現在、機械帝国ガルファの機動要塞である螺旋城は、月面フォン・ブラウン市だった廃墟に突き立つ形でその威容を以て、周囲を
ちなみに我々『スタイシュッツ』は、何処かの戦線が危機に陥ったりした場合に備えて待機中だ。場所としては、ゼダンの門……。かつて旧ジオンの宇宙要塞ア・バオア・クーと呼ばれていた場所であり、グリプス戦役時代にアクシズと衝突して真っ二つになったアレだ。
真っ二つになり中身もグチャグチャになる大損害を受けたとは言え、一応は多数の施設がある宇宙要塞だ。現在は分断された破片を再度継ぎ合わせて、ある程度の機能復旧が為されている。グリプス戦役時代以前と比べると機能的に大きく劣る拠点ではあるが、月面からも近く、『スタイシュッツ』の規模であれば充分と言えよう。
「ブライト准将、しかしフォン・ブラウンが潰されたのはマズいんじゃ無いんですかい? いや、あまりに多数の民間の死者が出たって事もそうなんですが……」
『その通りだ、弁慶。アナハイムのフォン・ブラウン支社が工場諸共に潰された事で、ジェガンの供給に支障が出ている。アナハイムは他の工場にジェガンの生産ラインを新設してはいるし、ジェガンのライセンス生産をしていた他企業も必死に増産してはいるが……。
それでもこれまでの生産数の、20%にも満たない。またフォン・ブラウンに軍需関係の開発部門が集中していた事もあり、アナハイム製MSや艦艇の新規開発は今後、絶望的だ』
「こりゃあ……。参りましたなあ……」
アナハイムは黒いところも多々あるが、地球圏を支えている企業である事も確かだ。そして連邦軍に採用されていたアナハイム製の優秀機、ジェガンの数が今後不足するとなると……。非常にまずい事態だ。
『不幸中の幸いと言っては何だが……。ザンスカール帝国が全面降伏し、地球連邦に吸収合併された事で、ザンスカール帝国の持っていた兵器の生産ラインが丸ごと手に入った。現状その生産力を全て単一機種に回し、全力で生産する事でジェガンの代替機として充当している』
『これは……。ブライト准将、これはゾロアット、かね?』
その『わたし』の問いに、通信映像の中のブライト准将は頷く。『わたし』はソレの仕様情報をチェックした。
『なるほど……。外観としては顔面の複合ツインアイの全面にバイザーを装着し、センサー系を防護すると共に連邦軍伝統の
そして
『その通りだ。現状この連邦版ゾロアットを宇宙での主力機に据え、宇宙にあるジェガンは回収して地球に降ろす事で、各方面を何とかしている。ゾロアットは宇宙用だからな』
「塗装も、従来の連邦版カラーになってますな」
『それと並行して、ジェガンに代わる正式な新型の開発も、連邦軍主導で行われている。それについて、ワンセブンにも話が来ているな』
ブライト准将がラー・カイラムのブリッジクルーに何か合図をすると、シグコン・シップⅡのシステムを通して『わたし』のところに『部隊外秘』の付箋付きで重要メッセージと幾つかの機体データが送られてくる。それを開封して見ると、ゴップ議長とキャンベル大将の連名で、『わたし』の能力を次世代機開発に貸して欲しい的な内容が記載されていた。
『なるほど。では送られて来た機体データを参照して、実機を造ってみるとしようか。ほう? これは興味深いな』
「どうした? ワンセブン」
『いや、送られて来た機体データの中に、シロウのヒュッケバインNextの技術を現状解析できた分だけは使い、足りない部分は地球連邦の技術で代替した機体が入っているんだ。なるほど、これは興味深い……。名称は、ヒュッケバインMM……
「他にはどんな機体があるんだ?」
『ゼット・ライト氏が設計に参画した、最新型量産オーラ・バトラーのズワァースMMがあるな。これは当初より宇宙対応を念頭に置いて設計された物で、純地球連邦製オーラ・バトラーの3番目だ。なお1番目2番目の機体はあくまで試作実験機だから、量産の候補にも上がっていないがね』
ふむ、だがいずれの機体も少々……。一部機体は技術的挑戦が行き過ぎて、大量生産には向かない物になっている。そして他の機体は、今度は無難にまとめて量産性を維持しようと、逆に性能面で物足りなくなっている。
とりあえず、送られて来たデータ通りに実機を造ってみるのは当然として、だ。『わたし』なりに各々の設計に、手を入れてみるとするかね。
*
火星圏……。今回の戦役に於いて火星とその周辺宙域は、はからずも最後方領域となって人類圏にて最も平和な世界となっていた。だがそれも過去の事になりそうである。
ブライト准将が、キャンベル大将との通信に於いて難しい表情を見せている。その通信は、シグコン・シップⅡの『わたし』や弁慶、グラン・ガランのシーラ女王、ゴラオンのエレ女王たちにも公開されていた。ちなみにシグコン・シップⅡの
『……つまりキャンベル大将。我々『スタイシュッツ』に、一時的に地球圏を離れて火星圏へ、疎開船団の出迎えに行けと言う事ですね?』
『うむ。つい先頃、火星の地球連邦総督府から緊急の通報があった。火星にも、おそらくは異星人の物と思しき艦隊が出現し、それらが無警告の戦闘を仕掛けて来たとの事だ。火星の連邦軍は、士気、装備、練度に至るまで地球圏のそれとは比較にならぬほど劣悪だ。とても太刀打ちができるはずも無かった。
これが火星より送られて来た、その敵との戦闘記録の映像データだ』
そして通信画面が切り替わる。そこには全高16m強の深緑色をした、人型の兵器が映っている。それは火星の連邦軍のGMⅢやネモを、次々に撃破して行く。『わたし』に表情があったら、目を丸くしていただろう。その機体に、『わたし』は前世のアニメで見覚えがあったのだ。
その深緑色の人型兵器が、映像の中で声を上げる。それは破壊されたシェルターから逃げる人々を見つめていた。
『
『
『
『
……うん。こいつら、劇場版マクロスのゼントラーディ―軍機動兵器、パワードスーツであるヌージャデル・ガーだ。
『
『
そしてヌージャデル・ガーどもは泡を喰ったかの様に、必死になって撤退して行った。そこで記録映像は途切れる。キャンベル大将は溜息を吐きつつも語った。
『奴らに何があったのかは、不明だ。だがこれ以後、奴らは火星への手出しを最小限に控えている。そしてそれに少々遅れる形で、この異星人たちとはまた別の異星人ではないかと思われる艦隊が火星圏に現れ、そして先に現れた艦隊と戦闘行動を行ったのが確認された。
火星総督府はこれを好機と捉え、火星がガルファに襲われた場合の策の1つであった地球圏への火星人民の疎開策を実施することに決定。急ぎ疎開船団を用意して、どうにか出立準備を整えた。諸君らには、この船団を迎えに行って欲しい』
『了解しました。ただ、月のガルファは大丈夫なのでしょうか?』
『現状、ややこちらが押し返す程度の戦力バランスにはなっている。どうにかしてみせるよ。それとだな……。
デューク・フリード殿下は、そちらにおられるな?』
「はい、キャンベル大将」
シグコン・シップⅡの
『殿下。この新たな敵である異星人について、宇宙共栄連合は何か情報を持っておられませんでしょうか? もし存在するならば、可能な限り開示していただきたいのです』
「映像記録から、今グレンダイザーの
『よろしくお願いいたします、殿下』
「……回答が出ました。我々フリード星及び宇宙共栄連合とはこれまで接触の無い勢力でしたので、完全に確実とは言えないのですが、8割以上の確率で……。彼らはゼントラーディ、もしくはメルトランディと呼ばれる異星人たちです。
ゼントラーディもメルトランディも、古代に滅びたプロトカルチャーと呼ばれる異星人により生み出された戦闘兵器としての民族で、ゼントラーディは男性のみ、メルトランディは女性のみの種族です。そして遠い過去より、互いを滅ぼすためだけのために、周囲を巻き込んで戦いを続けている、らしいです」
キャンベル大将は、愕然とする。地球が機械帝国ガルファに攻撃を受けている今現在に於いて、まさしく迷惑千万としか言いようが無い。
『なんと……』
「今まで宇宙共栄連合とは、ガルファの領域を挟んで向こう側に居た存在でしたので……。ですが最初に火星を攻撃した異星人は、使用する兵器の姿から、ゼントラーディの可能性が高いですね。で、あるならば……次に出現し、ゼントラーディと戦いになった異星人はおそらくメルトランディかと」
「なあ、そいつらにとって、互いが互いの敵だって言うならよ。
「弁慶、それは期待薄だ。宇宙共栄連合に伝わって来る情報では、巻き込まれただけの星々も、敵性存在と判断されたのか、攻撃を受けて滅ぼされている模様だ」
「なんてこったい」
なんてこったい、とは『わたし』が言いたい。この世界にも、ゼントラーディとメルトランディが居たとは、大きな計算違いだ。つまりはこの世界は、『SDF-1マクロスが、地球に落ちて来なかった』という可能性分岐した世界だったわけか。
ただ少なくとも、マクロスが落ちて来なかったために一部の技術はマクロス世界線よりも劣ってはいるが、一部技術はマクロス世界線をも超えている。いや、この世界は色々な地球内勢力との戦いの他、ベガ星連合軍の侵略とかも超えて来ている世界だからな。
……問題は、ゼントラーディ軍メルトランディ軍の物量だ。真正面からぶつかったら、地球も火星も溶岩の塊になるまで艦砲を撃ち込まれて、終わるぞ。それをどうにかするには……。マクロスが落ちて来なかったって事は、アレだ。地球人類の中に、リン・ミンメイとか居ない可能性高いぞ。どうすればいいんだ。
とりあえず、いつもの未確定情報だと言う前提を付けて、弁慶とかに超時空要塞マクロス劇場版の話をしておくか……。すまん弁慶。一緒に悩んでくれ。
……そう言えば、以前に眩惑のセルバンテスが言っていたな。ビッグ・ファイアからの伝言だとかで、『ガルファを倒しても、それで終わりではない』とか。この事を言っていたのか? それともまだ何かあるのか?
*
とりあえず火星圏への出立前に、『わたし』が造ったポストジェガンの試作実験機群を連邦軍に引き渡した。まずはあちらから渡された設計データ通りの機体を、1種類3機ずつ。そして『わたし』が手を加えて改良した機体を、そのデータと合わせて1種類3機ずつ、だ。
あとは一応実戦試験もしたいので、ヒュッケバインMM改や
更にはズワァースMM改については、これはけっこうな数を造ってグラン・ガランとゴラオンに送りつけてみた。聖戦士向けでは無いものの、これのオーラ増幅器は最新型なので、コモンの
そんなこんなで色々とやる事を片付けて、我々『スタイシュッツ』は火星圏へ向かう事になった。ラー・カイラムを先頭にしてシグコン・シップⅡ、真ドラゴン、グラン・ガランとゴラオンが続き、各々ワープ可能宙域を目指して航行する。
ワープ機関搭載艦にとって、このワープ可能宙域への航行時間がいちばん
と、その時である。『わたし』の意識に、何かしら強大な『圧』が感じられた。同時に
『おいワンセブン! このまんま進むと、ヤベえ! 左に舵を切れ!』
『
『
無論、シグコン・シップⅡの
そこへブライト准将のラー・カイラムから通信が入った。
『こちらブライトだ! 『スタイシュッツ』全艦に告ぐ! 全力で左舷方向へ回頭、前方に『来る』物を
そうか、ラー・カイラムにもウッソ君というニュータイプ能力者が乗艦していたな。たぶんブライト准将は、彼から警告を受けた、か。
そして『スタイシュッツ』艦隊が左方向に舵を切った直後である。我々から見て、右舷の空間が裂けた。いや、そうとしか言い様が無いんだ。空間そのものにヒビが入り、そこから爆発的なエネルギーが噴出したんだ。
幸いに、艦隊右方向を航行していたグラン・ガランもなんとかそのエネルギー流を避ける事ができた。エネルギー流の余波は、オーラ・バリアでなんとかかんとか防いでいる模様。
「こちらセンサー手! エネルギー流終息!」
「副長だ! 損傷チェック!」
「シグコン・シップⅡ、異常ありません! ……あ、あれを!!」
そこには、あちこちに破口を開けた、大きく損傷した白い巨大な
やれやれ。これは厄ネタか? それとも福音になるか? 『わたし』は呼吸器官も無いのに、溜息を吐きたくて仕方が無かった。
とりあえず、ポストジェガンにはすぐに生産できる機体と言う事で、暫定的に
なお
ちなみにヒュッケバインMMは
また
でもって、マクロス落ちて来ないのに、出て来るんじゃないと言いたい勢力の出現です。火星に出現したゼントラーディと、それを察知して現れたメルトランディ。まだ規模は先遣隊と言いますか、ゼントラーディはブリタイ7018さんの艦隊だけですかね。と言いますか、その更に先遣隊だけ。メルトランディの方も、先遣隊だけ。エキセドル4970さんも、たぶん苦労人臭がひどい。
そして最後に現れた