ラゴウを撃破し、ユニコーン・ドリルとレオ・サークルの2体のデータ・ウェポンを救う事が叶った我々『スタイシュッツ』は、月面を離脱してゼダンの門まで帰還してきた。とりあえずこれから、メガロード-01艦長および護衛部隊隊長の、一条夫妻との再度の会合になるんだが……。
そんなわけで、ブライト准将、メラン中佐、弁慶、そして『わたし』のハロ型意識端末は、ブライト准将の執務室で一条夫妻を出迎えた。応接セットに座すと、ブライト准将の副官である大尉が、コーヒーを淹れてくれている。
前回とは異なり、全員が冷める前にコーヒーを口に運んだ。ああいや、全員とは言っても『わたし』以外だ。『わたし』が飲めるわけは無い。軍用コーヒーは泥水だとよく言われるが、その辺はこの世界でも共通なんだろうか。そしてブライト准将が、
「そちらの移民団、民間人の代表者たちとの話し合いは、結論が出たのでしょうか」
「はい、当方といたしましては貴方がた地球連邦政府の要請を全て飲む事にいたしました。メガロード-01の軍人及び軍属の民間人は、全員が貴隊『スタイシュッツ』の指揮下に入る事を承諾いたします。
軍属ではない民間人なのですが、その2/3は非武装の一般人として、地球連邦政府の庇護下に入れていただきたく。残りの1/3ですが、メガロード-01の都市機能維持のため、新たにこちらで軍属として雇用しなおし、同様にそちらの指揮下に入ります」
こちらのブライト准将、メラン中佐、弁慶は、大きく安堵の息を吐いた。まあ気持ちは分かる。まあだがメガロード-01側でも、それ以外に選択肢が無かったのではあるが。
ブライト准将はほんの少しだけ頬を緩め、言葉を発した。
「承諾してくださって、ありがたく思いますよ一条大佐……艦長。とりあえず現状ではそちらの組織とこちらの組織は切り分けて、わたしから一条艦長に命令を出し、そちらの内部でその方針に従った命令を出してもらう、という形になります。
そちらの階級も、こちらの軍階級と同等の扱いはしますが、当面はこちらの者がそちらの部下に対しては直接の命令権は無いものとし、そちらも当方の軍人に対する命令権は無いものとします。そのうちにこちらの軍法や軍事常識などを学んでいただいた上で、互いに対する命令権や指揮権などは、通常の状態に戻していきます」
「資料などは頂けるのでしょうね?」
「無論です。記録媒体などの規格が違うかもしれないので、後程こちらのハンディタイプ端末と情報を記録した
そして一条艦長が、輝少佐と顔を一瞬見合わせて、そして大きく溜息を吐く。
「しかし……。そちらの申し出を受けるかどうかを判断するために開示していただいた、幾つかの情報ですが……」
「どうなさいましたか?」
「あ、いえ。こちらはもう貴隊の指揮下に入る事を承諾したのです。敬語は要りませんわ」
「む……。了解した。どうしたのかね? 一条艦長」
ブライト准将の問いに、一条艦長は頷いて答える。
「現在この地球が相対している敵のうち、ゼントラーディ軍に関しての事です。ゼントラーディとは、我々は我々の元の世界に於いて、かつて戦っていた過去があるのです」
「「!!」」
「『……』」
いや、ブライト准将もメラン中佐も驚きを隠せなかった様子。弁慶はゼントラーディとメルトランディが火星圏を襲撃したときに、マクロスというアニメ作品について若干の説明を『わたし』が行った事があるので、多少は免疫があった様だが。
一条艦長は、話を続ける。
「ただ、我々の世界のゼントラーディ軍と、こちらの世界のゼントラーディ軍、メルトランディ軍とは、少々違いがある模様ですね。並行世界間誤差、とでも言う物でしょうか。
我々の世界のゼントラーディ軍は、こちらの様にゼントラーディ軍、メルトランディ軍、と分かれてはいませんでした。10m近い巨人型宇宙人である事は間違いが無いのですが、女性体もゼントラーディの一種でして……。部隊は分かれていた模様ですが」
そして一条艦長は、あちらの世界に於いてゼントラーディがどの様な存在であったのか、を色々と説明してくれた。その中で、彼らが文化という物を完全に奪われている戦闘民族であったためか、こちらの文化に触れると戦意を喪失する傾向にある事、あちらの世界の新統合軍に於いてはその現象を利用した、戦闘中に歌手のライブをオープン回線で放映する『ミンメイ・アタック』と呼ばれる戦術が確立されている事などが伝えられる。
更に、その元祖となったアイドル歌手、『リン・ミンメイ』がメガロード-01の移民団の1人として乗艦している事も教えられた。ブライト准将は民間人をまるで兵器の様に扱う事に、納得のいかない様子ではあったが。しかし
それとメガロード-01の軍人や移民団の中にも、マイクローン化と言って地球人サイズに身体を縮めたゼントラーディ人がいるとの情報もあった。これにはブライト准将、メラン中佐、そして今度こそ弁慶までもが、唖然としたものである。
*
シグコン・シップⅡに、2つの10m超の大型コンテナが運び込まれる。本来はVF-4ライトニングⅢのパーツを収めて置くためのコンテナなのだそうだが、今これに入っているのは別口の品である。
弁慶が搬入口の近くにある、『わたし』の意識端末に向かって言葉を発する。
「なあ、ワンセブン。あれがメガロード-01をこの世界に引っ張り込んだって言う、本来マシンキメラ-001が召喚したらしい人型兵器2体、か?」
『ああ、その通りだ弁慶。中身はまだ見ていないんだがね。それの
もう1人は、出現当時は意識を失っていたそうなんだが。だが今は目を覚ましているらしい。けれどもう1人の傍を離れようとしないらしくてな。事情聴取も召喚関係のドタバタのせいで、まだだそうだ』
そう言いつつ『わたし』は運び込まれたコンテナを、作業ロボットに指示を出して開けさせる。そして『わたし』は、しばらくその『中身』を見つめていた。
「お、おいワンセブン。どうしたんだ?」
『……いや。そう来たか、と思ってな』
「……また、なんかの『物語』に出て来る機体か?」
『ああ』
2機のその機体のうち、1機は大きく損傷していて、かろうじて稼働するかどうかというところである。これが重傷を負っていた
この機体は、この機体があるはずの世界に於いては本来1機しか存在しないはずだ。だが実際ここに2機存在すると言う事は……。つまりはこの機体が登場する『物語』のオリジナル世界からの来訪者ではなく、それに近い近隣並行世界、おそらくはゲーム版の設定に近い並行世界からやって来たんだろうな。
『……『高機動幻想 ガンパレード・マーチ』、か』
「? それが『物語』のタイトル、か?」
『そうだ』
そう、『わたし』の意識端末の
その名を、『士翼号』と言う。
『これが来た、という事は……。まさか、まさかな』
「?」
弁慶は怪訝そうな顔をする。だが『わたし』は、『ガンパレード・マーチ』の
もう1人が、芝村舞というこれも
そして『わたし』は、扱いづらい人間が来た場合を想定し内心でシミュレーション、結果として深く深く悩むのだった。
*
いや、その悩みも全て無駄になったのだが。
*
2名の士翼号
そんなわけで、重傷を負っていた士翼号
もう1つ幸いな事に、召喚されてきた人物は、やって来たらどうしようかと頭を悩ませていた
そんな中、とりあえず彼の意識が覚醒しそうだというのが医療機器のセンサーで判ったので、弁慶を呼んで置く。シグコン・シップⅡの中でトップの階級に居るのは、弁慶だからな。と、病室の前に弁慶がやって来たので壁の意識端末から声を掛ける。
『弁慶』
「おうワンセブン。
『ああ。もう1人は、よほど心配なのか付きっ切りで看病している』
「そうか」
弁慶は病室のドアをノックする。すると小さな声で、返事があった。
「……どう、ぞ」
「失礼する」
「……」
病室の中には、無数の機器に繋がれてベッドで意識を失っている少年
『……石津萌準竜師、だったね。滝川陽平準竜師は、計器によればあと数分で目を覚ますよ。心配はいらない』
「!?」
『ああ、『わたし』は『大鉄人
「そして俺が、形の上ではこの宇宙母艦を預かっている車弁慶少佐だ。まあ、本当の責任者はワンセブンなんだがな」
うん、彼女の名前は石津萌。そして眠っている彼は滝川陽平と言う。シグコン・シップⅡに移送する直前に、石津嬢から名前と階級だけでも聞き出したんだそうだ。ちなみに『ガンパレード・マーチ』のゲームではサブキャラ的な位置に居た人物たちだな。
準竜師と言うのは彼らの階級だ。彼らは学兵と言って、学徒動員された兵隊なのだそうだ。その辺はゲームの設定通りだが、ずいぶん出世しているな。だが、どちらも15歳前後に見える子供でしかない。
おっと、滝川君が目を覚ましそうだ。
「ぐ、う、うう……」
「滝、川……君!?」
「あ、い、し、津? 狩谷、は?」
「無事、に幻獣か……ら、助けだされ、た、わ……」
「そ、そっか……。へ、へへへ、やったじゃんか俺……。っ痛てえええぇぇぇ!?」
「動い、ちゃ、駄目……」
石津嬢が滝川君を
「あ、あれ? おっさん誰? あ、ここ何処だ?」
「おっさんてな……。ここは地球連邦軍特務部隊『スタイシュッツ』所属宇宙母艦、シグコン・シップⅡの医療施設病棟だ。お前さんは悪い奴に異世界召喚されて、元の世界からこの世界に呼び込まれたんだ」
「へ? へへへ、おっさん。俺がいくら馬鹿でも、そんな馬鹿話は冗談だってわかるぜ? なあ石津」
「……」
石津嬢は、ふるふると首を左右に振る。滝川君は『え゛』という顔になるが、失笑して言った。
「まったまたあ。皆で俺を
『大マジだ、滝川君』
「え゛!! 誰?」
『わたしはこの宇宙母艦の管理者、『大鉄人
「え、え、ええーーー!? あ痛たたただだだだだだ!!」
重傷なのに、むやみに動くから……。やれやれ。
*
滝川君は車椅子に移され、艦外の宇宙がよく見える展望フロアまで連れて行かれる。彼は最初は唖然としていたが、やがて納得してくれた。多少落ち込んだ様子ではあったが。
「そっかぁ……。俺たち、まず間違いなくあの世界にゃ帰れねえのか……。士翼号も2機とも来ちまったって? 速水にゃ申し訳ねえなあ……。俺と石津が居なくて、5121小隊は大丈夫かよ……。ちくしょう、あと少しで夏季の自然休戦期だったってのに」
「速水?」
「ああ、ウチの小隊の司令だよ。俺や石津といっしょで準竜師。ああ、準竜師ってのは自衛軍の中佐にあたる階級なんだぜ! ま、学兵ってのは自衛軍の下に置かれる存在だから、学兵の階級がいくら高くても、相応の政治力とか無いと並の自衛軍の兵隊の方が偉いんだけどなー」
「ほぉ。中佐相当か。凄いもんだな。俺なんて少佐だぞ? ははは」
弁慶も、少々落ち込み気味の滝川君や石津嬢を
まあ、その事を口に出しても信じてもらえないだろうし、言うわけにもいかない。ちょっと申し訳なさで心が重くなる。
『滝川君、君はかなりの腕利きだったんだな』
「おうワンセブン! 俺と石津は、元々は3番機の士魂号複座型の
『ほう、それは凄いな』
「それで速水が、3番機に俺と石津を
狩谷を殺しちまうって思ったら奴を殺せなくてさ。一回死んだと思ったよ。でも皆が応援してくれて、必死で奴を倒して……。狩谷は助かったって言ったけど」
「……」
石津嬢が黙って
「それだけが
「滝川、君……。わた、し、だけ、だけど……。せめて、ずっと……いっしょ、に……」
「そう……だな、石津ぅ……。へへ、サンキュ。俺一人じゃなくって、すっげぇ良かった……。お前で、良かったよ……」
そして2人は、宇宙を見ながらぽろぽろと涙を流す。弁慶は、展望フロアの入り口付近まで下がり、彼らの様子を見守る。『わたし』は、彼らが涙を流す姿を見て、心が痛くなった。そうだ、『わたし』たちがもう少ししっかりしていれば……。あのマシンキメラ-001を、確実に叩き潰せていたならば……!!
次は、次こそはマシンキメラ-001を……!! 奴にこれ以上、並行異世界からの召喚をさせてはならない。なんとしても、なんとしてもだ。
『わたし』は心の中で、強く思っていた。思いだけでは、実績が
というわけで、メガロード-01の中に出現したのは士翼号2体とその
ちなみに士翼号1機は速水厚志が滝川陽平のために、もう1機は芝村舞が速水厚志のため(と言っても速水は司令ですが)に陳情した物ですね。2機士翼号が来たので、1番機士翼号石津萌、2番機士翼号滝川陽平、3番機士魂号複座型壬生谷未央&芝村舞ですねー。
何故に士魂号M型じゃなくて士翼号なのかと言うと、士翼号はもともと別世界にて宇宙戦争で使われてたらしいんですよね。士魂号M型だと、宇宙で活動できませんし……。
そしてワンセブン、マシンキメラ-001に対するヘイトを溜めました。思いっきり溜め込みました。マシンキメラ-001『に』溜まったわけじゃないです。ワンセブン『に』溜まりました。さて、どう爆発させましょうかね。