大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第005話:オーガスタ研、崩壊

 カミーユ・ビダン奪還作戦。正直な話、これは実施するだけであればそう困難でもない。オーガスタ研に駐留している守備兵力は、1個中隊12機のジェガンがある。他にも強化人間用の機体をいくつか開発している模様だが、肝心の強化人間は『出荷』されたばかりでそれらの機体を使えるやつはいない。

 どうやってこの情報を掴んだかと言うと、外部と切り離された内部ネットワークに直接にアクセスしたんだ。探査機(プローブ)をこっそりオーガスタ研に侵入させて、内部ネットワークのケーブルに直接接続したら、情報の取り放題だった。(おおやけ)のネットワークに接続してないからって、中身のセキュリティがヤワヤワだったら意味が無い。

 

 それは置いといて、だ。直接に戦いを挑んで、この戦力を叩き伏せてしまってカミーユ・ビダンを攫うって作戦でも、成功率はぶっちゃけ高い。守備兵力であるジェガン隊は後方配置故に、しばらく実戦から遠ざかっていて練度が低いことが判明している。

 そんなわけで、アムロ大尉、シャア大佐、そしてシロウの3人と、『わたし』で突入すれば、幾多のシミュレーション結果から言っても余裕だろう。

 

 けれど『わたし』は、その真正面からの力押しに物申す事にした。今は作戦会議中。シロウ、アムロ大尉、シャア大佐と全員がシグコン・シップ艦橋(ブリッジ)に集まっている。

 

 

『だがそれはちょこっと派手すぎる気もするんだ。もっと手軽に、もっと確実にカミーユ君を奪取する方法は、無くも無い』

 

「と、言うと?」

 

 

 『わたし』はシャア大佐の疑問に答える形で、艦橋(ブリッジ)のスクリーンに、特殊車両の姿を写しだした。

 

 

『これはシグコン・タンクⅡ。大型ドリルを装備しており、地中潜航能力を持っている。かつてジオン軍で造られたアッグとかいうドリル付きMS(モビルスーツ)の、数倍どころか数十倍、数百倍の効率で地中を掘り進む事ができるぞ。

 これで地中から、オーガスタ研内部に突入する。そしてカミーユ君とファさんを、人聞きは悪いが拉致して来るんだ』

 

「「「!!」」」

 

 

 シロウは少々不満げに、しかし頷く。

 

 

「なるほどな。カミーユ・ビダンの居場所はどうやって捕捉するんだ?」

 

探査機(プローブ)を使って、内部ネットワークにこちらの端末機を繋いでおいた。カミーユ君は常に監視下にあるからな。彼とファさんの位置情報は、内部ネットワークから取り放題だ。無論、こちらの端末機は役目が終わったら自爆させるよ』

 

「そっか……」

 

『どうしたね? 何か意見があるならば、言ってくれた方がありがたい』

 

 

 『わたし』の言葉に、シロウは苦笑を漏らす。彼は大きく溜息を吐くと言った。

 

 

「はぁ~~~……。いや、な。正直な話、オーガスタ研からカミーユ・ビダンを奪い返すのは大賛成なんだ。俺みてえな強化人間を創る連中に、いやがらせができるんだからな。ただ、な。力押しで奴らを叩いてカミーユ・ビダンたちを奪取するならば、その余勢でもって奴らを完膚なきまでに、研究施設も研究員も何もかも、徹底的にブッ潰す事もできただろうにな、ってよ。

 いや、そこまでヤッちまったら、虐殺かね? ワリィ、忘れてくれや」

 

「シロウ……」

 

「いや、アムロ大尉。気にせんでくれや」

 

 

 そう、だな。シロウは自分を『創った』第13NT研究所によって、過去の記憶も名前も奪われて、あげくに洗脳までされていたんだった。その同類連中に対し、怒りがあるのは当然、か。

 

 

『シロウ、100%の報復ができるとは言わないが。奴らの研究の邪魔ぐらいはしてやれるかもな?』

 

「!! へぇ……。まあ、今回はそれで我慢すっか」

 

『では詳細を練るとしようか』

 

 

 そして『わたし』たちは、色々と作戦を練り始めた。三人寄れば文殊の知恵、とも言う。そしてここには、人間の頭脳が3つだけでなく、『わたし』というロボットの頭脳まであるのだ。きっと上手く行くに違いない。

 

 

 

*

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴ……。

 

ガラガラガラ!! ゴゴゴオオオォォォン!!

 

 

 オーガスタ研は第3研究棟最下層の床を突き破って、シグコン・タンクⅡのドリル先端部が地下深くから突き出る。『わたし』が遠隔操作で操っているシグコン・タンクⅡはそのまま全体を現すと、車体を180度回頭する。今まで後ろ向きになっていたそちらが本来の車体前面であり、シグコン・タンクⅡの武装などはそちら側についているのだ。

 

 

「ひ、ひいい! あ、ああああ!!」

 

 

 細身の男性研究員が、腰を抜かしているのが車載のカメラに映る。『わたし』はシグコン・タンクⅡに麻酔ガスを噴射させて、そいつを黙らせた。そして周囲に動く物が無くなったのを確認してから、『わたし』はシグコン・タンクⅡのハッチを解放する。

 

 

「かー、こいつ乗り心地悪すぎねえか?」

 

『しかたあるまいさ。基本的に、戦車だ』

 

 

 車体の中から出て来たのは、シロウだ。彼は念のためにパイロットスーツを着用し、ヘルメットも被っている。

 

 

「で、カミーユ・ビダンは今どっちだ?」

 

『カミーユ君は今しがた実験を終えて、隣室にいる。ファさんが付き添っている』

 

「直接隣室に突入した方が確実だったんじゃね?」

 

『だが目標に怪我を負わせる危険があったからな』

 

「違いねえな。ちょっと行って来る」

 

 

 シロウはマスターキーのモドキで扉の鍵を吹っ飛ばし、中に入って行く。いや、マスターキーとは扉破りに使える高威力ショットガンの隠語なんだが。中の人間ビビらないだろうか?

 そしてシロウと誰か……。おそらくはカミーユ君だと思うのだが、それが口論する声が聞こえて来る。

 

 

「だーかーらー! 急いでここを逃げ出すんだよ!」

 

「駄目だ! 俺がいなくなったら、他の被験者たちが実験に供される……。俺が、俺が実験台になってさえいれば……」

 

「カミーユ! そんな事言わないで! 逃げましょうカミーユ!」

 

「ファ! 君だけでも逃げてくれ!」

 

 

 あー。カミーユ君、ちょっと神経が参ってる状態か。というか、研究員たちにそう思い込まされてるって感じか? シロウはもし説得できなきゃ、実力行使するって言ってたが……。

 

 

「……カミーユ・ビダン! 聞け、カミーユ・ビダン!! 俺は強化人間だ!!」

 

「「な!?」」

 

「お前がここで研究に供されてることで、オーガスタ研所属の被験者たちは無茶な実験をされてない、だと!? じゃあ他のNT研の被験者はどうなんだ!! 俺は知っているぞ! 俺を創るのに、お前から取ったデータの一部が使われたって事を!

 お前のおかげで、俺は強化人間になって、名前も、記憶も、全部が全部すっからかんだ! どうしてくれるんだ、ええ!?」

 

「!!」

 

「そ、それはカミーユのせいじゃ」

 

「あんたは黙ってろぉ!!」

 

 

 シロウが絶叫する。そして憑き物が落ちたかのように静かになった。

 

 

「なあ……。カミーユ・ビダン……。それだけじゃねえ。ここオーガスタ研からの強化人間が『出荷』される量は、はっきり言って増えてるんだぜ? それによ……。

 お前さんがここにいて、実験でデータを供給し続ければよ? そのデータを反映させたりよ? あるいは実験で良い感じのデータが出たら、その再現性を確認するためによ? 研究者の奴らは、『こういう』事をするんだよ……」

 

「「っく!!」」

 

「『視え』たか? まあ、俺も強化人間だからな。疑似的たあ言えどNT(ニュータイプ)の能力『だけ』はそこそこに使えるからな。だがもしお前さんが、強化人間をこれ以上増やしたくねえってんなら、来い」

 

「……わかった、行くよ」

 

 

 どうやらシロウはカミーユ・ビダンの説得に成功した様だ。隣室から、3人がこちらの部屋に走って来る。

 

 

『おつかれ、シロウ』

 

「おうよ。疲れたぜ……」

 

『さもありなん。では、急ぐぞ。アムロ大尉もシャア大佐も、手筈通りに実験の被験者を連れて脱出している。まあ、洗脳されてる奴らばかりだから、麻酔ガスで眠らせて無理矢理に、だけどね』

 

「な、アムロさんとクワトロ大尉、いやシャアが生きているのか!」

 

『それは後で、だ。狭くて悪いが、乗り込んでくれ』

 

 

 カミーユ君たちはシグコン・タンクⅡに慌てて乗り込む。シロウはいったん車内に乗り込んだが、ちょっとばかり大き目のジェリカンみたいなサイズの装置を運び出し、部屋に置くとまた戻って来る。

 

 

「いいぜ、出してくれ」

 

『では行くよ。手近な物に掴まってくれ』

 

「うわ!?」

 

「きゃあ!」

 

 

 『わたし』が操るシグコン・タンクⅡは、ドリルを回転させつつ地中へと潜って行った。

 

 

 

*

 

 

 

 シグコン・シップは、光学迷彩機能を駆使して姿を隠していた。この機能はエネルギーを食うので四六時中は流石に使えないし、雨に降られると弱いという弱点はあるが、便利は便利だ。

 オーガスタ研に派遣した3輌のシグコン・タンクⅡは、今しがた全部戻って来た。まあ『わたし』としては各々を遠隔操作しており、各々の車輛の視点で現場を『視て』もいたけれどね。

 

 カミーユ君の回収をシロウに任せたのは、アムロ大尉やシャア大佐に行かせると彼にショックを与えかねないと思っての事だったが。考えが浅かったかも知れないな。カミーユ君はシロウから言われた事を気にしてか、あれからずっと黙して考え込んでいる。

 

 ちなみにオーガスタ研だが、潜入させた探査機(プローブ)を使って紙媒体やマイクロフィルム、ディスクに記録されたデータなどに火を放ち、探査機(プローブ)はその場で自爆させた。同時にシグコン・タンクⅡで現場に置いて来たジェリカン大の装置を起爆。

 あの装置は、実は電磁パルス(EMP)爆弾である。起爆されると、強烈な電磁パルス(EMP)を周囲にばらまくのだ。これでオーガスタ研のコンピューター、更には電子情報の類は、全部が全部ダメになったはずである。

 

 

「これでオーガスタ研は、研究データと研究機材の大半を失ったわけだな」

 

「被験者たちも、俺たちが全員救出してある。もう研究所として再起はできないだろう」

 

『ご苦労さま、シャア大佐、アムロ大尉。いちおう探査機(プローブ)使って、やつらの研究データは『わたし』のデータバンク内にコピーを取ってあるがね。

 いや、『わたし』が強化人間を創ろうってわけじゃないが。今回救出した被験者たちとかの治療のためだよ。被験者たちは今現在、『わたし』の造った看護ロボットたちが看ている。残る問題は……』

 

 

 うん、残る問題はカミーユ君だな。……ふむ、噂をすれば影、か。シロウがカミーユ君とファさんを連れて、艦橋(ブリッジ)に上がって来た。

 

 

「よお。連れて来たぜ」

 

「アムロさん。……それにクワ、いえシャア大佐。生きて、いた、んですね」

 

「カミーユ……。無事で、とは言い難いかも知れないが……。助け出せてよかったよ」

 

「カミーユ……」

 

 

 カミーユ君は、ぎゅっと握りこぶしを固める。だが、すぐにそれを(ゆる)めると、固い表情で言う。

 

 

「シャア大佐……。殴りかかりたい気持ちはあります……。ですが、今の俺にはその資格は無いでしょう」

 

「「「「……」」」」

 

「俺のデータで、たくさんの強化人間が創られた……。ちょっと考えれば分ることです。だけど俺は、自分が研究者たちに従って実験されていれば、他の被験者たちはそうそう実験されずに済むとか考えてたんですよ。現実を見ないで、流されてたんです。

 現実を見ないで流されてたら、事態は悪くなっても良くなる事なんてないって、思い知らされていたのに……」

 

 

 アムロ大尉が苦笑いを浮かべて言う。

 

 

「耳が痛いな。俺も、同じさ。シャアとシロウ、ワンセブンが助けに来てくれるまで、シャイアン基地で幽閉状態に甘んじていた。いや、カミーユよりも悪いかもな。少なくともあの基地にいる軍人たちは、悪い人たちでは無かった。それに甘えていた」

 

「……」

 

 

 シャア大佐は黙して語らない。だが、何かに苦しんでいる様子は傍目から見て、しっかり判る。『わたし』は機械だからな。NT(ニュータイプ)の能力なんてかけらも無いが。でも、その態度や様子から判断することはできる。

 

 

『……カミーユ君。少し休みたまえ。よければ、睡眠導入剤を処方する。無理に眠ると悪夢を見るやもしれんが、それでも夢は脳のデフラグだ。無理にでも眠っておいた方がいい』

 

「ありがとうございます、ワンセブン……。貴方はどこに居るんです? ブリッジに来れば居るものと思っていたんですが」

 

「あ」

 

 

 シロウが間抜けな声を上げた。

 

 

『シロウ? 教えていなかったのかい?』

 

「悪い! カミーユ、ワンセブンは人間じゃねえんだ! 窓の外に見える、あそこに変形状態ではまり込んでいる特機(スーパーロボット)! その超AIがワンセブンなんだよ!」

 

「「ええっ!?」」

 

『そういうわけだよ。カミーユ君、これからよろしく頼むよ』

 

 

 カミーユ君とファさんは呆然としている。まあ、さもありなん。

 

 そしてシグコン・シップは動き出す。オーガスタ研の機能停止を受けて、近場の連邦軍が動き出しているから、さっさとこの場を離れないとな。とりあえず軌道上にでも上がって、落ち着いたら次の行先を決めるとしようか。




戦闘マップなしで、カミーユ救出です。そろそろリアル系だけじゃなく、スーパー系の仲間も欲しいなあ。
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