメージを受けてしまっている事であるし……。
「お、着いたな」
『通信士! アヤメ! シャイアン基地に連絡を入れてくれ!』
「了解です、ワンセブン!」
さて、とりあえずゼラーナ隊との接触と交渉は、どうなることやら、だな。
*
ここはシャイアン基地の会議室。ゼラーナ隊の指揮官でありゼラーナ艦長であり、同時にボチューンの
「そうか……。ショウ、ここは地上界ではないんだな? 我々は、もう二度とバイストン・ウェルに帰る事は、死して還る事すらも、できない、と……」
「ああ。ジャコバ・アオンの声が言っていたよ。あいつめ……」
「くそっ! これもドレイクが、ショット・ウェポンをバイストン・ウェルに召喚させたりしなければ……。あの地上人が、ショットがオーラ・マシンを開発しなけれ……。
あ、ああ済まんショウ。ショウも地上人で、なおかつ元の地上界から完全に切り離されてしまったんだったな……。そうか、そうだな。ようやく無理矢理に召喚されてしまった、ショウやマーベルらの気持ちが、少しは理解できたよ……。今までは頭では理解していたつもりだったが……」
「気にしないでくれ、ニー」
ショウの脇には、このシャイアン基地で再会することができた、マーベルさんが立っている。彼女もまた、この世界が彼女の居た地上界では無い事を、思い知らされていた。彼女は北米はテキサスのダラスへと出現したのだが、そこは本来彼女の故郷であったダラスとは違っていた。彼女の家も牧場も無く、親を始めとした親類縁者や友人知人の姿も無かったのだ。
そして北米を連邦軍などに見つからない様に
ちなみにショウと再会したときに彼女は、衆人環視の中で思いっきりキスシーンをかましてくれたりした。ショウは気恥ずかしかったらしいが、彼女の気持ちを考えたのだろう、
周囲の面々からショウが、『
ブライト大佐はニーに語る。
「この世界では、本来ならば強力な武装を保有するには正式な資格と許可が必要になる。諸君らのオーラ・シップ、ウィング・キャリバー、何よりオーラ・バトラー等のオーラ・マシンは、当然ながらその『武装』にあたるんだ。まずこれを理解して欲しい」
「……なるほど。となると我々は、不法かつ不穏な武装勢力、というわけですね」
「ああ。だが今現在、この世界では戦乱の嵐が吹き荒れている。本来護られるべき市民たちが重武装し、ザンスカール帝国などの敵対的組織に対してレジスタンス活動を繰り広げているのも、また事実。本来秩序の守り手でなけらばならん地球連邦軍としては、悔しい限りだがな。
今現在我々は、超法規的、とまではいかないが……。法のグレーゾーンを使う形で、幾つかのレジスタンス組織や、特に認められた民間の武装組織を指揮下に置いている。可能であれば、君たちにもこれに倣って欲しい」
その言葉に、ニーの眉が
「我々に、そちらの兵となれ、と?」
「いや、そこまでは言わない。作戦への参加は、諸君らの意志を充分に配慮するつもりだ。正直そうも言っていられない場合もあるだろうが、可能な限りは。
そして我々の指揮下に入るのを拒む場合は、その場合は武装を解除して一般人として、連邦軍の保護下に入ってもらう事になる。常識や生活習慣が大きく異なるだろうから、基本的な事を学習するまでは解放できないが、いずれは就職の世話などもできると思う」
「……自分は、そちらの指揮下に入っても良いと考えます。ですが我々は独立部隊的な扱いにはなっているものの、シーラ女王やエレ女王の世話になっている身です。それに同志たちには別の意見があるやも知れません。
まずはゼラーナの同志たちと話し、意見を
「わかった。当面はそれで構わないとも。その女王陛下お2人とも、色々お話をしなければならないんだが……。国家の元首で、なおかつ1軍の指導者だ。わたし程度では役者が不足している。
なので、時間を見てキャンベル大将、そして後々には地球連邦政府議会のゴップ議長と会談してもらう事になると思う。女王陛下お2人に対する伝手として、期待させてもらって構わないかな?」
「了解です」
ブライト大佐は、右手を差し出した。ニーもまた、その手を固く握りしめる。とりあえずは暫定的ながら、収まるべきところに収まった、か。正直、ほっとしたよ。
*
幸いなことに、ゼラーナ隊の面々は1人たりとて艦を降りる事は無かった。それはいいんだが。今後宇宙へ行かなければならない際に、艦としてのゼラーナはどう扱ったものだろうか。いかにオーラバリアがあるとは言え、ゼラーナは構造的に外部への開口部が多すぎる。更に言えば開口部が巨大すぎる。オーラ・バトラー発進口にハッチが無くて、大きく外へ開いているんだよなあ。
それはともかくとして、今アムロ大尉はシャイアン基地の司令、イーグルトン大佐と通信で話している。と言うか、ロンド・ベル隊の中にシグコン・シップが混じっているのを見たイーグルトン司令が、こちらにアムロ大尉が居ないかどうか訊ねて来たのだ。
とりあえずトボけておいたのだが、単にイーグルトン大佐は普通に話がしたいだけだった模様。裏も無さそうだったので、『何処の誰と繋がっているのか不明な、よくわからない通信回線』を紹介して繋いでやった。
何処の誰と繋がっているか不明な回線という建前なので、アムロ大尉もイーグルトン大佐も固有名詞はかけらも口に出さずに、それでも懐かしそうに旧交を温めていた。
そして正体不明(笑)の相手との通信を終えたイーグルトン大佐は、改めてこちらへ通信を送って来る。
『ワンセブン、だったな。『正体不明』氏との回線を繋いでくれて、心より感謝する』
『いや、気にしないで欲しい。お役に立てて、何よりだ』
『で、こちらには貴艦隊の停泊期限は明日までとなっていたが』
『それまでには、衛星写真などの解析が一通り終わる。そうしたら、即座に出立しなければならない』
『そうか。少し早いが、貴隊が無事に任務を果たされんことを願っている』
うん、いい人だなあイーグルトン大佐。正直お年を召した方なんだが、この年齢で将官ではなく佐官で、場末の基地司令って立場なんだよな。出世コースから外れたと言うか外されて、最後の花道としてたぶん基地司令の職をもらったんだろう。そしたらアムロ大尉狙いの部隊の攻撃を受けるわ、今度はバイストン・ウェル勢のはぐれ戦力に基地守備隊を壊滅させられるわ。大変だったなあ。
*
翌日、我々の艦隊はシャイアン基地を離れ、アラスカの地へと向かった。衛星写真で、そこにゴラオンと思われる艦影が映ったのだ。グラン・ガランについては、そのまま調査中である。たぶん衛星写真で写されなかった地域に居るのだろう。
本当なら地球全域を衛星写真で撮影できていたはずなんだが。ザンスカール帝国や、あとは地球連邦に協力を決める前のジオン残党軍……。奴らが次々に衛星を撃墜してくれたおかげで、衛星の数が足りないんだよな。
『なんとかゴラオンを発見する事ができたな。我々はこれよりゴラオンとの接触を試みる』
「了解だ、ブライト大佐。いや、本物の中世的と言うかファンタジー世界みたいなところからやって来た、本物の女王様か。正直腰が退けますな」
「安心してください弁慶さん。グラン・ガランのシーラ女王は本気で女王様って人ですが、エレ様は庶民的で柔らかい人ですから。まあ高貴な血のお方ではありますけどね」
「ショウ、ちっとも安心できないぞ」
ちなみにショウは、ビルバインをシグコン・シップで整備中のため、まだゼラーナには移乗していない。そしてマーベルさんも、いったんダンバインごとシグコン・シップに移って来ている。まあ、野暮は言うまい。
……!?
『ブライト大佐!』
『ああ、ワンセブン! こちらにも入電した!』
『ここより東、ボストンの街にドレイク軍ウィル・ウィプスが迫っている! 近隣の連邦軍が集まって来てはいるが……』
ブライト大佐は一瞬だけ考え込むが、すぐに結論を出した。
『ゼラーナ隊は、このまま北上! ゴラオンとの接触を試みてくれ! 更にその際、地球連邦軍規格の通信機を貸与するので、それをゴラオンに届けてもらう! あちらに接触が取れたなら、即座に我々に連絡を取ってもらいたい!
ラー・カイラム、シグコン・シップ、真ドラゴンはこのまま東進し、ボストンを救援する! ただしドレイク軍との戦闘アドバイザーとして、ショウ・ザマおよびマーベル・フローズンはこちらに同行せよ!』
「「『『『『了解!』』』』」」
そして『わたし』たちは北へ行くゼラーナ隊を見送ると、急ぎ東へ方向転換する。ボストンの街は、護らねばならない。そしてボストンを護ろうと集まった、心ある連邦軍軍人たちを死なせたくは無い。
ラー・カイラムと真ドラゴン、そしてシグコン・シップは、大気圏内で出せる全力で、ボストンへと向かった。
今回はちょっとしたインターミッション的なお話。ゼラーナ隊と合流いたしました。とりあえずですが、ブライトさんの指揮下には入ってもらえる模様です。更にはゴラオンも発見しました。
ですがその矢先、イギリスのベルファスト基地を襲って撤退したウィル・ウィプスが大西洋を渡ってボストンに攻めて来ます。果たしてどうなるのか。
そして本文ではサラっと書いただけですが、電童チーム一時離脱です。もともと星見町行って、電童本体とデータウェポン調べる予定でしたからね。まあ、すぐに戻って来ます、ハイ。
更に本文ではまったく触れていませんが、ヨナ少尉まだ意識が戻りません。そろそろ地上の病院へ入院させた方がいいんじゃないのって話も、部隊内では聞かれ出してます。ま、そうは問屋が卸さないんですがね。