今、『わたし』たちは軌道上でラー・カイラムが打ち上がって来るのを待っている。シグコン・シップ、真ドラゴンはまったくの単独で宇宙と地球を往復できるし、グラン・ガラン、ゴラオン、スプリガンの3隻は真ドラゴンやシグコン・シップに連結する事により、宇宙空間へ運ばれている。
唯一ラー・カイラムだけはドッキング部分の制約により、1G環境下ではシグコン・シップとも真ドラゴンともドッキングできないので、地上にある大規模宇宙基地クラスのカタパルトを使わないと軌道まで上がれないのだ。今回はキャリフォルニア基地のカタパルトを使い、軌道への打ち上げを行っている。
やがてはるか下から、ラー・カイラムの艦影がこちらの軌道に遷移してくるのが、
『済まないな、待たせて』
「艦の仕様による制限なんです。仕方ないでしょう」
『そう言ってもらえると有難いな。では今回の作戦を説明する』
そしてブライト准将は、我々に今回の作戦の概要を語る。作戦目標は、ザンスカール帝国のベスパ宇宙要塞であるカイラスギリーを攻略し、地球連邦軍の手に奪取する事である。我々の任務は、そのための陽動攻撃だ。おおざっぱに言えば、敵の戦力を我々が引き付け、その間にムバラク大将率いる本隊とリガ・ミリティアの部隊が要塞を攻略し占拠すると言う作戦である。
ちなみに宇宙要塞カイラスギリーは今現在、絶賛建設途中であるらしい。その目玉とも言えるものが、コロニーレーザーを凌ぐ威力の巨大ビーム砲『ビッグキャノン』だ。2隻の宇宙戦艦からエネルギー供給を受けて発射されるこれは、軌道上から直接地球やコロニーを撃てる代物である。
これがもし完成していれば、地球連邦政府は窮地に陥っていただろう。それ故に、幾度か攻略作戦が発動されていたのだが、これまでのところ駐留するベスパの部隊により、いずれも作戦は失敗に終わっている。
今回の作戦の最も大きな目的は、このビッグキャノンの奪取にある。連邦軍上層部の目論見としては、奪取したこれを用いてサイド2ザンスカール帝国中枢にある、エンジェル・ハイロゥを完全破壊するつもりなのだ。
無論、未だ建設中であるからには、奪取後の建設はこちらでやる事になるが……。上手く事が運べば、最短時間でエンジェル・ハイロゥを破壊する事が叶う。それ故に、以前までの作戦が必勝のつもりでなかったわけでは無いのだが、今回の作戦はそれこそ必勝を期した、乾坤一擲の一大作戦となっている。
ちなみに本隊の規模は、もし我々による陽動任務が上手くいかなくとも、真正面から宇宙要塞カイラスギリーを陥落せしめるだけの戦力を集めている。地上からも多数の戦力を引き抜いてまで、かき集めた戦力なのだ。ただしこの戦力は、そう簡単に消耗してしまうわけにはいかない戦力でもある。彼らにはこの後、対ガルファの防衛戦、そして将来の木星圏奪還作戦が待っているのだ。
『……と言う事だ。我々はまず、カイラスギリーのNフィールドより接近し、ベスパの部隊に攻撃をかける。そしてしばらく戦ったら擬装撤退し、敵の追撃を誘う。そこでSフィールドよりミノフスキー粒子に隠れていたムバラク大将
「陽動攻撃に敵が引っ掛からなかった場合は?」
『その時は擬装撤退を中止、本隊と合流して力攻めになる。上は、なんとしてでも今回でカイラスギリーを陥落せしめるつもりだ』
「しかし……。やりきれないな。敵は自分たちのリーダーたちが、インベーダーに寄生され、操られている事を知らないのだろう?」
デューク・フリードが語る。今回の作戦に先立って、我々の艦隊のメンバーたちには、ザンスカール帝国の中心人物たちがインベーダーに寄生されている『らしい』事が明かされていた。
『デューク・フリード、それは皆が思っている事だとも。ただし、その証拠はクロノクル氏の証言しか無い。我々は勿論のこと、彼の流した血の涙を信じるとも。だが、ザンスカール帝国の一般の兵たちを、納得させられるだけの証拠が無いんだ』
「それは……。いや、わかっているワンセブン。あのベガ星連合軍との戦いのときに、僕を温かく迎え入れてくれた第2の故郷である地球のため、そして戦う力の残されていない復興途中のフリード星のため。
機械帝国ガルファとの戦いの前に、まずはインベーダーに乗っ取られているザンスカール帝国を叩く。そして人類圏の戦力を1つにまとめて、ガルファに立ち向かえる態勢を整えなくてはならないんだ」
そして北斗少年、銀河少年が口を開く。
「皆さん。今回の戦いから、僕らも出撃します!」
「あ、あらためて、よろしくお願いしまっす!!」
その場の一同は、あるいは声を掛け、あるいはサムズアップやピースサインを送り、彼らを激励した。そして最近ようやく車椅子が要らなくなったマスター・アジア師匠が頷く。
「小僧ども。辛くなったら、お前たちの背中に背負っている物が……。お前たちに背負われているはずの者が、逆にお前たちを支えてくれる。その事を、そしてその事への感謝を、忘れるでないぞ」
「「はいっ!」」
北斗少年も、銀河少年も、たぶん潰れてしまう事は無いだろう。その事は、なんとなく確信できる。しかしこんな子供たちにそこまでの事を強要する立場ってのは、正直つらい、なあ……。
それはそうと、マスター・アジア師匠の乗機、建造を開始しないといけないな。いや、概念設計や基礎設計は既に完了しているんだ。あとは詳細設計だな。
モーショントレースシステムは、師匠のもとの世界と全く同じ物こそ作れなかったが、電童のコックピット技術を利用させてもらう事で、ほぼ同等のものは用意できたと思う。機体はマジンガー系技術とオーラ・バトラー系技術を転用して、流派東方不敗に適応できるようにし、あくまで基本は
我々の艦隊は、作戦宙域に向けて出立する。そろそろ艦隊の名前も、きっちり決めないといけないなあ。ロンド・ベル隊はブライト准将の直卒部隊、つまりはラー・カイラム隊の名前だからなあ。
*
そして作戦は開始された。作戦は上手く行ったと思う。『わたし』たちは最初敵中に突撃し、ある程度の戦果を得てから擬装撤退した。まるでこちらが、敵戦力の漸減作戦を取って居るかの様に、若干敵を削ってすぐに撤退すると見せたのだ。そして作戦の想定通り、ザンスカール帝国ベスパの部隊はこちらを深追いして来たのである。
こちらは『逃げようとして逃げ切れなかった』体を装って、『已む無く』敵を迎え撃つ陣形を取った。敵は猛然と襲い掛かって来る。ブライト准将の檄が飛んだ。
『よし、敵はかかったぞ! 奴らをカイラスギリーに帰すな! 通信士、レーザー通信でムバラク大将宛てに、暗号通信! 『アイナメ、カワハギ、マアジ、メバル、イレグイナリ』とな!!
レーザー通信中、当艦は機位を固定せざるを得ない! 直掩機は敵を通すな!』
『『『『『『了解!』』』』』』
グラン・ガランとゴラオンのオーラ・バトラー隊は、宇宙空間での戦闘は経験が無い。少なくとも今回は、面倒を見てやる必要がある。我々シグコン・シップやラー・カイラムの機動部隊の面々が、1機につきオーラ・バトラー4~5機を引き連れて小隊を構成し、手取り足取りではあるが敵を撃破して行く。
特に凄いのが、マジンガーチーム各機が率いる小隊だ。シロー君は子供の頃からの憧れの機体、マジンガーZを預けられて気力充溢しているし、鉄也もシロー君に負けてはいられないと奮起している。
そして何よりも、本邦初公開のマジンカイザーが物凄い。中距離ではターボスマッシャーパンチが唸りを上げ、遠距離には光子力ビームやギガントミサイルが炸裂する。近距離では両肩からダブルカイザーブレードを抜き放ち、敵が密集していると見るやダイナマイトタックルをブチかます。……いや、甲児。君だけ活躍したら、随伴のオーラ・バトラー隊が宇宙空間での戦闘に慣れられないんじゃないか?
更にそれに引けを取らないのが、サイコΞガンダムAとサイコΞガンダムCのアムロ大尉、
だがアムロ大尉機のフィン・ファンネルが、
そして『わたし』は一般のオーラ・バトラー隊ボゾン2機、ボチューン2機、そして特例的に電童1機という5機編制の隊を率いて、敵中に突撃していた。ゾロアット3機編制の隊が、行く手を阻む。
【全機、2対1で確実に仕留めろ。電童は『わたし』に付いて来るんだ】
『『『『『了解!』』』』』
そして『わたし』は先頭のゾロアットが右肩バインダーを展開し、ビームストリングスを射出しようとしたその機先を制し、開いたバインダーに掌底を叩き込む。ビームストリングスがショートし、敵機の右肩は粉砕された。
そこへ電童が疾風三連撃を叩き込む。ゾロアットの胴体は、ぐしゃりと
『わたし』は電童に通信を送る。テキストメッセージでは無い。音声を使う。
『北斗君、銀河君』
『あ、わ、ワンセブン……』
『へ、へへ。お、俺たちもやれるじゃんか……』
『無理はするな。泣きたかったら、泣いてもいいんだ。ただ……必ず歯を食いしばってでも、後から立ち上がれ。それができるなら、泣いてもいいんだ』
『『!!』』
くそ、本当ならば起きていい事じゃないんだ、こんな事。こんな子供が、こんな覚悟決めるなんて、早すぎるだろ。せめて18歳になって駅前でポンと肩を叩かれて、『君、いい身体してるね! 地球連邦軍に入らないか?』とか言われてからでいいじゃないか。いや、そんな勧誘してるか知らんが。
電童になんか、選ばれなければ。データウェポンに、よりによってフェニックスエールなんかに見込まれなければ。アニメ知識に頼るつもりは無かったけど、フェニックスエールって、7番目のデータウェポンって、北斗少年の脳内に隠れ潜んでやがるんだろ? だからこそ、電童が北斗少年と、そして隣にいた銀河少年を選んじまったんだろ?
やり切れないよなあ……。
『今日のところは、あとは『わたし』たちがやる。君たちは、もう充分頑張った。とりあえず落ち着くまでは、もう手を出すんじゃない。後ろに付いて来るだけでいい』
『『……はい』』
そして2人の少年は、静かに泣き始めた。『わたし』は次から次へ、敵を
……!?
これは……。
『ほ、北斗!?』
『あ!?』
……なんてこった。『わたし』のメインじゃない、サブの電子頭脳に潜んでいやがったのか、データウェポン……。こいつは確か……。ドラゴンフレア、だったな。確か属性は、『慈愛』、だったか。
お笑いだ。『わたし』の慈愛なんて、そんな大したレベルじゃない。こんな子供らに、人殺しをさせてしまうしか道を見つけられない様な、駄目な大人だ。その罪滅ぼしに、腹いせに、ザンスカール連中を叩き潰して回る様な、そんな駄目な大人だ。
『ファイルセーブ、ドラゴンフレア!!』
『……やったな、北斗。ここへ来たのは、絶対に無意味じゃなかった……』
『うん……。ワンセブン、ありがとう……』
北斗少年に、お礼を言われた事が……。ものすごく、辛かった。
*
戦闘終了後、北斗少年と銀河少年は気を失う様に倒れて眠りについた。よっぽど神経に重圧が掛かったんだろう。だが、それでも彼らは『折れ』なかった。そう、だな。起きたら美味しいものでもご馳走してやるか。
そう考えていると、
「ご苦労じゃったな、ワンセブンよ」
『ええ。正直、骨が折れた』
「この正直者めが。冗談めかして言っておるが、貴様の葛藤は手に取る様に分るわ。このポンコツめ。……本当に、ご苦労じゃった」
『……いや、これは『わたし』の役目だと前々から思っていたよ師匠。誰か他の者が任されたなら、決闘してでも任を奪い取ろうかとすら。『わたし』は弱いロボットだ。こういう事を他人任せにできるほど、『心』は強くない』
「ふ、そうじゃな。ワシも
そしてマスター・アジア師匠は、溜息を吐いて言う。
「こういう時に戦いに出られなんだのは、つらいのう……」
『機体の設計は、基礎設計まで終わっている。とりあえず概要に目を通して、問題点があったら言って欲しい。修正するので』
「うむ。肉体の方のリハビリも進めねばならんの。鉄牛と村雨、それにイワンの3人掛かりならば、この
『イワン氏は出撃したばかりだ。メンバーから抜いてやるべきでは』
「む? となると鉄牛と村雨により一層頑張ってもらうしか無いかの。奴らでは無く、噂に聞く九大天王や十傑集ならば、不足はなかろうと思うのじゃが。いや、それどころか少し厳しいかの? ワシはこれでも病み上がりじゃしな」
そんな話をしながら、シグコン・シップ含めた艦隊は、本隊の応援に赴くためにカイラスギリー方面へと航行するのだった。
*
シグコン・シップ
竜馬が唸るような声で語る。
「ってえと、あんだけコッチが陽動任務を完璧にこなしたってのに、本隊の方が作戦失敗したってぇのかよ」
『戦闘では勝利したのだがな。奴らめ、カイラスギリーのビッグキャノンを、未完成なのに無理やりに粒子加速器を稼働させた。オーバーロードしたエネルギーが暴走して、カイラスギリーの巨大粒子加速器2基は大爆発を起こして消滅。残された砲身だけではビッグキャノンとは言えん。粒子加速器が無ければどうにも使えんのだ。
カイラスギリー攻略そのものは成功した。しかし宇宙要塞カイラスギリーは崩壊、エンジェルハイロゥを狙撃するのに用いようとしていたビッグキャノンは粉砕。作戦目的は、果たす事ができなかった』
「なんてこったい……」
弁慶の呟きが、この場の面々の言いたい事を代弁していた。だがブライト准将は、決然と言葉を紡ぐ。
『この結果を受けて、地球上の連邦軍は更なる増派を決定した。今現在運用できる全戦力を以てして、何が何でもザンスカール帝国を打倒、エンジェルハイロゥも破壊するつもりだ』
『それしか無い、な。結局は奇をてらわない力押しこそが、一番安定した手段だ』
「ワンセブンの言う通りでしょう、ブライト准将」
『ああ。再度の作戦準備完了までは時間がある。それまでコロニー・ロンデニオンにて、補給と半舷休息にあたろうと思う』
そして我々の艦隊は、サイド1のコロニー、ロンデニオンへと向かう。『わたし』はマスター・アジア師匠と語らって、師匠が使う
*
やっぱり、やりやがった。何がと言われるかもしれないが、あのマシンキメラ-001だ。奴め、地球上の小規模宇宙基地に姿を現したんだ。そして機械獣軍団でそこを占拠すると、そこにあったシャトルを融合捕食した。打ち上げ用ブースター諸共に。
地上の連邦軍の働きもあって、機械獣軍団は一掃できた。しかし奴自身を捕捉することは叶わなかったのだ。奴め、連邦軍がそこを攻めたときにはもう、何処かの宇宙へ向けて打ち上げ完了していたのだ。
しかし奴め、宇宙に何の用だ? 奴が融合したシャトルの能力では、何処までも行くというわけにはいかん。だがそれでも奴には、固有の機動力があるからな……。
マシンキメラ-001の目的は何だ? 何を企んでいる? しかし考えたところで、答えが出るわけも無かった。
カイラスギリー奪取作戦、失敗! カイラスギリーは崩壊、ビッグキャノンは砲身を残して消滅いたしました。地球連邦軍は方針を変更。真正面からの力押しでザンスカールを攻略することになります。
北斗少年、銀河少年、卒業です。そしてもう1体のデータウェポン獲得しました。ちなみにデータウェポンと言えば、秘された7体目のデータウェポンには、ワンセブンあまり良い感情を抱いておりません。原作アニメ世界のような優しい世界であるならばまだしも、本作世界に於いて2少年に苦難を押し付けたのは、間違いなくフェニックスエールですからね。
最後に、マシンキメラ-001はまた何かやってる模様です。何をするつもりなのかは、また続編で。