今、『わたし』たちの眼前では、凄まじいまでの高機動戦闘が繰り広げられている。片方は、リ・ガズィBWS。シャア大佐の機体だ。もう一方は、レプラカーン。聖戦士ジェリル・クチビ操るオーラ・バトラーである。
シャア大佐は、よくあの直線速度は速いが小回りが苦手なリ・ガズィBWSで、あれほどの高機動戦闘を行っていられるものだ。一方のジェリルも、機動戦に向かないはずの重装オーラ・バトラーであるレプラカーンで、なんであんなに立ち回れるんだ。
奴はビームキャノンはオーラ・バリアで防ぎ、ミサイルはぎりぎりで
シャア大佐はシャア大佐で、嵐のごとく撃ち込まれるオーラ・キャノンやフレイ・ボムを
ただ、これではあまりにドッグファイトが激し過ぎて、支援攻撃もできない。そこへブライト准将の命令が飛ぶ。
『レプラカーンは、シャアに任せておけ! 他の面々は元々のジオン残党部隊を叩いてしまうんだ!』
『『『『『『了解!!』』』』』』
そしてショウと
負けてはいられない。『わたし』もまた、『飛行ワンセブン』形態でギラ・ドーガの群れにミサイルを乱射しながら突っ込んで行き、敵中で『戦闘ワンセブン』に変形して周囲に破壊の嵐を撒き散らす。『わたし』の背中はシロウのヒュッケバインNextが護ってくれる。今も忍び寄っていたギラ・ドーガをビーム・ソードで唐竹割にしたところだ。
ブライト准将の指示が飛ぶ。
『レプラカーンが発進してきたおかげで、擬装されていた奴らの基地が判明した! 最寄りの機体は、基地を叩き潰せ! 二度と使えない様にしろ!』
『了解! 叩け、ジャイアント・ロボぉ!!』
ガオオオォォォン!!
ジャイアント・ロボが山岳に擬装されていた奴らの基地の前に着陸すると、必殺の全力パンチを見舞う。山肌に鉄拳が叩き込まれ、内部から爆炎が噴き上がった。岩盤が剥離し、内部の施設が外部に晒される。大作少年が叫んだ。
『イワンさん!!』
『任せたまえ、草間大作うううぅぅぅ! これで! 最後だあああぁぁぁ!!』
ウラエヌスのリング状ビームが、基地施設を舐めて行く。大作少年は、その様子を硬い表情で眺めている。しかしながら、下唇を噛み締めてはいるものの、動揺はしていない。燃える基地を見つめる彼の瞳にどんな惨劇が映っているかは、容易に想像がつく。だがそれでも彼は動揺を顔に出さない。その『強さ』が、哀しい。
『わたし』はふと思い立って集中し、シグコン・シップ
『これが……。覚悟、ですか』
『そうじゃ。あやつほど強固な覚悟は、そうそう誰も持っておらぬじゃろうがな。鉄牛と村雨からのまた聞きじゃが、あやつは下手をすると今の小僧どもよりも幼い頃合いに、目の前で唯一の家族である父親を殺害されたそうじゃ。そして虫の息の父親より、父親が開発した、あのジャイアント・ロボを託された』
『『……』』
『あやつの覚悟は、じゃが復讐のための覚悟では無い。それも無論いくばくかはあろうが。しかし、あやつは大義のため、父親を殺したBF団の者とさえも手をたずさえて、戦っておる。……まあ、お前らにあれほどの覚悟を持てとは、言わぬ。それは逆に、辛すぎる事ゆえな。
ただ、勘違いしてはならぬのは、覚悟は他人のための物では無い。小僧ども、お前らのための覚悟だ。降りかかる苦難に、罪の意識に、潰されぬためのな』
『『はい……』』
そして『わたし』は、シグコン・シップ
『てめえらあああ!! やってくれたねえっ!?』
『……』
ジェリルのレプラカーンから、オープン回線で怒声が響き渡る。だが対するシャア大佐は、無言だ。ただし
レプラカーンは、シャア大佐のリ・ガズィBWSを真正面から迎え撃つつもりで、オーラ・ソードを振り上げた。次の瞬間、シャア大佐が叫ぶ。
『カミーユ!!』
『了解です! ベースジャバー、ユーハブコントロール!!』
『アイハブコントロール!!』
絶妙のタイミングで、カミーユ君のサイコΖガンダムが、乗っていたベースジャバーから飛び降りて、そのベースジャバーをシャア大佐に渡す。シャア大佐はリ・ガズィをBWSから切り離し、後方から迫るベースジャバーを見もせずに、それに飛び移った。そしてグレネードを連射。
一方のジェリルのレプラカーンは、飛び込んで来るBWSをオーラ・ソードで真っ二つにする。だが彼女には、BWSの背後から飛んでくるグレネードは見えなかった。空中に広がる爆炎。それを背景に、ベースジャバーに乗ったシャア大佐のリ・ガズィと、ウェーブライダー形態に変形したサイコΖガンダムが飛翔する。
アムロ大尉が叫んだ。
『まだだ、シャア!』
『わかっている!』
(ククク……。あははは……。はははははは!!)
そして周囲に哄笑が響き渡る。雷を纏い、段階的に巨大化する赤い機体。それはあっと言う間に『わたし』と同格に、そして一回り大きく、二回り、三回りと脈動するかの様にサイズを拡大して行った。
(はぁーっはっはっは!! 敵が小さく見える! ってことは、あたしが勝つってことだよねえ!!)
強烈な思念が、オーラ
『うぉおおおぉぉぉあああ!! 勝てるぞ!! 勝つぞ!! 勝ったぞ!!』
『うわあああぁぁぁ!! 万歳!! 万歳!!』
『『赤い彗星』万歳!! 俺たちの女神、万歳!!』
『なにやってんの!! 目を覚ませよ!! こんなの、こんなのは!! ……こんの、いっけえええ!! ハイメガキャノン、最大広域発射あああぁぁぁ!!』
ジュドー君のサイコΖΖガンダムが、ハイメガキャノンで多数のギラ・ズール、ギラ・ドーガを焼き払う。しかしそれでも敵の士気は落ちない。
『こ、これがハイパー化? 外から見たら、こんなんだったのかよ?』
『い、いや。お前……じゃなかった、トッド・ギネスのハイパー化は、それでも『街を護りたい』という想いから為された事だった。これは、これは違う。憎悪と、怒りと、殺人衝動と! そしてそれによる快楽を求めての、悪しき発動だ! だ、だが!』
『何をしている! 全艦、巨大レプラカーンに砲撃開始! 機動部隊は
ブライト准将が、檄を飛ばす。各機はその命に従い、配置を整えようとした。その瞬間である。
(見つけたよ! てめえが
巨大レプラカーンが、ラー・カイラムへ向かい突進した。ブライト准将を『見つけ』たのだろう。だが、そうはさせん。『わたし』は『戦闘飛行ワンセブン』形態に変形すると、シグコン・シップ甲板へと飛翔。同時にケイン副長に命じた。
【ケイン副長、艦を前に出すんだ。ラー・カイラムと巨大レプラカーンとの間に割り込め。心配ない、敵の対処は『わたし』がやる】
『了解! 操舵手、シグコン・シップ前進!!』
『了解! こうなったらヤケクソだぁっ!!』
シグコン・シップは『わたし』を甲板前方に載せたまま、ラー・カイラムと巨大レプラカーンとの間に割り込む。オーラ
(ああん!? 邪魔なんだよぉ!! なら先に沈めてやるさ!!)
巨大レプラカーンは、その手に持った巨大なオーラ・ソードを振り上げる。そしてシグコン・シップの真正面から振り下ろした。『わたし』はそれに真っ向から立ち向かう。
そして『わたし』の掌には、強烈な……激烈な気の輝きが宿る。流派東方不敗基本技、
迫る巨大なオーラ・ソード。その刀身だけで、『わたし』の全高を余裕で超える。それにタイミングを合わせ、『わたし』は輝く双掌でソレを挟み受けた。同時に全身のバネで衝撃を受け流し、気とサイコフレームによる強化で余剰ダメージを拡散相殺。
『わたし』は音声に出して、宣言する。
『流派東方不敗、基本技
無刀取りってのは、真剣白刃取りだけじゃなくて、無刀で『
(馬鹿な! 馬鹿なあっ!! 放せ! 放しやがれえええぇぇぇ!!)
『……チェエエエエエエストオオオォォォッ!!』
そして『わたし』の気の込められた双掌が、巨大なオーラ・ソードを砕く。ハイパー化とは、オーラ・マシンにより増幅されたオーラ
つまりこの巨大なオーラ・ソードは、ジェリルの意志力……攻撃の意志そのものがオーラ
(ぎゃああああああぁぁぁ……!!)
次の瞬間、巨大レプラカーンは全身からジェットの様に目に見えるほど濃密なオーラ
その中央部から、元々のレプラカーンの機体が現れて落下を始める。そこへシャア大佐のリ・ガズィがベースジャバーで突っ込み、ビームサーベルを振るった。レプラカーンは、真っ二つになり、直後爆散する。アムロ大尉がシャア大佐に呼びかけた。
『シャア……』
『ああ。奴は……。既に『死んで』いた。わたしがやったのは、残余の力で動いていただけの肉体を、介錯しただけだったな……』
既に残敵の掃討も終わっていた。敵には稼働する
ブライト准将が、周辺を固めている連邦軍に連絡し、敵生存者の拘束や残余の機材の接収などを依頼した。我々は連邦軍の部隊が来たら引継ぎをして撤収し、北米へと戻らなくてはならない。
しかしながら、2例のハイパー化現象のデータを纏めて、ゴップ議長とゼット・ライト氏に送らなければならないな。そして彼らの造るオーラ・マシンなどには、オーラ
今のうちに、資料と設計書を纏めておこう。事故が起こる前に、一刻も早い方がいい。トッド・ギネスの様な善意でも、ジェリル・クチビの様な悪意でも、高ずればハイパー化を起こしかねないんだ。
*
ゴップ議長とゼット氏に、ハイパー化やオーラ・バリア関連現象のデータ類、レポート類を纏めて送り付けた。更にオマケとして、『わたし』設計のオーラ
どうやら向こうでも、初歩のオーラ
ちなみにゼット氏は、オーラ
普通そこまで行くと、増長しそうな気もするのだが。しかし彼はゴップ議長に睨まれない様に、切り捨てられない様に、と必死になって忠実に職務に邁進しているとの事である。やはりショット・ウェポンとミュージィ・ポーの件はトラウマになっていたか。
そしてシャア大佐の、新しい名前も決まった。クィグ・ケアード大尉、だそうだ。階級の大尉は、当人がそんなに高い階級は不要だと言った事もあり、以前のクワトロ・バジーナ時代も大尉だった事から、そうなった。
ちなみにクィグはアイルランド語で『5』を意味する。キャスバル・レム・ダイクン、エドワウ・マス、シャア・アズナブル、クワトロ・バジーナに続く5番目の名前と言う事で、そうなったらしい。更に言えばケアードは姓のリストから、これも5枚目の一番上にあった姓を選んだだけらしい。
「そんなので良いのか、シャア?」
「アムロ、これからのわたしはクィグ・ケアード大尉だ」
「わかってて言っている。……過去を割り切る事は必要だろう。だが過去を忘れるのは、必要な場合もあるが……。だが今回は、駄目だと思う」
「……」
「だから、内輪だけのときはシャアで構わんだろう」
「……わかった」
アムロ大尉、厳しいのか甘いのかキッツいのか。だが最初の頃とは違い、少なくとも普通に話す様に努力をしているのは見て取れる。関係は、徐々に、徐々にではあるが、改善しつつある模様だ。
さて、今もなおグラン・ガランとゴラオンの改修は進んでいる最中だ。地球上での問題は、ほぼ片付いた。あの最近正式名称が決まった突然変異体、『マシンキメラ-001』の事を除けば……。
いや、ジェ・ガーンに決まらなくて本当によかった。うん。
とにもかくにも、2隻の改修が完了次第、宇宙へと向かわなければならない。手遅れに、ならない内に。そしてインベーダーどもと、最後の決着をつけるのだ。
今回、ジェリルはゲーム的には2回倒されてます。シャアのBWSを囮にした攻撃で1回。ここでハイパー化します。そしてワンセブンの
シャアの名前、決まりました。でも仲間内ではシャアのままです。あくまで対外的な名前って事で。
突然変異体の名前、決まりました。カッコ悪い名前にしようと頑張っていたのですが、感想欄で『それを連呼することになるから』と言われまして、愕然と。なので、ありきたりでフツーぽい名前に急遽変更いたしました。