大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第058話:覚醒、傷だらけの白亜の巨兵

 戦いはなおも続いた。疎開船団のヘリウム3タンカー群の近傍には、アムロ大尉、シャア大佐(クィグたいい)のサイコΞガンダム2機の他、既に『わたし』やシロウのヒュッケバインNext、カミーユ君のサイコΖガンダム、ファさんの百式R、それにヨナ少尉のC型装備に換装されたナラティブガンダムと言ったサイコフレーム搭載機体が集まっている。

 

 アムロ大尉が音頭を取って、思念で叫んだ。

 

 

(みんな! 俺に『合わせて』くれ! 意志力を束ねるんだ!)

 

((((((了解!))))))

 

 

 アムロ大尉の思念を他の面々の思念が取り巻き、同調する。各々の機体のサイコフレームを発動させてサイコ・フィールドを発生させる。それはゾルタンのⅡネオ・ジオングが発生させるサイコ・フィールドを若干ながら弱めさせた。

 ……感じる。タンカー群に積まれているヘリウム3のエネルギー準位が、臨界発生しないレベルにまで落ちる。だが死力を振り絞ったゾルタンの力によって、再度エネルギー準位がじわじわと上昇し始めた。

 

 馬鹿な、これだけの数の最強格のニュータイプ能力者が居るのに! そこまでゾルタンは、この世界が憎いのか!

 

 

『ああ、憎いね! 失敗作だってなあ! 見捨てられりゃあ傷つく! 腹だって立つんだよ! 赤い彗星の模造品! 代用品! その失敗作だぁ!? 冗談じゃない! 何がジーク・ジオン、何がサイド共栄圏だ! そのために全部犠牲にされてきた! 憎しみ以外に、どんな気持ちを抱けって!?』

 

 

 なんだと! 『わたし』の思念まで読み取ったか! くそ、あと一押し、何かが……。

 

 

『く、駄目だ! サイコフレームは積んでいるのに!』

 

 

 ナラティブガンダム!? そうか、ヨナ少尉にはニュータイプ能力は……。ナラティブガンダムC型装備のサイコフレームは、ほとんど感応していない。発動していない。

 くそ、せめてアレが発動して味方してくれていたなら!

 

 そう考えた瞬間であった。金色の光が、その宙域に()んだ。

 

 

 

*

 

 

 

 ヨナ少尉が呟く。

 

 

『リタ……』

 

(フェネクス!? 今更きさまを手に入れるつもりは無ぇ! 邪魔するんなら、()としちまうよぉ!?)

 

 

 ゾルタンはⅡネオ・ジオングの腕を差し伸べる様に伸ばし、その指先からビームを放つ。フェネクスはまるでUFOか真ゲッターでも思わせるような異様な機動性で、ビームを(かわ)した。

 そしてそこに、更に割り込む物がある。ラー・カイラムから無断発進したランチだ。ブライト准将が叫ぶ。

 

 

『ミシェル・ルオ! 戻れ! 何を考えている!!』

 

『……』

 

 

 そのとき、『わたし』にはミシェル女史の心の声が聞こえた。多数の思念の叫びが飛び交う中での、ほんの小さなノイズに過ぎないほどの、しかし悲痛な声が聞こえたのだ。

 

 

(リタ、あんたはあたしの欲しい物を、すべて持って行く……。そのフェネクスのサイコフレームに宿って、永遠を手に入れたんでしょう? その上でヨナまで……。ヨナ……。リタに、リタに会わせてあげなくちゃ……。ヨナ……。なんで、あんたは全部持って行くのよリタ……)

 

(違う!!)

 

((!!))

 

 

 その瞬間、『わたし』は思念で叫んでいた。渾身の霊力を乗せたその思念は、ミシェル女史と、そしてヨナ少尉に届いていた。どうしてなのか、わからない。今は何よりも、ゾルタンのサイコフィールドを弱める事こそが大事なはずなのに。だが一瞬、『何か』が『()えた』気がした。

 

 

(永遠など……。無い! 永遠の生命(いのち)など、そんなもの生命(いのち)では無い!)

 

(永遠を最初から持っている超AIのあんたに、何が……)

 

(『わたし』ですら、永遠では無い! 死ねば、死ぬ! 限りある生命(いのち)だからこそ、全力で生きる意味があるのだ!)

 

 

 死して『大鉄人17(ワンセブン)』として生まれ変わった『わたし』だが、それでも死していた間には、『何も』無かった。そのはずだ。生きていてこそだ。

 

 

あそこ(フェネクス)にあるのは永遠の生命(いのち)ではあり得ない! あそこにあるのは、永遠の『死の瞬間』だ! 残留思念体だ! あれは生きているかの様に見えるだけで、生きているかの様に反応しているだけで、死者の『残滓(ざんし)』に過ぎない!! 言わば『動く遺言』!!

 ヨナ少尉! 行け! 行って『遺言』を受け取って来るんだ! だが流されるな! 君は生きている! 生きていてこそだ!)

 

(……!! 行ってきます!!)

 

 

 そしてアムロ大尉、シャア大佐(クィグたいい)の悔恨の声もまた、聞こえる。

 

 

(そうだ……。ララァの時は止まったままだ。あの瞬間のまま、一歩も前には進んでいない。彼女は俺が殺した。死んだんだ。『止まった』彼女に向かい、シャアを否定しろ、だと? できるわけが無い。俺は馬鹿な事を言ってしまったんだな)

 

(わたしは、彼女の『遺言』に(すが)っていたのか? 彼女の声は今も聞こえる。だが、彼女は何時までも変わらない。変わらないのだ。『わたし』はそれに(すが)って、変わる事を拒否を? 変わるべきだったのか? 変わらねば、自身こそが変革せねばならなかった?)

 

 

 ゾルタンのⅡネオ・ジオングが、突っ込んで来たミシェル女史の乗るランチに、邪魔だとばかりにビームを撃とうとする。『わたし』は身体で(かば)った。少々傷を負ったが、この程度は屁でも無い。

 そしてランチから何かが放出される。これはナラティブガンダムのC型装備に使われていたサイコフレーム材、その予備か。それがナラティブガンダムとフェネクスを取り巻く。ここから先は、『彼ら』だけの場だ。『わたし』はあえてその中の『声』を聞かずに、ゾルタンのサイコ・フィールドを弱める事に専念した。

 

 

『とんだ愁嘆場だな! 結局はニュータイプなんてこんなもんだ! 人類が宇宙に進出してたいして経ってもいないのに、そんなんで進化なんてできるわけ、ないだろぉ!?

 第一、複数種のニュータイプを、ジオン・ズム・ダイクンが提唱したニュータイプと実際に出現したサイキッカーとしてのニュータイプを、混同するからそうなるんだよ! 研究者共も思想家どもも、馬鹿ばっかりじゃねえか!』

 

 

 ゾルタンは悪罵を吐き散らしながら、死の淵へ向かい全力疾走を続ける。ガンバスターの放つホーミング・レーザーをⅡネオ・ジオングはあっさりと弾き飛ばす。更には嘲笑(あざわら)うかのようにシナンジュ・スタイン部分の腕でビーム・アックスを操って、ガンバスターのその漆黒の装甲に深い傷を刻んだ。

 その間、ゾルタンの意識はナラティブガンダムとフェネクスからは逸れていた。そしてナラティブガンダムが、すうっと宇宙を流れて行く。だがヨナ少尉の気配は、フェネクスの方からする。乗り移ったのか? ヨナ少尉は涙声で叫ぶ。

 

 

『う……。う、あ……。うあああぁぁぁあああっ!!』

 

((((((ヨナ少尉!))))))

 

(な、何っ!? 馬鹿な、シャアでも誰でも無い、有象無象のはずだった、奴が!?)

 

 

 いつの間にか精神の同調の焦点は、アムロ大尉機からフェネクスへと移行している。そして我々のサイコ・フィールドが、ゾルタンの……Ⅱネオ・ジオングのサイコ・フィールドを侵食して行く。その力は圧倒的であった。輝くフェネクスに引きずられ、他の面々の力も上昇傾向を見せる。ゾルタンは、泡を喰って叫ぶ。

 だがゾルタンは、最後まで、最期まで諦めない。最初から、命を捨てているのだ。脳裏には、鼻血、耳血、そして血の涙を垂れ流し、吐血までしているゾルタンのイメージが流れる。そこまでして、限界を突き抜けてサイコ・フィールドを操っているのだ。

 

 

(くっそぉ……。まだだ、まだ終わらせねえよ! 全部のヘリウム3を起爆させるのは無理かもしんねえが!)

 

((((((まずい! 奴は全ての力を1隻のタンカーに集中させて……))))))

 

 

 1隻のタンカー分のヘリウム3だけでも爆発すれば、疎開船団全てが致命傷を負う。我々は全力を振り絞るが、到底間に合いそうに無い。

 

 

 

*

 

 

 

 そして、爆発が起こった。

 

 

 

*

 

 

 

 爆発は、Ⅱネオ・ジオングの右肩で起きた。Ⅱネオ・ジオングの巨大な腕が、吹き飛んで宇宙の深淵に流れて行く。

 

 

『なッ!?』

 

『……貴方も、僕と同じか。僕もある男のコピー、代用品だった。そしてその失敗作、なんだよ』

 

 

 ズタボロの白亜の50m級特機(スーパーロボット)が、宇宙に浮いていた。その機体が、右腕を振り上げる。右拳にあるオレンジの光球が、輝いた。

 

 ……次元連結砲。間にある空間を超越して、目標地点を直接的に爆砕する砲だ。たとえⅡネオ・ジオングが強力無比なサイコ・フィールドで護られていようと、関係は無い。

 そして今度は、Ⅱネオ・ジオングの巨大な左腕が吹き飛ぶ。更に三度、四度と光球が輝き、Ⅱネオ・ジオングを構成する本体部分、ハル・ユニットが崩壊した。サイコシャード発生器を失ったシナンジュ・スタインが放り出される。

 

 

『だけど……。それでも! 今を一生懸命生きようとしている人たちの、邪魔をしないでくれ! ゼオライマー! お前の力を、見せてくれ!』

 

 

 その白い特機(スーパーロボット)、天のゼオライマーが()える。そしてゼオライマーは両腕を振り上げた。その胸と両拳の3つの光球が並ぶ。そして(まばゆ)く輝く……。

 

 

(死ねば……。溶け合え……だ……ろ)

 

 

 輝きが終息する。あの猛烈なエネルギーの中、サイコ・フィールドの力で護られたのかズタボロのシナンジュ・スタインが、しかし形を残したまま宇宙の彼方へ高速で流れて行く。だが、ゾルタン・アッカネンは死んだ。それは明確に感じ取れた。

 

 その後ゾルタンの部下たちは、再三の降伏勧告にも応じようとせず、最後の一兵まで戦って死んだ。ただその間改良型チベ級のグルトップはオープン回線にて、エリク中尉とモナハン・バハロ外務大臣との通信映像を延々と流し続けた。自分たちが死んでも、元凶どもはただでは済まさない、との執念だったのだろう。

 

 

 

*

 

 

 

 帰艦した後の話だ。マサト君と美久嬢がいきなり謝って来た。

 

 

「無断で出撃して、申し訳ありませんでした!」

 

「申し訳ありません……」

 

『うん、たしかにそうだね。ここは曲がりなりにも軍隊だからね。その辺は厳しくしなくちゃならない。なので隊内処分で構わないかな、弁慶?』

 

「おう。とりあえず3日間食堂でジャガイモの皮剥き、な」

 

 

 まあ、本当はそんなので済むわけが無いんだがね。だがあくまで『スタイシュッツ』シグコン・シップⅡ機動部隊は弁慶の下に配された、民間のレジスタンス組織っぽい物だと言うのは変わりが無いんだ。杓子定規にやってもなあ……。

 何にせよ、周囲の面々は苦笑や失笑を漏らす。どうやら他の面々にも、彼らは肯定的に受け入れられた様だ。

 

 そしてマサト君は更に言葉を続ける。

 

 

「それと……。お願いがあります。皆さんの戦列に、僕らとゼオライマーを加えてくださいませんか」

 

「……」

 

 

 美久嬢は、マサト君の言葉に少し悲し気になるが、その言を否定しようともしない。うん、彼らが言い出すんじゃないかとは思っていたんだ。その瞳は真剣だ。

 マスター・アジア師匠が、『わたし』の意識端末のレンズに目配せを送って来る。(おもむろ)に『わたし』は、彼らに訊ねた。いや、それは単なる確認である。

 

 

『……覚悟は、ある様だ、ね』

 

「……殺しの覚悟は、既に済ませてありますよ。以前の世界で、ね。最後の、最後でしたが」

 

「はい……。マサト君にそれをさせてしまったのは、わたしにも大きく責任があります。その責任の一部として、わたしもその覚悟から逃れるつもりはありません」

 

「それに……」

 

 

 そしてマサト君は、儚げな今にも壊れてしまいそうな雰囲気を(かも)し出す笑顔を浮かべ、言った。

 

 

「僕は弱い人間ですから。戦わないではいられないんです」

 

『そう、か。マサト君、美久嬢……。これからも、よろしく頼むよ』

 

 

 本当に、早く戦乱が終わらないかなあ。彼が戦いをしないで済む世界になって欲しい。電童の少年たちについても、同じことは言えるんだがね。ガルファを倒したとしても、ビッグ・ファイアの言う事が本当ならば、戦いは続く。そうであるならば、北斗少年も銀河少年も、戦わずにはいられないだろう。その善良さ故に。

 いや、兜甲児だって同じことだ。いつになったらマジンガーZ最後の戦いにできる事やら。彼が研究者として専念できる様になるには、いつまでかかるんだろう。デューク・フリードだって、ちゃんと王様になれるのは、いつの日なんだろうな。

 

 悩んでばかりいても仕方がない、か。一歩一歩、それこそ戦い続けて行くしか無いんだ。

 

 

 

*

 

 

 

『おーい、ハロン38552、フォロス29883、飯だぞ』

 

「おお、まって、いた」

 

「ここの、めし、うまい」

 

 

 シロウがヒュッケバインNextでデカい金属製の皿と鍋を持ち、ゼントラーディの捕虜たちに食事を与える。捕虜たちは歓喜の表情で皿を受け取り、ヒュッケバインNextがそれに鍋から莫大な量のシチューをよそってやった。

 ハロン38552も、フォロス29883も、嬉しそうに巨大スプーンでそれをかき込む。あっと言う間に空になった皿に、シロウはまたシチューをよそってやった。2人の捕虜はまた嬉しそうにそれをたいらげる。

 

 彼ら捕虜たちは、何と言うか覚えが早い。最初はこちらがゼントラーディ語で話し掛けていたんだが、ゼントラーディ語は語彙が少ない。なのでこちらの言葉の手ほどきをしてやったら、スポンジが水を吸う様にとまではいかないものの、片言ぐらいは話せる様になってしまった。彼ら同士で話す時すらも、こちらの言葉を使うぐらいになっている。

 

 

『んで、どうする? またTV(テレビ)でも見るか?』

 

「しろう、うたの、ばんぐみ、が、いい」

 

「む、うたも、いいけど、あにめ、みたいぞ」

 

「うた!」

 

「あにめ!」

 

『おいおいおい。喧嘩すんな。順番に両方流してやっからよ。ワンセブン、頼むわな』

 

『了解だ』

 

 

 とりあえず、壁面の大型スクリーンに、アニソンの番組を流してやった。捕虜2人は一生懸命になってソレを視聴する。まるで大きな子供2人だ。いや、大きいと言うのは比喩ではなく、10mサイズなんだが。ヒュッケバインNextの半分ぐらいの大きさがあるからな。

 でもって、こいつら捕虜たちに対し、色々とゼントラーディ内情について聞き取り調査したんだが。劇場版マクロスと、大差無い事が分かった。こいつらの社会は戦闘以外に何も無い、無味乾燥な管理社会の様だ。

 

 ちなみにあと2人の巨人の捕虜が居るんだが、そいつらはメルトランディ人だったりする。我々のMS(モビルスーツ)隊には女性操縦士(パイロット)が少ないので、カミーユ君がサポートに入ってファさんが中心になってなんとか面倒を見ているのだが。

 そちらの方は、カーサ28154とサリカ44892と言う。でもって、そちらも同じ様に美味い食事やTV(テレビ)番組に夢中なんだが。ちなみに彼女らは、下級のパワードスーツであるクァドラン・ノナの搭乗員だったらしく、重要な情報はまったく持っていなかった。ハロン38552やフォロス29883も同じくリガード乗りだったんで、たいした情報は持ってなかったしな。

 

 何にせよ、こいつらすっかり餌付けされてしまっている。もしかしたら、帰れるとなっても帰りたがらないかも知れん。どうしたもんだろうな。




ゾルたん、死亡確認されました。確実に、完全に死んでおります。本人そのものは、これにて退場です。ええ、本人そのものは。大事なことなので、2度(ry
なんとか彼を救うには、初登場前から手を入れないと絶対に駄目ですよねえ。何と言うか、ええ、はい。

ちなみに次元連結砲で間の空間飛び越えるって攻撃方法なので、これはいわゆる技術的奇襲ですね。ゾルたんが認識できなければ、サイコ・フィールドで防御も難しいかと。

そしてモブ捕虜ゼントラーディ人。ゼントランと短縮形で呼ぶべきかな? 捕虜生活を謳歌(おうか)してます。古巣に帰すのが、ちょっと可哀想ですね。
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