大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第053話:行って、帰って

 我々『スタイシュッツ』艦隊はブライト准将の座乗艦であるラー・カイラムを先頭に、シグコン・シップⅡ、最後尾に真ドラゴンと続き、左右にグラン・ガランとゴラオンが並走する形で宇宙空間を航行中だ。ちなみにその更に右手には地球連邦軍の艦艇が多数、左手にはジオン共和国に恭順という形を取って合流した元ジオン残党軍の艦艇が多数、連なっている。

 

 なお元ジオン残党軍艦艇の中には、旧ザンスカール帝国軍ベスパの艦艇も多数含まれている。それらの指揮官は、なんとドゥカー・イク氏だ。彼はザンスカール帝国臣民と部下の命を救うため、人身御供となって処刑される事を覚悟で連邦軍に降伏、投降した。

 しかしながら地球連邦としては、ザンスカールに最後に残された有力者である彼を、そう簡単に()っちゃうわけにもいかなかった模様。彼には生きて、ザンスカールの兵力を取り纏めてもらわなければならない。まあ民政分野ではバイクに(こだわ)り過ぎてあんまり役に立たない人ではあったので、彼の名の下に地球連邦政府から送り込まれて来た人員に任せる事になったのではあるが。

 

 そして今回の木星圏への遠征に於いてなのだが。ドゥカー・イク氏及び旧ベスパ人員の地球連邦政府への(みそぎ)と言う側面が1つ。そして事実上彼以外に旧ベスパ兵力を率いる事ができる将が居ないというのが1つ。この2つの理由で、ドゥカー・イク氏が旧ベスパ戦力を率いて参戦したと言うわけであった。

 そのドゥカー・イク氏だが、今現在部隊運用についてブライト准将と通信で相談していたりする。事に当たる前に準備を万端整えるのは、軍を率いる人物として好感が持てるな。以前とは印象が少し変わったかもしれん。

 

 

『……と言う事ですな、ブライト准将。我ら旧ベスパ部隊はジオン共和国軍と協力して、左翼より敵の機動要塞たる螺旋城のNフィールドを攻めるのですな?』

 

『その通りです。ただ流石に木星圏は遠すぎますからね。ガルファの動きはワープアウト後でなければ観測できません。今回は一応前回の木星圏での戦闘時に於ける、ガルファ螺旋城の防衛体制を参考に戦術を練りましたが……。

 一応艦隊全艦の記憶装置(メモリーユニット)に、複数の作戦を転送してあります。状況に従い、その中のどの作戦を開封して用いるか通達します』

 

『了解しましたぞ。なれど最終局面ではどちらにせよ、貴部隊の特機(スーパーロボット)を中心とした突入部隊に全てを任せる事になるのですな。いや、本音を言わせていただければ、我らの将来を(あがな)うためにも、可能な限り手柄をあげたい物ですが』

 

『いえ、それについては大丈夫でしょう。上の方々からも言質を頂いております。悪いのはインベーダー共だと』

 

 

 うん、そういう事だ。ザンスカール帝国が行った凶行について、たぶんフォンセ・カガチとかタシロ・ヴァゴとかが主導した部分も多分にあるんだろうが、それらについても幾ばくかの部分をインベーダーに罪を被ってもらう事になったらしい。まあ、コーウェンの奴が何時頃からザンスカールに潜り込んだか、なんてのは公式記録無いからね。

 まあ、我々が真ドラゴンを奪還して、コーウェンが戦場から逃亡したよりも後の話なのは確かなんだが。流石にそれより前の件とかまでインベーダーに罪を着せるのは難しいかと思うんだが、実際のところ悪い事した奴らは皆インベーダーに喰われて居なくなったからなあ。

 

 何にせよドゥカー・イク氏やらベスパ軍人たちは皆、インベーダーに寄生された上層部に騙された人たちって事になるそうだ。と言うよりも、これ以上の人類圏内部でのゴタゴタは御免だと言うのが上の人たちの総意なんだろう。

 

 

『ところで……。ブライト准将、そちらに超AIの『大鉄人17(ワンセブン)』という隊員が居るとの事でしたが……』

 

『む? ええ、彼はこちらの隊でも責任ある立場の一員なので、この通信も傍受してもらっていますが』

 

私事(わたくしごと)で申し訳無いのですが、少々彼に礼を言いたく存じます。話させていただいても?』

 

『こちらとしては、かまいません。ワンセブン!』

 

 

 おや、ドゥカー・イク氏が何を……。いや、あの件かな?

 

 

『ドゥカー・イク殿。『わたし』がワンセブンだ。もしや前回の『アレ』の件かね?』

 

『おお、ワンセブン君。その通りだ。君がわたしとわたしの部下に送ってくれた、あの『試作オーラ動力バイク』の件だ。いや当初は、ガソリンエンジンのバイクには流石に及ぶまいと思っていたのだが……。ガソリンエンジンのバイクとは、また違った味わいがあるものだな。

 ことに運転者の気合でパワーが上がるのが良い……。それに内燃機関ではないから、排気ガス問題も無いので、コロニー内で乗り回せる。商標名は『オーラ動力モーターサイクル』を略して『オラクル』だったね。……まさしく『神託(オラクル)』だ! 発売されたら買うとも!』

 

 

 うん、彼が処刑を免れたと聞いた後で、もしかしたら後々に伝手の1つにでもなるだろうかと考えて、物は試しとオラクルを3台ばかり贈呈したんだ。大型バイクのフレームに、オラカのシステムを組み込んだ奴を。

 

 

『いや、喜んでもらえて嬉しいよ。『わたし』は身長が50mほどあるから、普通は乗り物には乗れないのだがね。記録映像で見るなどして、バイク乗りと言うのは楽しそうだなと感じたよ。ふふふ。ただ、暴走族の真似事は避けていただきたいな、ははは』

 

『当然だとも。他に迷惑ばかりをかける様では、それはバイク乗りたちの未来を閉ざすも同然だからな』

 

 

 うん、喜んでもらえて良かった。そうだな、戦乱が終わったら『わたし』も何がしか商売でもやって見るのもいいかも知れないな。オラカやオラクルの製造販売とか、どうだろうな。

 

 

 

*

 

 

 

 そして我々の木星圏奪還艦隊は、ワープ可能宙域に達した。ブライト准将の(げき)が飛ぶ。

 

 

『これより我々の艦隊は、木星圏へのワープ航法に入る! あちらの宙域は既に奴らの勢力圏内だ! だが本作戦を成功させねば、人類に未来は無い! なんとしても木星圏を人類の手に取り戻し、ヘリウム3採掘を再開せねばならない! さなくば奴らガルファの思惑通りに、我ら人類は滅びの道を歩むであろう! そうはさせてはならない!

 我らの背中には、全人類、いやそれだけではない! 我らに協力してくれている、フリード星を始めとする宇宙共栄連合の星々など! 全てが、かかっている! 数億、数十億、数百億の知的種族の生命(いのち)のため! 勝利せねばならない! 諸君らの健闘を期待する!』

 

 

 多数の、無数の艦艇に増設された、外付けのワープ機関が唸りを上げる。いや、宇宙空間だから音は伝わって来ないが。しかしワープ機関の発する波動は、センサーで強く、強く、感じられる。そして木星圏奪還艦隊は、一斉にショートレンジのワープを行った。

 

 

 

*

 

 

 

 そして我々の艦隊は、木星圏近傍の宇宙空間を航行していた。シグコン・シップⅡ格納庫のヒュッケバインNextから、ちょっとばかり苛立たし気な通信が入る。

 

 

『よぉ、ワンセブン。ガルファども、全然来やがらねえなあ』

 

『ああシロウ……。今現在、可能な限りの手段を取って、敵機動要塞である螺旋城が存在するであろう、木星コロニー群跡を探査している。『わたし』もカタパルトで探査機(プローブ)を射出して、敵陣の様子を探査しようとしてはいるのだがね』

 

 

 目標宙域に、『わたし』の探査機(プローブ)がフライパスする形で到達するまでは、まだ30分ばかり必要だ。だがその他にも、光学望遠鏡や電波望遠鏡、その他各種センサー群で目標宙域の様子は探っている。

 

 

『……なあ、ワンセブン。なんか、俺の人工的なニュータイプ感覚によぉ……』

 

『どうしたね? 何か悪意でも感じられるのか?』

 

『いや、『今の』ワンセブンになら俺と同じ物が感じられんじゃねえか、って思うんだけどよぉ。……『何も感じられねえ』のが感じられるんだわ』

 

『!? ……確かに。とすると、まさか……。シロウ、済まんがちょっとブライト准将たちと相談して来る』

 

『お、おう?』

 

 

 そして『わたし』は急ぎ、ブライト准将と弁慶に報告する。

 

 

『弁慶、ブライト准将、まずいかも知れない』

 

『どうしたんだ、ワンセブン?』

 

『何か問題か?』

 

『いや、シロウと話していたんだが……。シロウが強化人間だと言うのは理解しているな? それで、シロウが言うには『何も感じられない』そうだ。無論、『わたし』もだ。アムロ大尉、シャア大佐(クィグたいい)、カミーユ君、ジュドー君、他ニュータイプの能力を持っている面々にも、これから確認を取ってみようと思っているんだが……』

 

 

 弁慶は怪訝そうに言う。

 

 

『ちょっと待て、それは(ガルファ)どもがとてつもなく高度な隠蔽技術を以てして、ニュータイプ能力者連中からすらも隠れている、って事か?』

 

『いや、まさか……』

 

 

 だが一方のブライト准将は、通信映像の中で眉を(しか)めた。彼は問いかける。

 

 

『ワンセブン、望遠映像や各種センサーでの探知はどうなっている? こちらの艦の中で、一番その手の能力に(ひい)でているのがシグコン・シップⅡだ。こちらラー・カイラムでは、まだ遠すぎて何も分からん』

 

『こちらの探知では、何もエネルギーの反応は無い。……まるで、何も居ないかの様だ』

 

『……まさか、な。いや、そのまさか、があるのか? 想定には確かにあったが……。だが、あり得るのか?』

 

 

 ブライト准将が懸念している事は、おそらく『わたし』も理解しているつもりだ。敵は人類では無い。機械帝国ガルファ、なのだ。つまり人類の常識や定石を、最初から無視して来る事もあり得るのだ。

 

 

『ブライト准将。作戦を中止すべきだと思う。木星圏のコロニー群跡に、引き連れて来たうちの3割を進ませ、残りの7割の艦隊で地球圏へ可能な限り早くショートレンジのワープを行うべきだ』

 

『な!? おいワンセブン! この作戦にゃ、どれだけの準備が……』

 

『……ワンセブンも、それが正解だと考えているのだな?』

 

『え゛!? ブライト准将!?』

 

 

 弁慶は悲鳴のような声を上げる。気持ちは解るが、この決断は一刻も早い方が良い。シロウのニュータイプ的な感覚に頼った判断であるが、『わたし』としては間違いでは無いと確信しているのだ。

 だがしかし、その超感覚的な根拠で軍を動かす事が難しいのも理解する。そうなると……。あと20分、それだけ待つことにしよう。

 

 

『ブライト准将、あと20分で『わたし』が射出した探査機(プローブ)が、目的宙域をフライパスする。そうすれば現地の様子が判明する』

 

『了解だ。そして現地の様子が予想通りであった場合は……』

 

『おそらく予想通りだと思うのだがね。その場合は、急ぎワープ可能宙域まで離脱し、最短で地球圏へショートレンジのワープを行うべきだ』

 

『木星圏へ残す3割の艦艇は、予定通り地球連邦軍宇宙艦艇より2割分、正規のジオン共和国軍艦艇より1割分だな?』

 

『当初の予定通り、そうすべきだな』

 

 

 そして我々は、じっと20分待った。やがて『わたし』の探査機(プローブ)が、元木星公社のコロニー群があった宙域を高速で通過する。探査機(プローブ)は現地の様子を、詳細に『わたし』に送信して来た。

 

 

『ブライト准将、弁慶、やはり我々が推測していた通りだった様だ。……ガルファ連中は、()()()()()()()()()

 

『やはり、か』

 

『なんだって!?』

 

『……弁慶、機械帝国ガルファの目的は、全宇宙の知的生命体の抹殺、だ。奴らが木星に居たのは、『そこがヘリウム3の採掘場所であった』ためじゃないんだ。無論、人類圏にとってヘリウム3が重要な資源である事は間違いが無い。

 だが奴らが木星圏に居たのは、あくまでそこに『殺すべき人類(あいて)(たむろ)していたから』に過ぎない。そこにデータウェポンが居るかもしれない、という理由もあっただろう。だが既にデータウェポンのうち4体は電童が、2体は凰牙が獲得している。あと1体はどちらにせよ謎の存在だ』

 

『あっ!?』

 

 

 弁慶が驚愕を通信に乗せる。そして真ゲッターのシステム上、弁慶への通信を聞いていただろう竜馬と隼人の舌打ちや歯ぎしりが、これも通信に乗って流れて来た。『わたし』は説明を続ける。

 

 

『もう奴らには、木星圏に居る必要性が無いんだ。奴らにとって人類は、いや知的生命体は、台所の黒い害虫かもしくはモグラ叩きのモグラの玩具みたいな物だ。奴らは木星の人類は一部を叩いたが大半は逃がしてしまった。となると次に奴らが狙うモグラが居るのは、何処だ?』

 

『そうだ。奴らの狙いはもっとも近場で人類が多くいる場所だ。そして火星の位置は、今現在木星からは遠い。となると一番手近なのは……』

 

『ブライト准将! まさか地球か!? く、まさかガルファめ、わずかの後詰めも木星圏に残さずに、全軍で行くとは……』

 

 

 通信映像の中で、ブライト准将が頷いた。そして彼は決断し、木星圏奪還艦隊全艦への通信を繋ぐ。

 

 

『木星圏奪還艦隊全艦に告ぐ! 無人機による先行偵察により、敵ガルファは木星圏を放棄している事が判明した! 予測されるガルファの行き先は、ほぼ間違いなく地球圏である!

 全艦の提督および艦長は、艦の指揮電脳(コンピューター)記憶装置(メモリーユニット)の、ファイルナンバー『AX-299B』を開封し、その指示に従え! 木星圏進駐部隊に該当する艦は、現状のまま前進し、木星圏を確保し予定通り進駐を行え! それ以外の艦はファイル中の作戦行動に従い、軌道変更! ワープ可能宙域に到達次第、ショートレンジワープで地球圏へ取って返すぞ!』

 

 

 各艦、各小艦隊から了解の返答が来る。そして我々『スタイシュッツ』を中核とした艦隊は木星圏進駐艦隊と別れ、軌道変更した。急ぎ地球圏に戻り、防衛体制を整えなければならない。……間に合えばいいが。

 

 

 

*

 

 

 

 そして我々の艦隊は、地球圏近傍の宇宙空間へとワープアウトした。艦隊の中で最も通信機能に優れているのはやはりシグコン・シップⅡだ。それ故にシグコン・シップⅡはブライト准将のラー・カイラムからの通信を中継し、レーザー通信で地球連邦宇宙軍ルナ2基地と連絡を取る。幸いな事にムバラク大将が現状ルナ2基地に居てくれたし、地球のキャンベル大将とも通信を中継してもらえた。

 ちなみに通信内容は、木星圏奪還艦隊を構成する各々の小艦隊の艦隊旗艦や、主要艦艇には中継されている。シグコン・シップⅡを運用している『わたし』も、その内容は知る事ができた。ムバラク大将、キャンベル大将が口々にブライト准将に向けて語る。

 

 

『ブライト准将、よく戻って来てくれた』

 

『うむ。まさか幾つかの想定のうち、こうはなるまいと思っていたパターンの行動をガルファが取るとは……。予想では、人類圏を締め上げるためにも木星圏を確保し、ヘリウム3の採掘を妨害するかと思っていたが』

 

『……と言う事は、既にガルファは地球圏へ攻撃を? 我々が木星圏へ到達したときには、奴ら(ガルファ)は木星圏を放棄していたので、進駐艦隊を置いて我々は急ぎ取って返したのですが』

 

 

 遠距離による通信タイムラグの後、映像の中のムバラク大将、キャンベル大将は重々しく頷く。そしてキャンベル大将が語った。

 

 

奴ら(ガルファ)は……。機動要塞螺旋城は、月を強襲。月面都市フォン・ブラウンに落着した。ガルファはそこを中心に、月面の1/2を支配下に置き、今なおその支配エリアを拡大しつつある。我々はそれを食い止めるので精一杯だ』

 

『!!』

 

 

 ブライト准将の表情が強張る。ガルファめ、月を前線基地化して地球圏を滅ぼすつもりだな。だが、そうはさせるか。『わたし』はシグコン・シップⅡの光学望遠鏡を操作して、月を視野に入れる。月は何時もと変わらずに、白銀色に輝いていた。




アナハイムの軍事部門、涙目。いや、アナハイムの本社は北米ですし、大損害ではありますが潰れるほどじゃないですよ。アナハイムはスプーンから宇宙戦艦までがキャッチフレーズですが、基本的に軍事部門ってのはそこまで儲からないと相場が。実際、アナハイム社員を食べさせているのは、民生部門ですからねー。
でももしかしたら、軍事産業としてのアナハイムは終わったかも知れません。失われた秘匿技術データとか、どれだけになることやら。

いや、そんなお気楽な話じゃないんですけれどね。フォン・ブラウン市ってことは、それこそ甚大な数の民間人被害者が出たことでしょうし。あとアナハイム・フォン・ブラウン支社の工場が失われたって事は、ジェガンの供給がおそらくガタ減りすることでしょう。
本作でジェガンのライバル的立場にあるのはイチナナ式ですが、どちらかと言うとイチナナ式は超合金Zメッキとか光子力エンジンとか、超はつかないけれど高級品ですよね。ジェガンと比較して、おそらくハイローミックスのハイの位置に居たんじゃないかと。

……ジェガンを代替するローの機種、どうにかしないといけません。どうしようかなあ。
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