地球連邦と連邦軍は、いよいよ一大攻勢を月面のガルファ帝国螺旋城へ仕掛けようとしていた。未だ準備段階ではあるが、部隊の再配置、機動兵器と戦闘艦の増産、人員の割り当て……。着々とその用意は進められている。
シグコン・シップⅡ
『弁慶、ワンセブン……。それにシーラ女王陛下、エレ女王陛下。いよいよ1ヵ月後に作戦開始を控え、螺旋城の攻略は間近となっています』
『はい、ブライト准将。この戦いが終われば、とりあえずは地球圏は』
『お待ちください、エレ女王。忘れてはいけません。地球の実力者、BF団の首領であるビッグ・ファイアの伝えた言葉があるそうですね? ワンセブン』
『……その通り、だ。ガルファを倒しても、まだ終わりではないとの事だ。しかも螺旋城を倒せば、ガルファが全滅したわけでは全く無い。螺旋城を倒したなら、あちらは
我々の話を聞き、弁慶がため息を吐く。
「ふう……。ガルファ以外の脅威って、何があるんだろうなあ」
『判明しているのでは、ゼントラーディ軍とメルトランディ軍の巨人型宇宙人、だ。過去にプロトカルチャーという人間型異星人により『製造』された、戦闘兵器としての人種。彼らでは再現が難しいとは言え、高度な科学兵器を装備した、戦うためだけの恐るべき存在。その物量は、ガルファともまともにやりあえている状況から恐るべきものだと想定される』
『……想像でもいい。何か思い当たる事は無いのか? 今後地球の脅威になりそうな相手として』
『わたし』は少し考えてから、言葉を出す。
『荒唐無稽、と言われるかもしれない。だがこの世界、この宇宙なのだが。他の宇宙との繋がりが濃いと言うか、一方的かも知れないが……。他の宇宙からの漂着者が、数多いのだよ。妙に、ね。故に……。
ドレイク軍、ビショット軍の様な、異世界を放逐されたか、あるいは異世界から単に迷い込んだ様な、そんな敵が来ないとも限らない』
「!! ……その危険まで、あるのか」
『デューク・フリード殿下から得られた情報では、地球圏近傍の異星勢力で危険なものは、ガルファ以外はゼントラーディ軍メルトランディ軍だが、他の危険勢力についても情報を分析して注意して置く必要があるか。ゴップ議長始め『上』でも色々調査中だとの事だから、我々の様な末端で悩んでいても仕方ないかも知れんが』
『いえ、心構えだけでもして置くに越した事は無いかと』
シーラ女王陛下のお言葉が、此度の『スタイシュッツ』上層部会談の結論となった。ちなみに宇門大介、デューク・フリード殿下が参加していないのは、あちらの意向とこちらの気配りによるものだ。もともと身分での壁がどうしてもある女王陛下たちとは違い、デューク・フリードは地球圏に居る間は、可能な限り宇門大介で居たい模様。その気持ちを汲んでいる、と言う事なのである。
ちなみに今現在、彼は食堂で兜甲児の作った手料理をごちそうになっている。なんか重苦しい雰囲気のこちらと違い、あちらは和気あいあいとしていて楽しそうだ。『わたし』もあっちに精神の焦点を置いておきたかったなあ。
*
トップ会談が終了した後、『わたし』はシロウの部屋に精神の焦点を移した。
『シロウ、ちょっと相談があるんだが』
「どうした? ワンセブン」
『北斗少年の事なのだよ』
そうして『わたし』は、今後の『GEAR戦士電童』のアニメ展開について、ざっくりと話をする。
『無論、我々の介入で話の展開は大きく変わって来てもいる。だが、それでも大まかな流れはあまり変化が無いとも言えるんだ。現状騎士GEAR凰牙は、『わたし』が責任者になって修復工事中だが……』
「それの修復が完了すれば、北斗が凰牙に乗って、電童を1人乗りに改造して銀河が、って感じにする様に、話が進んでるのも事実、って事か」
『そうなれば、ガルファ連中が『物語』通りに北斗少年を拉致し、洗脳して凰牙を奪回しようとする危険は大きい。どうしたものか、とな。それにアルテアの様に洗脳されているのではなく、幼少期からの教育でガルファの手先になっている、スバル少年も出て来るやも知れん』
シロウが髪の毛を右手でわしゃわしゃと搔き乱す。
「頭痛ぇなあ」
『どうにか北斗少年を拉致されない様にしたい。アルテアが洗脳されていた事実は、ベガ副司令にも北斗少年自身にも重い事実だ。当然ながらそれは、銀河少年にも副次的に負担になっている』
「……なあ。最悪の場合の保険なんだけどよ。ワンセブン、ヒュッケバインNextの解析なんだが、どこまで進んでやがる?」
『? それはどういう……。む!?』
「どうした?」
『わたし』とリンクしているシグコン・シップⅡの長距離センサー群が、重力場の歪みを検知する。これは……。マクロス系宇宙艦による、フォールドアウト反応、だ。それも2か所で。
『シロウ! ゼントラーディ軍とメルトランディ軍だ! ヒュッケバインNextで待機を!』
「!! 了解だ!」
急ぎ自室を飛び出して行くシロウ。『わたし』は『スタイシュッツ』全艦に警報を出すと同時に、シグコン・シップⅡ
『センサー手。ジェイミー。敵の情報は』
「妙です! ゼントラーディ軍とメルトランディ軍、双方とも月と地球の中間点近傍に出現しましたが、まったく戦闘行動を取らずに互いを警戒している様子です。しかも双方とも、単艦行動、1隻だけです!
現状『スタイシュッツ』がその近隣に居たため、全艦でそちらに急行していますが……。え!? 分析出ました! 双方、火星圏で確認された旗艦級です! ゼントラーディ軍側、4000m級戦艦! メルトランディ側、5000m級戦艦!」
「こちら通信士アヤメです! ゼントラーディ艦から通信が入ってます! あ、ちょっと遅れてメルトランディ艦からも通信が!」
いったい何が起こっている? とりあえず、弁慶に通信をつないで時間稼いでもらって、ブライト准将を呼び出すとするか。
*
なお驚くべき事に、レナード少尉が巨人化しており、ミリア639がマイクローン化している。正直唖然とした。レナード少尉はサンラナ1189の斜め後ろに控えており、ミリア639はウラキ少佐に寄り添う様に立っている。……何があったんだ。いやナニがあったのかも知れん。
現実逃避して阿呆な事を考えている間に、ブリタイ7018氏、それにサンラナ1189女史が話し始めていた。ずいぶんと、地球の言葉が上手くなっている。
『我々ブリタイ艦隊は、貴軍に投降、共闘を申し入れる……予定だったのだが』
『我々サンラナ艦隊も、本来同様であったのだが……』
『こちらのジュドー・アーシタとルー・ルカより得られた情報によれば、貴軍はブンミントーセーとやらで、戦闘員では無い……。ブンミンとやらが軍の上位に立っていると言う。正直理解が及ばぬ統治形態を取っているらしい』
『こちらも同様の情報を、コウ・ウラキとレナード・アームクロフトから得ている。それで我々は混乱している。投降と共闘の申し入れをどちらへ持っていけば良いのか、と』
『『『「!?」』』』
唐突な投降と共闘の申し入れに、混乱したのはこちらである。サブスクリーンや
でも不幸中の幸いと言うか
そしてブリタイ7018氏とサンラナ1189女史の話によると、事態はけっこうヤバいと言うかマズい事がはっきりした。ブリタイ7018氏は上司である機動要塞ゴル・ボドルザー、サンラナ1189女史は上司である機動要塞モルク・ラプラミズの指揮下でもはや数えることもできないほどの長期間……。何年レベルではなく、下手すると何百年、何千年に達している可能性もあるが、それだけの長い間を戦闘任務の繰り返しで生きて来たらしい。
その数々の戦いの中、当然ながら幾度も幾度も異星人たちとの接触はあった。性別が存在しない個体繁殖形式の物や、一部の機械生命体等々、男女という概念が存在しない相手ならば、彼ら曰く『良かった』そうなのであるが。だが男女という概念がある異星人、特に高度な『
異星文明と接触した際は、問答無用で滅ぼすのが通例なのだが、男女という概念や高度な『
そしてゴル・ボドルザー率いるボドル基幹艦隊も、モルク・ラプラミズ率いるラプラミズ基幹艦隊も、おそらくその他のゼントラーディ軍メルトランディ軍も、そう言った場合の対処は同じであろう。『わずかでも
ブリタイ7018氏もサンラナ1189女史も、これまでは何も考えずに上官からの指示に従い、何の罪悪感も抱く事は無く『
ここに至り、ブリタイ7018氏とサンラナ1189女史は各々別個に、自身と自身の部下たちが窮地に陥ってしまっている事に気付く。そしてこれまた今更であるが、過去に自分たちがやって来た事に対して後悔の念を抱いているらしい。
ブライト准将が重々しく語る。
『……投降の申し出については、当職……ああ、つまりわたしの事だが。その権限に於いて認める事ができる。また、今回は特例として武装解除は行わない。本来なら、武装解除は行われるのだが、今回は致し方無いだろう』
『そうか』
『了解した』
まあ、そうだろうな。下手をすると地球連邦軍を殲滅可能な規模の宇宙艦隊2つを武装解除なんぞ、物理的に無理だ。ブライト准将が続ける。
『共闘の申し出だが、それはわたしの名で、上層部へ打診するので、返答は少々待って欲しい。だが『上』の連中も、他にどうしようもない事は重々理解できると思う。まず間違いなく、申し出は通ると思われる』
『……すまない。言葉の端々が難しくて、わからない部分もあった』
『共闘の申し出は、おそらくかなり確実に通る、でいいのか?』
『そ、そうか。うむ、その理解で構わない。ところで我々との共闘ではなく、ブリタイ艦隊、サンラナ艦隊相互での共闘は、合意が為されているのかね?』
『『あ』』
どうやらまだそちらは成立していなかった模様。まあ、相互の交渉なんて、彼ら彼女らはまったく最初から念頭に無かったぐらいに没交渉だったはずだからなあ。戦闘民族だし。
そんなこんなで、ブリタイ7018氏もサンラナ1189女史も慌てて共闘関係を結ぶ事にした。まあ双方とも性差と陣営が異なるだけの違いぐらいしか無く、生物学的にも社会的にもほぼ同一の存在であるし。間にブライト准将が入って、条件を詰めてやったら、あっさりと交渉は成立した。まあブライト准将の胃壁は削れたかも知れないが。
と、ここでジュドーとウラキ少佐が、言葉を挟む。
『ブライトさん、ちょこっと重いお願いがあるんだけど……』
『ブライト准将、こちらもお願いがあります。と言いますか、緊急の上申が』
『まだあるのか……。いや、了解した。何かね?』
『実は……』
2人からの上申は、緊急を要する事だった。ブリタイ艦隊、サンラナ艦隊ともに、旗艦機能を持つ大型艦に於いては、機動要塞ゴル・ボドルザーや機動要塞モルク・ラプラミズに対する自動での報告機能があるらしいのだ。それは先ほどのブリタイ7018氏とサンラナ1189女史による説明にもあった。自動報告により『
『そのシステムは、たぶんだけど定期的に時間置いてフォールド通信? で送信してるみたいなんで。だけどこっちは戦闘要員ばっかりで……』
『メンテナンス要員などはおらず、各機動兵器や艦のシステムなども、メンテは自動で行われる以外は放置されている様な状態でして。修理不能になった場合は、放棄して自動工場から新品あるいは在庫品を受領するという形で』
『だから緊急で『スタイシュッツ』から技術者連中、送り込んで欲しいんだよブライトさん。いや、メンテさせるんじゃなく、自動報告のシステムを調べて止めさせるんだ。そうしないと、定期的な報告でブリタイ艦隊の内情が全部送信されっちゃう』
『それはまずい、な。了解だ、今から技術者の隊を編成し、送り込む。旗艦機能を持つ艦は、どれぐらいある?』
その総数推定百隻超。それを聞いて、ブライト准将の胃壁はまたダメージを負ってしまった。とても『スタイシュッツ』技術者だけで済む数では無い。慌ててブライト准将はレーザー通信で上層部に助けを求めたが、見ていてこちらの存在しない胃袋までダメージを受けた気がする。結果、大量の技術者がルナ2やらコンペイトウやらから送られて来たが、この混乱でガルファ螺旋城の攻略作戦が、一時延期になってしまったのは仕方の無い事だろう。
*
そして今、ブライト准将はメガロード級1番艦メガロード-01の一条艦長と通信し、善後策を練っている。その通信はシグコン・シップⅡ
『……となると、『ミンメイ・アタック』以外の方策は無い、という事か』
『はい。不幸中の幸いですが、当艦にはリン・ミンメイさんが乗艦しておられます。彼女の歌声による、オリジナルの『ミンメイ・アタック』をかける事ができます』
『それを行ってさえも、かなりの犠牲が出るのは避けられない、か。だが、やらねば必敗。それもただ負けるだけではない。地球全土が、軌道上からの艦砲射撃で溶岩の海と化す、軍隊用語ではない本当の意味での、圧倒的な全滅、だ』
ああ、ブライト艦長はやはり民間人を戦場の武器として扱うのに、
まあ、うん、まあ。ゼントラーディとメルトランディがこの世界に居るから、『ミンメイ・アタック』要員として残留したんだけどね。そういう背後関係があっても、なおブライト准将としてはちょっと納得できない感情が残るらしい。そりゃそうだよな。マクロス系世界観みたいに、地球人類全滅一歩手前みたいな状況下だった世界と、この世界じゃあ基本的な認識が違うもんな。
*
いったんゼダンの門に戻って来た我々『スタイシュッツ』。シロウは今、ハロン38552とフォロス29883、カーサ28154とサリカ44892の4人と談笑している。ヒュッケバインNextで彼らのお椀に飯を盛りながら、だが。
『よお、大出世じゃねえか、お前ら。ハロン38552とカーサ28154は俺たちの隊との連絡士官って事だし、フォロス29883、サリカ44892はゼントラーディとメルトランディの間の連絡士官って事で、互いの艦隊に交換で行く事になったんだろ?
……って、ありゃん? フォロス29883とサリカ44892は、あんま嬉しそうじゃねえな?』
「ああ、こいつら、飯が元に戻るの、と、テレビが見られなくなる、のでガッカリ、してる」
「わたしたち、こっちに残れるから、ちくちく言われる。なんか、ちょっと」
「「……しょぼーん」」
『いや、しょぼーん、って口で言うなよ』
まあ、それは仕方ないか。ああ、でも少しはどうにかしてやるかね。
『フォロス29883、サリカ44892。『わたし』の体内工場や艦内工場で、お前たちサイズの映像再生機器とアニメや歌番の映像ディスク作って持たせてやるから、ちょっとは我慢しろ。全部一遍に見るなよ? 後の楽しみが無くなるし、仕事をしないと怒られるからな? あと、ときどきお前ら宛に『わたし』が食べ物の差し入れ送ってやるから』
「「分かった!!」」
「「うわ、こいつら急に元気に」」
『こういうのを、現金って言うんだぜ。覚えとけよ(笑)』
けど、こいつらも随分と言葉が上達したもんだ。イントネーションとか、ほぼ完璧になったじゃないか。……こいつらに映像ディスクとか持たせてやったら、そこから『
電童関連のストーリーが一段落ついたと思ったら、今度はマクロス系が動きました。捕虜ゼントランと捕虜メルトランの連中、ちょっと言葉が上達してます。というか台詞が漢字混じってます。イントネーションがしっかりして来たって事で(笑)。