とりあえず、ユング女史の治療方法はクローン体への脳移植に決まった。この方法が現状もっとも残り寿命を延ばす事ができるのが理由だ。ただし免疫系の再構築や、脊髄反射の再訓練、筋肉の鍛練などリハビリが厳しいのは、彼女は覚悟している模様だ。
現在、ユング女史から採取した細胞を解析し、遺伝子が壊れていない健康なものを見つけ出した。これを基礎に、頭脳が無いクローン体を培養中である。わざわざ頭脳が無い様に創るのは手間だが、何分『わたし』には霊力があるのだ。魂を感知できるのである。頭脳があるボディを培養したら、それに明確な魂が宿ってしまうではないか。
戦闘で多数殺している以上、今更人殺しがどうとかほざくつもりは無いが……。避けられる殺しなら避けて置いた方が精神衛生上は良いのも確かだ。これが完成したら、移植手術だ。
なおユング女史本人にはとりあえず暫定的に、遺伝子修復治療を開始している。途中で容体が急変されても困るし。
そうしてシグコン・シップの病棟に造り付けた、オーラ・バトラーの生体部品をクローン培養する装置を改良した培養槽で、ユング女史のクローン体培養を監督していた時の事である。ラー・カイラムのブライト准将から通信が入った。
『ワンセブン、ちょっといいか?』
『どうしたのかね? ブライト准将』
『シズラー黒改とガンバスターの修復の事だ。特にガンバスターは、再建工事と言っていいほどになるが……。ロンド・ベルの母港であるロンデニオンの連邦軍基地でやるのか?』
『そのつもりだが……。何分、この2機はデカ過ぎる。特にガンバスターはな。シグコン・シップの艦内工場には、持ち込めん。かと言って、甲板で作業するわけにもいかない。シグコン・シップはこれからザンスカール帝国攻めに参加することだしな。
修復用パーツは、艦内工場で生産できた物を置いて行く。修理完了できるほどの数のパーツはまだ無いが、戻って来るまでにはそこまで終わらんだろう。実作業は基地に置いて行く作業ロボットにやらせようと思う。連邦軍に頼みたいのは、機密保持の面なのだが』
『それは大丈夫だ。ここの基地の面々は、気心も知れているしな』
ちなみにガンバスターも、シズラー黒改も、修復完了までにはかなりかかる見通しだ。まだシズラー黒改はいい。胴体にグラビティ・ブラスト数発をぶち込まれ、右腕を喰われかけて自分から切り離してゲッタービームで消し飛ばしただけだ。これだけやられて、『だけ』って言うのも何だが。
そんなわけでシズラー黒改は、左腕のパーツを左右反転して複製してやり、あとは胴体パーツを解析して生産、装甲板も新造してやった。それの組み上げと本体への組付けを、ロンデニオン連邦軍基地の敷地を借りてやらせてもらう。
ガンバスターは酷い。下半身、左腕無いし、右腕も肘から先、無いし、残った部分もかなりの大ダメージを負っている。あと2基の縮退炉のうち、1基無いし。やはりブラックホール爆弾起動するのに、縮退炉
一番造るのが大変なのは、その縮退炉なんだよなあ……。とりあえずはシズラーの物と、ガンバスター本体にもう1基残された物は、なんとか調べ終わった。ただ、シグコン・シップの艦内工場レベルではコレは造れない。なので『わたし』の体内工場を使わないと、これは造れそうにないのだ。
幸いながら、ガンバスターの頭脳部分にガンバスターを構成するバスターマシン1号2号の図面が記憶されていた。万が一外部の基地で、ガンバスターを修理するときのためらしいのだが。
無論、その図面だけでは分からない事も多いのだが、それはシズラーの解析とガンバスター本体の解析結果から得られた技術に、こちら側の独自技術を投入してなんとかする。装甲やフレームを構成するスペースチタニュウムとバスター合金は、既に解析が完了しているから、造れるだけのパーツは造って置いていく。とりあえず我々がザンスカール帝国攻略から帰って来る頃には、内部機器はともかくガワだけは修復できているだろう。
『ブライト准将、特に縮退炉に関しては厳重に護って欲しい。縮退炉に関するデータは残していかないが、シズラー黒改とガンバスターの本体に、それぞれ1基ずつ残されていることだしな』
『わかっている。万が一にも暴走されると、地球上であればユーラシア大陸を吹き飛ばして地球の形を変えてしまう代物だ。アナハイムとかは興味を持ちそうだが、技術を渡すわけにはいかんな』
現状縮退炉は、とりあえずの試作品を『わたし』の体内工場で建造してみた。なかなかヤバい代物だ。試運転して見たが、ちゃんとまともに安定的に稼働してくれた。……コレ、どうするかな?サイズ的なものが違うので、ガンバスターには使えない。だが、これを今現在ある
……ジャイアント・ロボとかどうだろうか。アレは核分裂炉、原子炉で動いている。アニメでは暴走しそうなシズマ発電所からのエネルギー供給を受けて、本来の数十倍だかのパワーを発揮したっけなあ。つまりアレの駆動系は、現状のパワーの数十倍だかブッ込まれても、安定して稼働できるだけのオーバースペックなのだ。
うん、この前、修理や整備の際にジャイアント・ロボを調べた結果、そうなっていた。と言うか、数十倍どころじゃないエネルギーにも耐えられて安定的に稼働する様になっていたな。もしかして、原子炉みたいな低パワーの動力って、ジャイアント・ロボ……GR-1には、間に合わせの動力だったんだろうか?
ふと、ジャイアント・ロボに縮退炉を搭載してみたときの事を、考えてみる。この世界のシズマ博士は、シズマ・ドライブとか創って無いけど。そのシズマ博士と大作少年の声が、頭の中で再生されて聞こえる気がした。
(大作君……。わたしにはもはや君がジャイアント・ロボで戦う様な勇気は無いのだよ……。大作君、ロボの、ロボの動力はもしや原子りょ……)
(はい、博士! ロボの動力は縮退炉です! もし暴走すれば、ユーラシア大陸吹き飛ばして地球の形変えるほどの動力です!)
(……え? 縮退、炉? え? マジで? え? ……えっ)
(し、シズマ博士! どうしたんですか!? 泡吹いて大丈……シズマ博士えええぇぇぇっ!?)
うん、電子頭脳内再生、余裕だった。
『それとワンセブン、そちらから申し出があったシグコン・シップの改装と言うか大規模改造工事の話なんだが』
『うむ。現状あのマシンキメラ-001が召喚した並行異世界の存在は、基本シグコン・シップで預かる事がキャンベル大将とゴップ議長の合意の元で決まっている。だが正直、艦の規模が今回の件で足りなくなった。
できればこれ以上、あのマシンキメラ-001に異世界から召喚……というか誘拐をさせたくは無いが……。それを
『全長3km級の巨大艦か……。これならガンバスター級の運用も充分に可能だな。物資は?』
『ザンスカールとの戦いで出たデブリ……基本は敵の艦艇や機動兵器の残骸を回収して、シグコン・シップの艦内工場で処理して資材にしようと考えている。慣習として、宇宙を漂うデブリは拾ったもの勝ちだからな』
『その建艦の根回しを、と言う話だったが……』
『ブライト准将には申し訳ないのだが、なんとかお願いしたい』
本当に申し訳ないとは思う。思うのだが。だがこれは必要な事だからな。なんとかやってもらうしか無い。
*
マスター・アジア師匠に、近傍宇宙空間で試しに試作
『どうだね? 師匠』
『うむ。少しぎこちないのう。ただコレは、もしかしたらワシが
『どの辺がぎこちないのかな? これは仕方がないから、あくまで感覚的な情報でも良い。少しでもデータが欲しい』
『うむ。手足を振り上げる際に、微妙な、何と言うのか……。タイムラグがある様な気がするのだ。0.01秒にも満たぬ違和感なのじゃが』
『了解した。遠隔で調整してみる』
『マグネット・コーティングの調整で、どうにかならんかな』
『うむ……。また動かして見るとしよう。……多少は良いが、違和感がぬぐい切れぬなあ。しかし現状は、これに慣れるしかあるまいな』
『申し訳ない、師匠』
そう言えば、『機動武闘伝Gガンダム』登場人物アルゴ・ガルスキーも、漫画作品『超級!』で新型機ガンダムボルトクラッシュに交換する際に、微妙な違和感を抱えていたため、旧型機ボルトガンダムで戦う事も多かったんだったかな? 『超級!』は詳しく無いからなあ。
何にせよ、なんとかしてマスター・アジア師匠が完全復調するのに合わせて、機体を完璧な物にしなければならん。弘法筆を選ばず、と言うがソレは一般レベルでの話だ。ぎりぎりのラインでの戦いの中では、ほんのわずかな違和感が勝敗を決めることすらある。……弘法は、筆を選ぶ、のだ。
『ふむ、このレベルならば、なんとか……? アレができるか、試してみるかの』
『え、マスター・アジア師匠? アレとは……』
『試しに、空撃ちしてみようかの。ちょうど向こうに僅かなデブリが見える』
『いや、待っ……』
『ぬうん! 超級! 覇王! 電影だあああぁぁぁん!!』
『ちょ』
そして試作
そして試作
『爆発!!』
ちゅどーん。
デブリは何故か、火が出るところも無いのに大爆発を起こして消滅する。そして次の瞬間、試作
『ぬおう!?』
『師匠……。マスター・アジア師匠……。その機体はあくまで試作実験機だから、基本の型以外はやらない様に、とお願いしていただろう。お忘れか?』
『そ、そうであったか?』
『……今から回収に向かう。試作実験機がイカれた事で、本番機体の完成は遅れるが……。ご理解いただける、かね?』
『……うむ、面目ない』
『わたし』はとりあえず、『飛行ワンセブン』形態で宇宙空間へ
*
リガ・ミリティアからの補給物資が届いた。ウッソ君宛てだ。『わたし』はブライト准将にちょっとした意見を求められたこともあり、シロウと共に例のハロ型意識端末でラー・カイラムに向かった。
ラー・カイラムの格納庫では、既にウッソ君のV2ガンダムが換装作業を終えている。ウッソ君が、感慨深げに語った。
「これがV2アサルトバスターガンダム……。凄い、ですね」
『アサルトパーツ、バスターパーツか……。本当であれば解析、コピーして、クロノクル氏のV2ガンダムにも装備したいのだがね』
「それは正直、僕からもお願いしたいくらいなんですがね」
「けどよ。リガ・ミリティア側との交渉が長引いてるって話だろぉ?」
『うむ、シロウ。ブライト准将がムバラク大将にお願いしているんだが。リガ・ミリティアの指導者、ジン・ジャハナムたちがな……。あるジン・ジャハナムは賛成してOKサインを先走って出したら、別のジン・ジャハナムは反対してそれを取り消すとか、色々とな』
多頭制の悪いところだな。うん。船頭多くして船山に上っているぞ。あ、ブライト准将が来た。
「わざわざ済まんな、ワンセブン。見て欲しいのは、あちらだ」
『あれは……。シュラク隊のガンブラスターとガンイージ、かい?』
「ああ。現状メカマンたちが必死になって、全ガンイージをガンブラスターに
そっか。第二次ネオ・ジオン抗争での戦闘で、整備の神様アストナージ・メドッソがKIAだったっけな。彼が生きていればなあ……。
『よければ、シグコン・シップの設備でガンイージをガンブラスターに
「そちらの方は大丈夫だが、シグコン・シップの艦内工場は今現在、他にも沢山抱え込んでいるだろう。それもあって、こちらでの作業を直接意識端末で見てもらい、助言を貰いたかったんだが」
『ガンイージをガンブラスターに仕様変更するのは、ちょっとラー・カイラムの施設、設備だと荷が重い。できなくは無い事だが。ザンスカール帝国攻略戦の前に、終わらして置いた方が良い事項だからな。こちらでなら、それほど手をかけずに完了できる事だ。
改修工事の進み具合から、今改造中の1機はそのままこちらで造ってしまった方がいいだろう。残りの機体を、シグコン・シップの艦内工場に運ぶ様に伝えてくれるかね?』
「わかった。頼む」
何はともあれ、シュラク隊の全ガンイージがガンブラスターになってくれるのは助かる。シュラク隊には現状、ラー・カイラムを始めとして艦の直掩を頼んでいたが、その層が厚くなるのは大歓迎だ。
いやシュラク隊、ちょっと力不足なんだよな。当人たち
これが原作アニメみたく、バタバタと死なれたりしたら、ウッソ君たちの心理面も心配なんだよな。かと言って機体の力不足は現状どうしようもない。本当であれば、ウチから空いてる予備機のリ・ガズィBWSとか貸し出したっていいんだが。
同じブライト准将の下で共に戦ってるとは言え、あちらはリガ・ミリティア、こちらは弁慶隊として、所属の壁がある。クロノクル氏の様な特殊事情が無ければ、機体を融通し合うのは難しいんだよなあ。
何にせよ、この組織の中のいびつな構造は、近いうちに何とかした方がいいかも知れない。この艦隊の中で、一番上位に来ているのはラー・カイラムとロンド・ベル隊だが……。それに曲がりなりにも正式所属しているのが、ヨナ少尉とナラティブガンダムだ。だが彼は階級低いし、力量もそこまで圧倒して高いわけじゃない。
シュラク隊と弁慶隊、グラン・ガラン隊、ゴラオン隊は、あくまでその下にぶら下がっているわけだが、ヨナ少尉の階級が低い事から、リーダーシップは取れないでいる。
まあ、その辺は臨機応変に何とでもなっているから、現状問題無いが。そう言えばこの艦隊、正式名称もまだ決まって無いんだよな。それも近いうちに何とかしなきゃって時々話には上がるんだ。だがその都度出撃があったりして、結局決まっていない。
ザンスカール帝国に対する作戦が発動する前に、なんとか決めて置いた方が良くは無いだろうか。ブライト准将に意見具申しておこうかね。
とりあえず、ザンスカール帝国攻略作戦開始前の時間で、色々技術関係のやっておかないといけない事を色々とやってます。前回参入したシズラー黒改とガンバスターは、シズラー黒改は
できればマスター・アジア師匠の
最低限やっておかないとならない、シュラク隊のMS更新。ガンイージは全機ガンブラスターに
シグコン・シップⅡ、とりあえず話題に出ました。ワンセブンの頭の中では、既に図面は出来てます。と言いますか、1km級の艦だとガンバスターの運用は難しいので。
-追記-
申し訳ありません。2/11の投稿は、リアルでの事情にてお休みさせてください。翌日には何事もなければ復帰できるかと思います。どうかご了承ください。