大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第039話:野望の男、その終焉

 今『わたし』たちのシグコン・シップは、単艦行動をしている。これは前回のゲア・ガリング戦と同じく、ドレイク軍の退路を断つ意味合いがあるのだ。

 本隊であるラー・カイラム、真ドラゴン、そして真ドラゴンに連結されたグラン・ガランとゴラオン、その他オーラ・シップ多数が、半円状の陣形で敵の北から襲い掛かる。そしてそれに蓋をする様な形で、『わたし』たちシグコン・シップ隊が南から攻撃開始するのだ。

 

 

『今回も俺たちがよ、一番危険なところを受け持つんだな』

 

『力量を評価されてると思った方が、気分的にはいいだろうな』

 

 

 格納庫のヒュッケバインNextに搭乗して待機中のシロウと話しながら、しかして『わたし』の『(センサー)』は艦の前方を見据える。ドレイク軍はビショット軍よりも、手ごわいであろう事は予想がついていた。その点からすると、面倒な戦いになるであろう。

 しかしながら地上はアリゾナの内でも砂漠地帯であり、地上への流れ弾を心配しなくても良さそうなのは幸いだ。

 

 

『さて、今回はショウたちや銀騎士(シルバー・ナイト)こっちのチームにいねえから、その分も気張らねえとな』

 

『うむ。今回は新たに生産したSFS(サブフライトシステム)、ベースジャバーを用意したが、上手く使ってくれよ?』

 

『任せやがれ。完璧だぜ』

 

『ジュドー君のサイコΖΖガンダムも、今回がデビュー戦だ。無印ΖΖガンダムの頃からすれば、再デビュー戦と言うべきかもしらんが』

 

 

 うん、そうなんだ。とうとう出来たんだ、サイコΖΖガンダム。変形合体機能はオミットしたが、その分出力も機体強度も装甲厚もかなり向上しているし。何と言ってもフル・サイコフレーム機だ。ジュドー君のNT《ニュータイプ》能力と相まって、どれだけの破壊力を示すやら。ちょっと怖い気もする。

 

 

『ヒュッケバインNextにも、アレは取り付けてくれたんだろ? 人工(アーティフィシャル)気力(オーラ)発生装置(ジェネレーター)

 

『ああ。どんな感じかね?』

 

『今のところはイイ感じがしてやがる。フル稼働したら、もしかしたらちょこおっと振り回されるかもしれねえが、まあ許容範囲だろ』

 

 

 まあ、機体に余裕があったんで人工(アーティフィシャル)気力(オーラ)発生装置(ジェネレーター)を載せてみたんだが。まだシロウの技量は、マスター・アジア師匠は当然として、一般のガンダムファイターレベルにも遠く及んでいないらしい。だから今の段階では、無駄とまでは言わないがそこまで有効な装備とも言い難い。

 まあ、それはそうだよな。例えばあの『機動武闘伝Gガンダム』主人公のドモン・カッシュは、幼少期にマスター・アジア師匠と出会って成人まで鍛えぬいて来たんだし。強化人間として基礎的な身体が出来ているとは言え、1週間程度の教導ではそうそう超人レベルには届くわけが無い。かろうじて気を感じる事に成功しただけでも、驚くべきことだ。

 

 同じことは『わたし』にも言えるはずなんだが……。なんか、気とか霊力とか使うコツを会得してしまったみたいなんだよな、以前の経験から。機体(からだ)は鍛えても筋肉とか付くわけないから、それは超生産能力による改良に頼るしか無いんだが。

 だが、なんかあと少しで、シャイニングフィンガーに届きそうな感覚がある。基本技である光輝唸掌なら、もしかしたら使えるかも知れない。まあ、実戦でぶっつけで使うつもりなど無いが。

 

 でもいつか、マスタークロスとか使ってみたい。いや、マスターガンダムで使うからマスタークロスなんだ。『わたし』だとワンセブンクロス、か?

 

 ……!? ……来たか。『わたし』はシグコン・シップ全艦に放送する。

 

 

『センサーでウィル・ウィプス及び随伴オーラ・シップ群を確認! オーラ・バトラー多数を伴っている! 敵艦隊はまっすぐこちらへ全速移動中! 機動部隊各機は機体搭乗の上、発進準備! 繰り返す! センサーで……』

 

 

 いよいよだ。ドレイク軍、いつまでも地球で暴れてもらっては困るんだよ。消えてもらうぞ。

 

 

 

*

 

 

 

 激しい戦闘が続いた。敵の本陣であるウィル・ウィプスは後方に座し、そこから動かない。その向こうからはラー・カイラム、真ドラゴン、真ドラゴンより分離したグラン・ガランとゴラオン、及び多数のオーラ・シップ群が凹状の陣形を取ったまま、ウィル・ウィプスを半包囲下に置こうと迫り来る。

 敵はそれはさせないとばかりに、包囲の蓋となるべく位置取りをしているシグコン・シップに攻撃を集中させている。ラー・カイラム他の本隊に対しては、最低限の機体を出して防戦に努めているのだ。なんとしてもシグコン・シップ隊(われわれ)を撃破し、そこから逃走を図るつもりなのだろう。

 

 

『妙だな?』

 

『ああ、カミーユさん。なんか敵の総大将だけど……。気配が薄いっつうのか』

 

『それは俺も感じていた』

 

 

 カミーユ君、ジュドー君、アムロ大尉の3人が不思議がっている。と言うか、それは『わたし』も感じていたんだ。あまりにウィル・ウィプスの気配が薄い……。まるで、総大将が乗っていないかの様だ。……!? まさか!?

 

 

【シャア大佐、意見を伺いたい。仮にウィル・ウィプスが囮だとしたら、どうなる?】

 

『……なるほど。気配が薄すぎると言う事は、つまり今回ウィル・ウィプスは捨て駒か。そこにドレイク・ルフトが居ると見せかけて、実はブル・ベガー型などの足が速い普通のオーラ・シップに移乗している可能性があるな。目的は、こちらの隙を突いての逃亡だろう。

 前線に居るどれかの艦に乗り込んで、ウィル・ウィプス自体は徹底的な防戦を行わせる。そしてこちらの戦力を引き付けさせて、ある瞬間に一気に逃走を図るという可能性はどうだ?』

 

【なるほど。その意見に同意しよう。しかしアムロ大尉やカミーユ君、ジュドー君でもドレイクの気配が読めないのは……】

 

『自分のオーラ(ちから)をコントロールできるのかも知れん。エレ女王などは、霊力により悪しきオーラ(ちから)を感知できるという話だったろう。だから自らのオーラ(ちから)を制御して低く保つ。その結果、副次的に我々の感覚からも逃れられた可能性がある』

 

 

 ち、厄介な。アムロ大尉らの強力なNT(ニュータイプ)感覚ですらも居所が読めないとなると……。いや、方法が無いわけでは無いな。

 

 

【各機、しばし『わたし』を護衛してくれ。しばらく演算に全力を傾ける】

 

『『『『『『了解!』』』』』』

 

 

 そして『わたし』は、前線に出ている敵機や敵艦の動きをチェックする。あくまで戦術的に、どの艦が指示を出しているのか、どの艦がより手厚く護られているか……。演算する。ひたすら演算する。

 

 『わたし』が中空で動きを止めた事で、好機と見たドラムロが、ビランビーが、レプラカーンが、次々に襲い掛かって来る。

 

 

『あめえんだ! ワンセブンはやらせねえ! 飛べ、リープ・スラッシャー!!』

 

『マスター! 右4時方向より敵機! ビランビー型、来ますです!』

 

『応、リサ! ビームが効かなくても、こいつなら意味は無いだろう! ロケットパーンチ!!』

 

『こんの、好き勝手やってくれちゃって!』

 

『おのれ、V2の光の翼で!!』

 

 

 シロウのヒュッケバインNextが、甲児のマジンガーZが、ジュドー君のサイコΖΖガンダムが、クロノクル氏のV2ガンダムが、次々に敵機を撃墜する。その間にも、敵陣後方では深々と斬り込んだショウと銀騎士(シルバー・ナイト)の2機のビルバインが、ツイン・オーラアタックをウィル・ウィプスにお見舞いしている。

 時間は無い。ウィル・ウィプスが沈んだら、こいつらはその瞬間を見計らって、逃走する。それよりも先に、ドレイク・ルフトの居る艦を見つけなければ。『わたし』はひたすらに演算する。演算する……。これらの、どれか、か?

 

 

【各機、ポイント01-237-XA、ポイント08-245-XC、ポイント09-119-MR、ポイント11-089-DW、ポイント24-337-TEの5隻のブル・ベガー型オーラ・シップを撃沈せよ。先頭から順に、ターゲットA、B、C、D、Eとする。

 この5隻が特に手厚く護られており、同時に周辺部隊の指揮を担っている模様。これらの(いず)れかに、ドレイク・ルフトが乗艦していると思われる】

 

『『『『『『了解!!』』』』』』

 

 

 『わたし』は、一番手近なターゲットDに目標を定め、ミサイルを撃ちつつ殴りかかった。『わたし』の格闘技術は、マスター・アジア師匠に師事してから飛躍的に向上している。以前は質量に任せて大威力の拳や蹴りを見舞うだけであった。しかしながら今現在、拳の威力が以前の蹴りに匹敵するパワーを引き出せており、蹴りは更にその数段上である。

 ターゲットDのブル・ベガー型オーラ・シップは爆散する。『わたし』の『(センサー)』に、ターゲットAの艦がサイコΖΖガンダムのハイパー・ビームサーベルで輪切りにされるのが映った。あと残るは3隻。

 

 そして後方に控えていたウィル・ウィプスが、いかにも慌てた様子でこちらの前線に出て来る。オーラ・バトル・シップだけあって足は遅いが、射程距離は長い。すぐにこちらまで射線が届く様になる。オーラ・キャノンやハイパー・オーラ・キャノンが味方機を(かす)めた。

 

 

【ウィル・ウィプスが出て来た。やはり残り3隻の中に、ドレイクが居ると思われる】

 

『いや、見つけたぞ!』

 

 

 アムロ大尉の声が響く。うん、『わたし』にも感知できた。ドレイクの艦が攻撃を受けて、開き直ったのだろう。周辺一帯を覆い尽くすような、『機動戦士ガンダム』のアニメで少年時代のアムロ大尉が、ビグザムを倒したときにドズル・ザビの背後に()た様な、あんな感じの影が()えた。ターゲットBのブル・ベガー型オーラ・シップだ。

 同時に何と言うのか、支配欲に満ち満ちた悪意のこもった気を……。これがオーラ(ちから)なのかも知れない。オーラ(ちから)は一種の生命エネルギー、気もまた生命のエネルギーであるからな。ほぼ等質か、近い存在であるはずだ。現に疑似オーラ(ちから)発生機を参考にして、『わたし』製の人工(アーティフィシャル)気力(オーラ)発生装置(ジェネレーター)は造られているし。

 

 

【『わたし』を含めて足が速い機体は、おそらく逃走するであろう位置にいる敵機を叩きつつ、猟犬として中央に追い込む。真ゲッター1を主軸にして、グレンダイザーとジュドー君のサイコΖΖガンダムでドレイク・ルフトの首を獲ってくれ】

 

『おおう、了解だ! 任せやがれ! ゲッタアアアァァァ、トマホオオオゥク! こいつで艦ごと、ぶった切ってやる!』

 

『了解、グレンダイザーはスペイザーで、万一小型のグライ・ウィングやオーラ・バトラーでの脱出に備える』

 

『サイコΖΖガンダムも、ハイメガ何時でも撃てる様に……。って、脱出機、確認! ハイメガキャノン、広域発射!! いっけえええぇぇぇ!! 最大出力!! うおおおあああぁぁぁっ!!』

 

 

 ドレイクの影は、まだ消えてはいない。ターゲットBのブル・ベガー型オーラ・シップは、ゲッタートマホークの連撃により大破し、ゲッタービームを浴びて炎上しているが、必死で機位を制御して不時着を試みている。

 

 

『往生際が悪ぃんだ!! 沈めえっ!! ストナアアアァァァ、サァンシャイイイィィィンッ!!』

 

 

 それはオーバーキルでは。そう思った瞬間、敵全体の動きが変わった。全方位に向けてバラバラに逃げ出そうとしている。そして次の瞬間、ターゲットBのブル・ベガー型がストナー・サンシャインで吹き飛び、ドレイクの放つ影の様な気配と気とが消滅した。

 なるほど、ドレイクめ。最期(さいご)にこちらに対し、一番嫌な事をしてくれたな? いや、単に自分の部下を1人でも生き残らせようと言う部下想いの心だったかも知れんが、奴め。部下をバラバラに逃げ出させやがった。なるほど、これならばもしかしたら、誰か1人でも逃げ出せる可能性はあるだろう。

 

 可能性があるだけで、高くは無いんだがね。

 

 周辺空域は、既にグラン・ガランとゴラオンから発艦した味方のオーラ・バトラー隊が固めている。更には我々のうちで機動性が高く、足が速い機体が猟犬となって敵の動きをコントロールしている。

 今また、ブル・ベガー型オーラ・シップが、真ドラゴンのゲッタービームで爆発炎上した。ラー・カイラムもメガ粒子砲を連打しつつ前進している。グラン・ガランが敵中に突入し、その特徴的な形状を活かして全方位へ緻密な対空火力を送り込んだ。同時にこちらの戦線からは、シグコン・シップがショック・カノンを発射しつつ突入を図っている。

 

 そしてついに、(あるじ)の既にいないウィル・ウィプスが、ゴラオンのオーラ・ノバ砲の直撃を中央部に受けた。ウィル・ウィプスは、以前ハイパー化したトッドの一撃を受けて大穴が開いた部分を中心に、ぐずぐずに崩れて小爆発を繰り返し、地上の砂漠へと落下する。

 

 閃光が走った。

 

 ウィル・ウィプスは、一際大きな爆発を起こす。残されたのは、ぐしゃぐしゃになった骨組みと装甲の一部である。それはまるで、巨竜の(むくろ)の様に見えた。今まで何としても逃げ延びようと必死の努力をしていた幾多のオーラ・バトラーが、オーラ・ソードをはるか下の砂漠に落とし、両手を上げる。ブル・ベガー型オーラ・シップが投降の信号弾を打ち上げる。

 戦闘開始前に、ラー・カイラムのブライト准将が降伏勧告を行っているので、それを蹴った相手の降伏を受け入れる必要は無いと言える。言えるのだが。まあ仕方あるまい。降伏を受け入れなくて決死の逃走を図られて、万が一にも少数でも逃がしてしまえば、どうしようもなくなる。

 

 ふと思いついて、シグコン・シップの艦橋(ブリッジ)の様子を『()』てみる。艦から分離しているため、ちょっとばかり集中しないと()えないのだが、一応チェックしておいた方がいいかと思ったのだ。

 電童チームとマスター・アジア師匠が、艦橋(ブリッジ)で主スクリーンに映し出された外の様子を見ている。北斗少年、銀河少年は真剣な瞳で、何がしか考えつつも、僅かでも見逃すまいと必死でスクリーンを見つめる。マスター・アジア師匠は車椅子に座しながら、そんな2人の肩に両の掌を置いていた。




はい、ドレイク・ルフト退場です。実際戦力差が大きいですからね。元々のTVアニメでも、ゴラオン隊はゲア・ガリングと、グラン・ガラン隊はウィル・ウィプスと、完全に相打ちに持っていけてましたからね。その両方+ロンド・ベル隊+ワンセブンのシグコン・シップ隊ですから、最初からドレイク軍には勝ち目はありませんでした。
いや、ゲーム的に言うならばモブのオーラ・バトラー隊は画面内には登場しなくて、主人公たちの部隊だけがマップ上で戦っているんでしょうけれど。

ドレイクは今回、最初からウィル・ウィプスを捨て駒にして逃げ出す事を考えていました。そして敵(主人公部隊)による包囲網の外縁近くに出るオーラ・シップに乗り込んで、ウィル・ウィプスを敵が沈めた一瞬、その瞬間は流石に緊張感が切れてくれるだろうとの半ば願いにも似た予測の元、その時点で残存していた戦力を纏めて一斉に離脱するつもりでした。
……シャア大佐に読まれていたわけですが。

で、今現在スプリガン隊(元ゼラーナ隊)はグラン・ガラン隊に属しています。リムル嬢が出て来ないと言う感想がありましたが、彼女はちょこっと過労状態でまだ戦闘に出られる状態じゃありません。機体もビアレスですし、最低限色を塗り替えないと敵味方の識別ががが。何にせよリムル嬢は、スプリガンの船室で寝込んでます。

ヒュッケバインNextに載せた人工(アーティフィシャル)気力(オーラ)発生装置(ジェネレーター)ですが、アレはアレです。強化パーツ扱いです。まだヒュッケバインNextの強化パーツスロットが空いてたので、突っ込みました。

でもって、バイストン・ウェル勢の脅威はまだ終わりじゃありません。まだ彼女が残っています。七面倒くさい彼女が。
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