大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第045話:名前が判明した女

 半壊したガンバスター上半身に、マシンキメラ-001は大口を開けてかぶり付こうとする。そこへシズラー黒改が、あの巨体に見合わない凄まじい速度で突っ込んだ。その右手が、マシンキメラ-001の大きく開いた口に叩き込まれる。そして左手が同じく胴体に。

 マシンキメラ-001とシズラー黒改は、その衝突の勢いのままガンバスターから離れた。シズラー黒改の突撃の際に吹き飛ばされた『わたし』は、急ぎ回転モーメントを中和、機位を回復してその後を追う。

 

 

【イワン殿、ファさん、ウラエヌスと百式Rであの半壊した特機(スーパーロボット)を確保、戦線後方へ】

 

『了解ですぞおおおぉぉぉっ!!』

 

『了解です!』

 

【カミーユ君は万が一のマシンキメラ-001の攻撃に備え、その直掩を。大作君のジャイアント・ロボの実弾火力は、デストーション・フィールドに比較的有効だ。あの黒い特機(スーパーロボット)、シズラー黒改を支援砲撃。他の機体は、マシンキメラ-001の予測将来位置に回り込み、攻撃準備を】

 

『『『『『『了解!!』』』』』』

 

 

 真空中で、音は伝わって来ない。だが見るからにガリガリと言う感じで、シズラー黒改の右前腕にマシンキメラ-001は(かじ)り付く。まずい。せめて右前腕部だけの損害で済ませたいが。と、ふくめんコーチX女史が叫ぶ。

 

 

『あげるのは、腕の皮を一枚だけよ! くらいなさい!』

 

 

 シズラー黒改の前腕部装甲板が展開。そこから電圧ボルトが伸びて、特に右前腕に齧り付いていたその大口は、無理矢理に押し開かれる。

 

 

『いっけえええぇぇぇ!!』

 

 

 そしてとんでもないエネルギー量の放電が、シズラー黒改の両腕電圧ボルトから放出される。マシンキメラ-001の身体がバシン! と言う感じで跳ねた。

 シズラー黒改の放電電圧は知らないが、原型機であるガンバスターのバスターコレダーは、標準100億ボルト、後の改造強化で10億ギガボルトだったはずだ。量産機であるシズラー黒、その改良機であるシズラー黒改ならば、過剰性能は抑えられているはずだが……。それでも信じがたい高電圧がマシンキメラ-001に叩き込まれた。

 

 

『それにあのバリアだったかしら? 接触距離で、口の中でも効果あるの? ……ゼロ距離、ホーミング・レーザー!!』

 

 

 更に敵の口中に突っ込まれているシズラー黒右掌から、凄まじいパワーの、理屈が分からない曲射レーザーが撃ち放たれる。マシンキメラ-001の上半身が、内側からのレーザー攻撃で、一瞬膨れ上がり次の瞬間はじけ飛んだ。

 だが同時に、シズラー黒改はよろよろと後退した。マシンキメラ001が同時攻撃で撃ち放ったゼロ距離のグラビティブラストにより、胴体に直撃を受けたのである。ふくめんコーチX女史は叫ぶ。

 

 

『ごめんなさい! 誰か広域を吹き飛ばせる威力の攻撃方法はある!? こっちの機体の右腕、切り離すから消し飛ばして!!』

 

『おう姉ちゃん! いい度胸じゃねえか! こっちに任せろ! いくぞ隼人、弁慶! ゲッタアアアァァァ、ビイイイィィィム!!』

 

 

 真ゲッター1のゲッタービームが、マシンキメラ-001の身体の一部に(まと)わり付かれて浸食されそうになっていたシズラー黒改の右前腕部を、その敵の一部ごと焼き尽くした。あれならばシズラー黒改の機能は、取り込まれてはいまい。最悪でも、装甲板のスペースチタニュウムぐらいか。

 

 『わたし』は吹き飛んだマシンキメラ-001に最も近い、ジュドー君、アムロ大尉、シャア大佐(クィグたいい)に指示を飛ばす。

 

 

【奴のデストーション・フィールドとオーラ・バリアで減免されるのは覚悟の上だ。サイコΖΖガンダムのハイ・メガ・キャノン、サイコΞガンダムAとサイコΞガンダムCのハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーで飛び散った破片ごと殲滅を】

 

『了解だぜ! いっけえええぇぇぇ! ハイ・メガ・キャノン!! 最大広域発射!』

 

『こちらも了解だ。この距離なら、いけるか!? 味方機は射線上より退避を!』

 

『わたしも了解だ。ハイパー・メガ・バズーカ・ランチャー、撃つぞ!』

 

 

 3機が全力で、砲門の耐久限界を気にしないで撃った光条は、周辺宙域を塗りつぶして行く。『わたし』は更なる保険をかけた。

 

 

【クロノクル殿、君から見て3時方向へ全開の光の翼を。あちらにも破片が飛び散っている可能性がある】

 

『まかせてくれ。V2ガンダム、()べ!!』

 

 

 だがこれだけでは、敵の本体部分は生き残る可能性が高い。いや、やはり本体部分はデストーション・フィールドを(まと)って形を保ち、必死で再生を試みている。

 

 

【マジンガーチーム、トリプル・バーニング・ファイヤーで焼け残った敵の本体部分を】

 

『まかせろワンセブン! いくぜ鉄也! 合わせろシロー! トリプル……』

 

『了解だ甲児! バーニング……』

 

『やるぜ兄貴! ファイヤアアアァァァ!!』

 

 

 マジンカイザーのファイヤーブラスター、グレートマジンガーのブレストバーン、マジンガーZのブレストファイヤーが、束になってマシンキメラ-001に叩きつけられる。凄まじいまでの熱量だ。

 しかし『わたし』は、これでもまだ間に合っていない、と『感じ』る。全身のサイコフレームが、マシンキメラ-001の憎悪の感情を捉え、その位置を教えて来た。

 

 そして『わたし』は、そちらにミサイルを発射すると同時にシロウに指示を出した。

 

 

【シロウ、一時方向上方45度に悪意を感じるぞ】

 

『『()』えてらぁっ!! 落ちやがれ!』

 

 

 『わたし』のミサイルが、ヒュッケバインNextのグラビトン・ライフルが、次々にバイファム脱出ポッドを撃破する。間違いなく、奴が射出した奴の一部だ。だがしかし、ミサイルで1機が、グラビトン・ライフルでもう1機が()ちたものの、そのデストーション・フィールドによりフォトン・ライフルが防がれる。

 

 そして生き残った2機のバイファム脱出ポッドは、1機は明後日の方向へ逃走、1機は半壊したガンバスターへと特攻をかける。うまくガンバスターを喰えればよし、そうでなくとも逃げた1機だけは生き残るつもりだろう。

 くそ、してやられた。こちらはガンバスターを護らなければならない。『わたし』たちは必死になって、ガンバスターへ向かうバイファム脱出ポッドを狙い、火力を集中する。

 

 

『このシズラー・ビームで!』

 

『スペース・サンダー!!』

 

『か、(かわ)すんじゃねえよ! 反則だろ、あの機動性であのバリア出力は!』

 

『ちみっちゃいくせに! 光子力ビーム!!』

 

『スポンソン砲、撃て! ジャイアント・ロボ!』

 

 

ガオオオォォォン!!

 

 

 そして1機目のバイファム脱出ポッドが消し飛んだ頃には、もう1機のバイファム脱出ポッドは姿を消していた。だが、たぶんサイコフレーム機体に乗った操縦士(パイロット)連中には、『わたし』も含めてその奴の捨て台詞が聞こえていたと思う。

 

 

〖オ前ラ……。ユルサナイカラナ! 全員カナラズ……!!〗

 

 

 台詞自体は何処にでもある、ただの負け惜しみだ。しかしそれに込められた怨念の量は、少しばかり引くものがあるレベルだった。

 

 

 

*

 

 

 

 シズラー黒改を前甲板、半壊したガンバスター上半身を後甲板に露天繋止したシグコン・シップの艦橋(ブリッジ)で、それらの操縦士(パイロット)3名が顔を合わせていた。『原作アニメ』ではあり得なかった光景に、なんとなく感慨深い物がある。

 ふくめんコーチX女史が、ガンバスターの操縦士(パイロット)2名に、(おもむろ)に声を掛ける。

 

 

「……ノリコ、カズミ」

 

「……ガラ?」

 

 

 タカヤノリコ嬢のボケに、その場の全員がコケる。『わたし』も身体がもしそこにあったなら、コケていた可能性が高い。そして、ふくめんコーチX女史は仮面をむしり取ると叫ぶ。

 

 

「ちょおっと待ちなさいよ! なんでこの感動的なシーンで、出て来るのが仮面忍者πr2なのよっ!! あたし、あんなゴリマッチョじゃないわよ!?」

 

「ご、ごめんユング。仮面付けてたから、正体バラされたくないのかな、って」

 

「タカヤさんったら……」

 

 

 アマノカズミ女史、もといオオタカズミ女史も、やれやれと言った顔で苦笑する。そしてふくめんコーチX女史だったユング・フロイト女史は、ふっと破顔するとノリコ嬢とカズミ女史に歩み寄り、2人を抱き寄せた。

 

 

「……ここはあたしたちの宇宙じゃないらしいから、この言葉が相応(ふさわ)しいかちょっとわかんないけど、ね。2人とも、『おかえりなさい』……」

 

「……ただいま」

 

「……ただいま、ユング」

 

 

 そして彼女らはしばらく黙していたが、やがてノリコ嬢が口を開く。

 

 

「けど、あの怪物は何だったの? 応戦しようとして、全武装が死んでたときにはまずいと思ったよ。シズラー黒が割って入ってくれなかったら……」

 

「シズラー黒改、ね。あれについては、ノリコたちを助けられたから後悔してないけど、一応謝らないとね。味方機を突き飛ばして、暴走したから……」

 

「ありがとう、ユング……。でも、味方機を突き飛ばすのはどうかしらね?」

 

「うふふふ……」

 

 

 ユング女史は、未だにノリコ嬢とカズミ女史を抱きしめたままだ。カズミ女史が、そっとその事についてユング女史に物言いする。

 

 

「ユング……。名残惜しいけれど、そろそろこの艦の皆さんにご挨拶と御礼、それに貴女が突き飛ばした機体の方にもお詫びしないといけないでしょう?」

 

「うん、わかってるんだけど、ちょっと事情があってね……。今動くと、ちょこぉっとヤバい事になりそうなのよね」

 

「ユング……。どうしたの?」

 

「うん、ノリコ……。実はね」

 

 

ぶ、ばっ。

 

 

 ノリコ嬢とカズミ女史は、ユング女史が唐突に逆噴射した液体に(まみ)れる。ノリコ嬢が目を見開く。カズミ女史は、眉を寄せて悲痛な顔になった。2人は叫ぶ。

 

 

「「ユング!!」」

 

 

 ユング女史が逆噴射して吐き出した液体は、若干の粘性があり、あまりにも赤く、紅く……。

 

 

「いやあああぁぁぁっ!? ユング、しっかりしてユングぅっ!!」

 

「ノリコ、落ち着いて! この艦にドクターは!?」

 

『今、看護ロボットを向かわせている。技量は人間の医師に、勝るとも劣らん。それより彼女の気道確保して、応急措置を』

 

 

 そう言えば、そんな設定あったな。ユング・フロイトは宇宙放射線病で機動兵器には本来乗れないはずだった。本来の歴史ではコールド・スリープまでしてたのに、この病のためにノリコ嬢やカズミ女史とは再会できなかったんだ。

 ノリコ嬢とカズミ女史、それに艦の女性乗員(クルー)や女性操縦士(パイロット)たちが、必死で応急手当とその手伝いをしている。やがて看護ロボットがタンカとストレッチャーを伴って、艦橋(ブリッジ)に入室して来た。

 

 

 

*

 

 

 

 とりあえず輸血パックで、ユング女史が大量吐血で失った分の血を補充する。突然のユング女史の吐血により、艦橋(ブリッジ)での顔合わせは中断、互いの自己紹介も中途半端なままである。本来であれば、彼女たちに現状とこの世界のチュートリアル的な紹介を行う予定だったのだが。

 病棟のベッドで、ユング女史は目を瞑っている。だが彼女が目覚めている事は、医療計測器のデータで分かっていた。ベッド脇ではノリコ嬢とカズミ女史が、あの『トップをねらえ!』世界の特徴的なパイロットスーツから一般の衣類に着替えて、心配そうな顔で椅子に座っている。

 

 そしてユング女史が、ぽつりと漏らす。

 

 

「ふ、ノリコとカズミに再会できて、2人を救う事までできたんだもの……。心残りは……」

 

「だめだよユング! そんな悲しい事言わないで!」

 

「……」

 

 

 必死で叫ぶノリコ嬢に対してカズミ女史は、夫であるオオタコウイチロウ氏を同じく宇宙放射線病で亡くしているからな。心中複雑な物があるのだろう。そしてユング女史は言った。

 

 

「貴方、ワンセブン、だったかしら? あの機動兵器の人工知能(AI)にしてこの艦の人工知能(AI)でもあるって話だけれど」

 

『厳密には、あの機動兵器……特機(スーパーロボット)の名称である事実が、真っ先に来るのだがね。君とて、ユング・フロイトは君の名前であって、君の脳みその名前というのは何か違わないかね?』

 

「ふふ、確かに。……ねえワンセブンとやら。あたしはあと、どのぐらい生きられるの」

 

「ユング!」

 

「……」

 

 

 ノリコ嬢は悲痛な表情で、カズミ女史は厳しく顔を顰め、しかしそれ以上何も言えなくなる。『わたし』は一切の嘘偽りも無く、言う。

 

 

『このまま放置するならば、短ければ、5か月ほど。長くても1年保たないだろう。機動兵器に乗って、無茶をすれば更に縮む』

 

「そう……」

 

「!! わ、ワンセブンちゃんさん!」

 

『ちゃんも、さんも、いらないよ? タカヤノリコ嬢』

 

「放置すればって言いましたよね! 治療を、治療をすればどうなんですか!」

 

「「ノリコ……」」

 

『ふむ……。適切な治療を施しても、わずか……』

 

 

 ユング女史、カズミ女史は半ば諦観が強い。宇宙放射線病の恐ろしさを、ユング女史は自身の身体で、カズミ女史は夫の闘病生活で、思い知っているのだろう。ノリコ嬢は、泣きそうな顔で、必死で聞いている。

 

 

『適切な治療を施しても、わずか余命41年強だ』

 

「そんな! 41……ね、ん、え?」

 

「「……え゛」」

 

『短くて驚いたのかね? だが、今現在の医療技術ではそれ以上を確約するのは難しい』

 

「「「長い!!」」いや、思ったよりずっと長いわよ! そんなに生きられるの!?」

 

 

 ユング女史が叫ぶ。絶叫する。

 

 

『いや、41年強とは言っても、この世界に於ける女性の平均寿命には遠く及ばないのだが』

 

「それでも、わたしたちの常識からすれば、画期的なレベルよ! いったいどんな治療するのよ!」

 

『興奮してはいけない。身体に障る。落ち着いたなら、話そう』

 

「落ち着いた。すごく落ち着いた。さあ話せ」

 

 

 いや、眼が座っているのだが。

 

 

『まずは、遺伝子が損傷していない細胞を、君の身体から探し出す』

 

「「「ふんふん」」」

 

『一番確実な方法は、それからクローン体を作ってそれに脳移植することだな。ただ、脳自体もダメージを負っている可能性も高いため、同時に遺伝子修復治療を併せて行う。この方法の問題点としては、免疫システムや脊髄反射、それに筋肉なども最初から鍛え直しになる事か。

 次の方法としては、同じくクローンを活用するのだが、今の君の身体で、駄目になっている臓器だけを取り換える。こちらの利点は、身体の免疫システムやら脊髄反射などを最初から構築し直さなくても済む事かな。ただし遺伝子修復治療は同じく併せて行わなければならないし、たぶん41年強ではなく20~30年でガタが来るだろうな』

 

「そんな技術が……」

 

『最後は遺伝子修復治療を単独で行う。これは、体細胞の遺伝子が壊れて行く速度の方が速いのは目に見えているからな。数年単位でしか命を延ばせないだろうな』

 

 

 とりあえずこの面々は、唖然としていた。まあ、それはそうかも知れないが。とりあえず3つのどの手法を選ぶか、落ち着いたら決めてもらうとしよう。

 

 そして困惑する彼女らを乗せて、シグコン・シップはコロニー・ロンデニオンへの帰還の途に就くのだった。




さて、ユング女史の延命方法を幾つかご都合主義的に並べてみました。まあたぶん、クローン体への脳移植になるんじゃないかなあ。この世界、せっかく強化人間関連技術とかで色々データ蓄積されてるんだから、負の側面だけじゃなしに正の方向にも活用してもらわんと、何と言うかイカンでしょう。
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