大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第050話:その名は鋼鉄の守護

 サイド1宙域はロンデニオン・コロニー近傍の宇宙空間。今『わたし』はここで、全長3kmと少しの巨大な航宙艦の骨組みにドッキングし、自身の超生産能力を全開にして次から次へ艦のパーツを生み出している。更にはこの骨組みには、シグコン・シップから取り外された艦内工場の区画が取り付けられており、その艦内工場もまた全開稼働で各種資材を艦のパーツに造り替えていた。

 それら生み出されたパーツは、シロウのヒュッケバインNextや、アムロ大尉たちの各MS(モビルスーツ)を始めとした各種機動兵器群が骨組みの各所に移動させ、人間大の作業ロボット群が取り付け工事を行っている。そう、この骨組みは我々の新母艦、シグコン・シップⅡの骨組みなのである。

 

 ちなみにこれまでのシグコン・シップは、シグコン・シップⅡへ移植するために兵装やら艦内工場やら艦橋(ブリッジ)やらを取り外され、現状骨組みとあと若干のパーツだけになって近場の宇宙空間に浮いている。本当に、これまでご苦労さんだった。これからはシグコン・シップⅡの血肉となって、我々に貢献してくれ。

 いや本当のところはシグコン・シップを残したまま、シグコン・シップⅡと共に我々の部隊の戦列艦として用いる事も、考慮しなかったわけじゃないんだ。だがシグコン・シップⅡの早期建造や、残した場合の運用人員とか考えるとなあ……。最悪の場合、シグコン・シップを『わたし』がリモコンで動かす事も考えては見たんだが。

 

 結局は『わたし』に負担がかかるからな。最終的には『結局持て余すだけだから、解体して資材にしよう』となったわけだ、これが。

 

 

【さて、『わたし』の超生産能力でなければ造れないパーツは、一通り造り終えた。あとはシグコン・シップⅡに移植した艦内工場で事足りる。これより『わたし』は、ゴップ議長とキャンベル、ムバラク両大将から依頼を受けた代物を造る事に注力するよ】

 

『わかった。シグコン・シップの機動部隊のうち、わたし、アムロ、カミーユ、ジュドーとシロウのヒュッケバインNextの5機は、ワンセブン本体で製造される連邦軍宛ての品の搬出にあたる』

 

【たのんだ、シャア大佐(クィグたいい)

 

 

 連邦軍宛てに『わたし』が何を造るかと言うと、ワープ機関の中枢部品だ。木星圏のガルファ機動要塞たる螺旋城を攻撃し、木星圏を人類の手に取り戻すためには、現状地球圏にあるワープ機関搭載艦だけでは到底数が足りない。それ故に、今現在地球圏にある各地のドックでは、カイラム級やクラップ級など等の艦船に対し、ワープ機関を組み付ける改装作業が急がれているのだ。

 ちなみに地球連邦の科学技術、工業力でも、ワープ機関の周辺装置は容易に製造する事はできる。難しいのは中枢部品だけなのだ。まあ難しいだけで、連邦でも造れない事は無いのだが。しかしその中枢部品を『わたし』が提供してやれば、連邦軍が保有する艦のうち少なくとも4割近くを短時日にワープ機関搭載艦に改装可能である。

 

 まあ、ゴップ議長の手配が無ければ、とてもやっていられない話でもあったのだが。ちなみにブライト准将の座乗艦ラー・カイラムは既に、逆U字型のワープ機関ユニットを艦後方に覆いかぶせる様な形で搭載している。後はそれにワープ機関中枢部品を組み込めば完成だ。

 ちなみにゴラオンとグラン・ガランの両オーラ・バトル・シップにも、ワープ機関を非常な苦心の末に取り付け工事を進めている。流石にオーラ・クルーザーであるスプリガンはちょっと船体容量的にワープ機関を積む余裕は無い。その他のオーラ・シップも御同様だ。そのため、それらはゴラオンとグラン・ガランに一時的にドッキングして、運んでもらう事になる。

 

 現状、シグコン・シップⅡは45%まで出来上がっている。そしてシグコン・シップⅡが100%完成次第、我々は地球連邦軍と共に再び木星圏へ旅立つ事になるのだ。地球圏のためだけではない。人類圏全てのために、木星圏を何としても取り戻さなければならないのだ。

 

 

 

*

 

 

 

 現状に於けるガルファの襲撃は、太陽系に於ける敵の根拠地が木星圏だと言う事もあり、そう回数は多く無い。しかしながら、まったく無いわけでも無いのである。その襲撃のうち大半は機獣だけの攻撃であって、それであれば各地の連邦軍により撃退もしくは撃滅も難しくは無い。

 問題は、襲撃に騎士(ナイト)GEAR凰牙が混じっていた場合である。これまでにわずか1回だけ、凰牙が機獣群を率いて襲撃してきた事があったそうだ。と言うかそのときは、対ザンスカール帝国の最終作戦の最中(さなか)であり、我々はまったく手を出す事ができなかったわけだが。

 

 凰牙が襲撃したのは、よりによって日本の新光子力研究所である。幸いなことに、キャンベル大将が当時日本に居てくれた事もあり、防衛体制は万全であった。さしもの凰牙も超合金ニューZメッキのイチナナ式を大量投入されては、かなり厳しかった模様。多くが撃破され損害多数なれど、人的な損耗は軽微で敵を撤退に追い込めたらしい。GEARは電童も凰牙もデンチ式だから、継戦能力に難を抱えているからな。

 

 

『問題は……。凰牙が撤退前に新光子力研究所から出現した、牛の様な姿をした機獣らしき存在があった事だ。凰牙が出現した事はこちらに連絡があったが、牛の様な機獣についてはあまり重要視されなかったらしく、こちらへの連絡が無かった。凰牙が出た事で戦闘詳報をこちらから改めて要求して、はじめて発覚したんだが……』

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

『そしてその牛の様な機獣だが……。光の粒子に分解すると、凰牙に吸い込まれるかの様に消えて行った、らしい。直後、凰牙はその他の機獣どもを殿(しんがり)に置いて、自身は用は済んだとばかりに戦線離脱したと……』

 

 

 建造中のシグコン・シップⅡ会議室に集まった我々は、深刻な表情で語り合う。

 

 

「それは……。間違いなくデータウェポン、だな? ベガさん」

 

「はい、アムロ大尉。状況から見て、間違いありません。おそらくは、『知恵』の属性を持つブルホーンかと」

 

「くそ、地球上で有数の頭脳が集まる、新光子力研究所に潜んでいたのか! 予想してしかるべきだったか?」

 

「いや鉄也。そう言う意味でなら、宇宙科学研究所や旧早乙女研究所の研究員を吸収した連邦軍系研究施設なんかも存在している。いや、連邦軍系研究所はその他にも多々あるぜ。とても一ヶ所には絞り切れない」

 

 

 ここでマスター・アジア師匠が(おもむろ)に口を開く。

 

 

「ふむ、これで正体の知れている6体のデータウェポンは、全て出そろったわけじゃな。最後の1体は謎の存在と言われておるらしいの。ならば7体目を手に入れるには、成り行きに任せるしかあるまい。

 じゃが、他の6体が出そろったという事ならば。まあワシはデータウェポンだけに頼るのは、避けるべきだとも思うが。だがデータウェポンを手に入れるならば、今後の方針は1つに絞られると言う物よ」

 

「!? そ、それは!?」

 

『ベガさん、つまりはそう言う事だよ。騎士(ナイト)GEAR凰牙を打倒し、その持てるデータウェポンを奪取するしか無い。

 その機会は、おそらく多いと思うね。相手からしても、北斗少年や銀河少年が持つデータウェポンを手に入れるために、電童を狙って来る事は間違い無いからだ』

 

 

 そして『わたし』の言葉に、GEARの面々は表情を厳しくする。だが北斗少年と銀河少年は、不敵な笑みを浮かべた。銀河少年は語る。

 

 

「なーんでぇ。結局やる事は一緒なんだろ? 今更言われるまでもねえよ」

 

「そうだね。ただ、心構えはきっちりしておかなきゃ、って事だろうね。前の戦いの時にわかってるけど、相手は僕らよりも数段格上の技量を持ってる」

 

 

 北斗少年には、油断は無い。銀河少年も頷く。

 

 

「ああ。こっちにゃガンダムが何機もいるし、マジンガーチームもいる。真ゲッターだって心強いさ。マスター・アジア師匠もワンセブンも、シロウさんだっている。他にもたっくさん仲間がいる。たぶん、いや絶対に、単に戦うだけなら絶対に負けは無えよ。ただ……」

 

「ああ。データウェポンを手に入れるためには……。データウェポンに認められるためには……。たぶん、いや間違いなく……」

 

「おう。俺たち2人でキメるところはキメなきゃならねえって、そう感じるぜ」

 

 

 北斗少年と銀河少年は、見事に揃った動きでこの場の皆に頭を下げる。

 

 

「「皆さん、お願いします! 凰牙に勝てる様に! 力を貸してください!」」

 

 

 その場の一同は、真剣な表情は崩さないが、しかしそんな中にも笑みを浮かべる。彼らは口々に、北斗少年と銀河少年に激励の言葉を掛けた。

 

 

「援護は任せてくれ」

 

「他の機獣は、俺たちに任せてくれて構わないぞ」

 

「あ、だけどよ? ぼーっとしてたら俺たちがうっかり凰牙の首を獲っちまうかもしれないぜ?」

 

「ふ、それは本末転倒だな。そうならない様に、しっかり頑張る事だ」

 

 

 そしてマスター・アジア師匠が頷いて一歩前に出る。シロウがその後に続いた。

 

 

「ふ、小僧ども。良い顔をするようになったではないか。では時間が許す限り、ワシとこの馬鹿弟子が修行に付き合ってやろう」

 

「え? 馬鹿弟子って、俺かよ?」

 

「馬鹿では無い弟子の方は、身長が50mもあるのでな。直接に修行に付き合わせるわけにも行くまい。それに奴は、他にやる事が多すぎる故な」

 

『ふふふ。いやいや『わたし』は馬鹿かも知れんよ? 少なくとも、頭が良いとは思っていないのだがね』

 

「「ありがとうございます!!」」

 

 

 北斗少年と銀河少年は、声を揃えて叫ぶように言う。更にGEARの面々も、師匠に頭を下げる。周囲の皆は少年たちに笑顔を送るが、やがて厳しい表情を作ると力強く頷いた。

 

 

 

*

 

 

 

 漆黒の宇宙空間で、全高25mの電童と全高17mのマスター・ガンダム(セカンド)が、大立ち回りを繰り広げる。その周囲ではヒュッケバインNextが、少しでも電童に隙が出来たら躊躇なく攻撃を仕掛けるため、待機していた。ちなみに『わたし』は例のハロ型意識端末を、とりあえず手に入ったホビー・ハイザックに繋いで、現場で審判役をやっている。『わたし』の本体はワープ機関中枢部品を製造する作業で動かせないのだ。

 ちなみにこの鍛練、電童の二人に対してちょっとばかり厳しいかも知れないが、実戦では何が起きてもおかしくは無い。あくまで鍛練ならば厳しくしなければという事で、こう言う仕儀になっているのだ。『わたし』は時間経過を確かめる。そろそろか……3、2、1、よし。

 

 

【そこまで。今から休憩に入るよ】

 

『ふぇ~……。ようやく3回目終わった……』

 

『ぎ、銀河。つらいのはわかるけど、が、が、頑張らなきゃ』

 

『お、おう……』

 

 

 うーん、そろそろ限界かな?

 

 

【師匠、北斗君も銀河君も、そろそろ限界に見えるが】

 

『確かにの。小僧ども、今日のところはこれまでにしておくぞ。無茶をして、逆に成長に悪影響が出てもまずい。

 今日はしっかり休んで、疲れを取るがよかろう』

 

『『は、はいっ』』

 

【では2人とも、帰艦してくれ】

 

 

 電童は、よたよたと言った感じで7割がた完成しているシグコン・シップⅡへと戻って行った。通信映像に映る師匠の顔は、少々難しそうな顔をしている。シロウが怪訝そうな声で問い掛けた。

 

 

『どうしたんでぇ、師匠?』

 

『む、小僧どもの仕上がり具合がな……。少し、壁に突き当っている様じゃと思うてな。だが今現在、いつ何時に凰牙とかが襲って来るかも知れぬであろう? 小僧どもが自分で壁を越えるのを、待っていてはやれぬ』

 

【確かにそうだな、師匠。となると、荒療治かね?】

 

『そうよな。敵との戦いで死なれてしまっては、元も子もあるまいて』

 

『うへぇ……。銀河も北斗も、災難だな』

 

 

 シロウがそう言ったとき、にやりと師匠が笑う。

 

 

『ふふふ、そう言えばシロウよ。貴様シャイニング・フィンガーを使って味方の窮地を救って見せたそうではないか。どれ、少しワシに見せてみよ。あちらの宇宙空間に浮いている、デブリが目標でよかろうて』

 

『いいっ!? あ、いや。あんときゃ出来る! と思ってやったら出来たけどよ。っつうか、単純に技を出すだけなら今もたぶん出来るんだけどよぉ。

 今の俺ぁ、まだ眼力って言うの? 敵の『何処』を打てばいいのかがちょっとまだ、その辺の勘所? 頼りねえんだわ。あんときゃ、女王マリアの思念が誘導してくれたから、完璧にできたんだけどよ……』

 

『かまわん。今現在の出来を見たいだけだ。かまわず技を打たんか』

 

 

 やれやれ、シロウも災難だな。必死にあの時のシャイニング・フィンガーを再現しようと、躍起(やっき)になっている。お? ヒュッケバインNextの右手が輝き始めた。あの時だけでなく、きっちり再現も出来るとなると、これは本物だな。

 その後の結果として、やはりシロウのシャイニング・フィンガーは『何処を打てばいいかの見極め』が甘いと言う結果になった。シロウの自己分析の通り、だったな。だが技そのものとしては、なんとかなっている。『わたし』も色々な仕事が終わったなら、追い抜かれてしまった修行に精を出して、シャイニング・フィンガーを打てる様にしたい。

 

 

 

*

 

 

 

 ついに来てしまった。凰牙だ。ガルファの巨大宇宙船アルデバランと、多数と言うか無数の機獣と共にサイド1宙域へ攻め込んで来た。敵の目的は、確実に電童とそのデータウェポンだろう。

 不幸中の幸い、シグコン・シップⅡは兵装その他の艤装は未完成だが、なんとか航行可能なレベルまでは出来上がっている。その未完成のシグコン・シップⅡは、急ぎ後方へと退避させた。

 

 宇宙空間に、アルテアの嘲笑が響く。

 

 

『フハハハハハハ!! 出てこい電童! 出て来なければ周辺宙域の人間どもが、皆殺しの憂き目に遭うぞ!』

 

 

 そして凰牙率いる機獣どもは、地球連邦軍のサイド1駐留部隊が布陣する中に突っ込んで来た。だが連邦軍を構成する幾多のジェガンやイチナナ式、それにカイラム級やクラップ級は、さっと左右に部隊を分ける。そしてその中央から、我々は敵を受け止めるべく、正面から突進した。

 そう、地球連邦軍外郭部隊、連邦宇宙軍独立部隊であるロンド・ベル隊を中核として構成された独立艦隊およびその所属機動兵器部隊。その名を『スタイシュッツ(鋼鉄の守護)』と言う。

 

 うん、名前決まったんだ。この名に恥じない様に、頑張らなきゃな。『わたし』は電童やヒュッケバインNext、マスター・ガンダム(セカンド)と共に最前衛に立って、凰牙と機獣どもに立ち向かった。




さて、部隊名決まりました。旗艦はあいかわらずラー・カイラムです。と言いますか、ロンド・ベル隊を中核として拡張された体裁を取っていますから、旗艦はそのまんまですな。
でもって、マスター・アジア師匠やワンセブンとシロウの3人は、ちょっと不安気で不満気です。何故って北斗と銀河に荒療治やろうかと考えてたら、まだやらない内にアルテアin凰牙やって来ましたから。仕方ないから戦場では丁寧にサポートしようと、電童を自分たちの隊に入れてます。

……でも師匠、まだマスター・ガンダム(セカンド)は慣らし運転中なんですがね。大丈夫でしょうか。
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