大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第048話:悪意のインベーダー

 絶叫が、宇宙を引き裂いた。

 

 

『うおおおおおああああああぁぁぁ!!』

 

 

 叫んだのはシロウだ。そしてその乗機、ヒュッケバインNextは装甲の隙間から蒼緑色の光を輝かせつつ、飛翔する。サイコフレームの輝きだ。カテジナ機のゴトラタンは、一瞬呆気に取られた様に動きを止めたが、泡を喰ったかの様にヒュッケバインNextの後を追う。

 

 

『ちょ、どこへ行く気だ! 行かせやしな……(はや)い!?』

 

【シロウ、何があった】

 

 

 わたしのテキストメッセージでの呼びかけに、シロウは言葉を返す。

 

 

『見える! 呼んでるんだ! 誰でも良い、誰でも良いから、止めてくれって!』

 

 

 呼んでいる? 誰が? そう思った時、『わたし』にもその声が聞こえた。女性の声だ。

 

 

(……ここです。ここを狙ってください。もう、わたしにできることは、これしかありません。……ここが、あなた方の『敵』がいる場所です。ここが、生きとし生ける者の『敵』がいる場所です。

 ……シャクティ。貴女は……。生きて……。)

 

 

 この声は……。かつてTV画面の向こう側で、わずかに聴いた事のある声だ。……女王マリア、か。

 

 

【シロウ、行けるのか?】

 

『ヒュッケバインNextが護ってくれてる! くっそ、もう少しだ! もう少しだけ呼び続けてくれ!! うおおおあああぁぁぁあああおおおぉぉぉ!!』

 

(ここです……。ここを狙って……)

 

『行くんじゃないよ! やめろ! やめて! ヤ、メ、ロ、オオオォォォ!!』

 

 

 ヒュッケバインNextのスピードに、カテジナのゴトラタンはまったく追い付けない。そうか、シロウが動けるのはヒュッケバインNextが……。ヒュッケバインNextの操縦室(コクピット)には、そう言えば強化人間であるシロウの洗脳を解除した、抗洗脳システムが組み込まれていたな。

 その抗洗脳のシステムが外部からのサイコウェーブの効果を、遮断しているのか。相手の精神にサイコウェーブで干渉し、行動を封じ、衰弱死に追い込むエンジェル・ハイロゥのシステムは、言わば強大な広範囲の洗脳とも言う事ができる。ヒュッケバインNextが、その効果からシロウを護っているのか。

 

 ヒュッケバインNextが、凄まじいまでの高機動でメタルビースト・エンジェル・ハイロゥの中枢部へと飛翔。凄まじい数の触手や腕、脚をかい(くぐ)り、ド真ん中へと到達。そしてシロウが叫ぶ。

 

 

『俺のこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶ! シャアアアァァァイニイイイィィィング……』

 

 

 やるのか!? やれるのかシロウ!? その瞬間、ヒュッケバインNextの右掌が……その指が、蒼緑色に光り輝いた。サイコフレームの輝き……。そして同時に、『気』の輝きでもある。ヒュッケバインNextの右前腕部が、そして右手指が、輝く結晶体……サイコシャードに覆われた。

 

 

『……フィンガアアアァァァアアアァァァ!!』

 

 

 バギャン!!

 

 

 何かが砕ける様な音が、真空中だと言うのに響いた気がする。ヒュッケバインNextの輝く指が、メタルビースト・エンジェル・ハイロゥの中枢部に叩き込まれた。その瞬間、我々全体に掛かっていたサイコ・ウェーブの重圧が消える。

 

 

(……ありがとうございました。これで、やっと……)

 

 

 そして女王マリアの声も、また霧散した……。急速離脱するヒュッケバインNext。メタルビースト・エンジェル・ハイロゥが苦し気に咆える。その全体から、汚泥の様な体液が滲み出す。その表面に、コーウェンの顔が浮き上がって来た。コーウェンとカテジナの声が重なる。

 

 

『『おのれ、おのれ、おのれ! だがこれで終わったと思うな!』』

 

 

 そしてメタルビースト・エンジェル・ハイロゥから、汚泥の様な体液が飛び散る。それは周囲に飛散し、そして増殖。飛沫(しぶき)の一滴ずつが、各々機動兵器並の大きさにまで膨れ上がると、不気味な眼球がその表面に幾つも幾つも浮き出た。そう、こいつらはインベーダーだ。

 ザンスカール側の指揮官であるドゥカー・イクが、焦った声を上げる。

 

 

『な、なんだこれは! インベーダーだと!? 馬鹿な! エンジェル・ハイロゥが何故!』

 

『見ての通りだよ。我々地球連邦軍は、ザンスカール帝国を脱出してきたクロノクル・アシャー氏の証言により、ザンスカール帝国の上層部がインベーダーに寄生され、乗っ取られている事を知らされていた』

 

『!?』

 

 

 そんな彼に、ムバラク大将が語り掛けた。ドゥカー・イクの喉から出た、声にもならない驚愕を表す妙な音が、通信に乗って流れる。淡々と、感情を交えない声で、ムバラク大将は話し続けた。

 

 

『地球連邦政府はザンスカール帝国に対し、大きな譲歩をしてまで対ガルファ戦への協力を求めた。しかしながら、ザンスカール帝国はそれを拒否し、我々との戦いを続けた。その理由がこれだ』

 

『何故だ! 何故それを明かさなかった!』

 

『証拠が無かった。クロノクル氏の証言だけでは、貴官らは到底信じはしなかったであろう? ……クロノクル氏は、インベーダーに寄生されて正気を失う直前の女王マリアからの勅命を受け、ザンスカールを脱出したのだよ。彼こそが、ザンスカール真の忠臣だ。だが残念ながら、証拠は何も持ち出せなかった。

 そして対人類の最終兵器エンジェル・ハイロゥも完成間近で、我らとしてはそれを見逃すわけにもいかなかった。我々は、たとえ貴官らを全滅させてでもエンジェル・ハイロゥを破壊し、インベーダーを殲滅しなければならなかったのだ』

 

『く……』

 

 

 そしてムバラク大将は、全ザンスカールの将兵に対し、呼び掛ける。

 

 

『ザンスカール帝国将兵諸君に告ぐ。貴官らは帝国を乗っ取ったインベーダーに騙され、いったんは我々地球連邦が差し伸べた手を振り払った。なれど、今まさに貴官らの眼前に、真実は明らかになった! 我らは今一度、貴官らに問おう! 我ら地球連邦の手を取るや否や!?』

 

 

 リグ・シャッコーが、ゾロアットが、ゲドラフが、コンティオが、1機、また1機とその向きを180度変える。そしてスクイード級が、アマルテア級が、リシテア級が次々に向きを変え、ドゥカー・イクの旗艦であるアドラステア級がその艦首をメタルビースト・エンジェル・ハイロゥへと向ける。

 ドゥカー・イクが檄を飛ばす。その声は怒りに満ち満ちていた。

 

 

『全軍、攻撃開始だ! 目標、インベーダー! 我々をたばかっていたインベーダーどもを、宇宙の藻屑にしてしまうぞ! そしていつの日か、バイク乗りの伝統の復活を!

 ムバラク大将、後の事はとりあえず後回しだ! まずは奴らを殲滅する!』

 

『了解した。全軍、攻撃開始! 目標はインベーダーだ!』

 

 

 そしてザンスカール帝国、ベスパの戦力は地球連邦軍やリガ・ミリティアと並び、インベーダーに対する攻撃を始めた。無論の事、我々も既にインベーダーとの戦いを開始している。シロウが叫んだ。

 

 

『さっきの手ごたえからすっと、奴がメタルビースト化してるからと言って、即座には機能の復旧はできねえはずだぜ!』

 

【具体的に、何分保つ?】

 

『10分!』

 

【充分だ。各員、10分以内にメタルビースト・エンジェル・ハイロゥを叩き潰すぞ】

 

『『『『『『応!!』』』』』』

 

 

 ヒュッケバインNextがフォトン・ライフルとグラビトン・ライフルを交互に連射する。『わたし』も負けじと両の鉄腕を振るい、インベーダーやメタルビーストを叩き潰す。向こうの方ではサイコΖΖガンダムが、ハイメガキャノンを広域発射して更に撃ち漏らした敵をインコムと大型ファンネルで撃破している。その向こうではサイコΖガンダムが、更にその向こうではマジンガーZが、その隣ではC型装備のナラティブガンダムが奮戦しているのが見えた。

 だがインベーダーどもの強さはさほどでは無いのだが、数が多い。少々面倒である。更に厄介なのが、カテジナ・ルースの操るゴトラタンだ。いや、既にそれはゴトラタンとは言い難い。歪み、触手などが生えているアレは、既にメタルビースト化している。

 

 

『ちぃっ! 邪魔をしやがる!』

 

『行かせやしないよおおおぉぉぉッ!!』

 

 

 兜甲児のマジンカイザーが、(わず)かなインベーダーどもの隙間を見つけ、メタルビースト・エンジェル・ハイロゥへと吶喊(とっかん)しようとしたのだが、メタルビースト・ゴトラタンは絶妙なタイミングでそれを邪魔する。そしてメタルビースト・ゴトラタンの攻撃を(かわ)したマジンカイザーだったが、その間にインベーダーに十重二十重と取り囲まれてしまった。

 マジンカイザーだけではない。グレンダイザーも、サイコΞガンダムCも、ジャイアントロボも、メタルビースト・エンジェル・ハイロゥへと攻め込もうとした矢先にその出鼻を潰されて、インベーダーに取り囲まれる羽目になっている。奴め、メタルビースト・エンジェル・ハイロゥが回復するまで、徹底して時間を稼ぐ気だ。

 

 ここでウッソ君とクロノクル氏が、メタルビースト・ゴトラタンへと突撃した。

 

 

『カテジナさん! 邪魔をしないでッ!!』

 

『カテジナ! 君を助ける事ができなかったわたしだが、今その片を付ける!』

 

『いいよおおぉぉ!? おいでなさいな!! あんたたちも喰らって、同化して、愛してあげるよおおおぉぉぉ!!』

 

『くっ、『V2の、光の翼で!!』』

 

 

 メタルビースト・ゴトラタンは、光の翼の二連打をくらい、しかしながらかろうじて持ちこたえる。持ちこたえた次の瞬間、ぐちゃりと傷口から中身が剥けて出た。それはもうゴトラタンではない。その表面に、カテジナ・ルースの顔を浮き出させた、ただのメタルビーストだ。

 

 

『う、うわぁっ!? く、くそおおおぉぉぉッ!!』

 

『く、わたしの知るカテジナ・ルースは既に死んだのだ! その似姿を(はずかし)める貴様は、ゆるさん!!』

 

 

 ウッソ君もクロノクル氏も、必死で自分を奮い立たせているが、内心の苦悩や苦痛がサイコフレームを通じて、『わたし』には感じ取れる。……見ていられない。それにあの強力なメタルビーストを放置しておいては、メタルビースト・エンジェル・ハイロゥへの攻撃を妨害されるだけだ。

 そして『わたし』は全速力でカテジナ・ルースの顔付きメタルビーストへと飛び掛かった。

 

 

『!?』

 

『おおおぉぉぉオオオおおおォォォおおおぉぉぉ!!』

 

 

 あえてテキストメッセージではなく、音声を通信に乗せて周囲へと叫びつつ、『わたし』は人工(アーティフィシャル)気力(オーラ)発生装置(ジェネレーター)を全開で駆動させた。全身のサイコフレームが共振を起こし、機体(からだ)の装甲板の隙間から蒼緑色の輝きが(きらめ)く。

 『わたし』の両の(てのひら)が『気』の輝きを宿す。流派東方不敗基本技、光輝唸掌(こうきおんしょう)。その応用3、光輝唸双掌(こうきおんそうしょう)だ。そして『わたし』はその輝く(てのひら)を、顔付きメタルビーストのその顔面に……カテジナ・ルースの顔に、叩き込んだ。

 

 

『ぎゃあああぁぁぁ!?』

 

『フン!!』

 

 

 そのまま『わたし』は、メタルビーストを両手を使い、輝く(てのひら)で左右真っ二つに引き裂いた。『わたし』はウッソ君とクロノクル氏に音声で叫んだ。

 

 

『とどめを!!』

 

『『!!』』

 

 

 そして2人は、即座に反射的に光の翼を起動。それぞれ左右に分かれた元ゴトラタンのメタルビーストを焼き尽くし、消滅させた。

 次の瞬間、今まで大人しく? インベーダーを引き裂きすり潰し叩き殺していた真ゲッター1から、叫び声が上がる。竜馬だ。

 

 

『號おおおぉぉぉオオオおおおぉぉぉーーー!! 力を、ゲッター炉を貸せえええぇぇぇっ!!』

 

『……竜馬あああぁぁぁアアアァァァ!!』

 

 

 號の真ドラゴンに、真ゲッター1が突進し、飛び乗る。そして……わかる、真ドラゴンから膨大な、莫大なゲッター線のエネルギーが真ゲッター1に流れ込んで行くのが、『わたし』にはわかる。いや、ちょっとでも霊感なりあるいは精神感応じみた素養なりを持っていれば、このあまりにも強大なエネルギーの流れは知覚できるだろう。

 真ゲッター1の肩から、何かが飛び出した。いや、ゲッタートマホークだというのはわかる。理解できる。だが、あれは何だ? あまりにも、あまりにも大きい。……いや、何をしようと言うのかは理解できる。かつて『真ゲッターロボ・世界最後の日』のアニメで見た、あれをやるのか。

 

 

『ゲッタアアアァァァ……トマホオオオゥゥゥク!!』

 

『があああぁぁぁアアアあああァァァあああぁぁぁ!?』

 

 

 その巨大なゲッタートマホークは、一撃でメタルビースト・エンジェル・ハイロゥを……数kmはあるその巨体を、あっさりと真っ二つにする。メタルビースト・エンジェル・ハイロゥは、その余波である強烈なゲッター線の波動に巻き込まれて粉みじんになり、消滅して行く。

 ……いや、アニメでは地球より大きい敵をさっくり消し去ったんだから、数km程度なら。……いやいや、目の前で現実として見た分だけ、こちらの方が衝撃がでかいな。うん。い、いや。呆けている場合じゃない。『わたし』は全ての味方機に、テキストメッセージを送る。

 

 

【メタルビースト化したエンジェル・ハイロゥは消滅した。あとはインベーダーどもを1匹残らず叩き潰すんだ。逃してはならない。ここで逃せば、ザンスカール帝国の悲劇を何処かで繰り返す事になる】

 

『……そ、そうだな! それは許すわけにはいかない! ベスパの諸君! インベーダーを一体でも逃してはならん! 総攻撃だ!』

 

 

 最初に『わたし』の呼びかけに応えて我に返ったのは、ドゥカー・イクだった。彼の指揮に従い、ザンスカール帝国の兵たちは必死になってインベーダーを叩き潰す。それに負けじと、連邦兵も我々ロンド・ベル麾下の部隊も、残存するインベーダーを滅ぼして行った。

 

 

 

*

 

 

 

 全てのインベーダーが消滅した後、残存するザンスカール帝国はベスパの艦隊と、地球連邦軍およびリガ・ミリティアの艦隊はにらみ合いを続けていた。だがそれも束の間、結局のところザンスカール帝国は軍人政治家問わず上位者の全てがインベーダーに同化されていた模様で、(ことごと)くが行方不明になっていた。

 

 おそらくはフォンセ・カガチ、ムッターマ・ズガン、タシロ・ヴァゴらも全てインベーダーの餌食になったのだろう。あまりにあっけない彼らの最後であった。そして前線に出ていたがため、難を逃れたドゥカー・イクが暫定的なザンスカール帝国の代表となり、地球連邦への降伏を宣言する。

 ドゥカー・イクがムバラク大将に対し降伏を申し出た際に、『帝国臣民と、部下たちには何の罪も無い。わたしはどうなっても構わない。どうか寛大な処遇をお願いしたい』と言っていたのが、印象に残った。

 

 そして彼が直属の部下たちに対し、『どうかわたしに代わり、バイク文化を再び花開かせてくれ。たぶんわたしは、それを見る事ができないからな』と言っていたのも、何故か印象に残った。残ってしまった。最後まで、バイクに拘るんだな……。

 

 我々ロンド・ベル隊とその協力者たち――近いうちに、きっちりと部隊名を決めて置いた方がいいかも知れないな――は、ザンスカール帝国の後始末をムバラク大将たちに任せ、サイド1はコロニーロンデニオンへと帰還する事になった。何と言ってもロンデニオンの連邦軍基地には、シズラー黒改とガンバスターが待っているからな。

 シズラー黒改とガンバスターの修理に目途を付けたら、シグコン・シップⅡの建艦に入らなければならない。今のままのシグコン・シップでは、ガンバスターの運用はちょっと難しいからな。あとはマスターアジア師匠のMFも建造しなくては。

 

 やる事は腐るほどある。だがおそらく時間はそんなには残されていない。急がなくてはならない。本当に、急がなくてはならないのだ。




真ゲッターと真ドラゴンですが、地球よりでかい物を斬ったわけじゃないので、そこまで消耗はしてませんし、そこまで反動ダメージを喰らってはいません。いや、そこまで、ってだけで多少は消耗や反動受けてるんですけどね。

そしてカテジナさん、ごめんなさい。いやスパロボ30で、なんでゾルたんは駄目なのにカテジナさんOKなの? とか思っちゃって。ゾルたん駄目なら、カテジナさんも駄目でいいんじゃね? カテジナさんOKならゾルたんもOKにするか、そうでなくても何がしかの救いがあっても良くない? って思っちゃったので。
たぶんその反動が、本作の今話で来ちゃったんでしょうね。ごめんなさい。

まあでも、ゾルたんはやっぱりやった事がやった事ですし、駄目は駄目ですよね。
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