大鉄人戦記   作:雑草弁士

45 / 64
第044話:仮面の女、その名は……まだ不明

 サイド1コロニー、ロンデニオンにて、我々は短い休暇を取っていた。と言うか、短いと良いんだがな。この休暇は、あくまでザンスカール帝国攻めの戦力を整えるための時間を利用した、とりあえずの物だ。短く無ければ、作戦準備が滞っているという事であり、もの凄く不味い事なのだ。

 

 それはともかくとして、『わたし』は例のハロ型の意識端末を使い、シロウと共にコロニー内の街に出て来ている。何故かと言うと、マスター・アジア師匠に叱られたのだ。曰く、『たとえ機械であろうと、いや機械だからこそ、(ゆる)めるところは(ゆる)めて張り詰めた部分をたまには休めてやらねば、何時か壊れるぞ』との事である。ごもっとも。

 だが、『わたし』の場合こうやって街に出る事が、その『弛める』事に繋がるのか、と言う点がちょっと疑問ではあるが。正直なところ、マスター・アジア師匠のMF(モビルファイター)モドキを建造する作業でもしていた方が、心の安定にはいいんじゃないかとも思うんだが。

 

 シロウがオラカを走らす。オラカというのは、オーラ動力(カー)の略称だ。電気自動車がエレカなのだから、とりあえずこの名称で呼ばれている。設計はゼット・ライト氏。送られて来たその設計図通りに、シグコン・シップ艦内工場で造られた、こちらでの第一号車だ。まあゼット氏の元ではもっと沢山造られて、色々安全試験とかされているらしいが。

 

 

「オラカ走らすと、ちょっと甘いもん欲しくなるな」

 

『まあ、その辺はね。オーラ力は生体エネルギーだ。ただ、並のエレカに匹敵するパワーで走ってるのに、その程度の疲労で済むってのは驚異的だと思う。ゼット氏の才能は、凄いな』

 

「車体は同型のエレカと大差無いんだな」

 

『同一規格化して、安全性とか担保してるらしい』

 

 

 そしてシロウはしばらく運転に集中する。助手席の上に固定されたハロ型意識端末を通して、『わたし』は車の外の風景を眺めた。公園の傍らを通り過ぎる。人工の自然。そして人工の大地。だがそれでも、生きた緑である事は違いが無い。

 

 ふとシロウが言葉を(つむ)いだ。

 

 

「なあ、ワンセブン」

 

『む?』

 

「何を苦しんでるんだ? なんかよ、前の戦闘から変だぜぇ?」

 

『……そんなに変かね?』

 

「変だ! 力いっぱい、変だ!」

 

『そう、か』

 

 

 そうか、変か。やれやれ、友人に心配を掛けてしまうほどに、表に出てしまっていたか。確かにマスター・アジア師匠の言う通りに、(ゆる)めるべきところが上手く(ゆる)んでいない。これではいけないな。

 

 

『いや、北斗少年に礼を言われてしまってな。それが、(つら)かった。『わたし』は駄目な大人だ。彼らに、人殺しをさせる以外の道を見出してやれなかった様な、駄目な大人だ。そして彼らが最初の『殺し』を終えたとき、その罪悪感でせめてそれ以上はあの場で殺させまいと自分で敵を率先して叩き潰すような、駄目な大人なんだ』

 

「……」

 

『それなのに、礼を言われてしまった。それなのに、『わたし』のサブ電子頭脳から『慈愛』の属性のデータウェポンなんてものが出現した。(つら)く、苦しくてなあ……』

 

 

 そしてシロウは、オラカのハンドルを切る。オラカは大きく右折した。シロウは呟く様に語る。

 

 

「お前と初めて会ったときの事を、思い出した。野良機械獣に襲われてた子供庇って、それで第13研究所の追手に捕まりそうになった時によ」

 

『……』

 

「俺が仏心出したのを後悔しかけたときによ。ワンセブンは言ったよな。俺は間違ってない、って。機械獣に殺されかけたあの子供庇った姿に、感銘受けた、ってよ」

 

『そんな昔の事でもないのに、何か懐かしいな』

 

「同じ言葉、送らせてもらうぜ?」

 

『……?』

 

 

 シロウは赤信号で、オラカを停車させた。その口元に、少々苦い笑みが浮かぶ。

 

 

「あのデータウェポンてのに取っては、ワンセブンはいい寝床だったんだろうさ。だがその心地よかった心の持ち主が、その心が、潰れそうに、壊れそうになってる。そりゃ、慌てて出て来るさ。

 ワンセブンは、(つら)かったんだろうさ。けど、それってワンセブンが北斗と銀河に、当の『慈愛』の心を持ってたからだろ」

 

『そうなの、かね』

 

「ワンセブンは、熱い心、輝く魂を持った人間のために戦うって言ってたろ。人類にゃ、腐った奴、ゴミカスも多いけど、一握りの美しい人間たちのためなら戦える、って。そして北斗や銀河は、明らかにその一握りに含まれてんだろぉ?

 ワンセブン、(つら)いかもしんねぇ。苦しいかもしんねぇ。けどよ、俺ぁその姿勢に感銘を受けて、事実救われたんだ。だから、(つら)くても苦しくても、折れねえでくれや。俺とか、師匠とか、お前を支えたい奴は沢山居るんだからな」

 

『……嗚呼、ありがたいな。とても、とても心強いよ』

 

 

 シロウはにやりと笑うと、青信号でオラカを発車させた。

 

 

 

*

 

 

 

 サイド4宙域の近隣で、戦闘が発生しているとの通報が舞い込んだのは、一通り半舷休息を終えて2巡目に入ろうかと言う矢先の事であった。近隣の連邦軍の中で、シグコン・シップを擁する我々が最も早く現場に到着できる、というので急遽駆り出される事になったのだ。

 弁慶が感慨深げに言う。

 

 

「単艦行動は久しぶりだな」

 

『ラー・カイラムは出航までに時間がかかるし、真ドラゴンは渓が交通事故に巻き込まれて無事だが戻れてない。グラン・ガランとゴラオンは乗員数が多すぎて、全員戻っているかの確認が大変だからな。

 我々だけで、なんとかなる事態ならいいんだが』

 

「車少佐、ワンセブン、当該宙域に到着しました。確かに2時方向に、センサーに反応があります。明らかに戦闘と思われる……!?」

 

 

 流れ弾と思われるビームが、こちらの脇を(かす)めて宇宙空間へ消えて行く。何と言うか、ヤバい威力のビームだ。

 

 

「ワンセブン、機動部隊を発進させよう」

 

『了解だ。機動部隊各員に告ぐ。機動部隊全機は、順次発艦せよ』

 

「ケイン副長、機動部隊発進後、当艦も戦闘宙域に最大戦速で。俺は竜馬、隼人と真ゲッターで出る」

 

「了解です」

 

 

 わたしも『飛行ワンセブン』形態でシグコン・シップから離艦。すぐに『戦闘飛行ワンセブン』形態になって、急ぎ戦闘が行われている方へと飛翔する。

 

 やがて(センサー)に、激しく戦闘を繰り広げている、2機の100m級特機(スーパーロボット)タイプ機動兵器の姿が捉えられる。片方は、データバンクに登録なし。全高は130m。だが『わたし』はその機動兵器に見覚えがあった。無論の事、前世でのアニメ知識だ。

 その機体は、シズラー黒。『トップをねらえ!』と言うアニメに登場した機動兵器だ。厳密には多少改修が入っているが……。それがもう1機……と言うよりも、もう1体の100mサイズの機械で出来た巨人と戦っているのだ。そのもう1体は、多少形状が変わっているものの、間違いない。マシンキメラ-001だ。ただし背中がぷっくりとリュックサック状に膨れ上がっている。

 

 『わたし』は全機に通達する。

 

 

【あの黒い130m級特機(スーパーロボット)を援護せよ。おそらくあの機体は、マシンキメラ-001により並行異世界より召喚されたと推測される。あれをマシンキメラ-001に捕食させてはならない】

 

『『『『『『了解!』』』』』』

 

 

 百式R、サイコΖガンダムが、ビーム・ライフルを撃ち放つ。だがそれは、あっさりとマシンキメラ-001に防がれた。その様子を観測して、確信する。間違いない、デストーション・フィールドを奴はモノにしている。

 

 

【マシンキメラ-001は、強力なバリアを獲得している。特にレーザー系は無効で、通常タイプのビーム系も効果が低い可能性がある。実弾火器を保有している機体は、それを用いる様に】

 

『ち、面倒くせえな! ゲッタービームはどうだ! ゲッタアアア……ビイイイィィィム!!』

 

 

 真ゲッター1のゲッタービームが、デストーション・フィールドを突き破ってマシンキメラ-001にダメージを与える。竜馬は叫んだ。

 

 

『いけるぞ!』

 

『バズーカならどうだ!』

 

『落ちろ!』

 

 

 シャア大佐(クィグたいい)とアムロ大尉が、連続してバズーカを放つ。それはデストーション・フィールドを突き抜けてマシンキメラ-001に着弾し、炸裂。その間に『わたし』はシズラー黒と思しき機体に文字通り接触。手を介した接触回線による通信を試みる。

 

 

『こちら地球連邦軍外郭部隊、ロンド・ベル隊指揮下の特務部隊だ。そちらの姓名、所属を答えられたし』

 

『ザザッ……。ビビビッ……。あー、これで繋がっているかしら?』

 

『大丈夫、繋がっている』

 

 

 通信映像には、目元に仮面を付けた赤髪の推定美女が映っている。これは、もしや、まさか、だろう?

 

 

『こちら銀河連邦、シズラー黒改、ふくめんコーチX。地球連邦軍? 地球帝国でもシリウス同盟でも、銀河連邦でも無いの?』

 

『詳しい事は後で説明するが、貴女はあの機械の化け物である『マシンキメラ-001』の手で、並行異世界からこの世界に召喚された。奴が貴女とその機体を融合捕食して、自己進化を極めるため、にな』

 

『なぁんですってぇ!?』

 

『落ち着いてくれ。とりあえず後方に下がっていてくれ。万が一にも、その機体を喰われるわけにはいかん』

 

 

 と言うか、この『ふくめんコーチX』って事は、ユング・フロイトだろう? なんてこったぁ。いや、現実逃避している場合ではない。なんとしてもシズラー黒改は、護らなければ。こいつには縮退炉が搭載されていたはずだ。

 縮退炉が、マシンキメラ-001に喰われたりしたら、目もあてられん。叶うならばマシンキメラ-001は、ここで倒してしまいたいが……。

 

 

『くっそ、こいつデストーション・フィールド、だったか? 堅い上に、機動力もハンパじゃねえ!』

 

『竜馬! こっちに追い込んでくれ! トリプル・バーニング・ファイヤーをお見舞いしてやる!』

 

『ロボ! ミサイル、スポンソン砲、連続発射!』

 

 

 こちらの主軸になっているのは、真ゲッターとマジンガー・チーム、グレンダイザー、ジャイアント・ロボだ。それを電童チームやMS(モビルスーツ)各機、ウラエヌス、ヒュッケバインNextが支援している。

 残念ながら今回は、マクドガルのテスタロッサは出撃していない。テスタロッサ用の宇宙用機動ユニットが最終調整が間に合わなかったのだ。もし間に合っていれば、キューブ付きパイルバンカーの力はおそらく敵に通用したろうに。

 

 

 

*

 

 

 

 戦いは、なおも続いた。幸いな事に、宇宙には奴は機械獣を連れてきていない。宇宙で活動できる機械獣は、ほとんど居なかったのだろう。

 そして唐突に、マシンキメラ-001は大きく後退する。何か企んでいるのだろうか、と思ったその時である。

 

 

〖……ナンダヨ。ナンナンダヨ、オ前ラハ〗

 

『こ、こいつ、喋ったぞ!?』

 

【落ち着け。マシンキメラ-001は、誕生した直後は拙いながらも言葉を喋っていた】

 

 

 そう、マシンキメラ-001は、オープン回線で唐突に喋り出したのだ。これまで全く喋らなかったのは、こちらとの対話に意味を見出していなかったからだと、そう考えていたのだが……。

 

 

〖オ前ラ、餌ノクセニ! 黙ッテ俺ニ喰ワレテイレバ、イイモノヲ! 何ナンダヨ! 喰エナイドコロカ、邪魔バッカリシヤガッテ!!〗

 

『うるせえ! 俺たちは、餌じゃねえぞ!』

 

〖ダマレ! モウオ前ラナンカ、喰ワナクテモ、イイ!! カワリノ新シイ餌ヲ、召喚()ブ!! オ前ラハ、吹ッ飛ンジャエヨ!!〗

 

 

 まずい、奴の身体の胸元に、幾つもの砲門が開いた。あれは……。ダイテツジンを喰らった事で得た、幾つかの能力の1つだろう。……グラビティ・ブラストだ。

 

 

【大出力の敵砲撃が来る。全員、機動回避せよ】

 

『おわぁ!?』

 

『やべえ!!』

 

 

 奴はグラビティ・ブラストを連射する。その様子は、まるで思い通りにならない事に対して癇癪(かんしゃく)を起こす、駄々っ子の様だ。……そうか、奴のメンタリティはガキそのものか。こちらと対話をしなかったのは、対話に価値を見出していなかったとか高度な考えのもとの話では無いのだろう。単にむくれてダンマリを決め込んでいたのかもしれない。

 

 

()ケルナアアアァァァ!!〗

 

『そうは行くか!!』

 

 

 だがまずい。こうグラビティ・ブラストを連射されては、奴の近くに寄る事が難しい。しかも間違いなく、奴は相転移エンジンを使って潤沢なエネルギー供給を得ている。悪い事に、ここは真空だ。相転移エンジンは最大効率で稼働する。

 

 

〖ハァ、ハァ……。オ? ココハ……。チョウド召喚()ブノニ良イ座標(ポイント)ダ……〗

 

 

 マシンキメラ-001はそう言うと、背中のリュックサック状の盛り上がりを展開し、そこから何やら機械の塊を取り出す。『わたし』はその形状に、見覚えがあった。あれはゲア・ガリングの艦体の、ごく一部だ。そして奴は、それにかぶり付く。

 

 

【まずい、奴を制止()めるんだ】

 

『間に合わねえ!』

 

 

 もしや、奴が今まで現場でばかり召喚を行っていたのは、『触媒を喰った直後』でなければ召喚できないとかの制限があったのかも知れない。奴め、だから背中に『弁当』を背負って来たのか?

 

 

 そしてマシンキメラ-001の眼前の空間に、光の柱が立つ。その光の柱が収まった時、その場所には半壊した1機の大型機動兵器の姿があった。左腕と下半身のほとんどを失ったその機動兵器は、それでもまだ100m余りの巨大さを誇っている。……なんてこったぁ、と叫びたい気持ちだ。あれは、あれは……。

 

 あれは『トップをねらえ!』の主役メカである、ガンバスターだ。よりにもよって……。そして、先ほどまで後方に下がっていたシズラー黒改が、絶叫を上げて突撃を敢行する。

 

 

『そんな!? だめ!! カズミぃっ!! ノリコおおおぉぉぉっ!!』

 

 

 制止()めようとした『わたし』を吹き飛ばして、シズラー黒改はマシンキメラ-001へと向かい、突進した。




『トップをねらえ! NeXT GENERATION』から、シズラー黒改と『ふくめんコーチX』女史が。『トップをねらえ!』からガンバスターと(たぶん)あの2人が。

そしてマシンキメラ-001。知能はそこそこ高いけれど、単なる駄々っ子だった事が判明。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。