今、シグコン・シップ、真ドラゴン、ラー・カイラムはラウの国のオーラ・バトル・シップであるゴラオンと並んで停泊していた。周囲にはグリムリー型オーラ・シップが多数とナムワン型オーラ・シップが少数、そしてゼラーナが浮遊している。その威容は恐るべき物があった。
もっとも全長は820mほどであり、1,000m級のシグコン・シップや、全長が6kmはある真ドラゴンと比べれば、やはり小さいんだが。しかしながら少なくとも艦隊旗艦としては、相応しい威厳がある艦だ。
今現在、我々の部隊司令であるブライト大佐は、ラー・カイラム副長のメラン中佐と弁慶を引き連れて、ゴラオンに表敬訪問に赴いている。ラウの国の女王であるエレ・ハンム様との謁見、大変だろうなあ、とも思う。こっちの身近にもデューク・フリードって異星の王子様にして次期星王が居るが、彼は本っ気で庶民である宇門大介としての暮らしが染み付いた人物だからなあ。参考にならん。
ま、エレ様はショウ曰く庶民的な方だとの話だから、まだいい方だろう。ナの国のシーラ・ラパーナ女王よりはマシだと思ってもらうしか無いな。ちなみにそのショウは、ゼラーナの面々やマーベルさんと共に、ラウの国の連中との仲立ち役としてゴラオンに出向いている。
ただしビルバインとダンバイン、おまけにゼラーナ搭載のボチューン2機は、一時的にシグコン・シップで預かっていたりする。ビルバインは先日の戦いで大ダメージを負っていた。その修復ついでに、色々と改良強化する予定なのだ。と言っても、外装や装甲をこちらの世界の素材にする他、制御系や電子装備類をこちらの世界における最新機材に交換する程度なのだが。
ダンバインやボチューンについても、同様の措置を行う事になっている。『わたし』と甲児、アムロ大尉という豪華スタッフ監修のもと、まあ魔改造とまでは言わないが相応に強化されるだろうとは思う。
ちなみにビルバイン、ダンバイン、ボチューンなどのオーラ・バトラーからは、ちょっとだけ筋繊維や装甲片、他色々を採取させてもらった。同時にシグコン・シップ艦内工場の一角を用いて、クローン培養設備を造り付ける。
これは、この世界ではバイストン・ウェルにおける恐獣の類が存在しないため、オーラ・バトラーの駆動系である筋肉や制御系の一部である神経、どうしても金属類では置換できない一部の装甲板など、生体部品をクローン培養するためだ。これが軌道に乗れば、オーラ・バトラーの修理部品には事欠かなくなる。
おや? ゴラオンに行った弁慶から通信が入っているな?
『どうしたね、弁慶?』
『いやあ、ちょっとスマンが……。ワンセブン、頼みがある』
『無理な事じゃなければ、構わないとも』
『いや、実はな……。エレ女王様が、お前さんに会ってみたいと仰せでな』
なんですと?
*
オーラ・シップであるナムワン型をランチ代わりに使い、エレ女王御一行様がシグコン・シップの甲板上に降りて来る。それを『
そしてエレ女王たちが『わたし』の間近までやって来る。いっしょに居たブライト大佐が、頷いて言った。
「エレ女王陛下。彼が、そうです」
「ブライト大佐、何も無い様じゃが?」
「待ってください、エイブ。強い霊力を感じます」
え。霊力って、何。いや、『わたし』はこの鋼の身体に転生したわけだから、魂は持っているわけだし。霊力あってもおかしくは無いのか?
とりあえず『わたし』は『要塞ワンセブン』形態から『戦闘ワンセブン』形態へと変形を始める。
「お、おお!?」
「エレ様、お下がりください!」
「いえ、大丈夫です。『このお方』に害意はありません」
そして『わたし』は人型の『戦闘ワンセブン』形態になると、海軍式の敬礼を行って言葉を発する。
『『わたし』の名は、『大鉄人
「おお!」
「しゃべったぞ!」
「だい、てつ、じん……ワンセブン……。おおいなる、てつの……」
エレ様は何か、感極まった様子で何事か呟いていた。だが次の瞬間、表情を引き締めると言葉を
「貴方からは、とてつもなく強い霊力を感じます、ワンセブン」
『ふむ、『わたし』自身ではよく分からないのだがね』
「貴方のその力、どうか善き心を持つ人々のために、お使いくださる事を願います」
『『わたし』も、出来得る限りそうしたいと願っているよ。美しい心、輝く魂の持ち主たち。彼らと共に戦い、彼らを護る事。それが我が存在意義だと思っている。
ただ最近は、そればかりではいけないかとも感じているが、ね。過ちを犯しかけ、あるいは本当に過ちを犯してしまい、だがそこから立ち直ろうとする者達もいる。どうにか正道に立ち戻るべく、もがき続ける者もいる。そう言った者たちにも、助力すべきでは、とね』
まあそう言う者達は、犯した過ちに相当する分だけの
「素晴らしいお考えです。どうか、そのお気持ちを忘れないでください」
『肝に銘じて、と言いたいが肝は無いのでな。そう、だな。我が魂にかけて』
「ふふふ。本日はお会いできて、よろしゅうございました『大鉄
『わたしも同じ気持ちだよ。ではまた会おう』
やれやれ、大過なく終わったか。……なんかエレ女王陛下が呼んだ『わたし』の名が、なんとなくニュアンス違わないか、という気がしたんだが。気のせいかな。
*
ヨナ少尉に対する尋問、と言うか……。尋問って言うほど厳しくは無いな。事情聴取は、ヨナ少尉が素直に答えた事もあり、すんなり終わった。彼が一年戦争時にオーストラリアへのコロニー落としを察知した、『奇跡の子供たち』の1人であった事も、彼は語った。
彼やミシェル女史、そしてリタ・ベルナルと言うもう1人の『奇跡の子供たち』は孤児となり、ティターンズが管理するニュータイプ研究所、よりによってあのオーガスタ研に送られている。そしてリタのみが本物のニュータイプとして残され、彼とミシェル女史はオーガスタ研を去る事になった。
それについてだが、ミシェル女史がルオ商会と取引をして何か仕掛けた結果、そうなったらしい。ミシェル女史自身はルオ商会に引き取られ養子となり、リタは
その後彼は、それまでの経歴を抹消された上で連邦軍の士官学校に入学。少尉となった。そして現在、ミシェル女史の立案した計画に乗り、『不死鳥狩り』作戦を実施するためにロンド・ベル隊に参加したのである。
その『不死鳥狩り』作戦なのだが、以前の戦いで乱入してきたユニコーン・ガンダム3号機フェネクスを鹵獲するためのものらしい。フェネクスはかつて、強化手術を受けたリタを
ヨナ少尉が、ミシェル女史の計画に乗った理由は、どうしてもリタ・ベルナルに会いたいという、ただそれだけだと言う事である。だが、フェネクスが暴走事故を起こして姿を消して既に一年以上。フェネクスが何処かで補給なり整備なりを受けた形跡は無い。まったく無いのだ。
機体が動いているのは、フル・サイコフレームが何か超常的な働きをしている可能性もあるのだが……。強化されているとは言え生身の人間が、水や食料も無いどころか酸素すら無い状況で、生きているわけが無い。
おそらくは……。残留思念、ではなかろうかと『わたし』は思う。録音されたICレコーダーなりカセットテープなりが、かつて記録された音声を正確になぞり再生する様に。死者の思念が、その
そうでなければ、本当に死者の魂が残留していたとして、だ。どちらにせよ、それは残留思念とは大差ない物であろう、と思う。『わたし』は転生してこの『大鉄人
まあ、本当のところは『わたし』にすら分からない。もしかして、魂というのは肉体を離れても独立して機能し得る物なのかもしれないし、『わたし』が思う通りに違うのかもしれない。だがそれはそれとして、だ。フェネクスが動くダイイングメッセージ、動く遺言であったとしたならば。それをヨナ少尉は、受け取るべきであろうとも思うのだ。
そして『わたし』は、その考察をブライト大佐や弁慶に伝える。まあ『わたし』の転生に関しては
これはヨナ少尉に対する、同情心でしか無い。ただ、同情を傲慢だとかなんだとか言って忌避する風潮があるが、同情ってそんなに悪い物だろうか。第一、同情するかどうかは相手側の問題ではなく、こちら側の感情の問題なのだ。仕方ないだろう。
*
ショウ、マーベルさん、ニー、キーンさんが自分たちのオーラ・バトラーを取りに来た。彼らゼラーナ隊は、今後はゴラオンのエレ女王麾下の部隊として動く事になる。まあエレ女王はこちらからの要請はきちんと聞いてくれるらしいが。
「すごいな、ワンセブン。見事な……いや、最高の仕上がりだ」
「ダンバインも反応性が上がってる……。ちょっと慣れないと、心配ね」
「ボチューンも打てば響くようね。ただ、その分ピーキーになったかしら」
「慣れるために、ゼラーナに戻ったら訓練の演習予定をねじ込んでおこう」
そんな事を言いながら、彼らは格納庫の整備施設から自分たちの機体を出そうとする。と、一瞬彼らの機体が動きを止めた。彼らの視線は整備施設の中にある、分解調査中のオーラ・バトラーに向いている。そしてショウがポツリと言葉を漏らす。
「……ライネック、か」
『調べてみたが、正直なところもう使い物にはならない、な。ただ、これに使われている最新技術……。ことにボチューンの物を超える最新型のオーラ増幅器は、ショートして壊れてはいたものの理屈や構造は非常に参考になった。
調べ終わったら、
まあ、ビルバインやダンバインは、必要オーラ
何にせよ、ビルバインを修理改良し、ダンバイン、ボチューンを改修、そしてライネックを徹底調査した事で、随分とオーラ・バトラーには詳しくなった。オーラ
だが、ショウが言いたい事、聞きたい事は、そうじゃないんだろう。
『ちなみにトッド・ギネスの容体だがね。身体的には打てる手は全部打った。だがずっと昏睡状態が続いている。これ以上、何もやり様が無い』
「……そうか」
『で、エレ女王陛下からの申し出があってね。彼の身柄をゴラオンに移送した。オーラ
「そう、か。あとはエレ様たちに任せるしか、無いな」
ショウの表情は硬い。なんとかなってくれると良いんだがね。
*
グラン・ガランの現在地が判明した。グリーンランドである。衛星写真を解析した結果では、氷原のまっただ中に着陸しているらしい。
『急いで接触しなければならんな。そうしたら女王様方とキャンベル大将、続いてゴップ議長との会談を整えなければならん』
「ブライト大佐の心労が大変だよなあ……」
『ああ、シロウ。本当に、一介の大佐の仕事じゃないな』
まあ女王様方とは言えど、彼女らの国とは高次元の壁により切り離されてしまっている、事実上亡国と言っても良い方々だ。戦力こそは確かに下手な国に匹敵する分だけは保有しているんだが……。
キャンベル大将によれば、ゴップ議長がこの会談に思ったよりも乗り気らしい。オーラ・バトラーがちょっとした改修で、宇宙空間でも運用可能な
何はともあれ、我々の艦隊はゴラオンと共に、アラスカの大地を離れてグリーンランドへと出発したのである。
ゴラオン御一行様、合流いたしました。そしてグラン・ガランも発見です。上手く行けば、次回に合流できます。上手く行けば。まあたぶん、上手く行くかな?
そしてエレ様が、ワンセブンの事を変な名前で呼びました。いや、エレ様的にはそう変じゃない名前なんですが。ちょっとヤバイ。祭られて、拝まれたりして。
ゴップ議長、バイストン・ウェル勢のうちで交渉ができそうな勢力との会見に、妙に乗り気です。勿論理由はあります。ワンセブンが言っていた事もその一部ですが、別な理由もありますね。ゴップ議長の秋波が途切れないうちに、会談に持ち込むのが吉。けれど相手は海千山千。下手するといい様に持って行かれちゃいます(笑)。