大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第055話: 白き特機の乗り手たち

 我々『スタイシュッツ』艦隊は、火星近傍宙域へとワープアウトする。ブライト准将は、地球連邦の火星総督であるカーティス・ケイジ氏と早速に通信を繋ぐ。

 

 

『こちら地球連邦軍独立部隊、『スタイシュッツ』部隊司令、ブライト・ノア准将です。カーティス・ケイジ総督、お迎えに上がりました』

 

『来てくれたか……。しかもあの名高いブライト・ノア自らの出陣とは……。火星人民を代表して、御礼申し上げる』

 

 

 このカーティス・ケイジ総督なんだが、あくまで噂なんだが実は火星ジオンの重要人物であった、チェスターJr.じゃないかって話がある。結局火星圏は地球圏の支援が無いと、色々と苦しかった様だからね。

 色々あってジオン共和国の仲介により、連邦と不承不承に和解。そしてなんだかんだあって名前を変えて今に至る、との話なんだが実際のところは分からない。確かなのは、彼が正式に地球連邦政府の委任を受けた、火星総督府の代表だって事だ。

 

 

『既に船団の用意は整っている。ただ、船団は基本的にワープ機関を搭載していない。地球圏までは現在の火星と地球の位置関係からして、かなりの時間が必要だろう。

 その間、あの異星人たちから疎開民たちを護るだけの力が、我々には無い。地球連邦政府から配備された型落ち機種や、かつてのジオン・マーズ時代のMS(モビルスーツ)まで持ち出してはいるが……』

 

『それについては、重々承知しております。地球圏までは我々『スタイシュッツ』が矢面に立ちましょう』

 

『うむ。だがこちらの軍も、せめても支援なりはさせてもらおう』

 

『それでは我々は、所定の軌道を通って……』

 

 

 うん、とりあえず火星総督府との話し合いは何とかなっているな。現状、ゼントラーディ軍もメルトランディ軍も、姿を見せてはいない。……このままどっか別宙域に行って、勝手に相互で戦っててくれないかな。いや、現実逃避してはいかん。冷静にならないと、な。

 

 

 

*

 

 

 

 火星圏への航行中、『わたし』はワープ前に拾った白亜の特機(スーパーロボット)と、その操縦士(パイロット)たちについて、シグコン・シップⅡ艦内の意識端末を介して様子を見ていた。……この特機(スーパーロボット)、今まで言葉を濁していたが、いつまでも現実逃避していても仕方がない。

 そう、この機体は八卦ロボの一、天のゼオライマーだ。漫画版ではなくOVA版だ。確かにこの機体ならば、次元連結システムの暴走か何かで独力で異世界間の壁を破って突然この世界に出現しても、そうはおかしくは無いだろう。……問題はこの機体の操縦士(パイロット)、秋津マサト君だ。彼が『どの時点の』マサト君なのかで、色々とこちらの対応も変わらざるを得ない。

 

 ちなみにゼオライマーの副操縦士(サブパイロット)である氷室美久嬢だが、『わたし』が感知した助けを求める思念を発していたのは、おそらく彼女である。人造人間(アンドロイド)であるはずの彼女だが、精神(ココロ)がある以上は何ら不思議でもないか。

 ……ぶっちゃけた話、『わたし』が他ロボ(たにん)の事を言えるはずも無いし、な。まあだが、その美久嬢も今現在事情聴取に応じてくれてはいない。ひたすらに病室にて、意識を失ったままのマサト君に付き添っているだけなのだ。自身とマサト君の名前を明かすくらいは、してくれたんだが。

 

 だがそろそろ、マサト君が目を覚ましそうだ。彼をチェックしている医療機器からのデータに、彼が覚醒する兆候が表れている。

 

 

「う、うう……」

 

「マサト君! マサト君!?」

 

「み、美久……。ここ、は? 僕らは……」

 

 

 そこまで言った瞬間、マサト君は目をカッと見開き、愕然とした表情を見せる。

 

 

「何故、何故僕は生きている!? あの時、僕はゼオライマーといっしょに自爆を……」

 

「マサト君! ……マサト君、落ち着いて話を聞いて。ここは、わたしたちが生きていた世界じゃない様なの。自爆したときの次元連結システムの暴走で、次元の壁を越えて隣接……かどうかは分からないけれど、並行異世界群の1つに落ちてしまったらしいわ」

 

「なんだって!? そんな……」

 

 

 悄然として黙り込んでしまったマサト君に、美久嬢はどう接していいのか分からない様子で、悲し気な顔を見せる。……とりあえず、彼らからきちんと話を聞かないといけない。『わたし』は病室の意識端末を介して、彼らに話し掛けた。

 

 

『……目が覚めた様だね。』

 

「!!」

 

「だ、誰だ!」

 

『ああ、驚かせて済まない。『わたし』の名は『大鉄人17(ワンセブン)』。ワンセブン、と呼んでくれ。『わたし』は君たちが乗っているこの宇宙母艦にドッキングして制御している特機(スーパーロボット)だ。君たちからすると、人工知能(AI)という事になる。この世界での分類からすれば、超AIと言うところかな』

 

 

 2人は目を見開く。ことに美久嬢の方は、人工知能(AI)というところで驚きと悲しみが入り混じった表情を浮かべた。まあ、さもありなん、だ。彼女は人造人間(アンドロイド)として作られて以来、その事であまりいい事は無かっただろうからな。

 そしてなんとか落ち着きを取り戻したマサト君が、(おもむろ)に口を開く。

 

 

「宇宙母艦、ですか?」

 

『ああ。我々の艦隊が地球圏の近傍を航行中に、空間を引き裂いて君たちの特機(スーパーロボット)……ゼオライマー、だったね。それが出現したんだ。それと共に破壊的なエネルギーも噴出したんだが、なんとか回避できた。お互いにとって、幸いな事にね。

 そして我々は、君たちを救助した。だが我々も任務中で時間的余裕がまったく無くてね。君たちを連れたまま、火星圏へワープするしか無かった』

 

「火星圏……。いえ、助けていただいて、ありがとうございました」

 

 

 マサト君は正直なところ少しばかり嬉しくなさそう、と言うよりも悲し気であったが、ちゃんと礼を言う。……うん、これは木原マサキじゃない、秋津マサト君だな。確実に。ただし自爆したと言うからには、まず間違いなく木原マサキを内に飲み込んでしまった後の、マサト君だろう。

 

 

『君たちは自爆したと言ったね。無理にとは言わないが、何があったのか話してもらえるかね? いや、気が進まないならば別にかまわないのだが』

 

「「……」」

 

 

 マサト君と美久嬢は、しばし黙り込む。しかしやがてマサト君が、ポツポツと語り出した。

 

 

「実は……。僕はあのロボット、ゼオライマーを操縦するために生み出された、その開発者である木原マサキという科学者のクローン人間なんです……」

 

「マサト君……」

 

 

 そしてマサト君は、彼がこの世界に来るまでの全ての事を話してくれた。それによると彼のこれまでは、OVA版『冥王計画ゼオライマー』のストーリー通りであったらしい。はっきり言って、反吐が出るぐらいに(ひど)い、と言うよりも(むご)い話だ。彼に何の罪があると言うのか。何故彼が、ゼオライマーと共に自爆するまで追い詰められねばならんのか。

 『わたし』は、彼に向かい言葉を掛ける。

 

 

『マサト君……。よく頑張ったな』

 

「え……」

 

『過去の亡霊の記憶や知識を植え付けられ、君にまったく責任の無い事で責められ危害を加えられ……。その中で、君は必死に戦った。そして見事決着をつけた。その事で、君のいた世界を救ったんだ。

 ……君は頑張った。本当に、よく頑張ったな。偉いぞ』

 

「……!!」

 

 

 そしてマサト君は、(うつむ)くと静かに泣き始めた。『わたし』がアニメの中の出来事で知る限り、マサト君はゼオライマーが関わる事で、誰にも、誰にも褒められてはいない。あれだけ頑張ったのに、誰もその事を認めてくれてはいなかったのだ。

 戦うのが当然、と。ゼオライマーに乗る以外に何ができる、と。彼の周囲には、彼自身を含めてさえも、彼を褒めてくれる者は誰一人いなかった。誰もいなかったのだ。

 

 あっと……。美久嬢もその事に気付いたらしい。彼女は彼女で彼の気持ちに寄り添う事はしていたはずだ。だがまだ精神構造(メンタリティ)が少年の物でしかない彼に対し、ちゃんと頑張った事を認めて褒めてやった事は、無きに等しかったのではないか。

 その事に気付いたらしく、美久嬢は愕然とした表情をし、次に悄然と落ち込んでしまった。これはどうした物か。彼女は彼女で、アンバランスなところがあるからなあ……。

 

 そこで『わたし』は、頼りになるか分からないが増援を呼ぶ事にした。

 

 

 

*

 

 

 

 美久嬢は、今の今までマサト君に付きっ切りだったので、人工知能(AI)であっても少し休息と気分転換はあって(しか)るべきだ、と強引に休憩を取らせた。ああそう言えば彼女が人造人間(アンドロイド)である事は、『わたし』が自分のセンサーで最初から理解していた、との言い訳を以てしてマサト君や美久嬢には告げてある。

 とりあえずシグコン・シップⅡ内の、艦外が見える展望ラウンジで、彼女に休憩を取らせた。美久嬢は物憂げな表情を浮かべ、艦の外に見える火星を眺めている。

 

 そしてそこに、『わたし』が呼んだ増援が現れた。

 

 

「こんにちはです! ワンセブンから聞きました! 氷室美久さんですね!」

 

「!? 貴女、は?」

 

「はい! わたしはLarge Intelligence System Agents、LISA、リサです! 簡単に言えば、生きたコンピューターです! わたしの同類は数少ないので、会えて嬉しいのです!」

 

「!? あ、貴女、も?」

 

 

 うん、リサ君を呼んだんだ。先ごろ宇宙空間で拾った君の同類が、ちょっと元気を無くしてるから、元気づけてやってくれって。……どうにかなるかな?

 

 

「……美久さん、元気ないです。どうしましたか?」

 

「あ、いえ……。少し自分が至らなかったところを、思い知らされて……」

 

「うーん、それはある意味で理解が容易いです。わたしも以前、マスターを日本語で『主人』と呼んだ事で、マスターと恋仲の女性に嫌な思いをさせてしまった事がありますです。はい。日本語の慣用表現をもっと丁寧に学んでおけば、その様な事は無かったはずですから」

 

 

 美久嬢は、眉を寄せて(しか)(つら)になるリサ君の様子に、苦笑を漏らした。うん、多少は何とかなって来たかな? リサ君は続ける。

 

 

「ですが! 過去にかまけていても、あまり意味は無いのです! 過去を『償う』事が必要な場合も多いですが、それより大切なのは、過去の『二の舞を演じ』ない事なのです!」

 

「!?」

 

「幸い『わたしたち』の様な存在には、それが容易な素地があるのです! いくら償ったところで、取り返しがつかない物は多いですが! 幾度(いくたび)も同じ失敗や過ちを犯すのは、それ以前の問題です!」

 

 

 力説するリサ君に、ようやくの事で美久嬢は微笑を浮かべる。そして美久嬢は言った。

 

 

「ありがとう、リサさん。……ちょっと行くところがあるから、これでごめんなさい。それと……ワンセブンにも、ありがとうと伝えてね」

 

「はい! 了解です! ただワンセブンはたぶん知ってると思います! あのひとは艦の管理者ですから、艦の随所に意識端末があるので!」

 

「そう……。じゃあ、ここで言えば彼に伝わるのね? ありがとうございます、ワンセブン。リサさんを呼んでくださって。それじゃ」

 

 

 そして美久嬢は、踵を返してマサト君の病室へと小走りに駆けて行った。『わたし』は失笑を漏らす。

 

 

『ふふふ、やれやれ。美久嬢には全部バレていた様だね』

 

「彼女は少し会話しただけでも、聡明だと分かりますです、はい! ワンセブンの様な理系に偏った頭の持ち主では、彼女に秘密裏に事を運ぶのは無理っぽいと推察するのです」

 

『……そんなに『わたし』は、分かりやすいかね』

 

「はい!」

 

 

 そうかー。分かりやす過ぎるか。少しショックを受けた『わたし』だった。

 

 

 

*

 

 

 

 そして我々『スタイシュッツ』艦隊は、幾種類もの長距離宇宙船で組まれた船団を護衛して、火星圏を離脱しつつある。無論の事これらの船団は、火星より逃げる火星民たちを乗せた、疎開船団だ。幸いなことに、『わたし』がカタパルトで超高速射出した探査機(プローブ)での超遠距離偵察によると、ゼントラーディ軍とメルトランディ軍は、火星から離れた場所で互いに撃ち合っている様子である。

 シロウが格納庫のヒュッケバインNextの前で、呟く様に言う。

 

 

「今のうちに、できるだけ速度と距離を稼いでおきたいわけ、か」

 

『そうなのだがね。だがシグコン・シップⅡはともかくラー・カイラムや真ドラゴンあたりでさえも、ゼントラーディ軍やメルトランディ軍の標準戦艦よりも、航宙性能では一歩も二歩も劣っているらしい。オーラ・バトル・シップに付け焼き刃で宇宙航行能力を詰め込んだ、グラン・ガランやゴラオンでは、なおの事。

 それに我々は、疎開民の船団を護らなければならないからな。あの船団は民間船舶が大多数だ。流石に軍用艦とは能力が違いすぎる。一番遅い船は、グラン・ガランよりも遅いんだ』

 

「……なんとか、そいつらに被害出さない様に地球圏まで連れていかなきゃ、なあ」

 

 

 『わたし』は、安心した。シロウは何時になっても、シロウだった。困難な状況にあっても、護らねばならない物を間違えたり忘れたりはしていない。

 

 

『ああ、その通りだ。何としても……!?』

 

 

 そして『わたし』は、急ぎ警報を鳴らす。この警報は、『スタイシュッツ』の全艦隊に鳴り響いているはずだ。シロウが叫びつつ、ヒュッケバインNextの操縦席(コックピット)へと飛び込む。

 

 

「来やがったか!?」

 

『ああ、間違いない! 敵襲! 敵襲! 全機動部隊隊員は、所定の機動兵器に搭乗! 発艦の準備を整えつつ、指示が届き次第に発進せよ!』

 

 

 シグコン・シップⅡのセンサーには既に、後方は5時方向と8時方向より迫りくる、2つの小艦隊の姿が映っている。奴らは機動兵器も発艦させ始めていた。こちら側も順次、準備が済んだ機体からカタパルトで射出されている。

 センサーで見遣ると、疎開船団のうち大型船から、GMⅢ(ジム3)、ネモ、ハイザック、RFザク、RFドムなどが出撃して来るのが見えた。だがほとんどが古い型落ち機体。あまり頼りにするわけにも行くまい。

 

 

『シロウ少尉、進路クリア! 発進どうぞ!』

 

『シロウ・サハラ少尉! ヒュッケバインNext! いっくぜえええぇぇぇ!!』

 

 

 シロウのヒュッケバインNextが、左舷重力カタパルトより射出される。それとほぼ時を同じくして、『わたし』もまた艦上面のドッキングラッチを解除し、飛行ワンセブン形態で射出された。

 

 

【こちらワンセブン。出撃する。以後のシグコン・シップⅡ指揮は副長に、操艦は操舵手に任せる】

 

『こちら副長、了解! 指揮、受け継ぎます!』

 

『こちら操舵手! アイハブコントロール!!』

 

 

 そして『わたし』は弾丸もかくやと言う速度で射出されると、その速度のまま戦闘飛行ワンセブン形態に変形。『わたし』を先頭にシロウのヒュッケバインNext、北斗少年と銀河少年の電童、デューク・フリードとひかる女史のグレンダイザー・ダブルスペイザー装備がダイヤモンド編隊を組む。

 なんとしても、疎開船団を護らねばならない。幸いと言っては何だが、奴らは小艦隊2つと言う微妙な戦力だ。だが何故だ? 奴らは……ゼントラーディかメルトランディかは分からんが、何故その様な中途半端な戦力でこちらに攻撃を?

 

 その疑問は、『わたし』の中に延々残り続けた。




さて、例の白い特機(スーパーロボット)ですが、やっぱり皆さんが思った通りにゼオライマーでした。『巨大な』と表現したせいで、『50mじゃ、巨大って言うかなあ』って感じで別ロボットを想定した方も多かったみたいですが。でもワンセブンからしたら、自分と同じサイズってだけで充分巨大だと思うんじゃないですかね。この世界ってMS(モビルスーツ)やマジンガー系が主流ですし。

で、ゼオライマー観直してみたんですけど、マサト君って(むご)い目に遭ってますよねー。エヴァのシンジ君ですら、褒めてくれる人は居たと言うのに。観直して見たら、誰も『よくやった』の一言も無いじゃないですかー。見落としてなきゃ、ですが。
それに彼は、マサキの過去にやった事すらも自分の罪として思い込んでるみたいですけど……。クローンって言ったら、アレじゃないですか。年齢こそ違うけど、双子といっしょ。双子って、同一人物ではあり得ない。遺伝子が同じなだけの別人ですよ。その別人の知識と記憶を無理矢理に頭に押し込まれて、その罪を無理矢理に背負わされるって、何の拷問。
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