大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第061話:仮称『レッド』捕獲作戦

 通信映像に映る弁慶の表情は、悲痛の一言だった。彼は重い悔恨の(こも)った声で語る。

 

 

『すまん……。データ・ウェポンが勝手に飛び出して、あの赤い双頭の機獣に襲い掛かるとは想定外だった』

 

『いや、こちらもその可能性に言及しておくべきだった……。こちらこそ済まない』

 

 

 そう、赤い双頭の機獣……ラゴウが出現したのである。地球方面に突出して侵攻していた強力な機獣の正体は、ラゴウであったのだ。戦場となったのは、地球の日本、新宿である。新宿は、呪われてるんだろうか。

 そしてラゴウと相対した電童は、一応弁慶の指示を聞いて後退しようとした。したのだが……。データ・ウェポン連中はラゴウと出会って頭に血が上ったかの様に暴走、勝手に実体化して各々攻撃を仕掛けたのだ。結果、ラゴウによりユニコーン・ドリルとレオ・サークルの2体が、ウィルスの侵食を受けたのである。

 

 

『敵はダメージを受けて撤退し、ウィルスに侵されたデータ・ウェポン2体は星見町のGEAR本部に搬送された。そこで超コンピューター『メテオ』による防壁で、ウィルスの侵食する速度を可能な限り遅らせているが……』

 

『残り時間は?』

 

『わからん。場合によっては、今この瞬間にも一気に侵食されてしまう可能性もあるそうだ』

 

 

 ここで『わたし』と一緒に弁慶からの通信を聞いていたブライト准将が、問いを発する。

 

 

『策はあるのか?』

 

『はっ。Dr.井上とエリス嬢によると、やはりあの赤い双頭の機獣を捕獲して、ウィルスを採取。そしてそれを元にワクチン・プログラムを作るしか無いとの事です。

 現状彼ら以外の我々は、撤退する敵を追尾して地球と月の中間まで航行しております』

 

『ブライト准将。今計算して見たんだが。真ドラゴンとゴラオンが敵に追いつくよりも、敵がフォン・ブラウン跡地の螺旋城にたどり着く方が、どうやっても先になる』

 

 

 ブライト准将は通信映像の中で、若干考え込んだ様に首を傾げる。しかしすぐに顔を上げると、口を開く。

 

 

『そうか、ワンセブン……。弁慶、これからキャンベル大将とムバラク大将にわたしから話を通して、作戦許可を貰って来る。名目は、我々『スタイシュッツ』による敵陣への強行偵察だ。

 そこでその赤い双頭の機獣をなんとしても捕らえて、ウィルスを採取、あとは全速で離脱、だ。通信で地球に残ったDr.井上やエリス嬢たちとも話して、赤い双頭の機獣を捕獲する手段について相談しておいてくれ』

 

『『了解!』』

 

 

 さて、忙しくなるな。急ぎ緊急出撃と、作戦の準備を整えなければならん。必要と思われる物資も、ゼダンの門からシグコン・シップⅡに運び込んで、足りなさそうな分はシグコン・シップⅡの艦内工場と、『わたし』の体内工場で全力生産しなくては。

 

 

 

*

 

 

 

 我々『スタイシュッツ』本隊と、地球方面に赴いていた弁慶隊は、月軌道上で落ち合った。ゴラオン甲板上に真ゲッターの機体を露天係止した弁慶が、こちらに通信を送って来る。

 

 

『ブライト准将、ワンセブン、ただいま到着しました』

 

『ああ、弁慶ご苦労』

 

『弁慶、電童の子供らはどんな様子だね?』

 

『悔しさは隠しきれていないが、それ以上に闘志の方が凌駕しているな。なんとしてもレオとユニコーンを助けるんだって、気合が入ってる。東方師匠やシロウが、肩に力が入り過ぎだと(たしな)めてるほどだ』

 

 

 マスター・アジア師匠だけでなくシロウにまで(たしな)められているとは……。競馬の馬ではないが、いきり立っているな。気持ちはわかる部分もあるが、やはり気を付けて見ていた方がいいなあ。

 どうしたって、彼らは子供だ。精神の柔軟さは大人以上だが、逆に精神の安定度は極めて低い。注意を払わねばならんだろう。というか、大作少年やウッソ君あたりが安定し過ぎてるんだがなあ。あれはあれで、心が痛むよ。大作少年なんかは、その分だけ精神の柔軟さが損なわれてる面もあるしなあ。

 

 それとは話は変わるのだが、幾つか『スタイシュッツ』の陣容に変更がある。まず最初に、シュラク隊に配備されているGMⅤ(ジム5)とヒュッケバインMMの事だ。これらは元々、地球連邦軍設計の試作MS(モビルスーツ)であったのだが、ちょっとその出来具合に不満点があったので、『わたし』が少し手直しをして、GMⅤ(ジム5)改、ヒュッケバインMM改と呼称していたんだ。

 そしたらついさっき、キャンベル大将から連絡があって、わたしの手直しした物が正式採用された、との事であった。つまりは『改』の文字がいらなくなってしまったんだ。ちなみにグラン・ガランやゴラオンに配備されている、ズワァースMM改についても同じ事が言えて、これも『改』がいらなくなって現在はズワァースMMが正式名称になってしまった。

 

 後はリムル・ルフト嬢の事があるな。彼女は実母であるルーザ・ルフトを、無理をしたハイパーオーラ斬りで討った後、しばらく衰弱して寝込んでいた。しかし回復してからこの方、その時に奪ったビアレスを乗機として訓練を積んでいたんだ。ただ彼女の技量が『スタイシュッツ』の平均に届いていない事もあって、スプリガン隊の隊長であるニーが出撃許可を出さなかった。

 しかしながら今回ようやくの事で、ニーの許可が下りた。彼女は晴れて、スプリガン隊の一員として戦う事ができる様になったのである。ビアレスも宇宙対応に改造され、更にズワァースMMにも使われている最新技術によるオーラ力の増幅装置を搭載されて、非常に扱いやすくなっているし。

 

 もう一つあったな。クロノクル氏のV2ガンダムだが、ムバラク大将の説得によって、リガ・ミリティアの上層部、ジン・ジャハナムがとうとう首を縦に振ったんだ。まあ、ザンスカール帝国が地球連邦に吸収されてしまった事もあるんだろう。

 そう、『わたし』が頑張ってパーツを製造する羽目にはなったんだが、今現在クロノクル氏のV2ガンダムは、V2アサルトバスターガンダムとなっている。うん、かなりの戦力アップになったな。

 

 そしてブライト准将が、『スタイシュッツ』全体に向けて命令を発する。

 

 

『よし、それでは今現在より我々『スタイシュッツ』は、敵機動要塞である螺旋城への強行偵察作戦を開始する! 表向きの目的は無論、敵陣の情報を1つでも2つでも掴んで帰還することだ!

 しかしもう1つ! 敵の赤い双頭の機獣、それを現在より『レッド』と仮称するが、それを捕獲してコンピューター・ウィルスを採取! それを解析する事により何としてもワクチン・プログラムを製作し、ウィルスに侵されているデータ・ウェポン2体を救わねばならん! 諸君らの健闘に期待する!』

 

 

 そして我々は、月面フォン・ブラウン市跡地へ向けて全速で移動を開始した。

 

 

 

*

 

 

 

 寄って来るガルファ機獣を叩き潰しつつ、マスター・アジア師匠とシロウが叫ぶ。

 

 

『よいか小僧ども! 言い方は悪いが、貴様らとデータ・ウェポンどもは餌だ! あの『レッド』をおびき寄せるために、絶対にやられてはならんぞ! 前回のようにデータ・ウェポンどもが先走りせぬ様に、手綱をしっかり握っておく事も忘れるな!』

 

『有象無象の雑魚機獣は、任せとけ! お前らは『レッド』を惹きつける事だけを考えりゃあ、いい!』

 

『『はいっ!!』』

 

 

 電童の北斗少年、銀河少年が叫び返す。今我々は、フォン・ブラウン市跡地の外縁部で激戦を繰り広げていた。フォン・ブラウン市跡地中心に突き立った螺旋城からは、次々に機獣どもが出撃して来る。まさに無尽蔵だ。

 そして電童が、ガトリングボアをインストールする。

 

 

『ボア・ドライブ、インストール!』

 

『『ガトリングボア! ファイナル! アターーーック!!』』

 

 

 電童が胸板に装備したガトリングボアより、爆発的な光弾の連射が迸る。それは途中にいるガルファ機獣をなぎ倒し、螺旋城に着弾した。爆炎が上がる。

 そして吉良国のセルブースター1番機が突入して来た。吉良国が叫ぶ。

 

 

『電童! デンチを!』

 

『ありがてぇ! 吉良国さん!』

 

『お願いします!』

 

 

 射出されたハイパー電童電池が、電童の背中ソケットに収まる。そして電童は次にドラゴンフレアをインストール。

 

 

『ドラゴン・ドライブ、インストール!』

 

『『ドラゴンフレア、ファイナルアタック!!』』

 

 

 電童の左脚に装着されたドラゴンフレアから、炎にも見える灼熱のビームが放射され、螺旋城の外殻を(えぐ)る。そして今度はベガ女史のセルブースター2番機が突っ込んで来て、再度電童のデンチ交換を行った。

 そう、これは挑発だ。我々は正式名称を知らないがために『レッド』と仮称しているが、あのラゴウを挑発して飛び出させて来るための挑発行為なのである。

 

 そして、アムロ大尉とシャア大佐(クィグたいい)、カミーユ君が叫ぶ。

 

 

『出て来るぞ!』

 

『これか! 準備は出来ているな!』

 

『底知れぬ悪意……。こいつが、そうか!』

 

 

 そうだ、『わたし』にもその悪意は感じられる。その悪意は、まっすぐに電童に……と言うよりは、データ・ウェポンに向けられている。赤い躯体、猛禽の様な翼、そして凶悪な牙を備えた双頭。間違いない、ラゴウだ。

 ブライト准将の命令が飛ぶ。

 

 

『全部隊、秩序を保ったままゆっくりと後退しろ! 『レッド』を、目標ポイントまで誘い込むんだ!』

 

『『『『『『了解!!』』』』』』

 

 

 全員の機体が、徐々に、徐々にゆっくりと後退する。ラゴウを冷静にさせないようにほどほどに攻撃を繰り返しつつ、ゆっくりと下がる。

 そして電童をしつこく追尾していたラゴウが……(トラップ)をしかけてある地点まで到達した。今だ! 『わたし』は指令の電波を発信する。

 

 

『グアアアオオオォォォア!?』

 

『『やった!』』

 

【まだだ。第一段階が成功したに過ぎない。気を抜くな】

 

 

 『わたし』はテキストメッセージを全部隊に送信する。眼前では、ラゴウが強烈な電磁ワイヤーに絡み付かれて、その動きを封じられていた。そう、『わたし』はこの戦闘にはまったく参加せずに、この(トラップ)の敷設とその制御にのみ集中していたんだ。

 『スタイシュッツ』の面々が、ガルファ機獣との熾烈(しれつ)な戦闘を繰り広げている中、『わたし』は今回のために新規に用意した10両のシグコン・タンクⅡを制御して地中に潜らせていた。そしてそれに積んだ電磁ワイヤー射出装置で、ラゴウを捕獲するための(トラップ)張り巡らせていたのである。

 

 だが『わたし』の言った事は間違いでは無い。とりあえずラゴウを捕らえたとは言え、まだ奴は活動している。このまま電磁ワイヤーの出力を上げて奴を消耗させ、活動休止状態に追い込み、その上でウィルスのサンプルを手に入れなくてはならないのだ。

 通信映像の中で、ブライト准将の頷く姿が見える。彼は徐に命を発した。

 

 

『よし、『レッド』に敵機獣を近づけるな! ワンセブンは電磁ワイヤーを制御、出力を高めて『レッド』を痛めつけろ!』

 

『『『『『【了解】』』』』』

 

 

 マクドガルのテスタロッサが、銀騎士のビルバインが、シュラク隊のGMⅤ(ジム5)とヒュッケバインMMが、ウッソ君とクロノクル氏のV2アサルトバスターガンダムが、ショウのビルバイン含むスプリガン隊が、四方に散って機獣群を叩き潰す。アムロ大尉、シャア大佐(クィグたいい)、カミーユ君、ファさん、マスター・アジア師匠、そしてシロウは、遊撃戦力としてピンチになったところを助けて回っている。

 ゲッターチームやマジンガーチーム、グレンダイザー+ダブルスペイザー、ジャイアント・ロボにウラエヌス、ガンバスターにシズラー黒改、ゼオライマーと言った特機部隊は、大型の機獣を始末するために螺旋城方面の戦線を受け持っている。現状ある程度、戦況は膠着(こうちゃく)状態だ。だがそれはあえてその様にして、我々の側が時間稼ぎをしているためであるのだが。

 

 そして『わたし』は電磁ワイヤーの出力を上げようとした。だがその瞬間、『わたし』は地下深くから、悪意を感じたのである。アムロ大尉やシロウなどのニュータイプ能力を何等かの形で持っている者達も、それに気付いた。

 

 

『まずい!』

 

『地下から来る!』

 

『ワンセブン!』

 

 

 『わたし』は電童の注意を引くため、あえてテキストメッセージではなく、音声で叫んだ。

 

 

『電童! 飛べ!!』

 

『『!!』』

 

 

 電童が高々と跳躍する。次の瞬間、まるで水銀か何かの様な液体金属の槍が、月面の大地にまるで剣山の様に突き立った。

 そしてその液体金属の槍は、地下に潜って電磁ワイヤーを張り巡らせていた、『わたし』操る10両のシグコン・タンクⅡを、一瞬で撃破していたのだ。ラゴウを捕らえていた電磁ワイヤーは、ただのワイヤーとなって一瞬でラゴウに引き千切られる。

 

 

『ああっ!?』

 

『れ、『レッド』が逃げ、うわぁっ!』

 

 

 ラゴウは逃げなかった。奴は電童を目掛けて飛び掛かったのだ。必死で(かわ)す電童だったが、このままではまずい。

 そして液体金属の槍はいったんドロドロに溶けて集まると、1体の機将の姿を取った。北斗少年と銀河少年が叫ぶ。

 

 

『き、機将……』

 

『ギガアブなんとか!!』

 

『ギガアブゾルートだ! 馬鹿者! ふ、だが愚かな人間では仕方ないか……。しかし危ないところであったわ。ラゴウをこれ以上いい様にされては、ガルファ皇帝陛下からどんな罰を……。ううっ……。

 だ、だがこの不始末は、貴様を討つ事で晴らさせてもらおうぞ、電童! 覚悟!』

 

 

 そしてギガアブゾルートはその身体から、複数の液体金属の槍を伸ばして電童を狙う。同時にラゴウが電童に攻撃を仕掛けた。

 ……させんよ。

 

 その瞬間、『わたし』は割って入り、右掌底の連打でラゴウの2つある顎の下を叩き上げ、背負い投げの要領でラゴウを盾にしてギガアブゾルートの攻撃を防いだ。ギガアブゾルートは、慌てて槍先を液化させてラゴウを傷つけない様にする。

 

 

『なぁっ!? き、貴様!』

 

 

 激高するギガアブゾルートだったが、そんな事は正直どうでもいい。銀河少年と北斗少年が、悔しそうに、そして苦悩の(こも)った声で呟く。

 

 

『く、くそう! (トラップ)がこわされちまった……』

 

『これじゃ、ユニコーンやレオが……』

 

『諦めるんじゃねえ!!』

 

『『!!』』

 

 

 シロウの声が、落ち込みかけた2人を叱咤する。通信映像の中で、少年2人の目が一瞬丸くなり、そしてその瞳に力が戻って来る。シロウの声は続く。

 

 

『まだ(トラップ)が壊されただけだ! 今そっちに行く! それまでお前らは、その銀ピカ野郎を相手してろ!』

 

【そうだな。『レッド』……いや、ラゴウだったな。それの相手は『わたし』が任された】

 

『『シロウさん、ワンセブン……。はいっ!!』』

 

 

 こうなったら、奴を……ラゴウを叩き伏せて行動不能にしてやる。噛まれたら、『わたし』も危なそうだが……。何、噛まれなければいいだけの話だ。

 電童と『わたし』は背中合わせになり、各々ギガアブゾルートとラゴウとに向き直った。




さて、お約束でラゴウ捕獲作戦です。更にお約束で、(トラップ)は破壊されました。でも諦めてません。徹底的に頑張ります。

リムル嬢、戦線に復帰しました。でも目立ってません。ごめんなさい。彼女の乗機がビアレスなのは、あれの『ハイパーオーラ斬り』の必要聖戦士レベルが、『スパロボα for DC』にて、聖戦士Lv.3で可能だからなんです。他の機体だと、必要聖戦士レベル高くて駄目なので(苦笑)。

そしてクロノクル氏。ついに彼の機体も、V2アサルトバスターガンダムになりました。ジン・ジャハナムもザンスカールが連邦に吸収合併されてしまった以上、意地を張る意味も無くなりましたからね。というか、リガ・ミリティアも連邦軍に吸収した方いいんじゃないかなあ。一般ゲリラにしておくには、武力が強すぎるからなあ。ただ、パイロット始めとして構成員たちは軍人教育や士官教育しないと使えないでしょうけれど。
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