大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第037話:蘇った男

 現場は、乱戦になっていた。ゲア・ガリングは撃沈したものの、そのオーラ・バトラー隊はまだ生き残っている。必死で逃げるそれらを、グラン・ガランとゴラオンのオーラ・バトラー隊、そしてラー・カイラムのウッソ君、マーベットさん、シュラク隊、ヨナ少尉らのMS(モビルスーツ)隊が包囲下に置き、次々と撃墜して行く。

 一方で、戦場北側から乱入してきた野良機械獣軍団とそれを指揮統率する突然変異体は、『わたし』たちシグコン・シップ組が受け持っている。『わたし』は前線に立って、まずは機械獣を排除すべく戦っていた。

 

 機械獣を残して置けば、あの突然変異体を倒してもそれを材料に再生される可能性が高い。残骸すら残らない様に、徹底的に破壊しておくべきだろう。『わたし』は撃破した機械獣に、追い打ちのミサイルを叩き込む。

 同様に仲間たちも、機械獣を倒したら跡形もなく破壊するために、追い打ちの攻撃を行っている。それもあって、敵の殲滅スピードは若干遅い。

 

 そのためもあったのだろう。敵の首魁、突然変異体は突如として行動に出る。背中に背負った大型の噴進器を噴かして、奴は全力で飛翔移動する。移動先は、ビショット軍の生き残り共の、真っ只中だ。

 奴め、何をする気だ。奴は既にボチューンを取り込んでいる。これ以上オーラ・バトラーを取り込んでも、たいした強化にはならないはずだ。

 

 そして突然変異体は、慌てふためくビショット軍生き残りオーラ・バトラーをかき分けあるいは撃墜し、直進する。その行く先には、1機のドラムロが居た。

 

 

『わ、わあああぁぁぁ!? た、助けてくれっ!』

 

 

 そして奴は、そのドラムロを捕まえると口を開き、かぶり付く。ボリッ! メリメリッ! グシャリッ! しょせんオーラ・バトラー1機は、たいした量では無い。あっと言う間に奴はドラムロを喰らい尽くす。

 

 ……そして、光の柱が立った。

 

 

『おい、ワンセブン! あれは……!!』

 

【間違いない。奴は並行異世界から、また何かを召喚しようとしている。まずいぞ。奴の捕食行動を止めるには、場所が遠い】

 

『くそぉ、突入する!』

 

 

 シロウのヒュッケバインNextが、サイコフレームの輝きを放ちつつ吶喊(とっかん)する。『わたし』もそれを全力で追いかける。

 

 そして光の柱が収束した所には、黄色い装甲板のロボットが転がっていた。全高は17m弱で、なんとなく丸っこいイメージを抱かせる形状である。腹部のコクピット・ハッチは展開し、中には誰も乗っていない。

 あれは……。間違いない。『銀河漂流バイファム』というロボットアニメで、主人公ロディ・シャッフルが窮地に陥った際に、スコット・ヘイワードという仲間キャラクターが拙い腕前で必死になって乗って助けに行った、練習機タイプのバイファムだ。誰も乗っていないと言うことは、人間は今回召喚されなかった様だ。

 

 シロウのヒュッケバインNextがグラビトン・ライフルを連射する。だが突然変異体はその射線にボディを(えぐ)られつつも、練習機バイファムに(かじ)り付く。そして、ベキッ! バキッ! ボリボリボリッ! と音を立ててその機体を喰らい尽くす。

 奴の姿が変わる。少々全体的に丸みを帯びたスタイルになり、肩口や脚部に大型バーニアが着いた。そしてシロウの正確で精密な射撃を、そのバーニアを噴かして(かわ)す、(かわ)す、(かわ)す。流石に4射目は(かわ)し切れずに命中するが、多少身体に穴が開いたところで手近な獲物……ビショット軍生き残りオーラ・バトラーを喰らって再生してしまう。

 

 

『駄目だッ! グラビトン・ライフルじゃ、威力は高いが破壊範囲が狭え!』

 

特機(スーパーロボット)クラスの機体は、全機集合せよ。あの突然変異体を、最大威力の攻撃で吹き飛ばすんだ。他の面々は、機械獣の相手を頼む】

 

『『『『『『了解!』』』』』』

 

 

 一斉に、了解の返事が返って来る。しかし機械獣軍団を叩くために広域に展開していたためもあり、集結するにはもう少し時間か必要か?

 しかし奴は、また我々の眼前で召喚行為を行った。何故だ? いや、前回テスタロッサとマクドガルを召喚した時も、奴はオーラ・バトラーを喰らって……。もしや、まさか! 奴が召喚を行うためには、『異世界から来て、さほど時間が経っていない存在』を喰らって触媒にする必要があるとかじゃないだろうな!?

 

 いや、仮にそうだとしてもだ。触媒になるには、更なる条件が必要なのだろう。奴は数あるオーラ・バトラーから、前回はあの放棄されたボチューンを、今回はあのドラムロを、選んで喰らった。

 

 

『来ましたぞおおおぉぉぉ!! ワンセブウウウゥゥゥン!!』

 

『ワンセブン! 僕も来ました! ロボ、ロケットバズーカだ!』

 

 

ガオオオォォォン!!

 

 

 イワンのウラエヌスと、大作少年のジャイアント・ロボが間に合ってくれた。更にグレンダイザー、真ゲッター1、特機(スーパーロボット)では無いもののある意味それ以上に頼もしいマクドガルのテスタロッサが来てくれる。

 

 

『ワンセブン、待たせて済まない。ダイザー・ゴーーー!!』

 

『来たぜえええぇぇぇっ! いくぞ隼人、弁慶!』

 

『『応!!』』

 

『久しぶりに『キューブ』の力を使うぞ。眼、左手、右脚と機体修理分を、早めに返さにゃならん』

 

【これだけ集えば、大丈夫だろう。シロウは敵がまた一部分を切り離して逃亡しない様に、見張っていて欲しい。各機、全力であの突然変異体を叩くぞ】

 

『『『『『『了解!』』』』』』

 

 

 そして『わたし』のところには、シグコン・ジェットⅢが到着。重力子カートリッジを交換する。準備は整った。集まった各機が、その最大威力の攻撃を放つ。

 

 

『グラアアアビトオオオォォォン!!』

 

『スペース・サンダー!!』

 

『ストナアアアァァァ!! サァン……シャイイイィィィン!!』

 

『行けえええぇぇぇ!!』

 

『やりなさい、ウラエヌウウウゥゥゥス!!』

 

『撃て! ロボ!!』

 

 

ガオオオォォォン!!

 

 

 一瞬で突然変異体は、爆光に包まれて蒸発、爆散する。だがシロウがフォトン・ライフル、グラビトン・ライフル、リープ・スラッシャーを連射した。

 

 

『ちっくしょ、()けるんじゃねえ!』

 

 

 見遣ると、バイファムの脱出ポッドと同型の機体が、4機ばかり空中を飛翔している。あの突然変異体が、最後の瞬間に射ち出したのだろう。シロウはそれを必死になって射落とそうとしているが、さすがにバイファム系のメカである。脱出ポッドに過ぎないはずなのに、機動性が異様に高い。

 ようやく4機のうち2機をシロウのヒュッケバインNextが叩き()とした。しかしながらもう2機は、遁走する。

 

 

『ちっくしょう、逃がすかあ!』

 

『この一撃で!』

 

 

 そこへ駆けつけて来たジュドー君のジェダと、アムロ大尉のリ・ガズィBWSがそれぞれビームを放つ。果たしてアムロ大尉機が放ったメガ・ビーム砲は脱出ポッドを撃破する。しかしジュドー君のジェダのビームライフルは……。その脱出ポッドの周囲に張られたオーラ・バリアに阻まれて脱出ポッド本隊には届かない。

 

 

『えー!? な、なんであんなメカメカしいのにオーラ・バリアあるのさ!』

 

『しまった! 奴は先にボチューン、今回にドラムロを取り込んでいた! オーラ・バトラーとしての能力もあるんだ!』

 

 

 アムロ大尉の言った通りだろう。まずい、逃げられてしまう。……しかし、事態は更に最悪の斜め上を行った。奴は、奴の一部である脱出ポッドは、ゲア・ガリングの残骸の一部である、千切れた右下部分パーツに突っ込んで行ったのだ。

 ゲア・ガリングのパーツ、長さ700m弱はあろうかというその残骸に、ウネウネと血管の様な模様が走る。そしてベキベキと音を立てて、その巨大な残骸は内側に折りたたまれるかの様にサイズを縮めて行った。ソレは、全高100mぐらいのサイズの巨人機械に姿を変える。

 

 皆が悔し気に語った。

 

 

『ちくしょう、最初からやり直しかよ』

 

『奴の中に折りたたまれて消えた質量分は、何処にいきやがったんだ』

 

『万が一、ソレがぜんぶエネルギーに変わったとしたら、ヤバいな』

 

『それは流石に無いんじゃないか? あ、いや、そうでない事を祈りたい……』

 

 

 急ぎ『わたし』は、最後の重力子カートリッジに交換する。これであと重力子砲(グラビトン)は1発しか撃てない。だがマジンガーチーム、それにシャア大佐たちも最後の機械獣を片付けて、こちらにやって来てくれた。火力面ではおそらく足りるだろう。

 そして『わたし』は、ブライト准将に通信を入れる。

 

 

【ブライト准将、あの突然変異体にはグラン・ガランとゴラオンのオーラ・バトラー隊は近寄らせないで欲しい。奴に喰われると、まずい事になる可能性がある】

 

『こちらラー・カイラム、ブライトだ。了解した、徹底させる』

 

 

 うん、バイストン・ウェル勢のオーラ・バトラーを喰われてしまうと、仮説が正しければ奴は並行異世界から何かを召喚できる様になる可能性がある。……いや、待て。奴は今しがた、『何』を喰らった?

 

 ……しまった! 奴はもしかしたら、もう既に……!

 

 次の瞬間、あの突然変異体の眼前に光の柱が立つ。間違いない、召喚だ。奴は今しがた、『ゲア・ガリングの残骸』を喰らいやがった……!! もし『わたし』の仮説が正しかったとして、あれだけ大量の質量の中には、『触媒』として必要な条件を満たす部分が残されていてもおかしくは無い!

 

 光の柱が収束し、そして消滅する。そこに残されていたのは、1人の老いた男だった。大地に横たわるその男は、意識が無い様子である。いや、命があるかどうかすらも、判然としない。

 

 ……!! あの、男は!!

 

 全力でのダッシュ。『戦闘飛行ワンセブン』形態の全力をもって、『わたし』は前進する。そしてその男の身体を周囲の地面ごと掴み上げて、突然変異体の前から()(さら)った。そして離脱……できない。

 離脱しようとした『わたし』の胸板に、突然変異体が大きく口を開けて噛みついていたのだ。だが『わたし』の装甲板は、噛みつかれた程度で損傷するほどヤワではない。『わたし』は振りほどこうとする。

 

 !?

 

 

『ワンセブン!!』

 

『ワンセブン、逃げろ!!』

 

【いかん、こいつは……。『わたし』を喰らうつもりだ。こいつの口の中から、粘液状の組織が胸板に貼り付いて、融解、浸食しようとしている】

 

 

 男を持っていない右拳を振るい、『わたし』は突然変異体を何度も殴りつける。だがこいつは離れない。まずい、この男……この『人物』は、何が何でも喰らわせるわけにはいかん。彼が喰らわれたら、この突然変異の怪物が、どれだけの力を得てしまう事か。いや、それは『わたし』が喰らわれても同じことだ。なんとかして脱出しなくては……。

 

 

「……気合を入れんか! この馬鹿者めが!」

 

 

 !? この叫ぶ声は!?

 

 

「でかい図体をして、そして気にも似た凄まじい力を宿しておるくせに、それをまったく使いこなしておらん! この未熟者め! 気合だ、気合さえあればこの様なDG細胞モドキになど浸食されるわけがあるまい! ……こうするのだ!」

 

 

 『わたし』の左掌の上で、老齢の……いや、あまりの苦難にそう見える様になってしまっただけのその男は叫ぶ。彼は凄まじいまでの『力』を発し、身に(まと)う。機械的な計測器では、捉えられるかどうかも怪しいその『力』だが、『わたし』には強く感じられた。……そうか、『そうすれば』いいのか!

 そして『わたし』は、見せられた手本の通りに、自らの霊力を変換、物理的な『(エネルギー)』にして機体(ボディ)(まと)う。全身のサイコフレームが反応し、その『力』を増幅する。

 

 ……『わたし』に喰らい付いていた、あの突然変異体は、あっさりと吹き飛ぶと後ろ向きにひっくり返った。仲間たちの機体が、駆け寄って来る。

 

 

『無事か!』

 

『びっくりしたぜ、何やったんだ!?』

 

【それは後だ。まず、奴を叩いてしまわないといけない】

 

『了解だ!』

 

 

 そして我々の、全開の火力が突然変異体へと叩きつけられる。

 

 

『グラアアアビトオオオォォォン!!』

 

『『『トリプル・バーニング・ファイヤー!!』』』

 

『スペース・サンダー!!』

 

『ストナー・サン・シャイイイィィィン!!』

 

『とどめだ!!』

 

『この一撃で!』

 

『全開射撃だ、喰らってくたばれ!!』

 

『焼き尽くせ、ウラエヌウウウゥゥゥス!!』

 

『やれ! ロボ!!』

 

 

ガオオオォォォン!!

 

 

 再度火柱が上がり、突然変異体は一瞬で爆散した。だが、『わたし』には感じられる。あの突然変異体は、まだ死んではいない。左掌の上に座す男も、難しい顔をして語る。

 

 

「残念じゃが、逃げられてしまった様じゃな。直前に、奴の気配が2つに分離して、片方を囮に残してもう片方が、地中深く潜って逃げて行くのが分かった」

 

『な、なんだって!?』

 

『これだけやってかよ……。しぶといやつだぜ』

 

 

 その場の全員が意気消沈する。だがそうもしていられない。

 

 

【まだ戦いが終わったわけではない。ビショット軍の残存兵力を、まずは最後まで……】

 

『弁慶! ワンセブン! 戦闘中止だ!』

 

 

 その時、ブライト准将から通信が入った。戦闘中止命令だ。

 

 

『今のお前たちの戦いを見て、完全に心折れたらしい。ビショット軍の生き残りども、降伏を申し出て来た。本当は受け入れる必要は無いんだがな。最初に戦闘に入る前に、こちらからの降伏勧告を蹴っている事だし。

 しかしそういうわけにも行かん。とりあえず武装解除して拘束、その後で連邦軍の北京基地に引き渡すしか無いな』

 

【我々は、どうすれば?】

 

『そちらはグラン・ガランとゴラオンのオーラ・バトラー隊でやる。諸君らはいちばん厳しいところを受け持ってくれた事だし、帰艦して休んでくれて構わん』

 

【了解した】

 

 

 さて、シグコン・シップに帰艦しようと向き直った時だ。左掌の上に座していた男が、ぐらりと傾くと口から血を吐く。『わたし』は音声で彼に話し掛けた。

 

 

『どうした! 何か病でも!?』

 

「うむ……。ワシは不治の病を(わずら)っておっての。いったんは死んだはずであったのだ。それが何がしか悪意の存在に、無理矢理召喚()ばれる声を聞いたのじゃが……。

 何の間違いか、止まった心臓がびっくりして動き出してしもうての。であるならば、ワシを無理矢理に召喚()んだ悪意の存在の喉笛(のどぶえ)に、噛みついて食いちぎってやろうかと思うておったのじゃ。なれど、やはり無理のようじゃの……。ごふっ」

 

 

 やはり、か。いや、出来得るならば『わたし』はこの人物を死なせたくない。

 

 

「ふ、ワシは既に満足して死を迎えた男よ。何の間違いか、黄泉路より舞い戻ってしまったが……」

 

『せっかく生き返ったのだ! それには何かの意味があるはずだ! 流されるな! 死に抗うんだ!』

 

 

 『わたし』は全力でシグコン・シップに向かう。あちらでは急患の受け入れ準備が整っている。なんとしても、それが本人の意志に反するかもしれない事であっても、『わたし』は彼を助けたい。

 

 この人物、東方不敗マスター・アジアを。




『銀河漂流バイファム』、形だけ参戦です。形だけ。練習機タイプのバイファムが召喚されて、喰われました。突然変異体が得た力は、バーニアによる高機動性と、そして緊急時用脱出ポッドでの脱出機能。脱出ポッドとは言っても、それ自体が突然変異体の身体の一部なのですがね。

そして『機動武闘伝Gガンダム』から東方不敗マスター・アジア参戦です。でも機体なし。仮に本人があの突然変異体に喰われていたら、突然変異体が流派東方不敗の技を『形だけ』でも会得いたします。召喚当初は意識がほぼ無かったので、融合捕食に抵抗できないかも知れません。でもぎりぎりで目を覚まして、融合捕食してきた突然変異体を吹き飛ばしたかも。

そして召喚ガチャのコインに相当する物に関する、ワンセブンの考察。異世界から比較的近い時期に漂着した存在そのものが、召喚の触媒として必要だと言う『仮説』を立てました。ただ、突然変異体はその中でも、けっこうえり好みをしている模様です。
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