大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第71話 会社社長だって、平和を守れるんだ!

 我々『スタイシュッツ』が現場に到着した時、既に時空の歪みは破断し、100体弱のTHE・BIGがこの世界に放り出されていた。と言うか、先着した数十体は既に近隣への破壊活動を開始し、今まさに最後の数体が空間に開いた穴から放り出されたところである。空間に開いた穴は、(いかづち)(まと)って縮小して行き、見えなくなる。まだミクロ単位の穴は残っているのかも知れないが、もはや物質が通れるサイズでは無いから気にしなくてもいいだろう。たぶん。物理的に問題はきっと、おそらく、無い。

 不幸中の幸いか、この近辺は住民の退避は既に済んでいる。今回、世界中の時空の歪みを観測していた我々からの報告により、連邦軍が動いた。ここら近辺の連邦軍は、幸いにも早期に補給と再編が行われていたため、半ば追い立てる様にして住民たちを退去させる。

 

 住民たちは住民たちで、度重なる戦災により危険の匂いには敏感だ。泡を食って逃げ出した模様。おそらく逃げ出した先で暫定的に、公的な難民キャンプに収容されることだろう。THE・BIGどもは街々を、一瞬で廃墟に変えて行く。今ビッグ・デュオの1体が、この周辺に水を供給していた水タンクに、ミサイルをブチ込んで吹き飛ばした。

 

 

『く、あの水タンクを破壊されると、後の復興が面倒になるじゃないか』

『ワンセブン! ヒュッケバインNext、出るぞ!』

『『電童、発進します!』』

『こちら草間大作、出ます! ()べ、ジャイアント・ロボぉ!!』

 

 

ガオオオォォォン……!!

 

 

 味方機動兵器群が、次々に発進する。とりあえず空を飛べる機体や対空性能が高い機体は、ビッグ・デュオを狙って群がって行く。ビッグ・デュオの数はそう多くは無い。総数は十数機と言ったところだ。一番数が少ないのはビッグ・ファウ。水中戦用のこの機体は、陸戦でも電磁バリアによる圧倒的な防御力で、驚異的な戦闘力を誇っている。もっとも数が多いビッグ・オー型の陸戦機だが、空こそ飛べないが極めて高い万能性が特徴だ。

 

 

「ロボ! スポンソン砲! そしてパンチだ!」

 

 

ガオオオォォォン……!!

 

 

 ジャイアント・ロボが、ビッグ・デュオの発射した大型ミサイルにスポンソン砲を撃ち込んで迎撃し、そして爆炎を突っ切って来たそのビッグ・デュオにパンチを叩き込む。飛行仕様であるが故か、若干耐久力の低いビッグ・デュオはその一撃で爆発四散する。

 一方でグレンダイザーのダブルスペイザー装備がその高機動性を活かし、ビッグ・デュオ3体を引っ張る形で隊列を乱させ、その隙に乗じて反転攻撃を仕掛ける。

 

 

『スクリュークラッシャーパンチ!!』

 

 

 スクリュークラッシャーパンチが連続してビッグ・デュオのプロペラを破壊し、3体のビッグ・デュオは航空から地上に落下して行く。地上に()ちたビッグ・デュオは怖くは無い。グレンダイザーは反転して、また別のビッグ・デュオを狩りに行った。

 

 

『まずいな』

「どうしたね、ワンセブン」

 

 

 ロジャー・スミスが『わたし』の左手のひらの上から問い返す。彼はこの戦場で、ビッグ・オーの並行異世界同位体を鹵獲するために、ドロシー嬢と共に生身で戦場に出て来ているのだ。

 

 

『いや、地上の敵が……。こちらの機体と戦闘をしている物は、足止めできてはいるんだ。だがそれ以外の陸戦タイプが。あっ!』

 

 

 ビッグ・オーの集団、それらの額のパーツであるクリスタル部分が、(まばゆ)い光を放つ。発射ポーズを取ってから撃っているので、おそらくは高威力の収束モードだ。……レーザー砲、クロム・バスターである。それが超遠射程の、隣接都市外縁部を通っているハイウェイを焼いた。吹き飛ぶハイウェイ。そして警備していたジェガンが1機、超遠距離だからと油断していて巻き込まれ、大破する。残りの警備ジェガンは、急ぎ操縦士(パイロット)を救出して撤退開始した。

 あちらの都市は、未だ避難が進行中だ。こちらの都市に隣接しているブロックからは退避が済んでいるらしいが、まだ完全な退避は完了していない。それもあり、周辺地域の警備をジェガン部隊が行っていたのだ。流石に特機(スーパーロボット)級の相手はジェガンでは難しいので、戦いには参加しない様に通達が行っていたのだが……。

 

 ブライト准将からの指示が飛ぶ。

 

 

『空戦能力が無いか低い機体は、敵集団の前方に回り込め! 敵空戦機を排除して制空権を確保したなら、空戦能力が高い機体も同様だ!』

『『『『『『了解!』』』』』』

 

 

 ヒュッケバインNextが、マスター・ガンダム(セカンド)が、士翼号2機が、ベルゼルガ・テスタロッサが、敵前方へと回り込んで行く。大気圏内では飛べなくはないが空戦能力がやや落ちる、ガンバスターとシズラー黒改もまた。その他の陸戦タイプや空戦があまり得意ではない機体群も、急ぎ同様の行動を取る。

 

 

『のわあああぁぁぁ!? く、だが、まだまだまだあああぁぁぁ!!』

 

 

 ビッグ・オーのうち1機の強烈なパンチ……サドン・インパクトを受けて、バリアーを貫かれたイワンのウラエヌスが、胴体に大きなヒビを入れつつどうにか体勢を立て直した。『わたし』は彼に通信を送る。

 

 

『イワン! 下がれ! 修理装置を搭載したファさんの百式Rが近場に居る! 装甲の応急溶接処置を受けろ!』

『りょ、了解いいいぃぃぃ!!』

「……! 見つけた!」

 

 

 ロジャーが叫ぶ。その手には、双眼鏡が握られていた。その視線は、今しがたイワンのウラエヌスを殴り飛ばしたビッグ・オーに向けられている。

 

 

『!! ロジャー・スミス、あのイワンの機体を殴り飛ばした、アレかね?』

「ちがう、その斜め後ろの機体だ。近くに寄ってくれ! 確かめる!」

『了解、だ。少しどころじゃなく揺れる。しっかり摑まってくれ。というか、ドロシー嬢、ロジャーを捕まえてわたしの手に固定してくれ』

「了解よ」

「な、ちょっと待……。うわっ!?」

 

 

 そして『わたし』は手加減ほとんど無しで前進する。無論のこと、機体(からだ)の上下に合わせてロジャーを乗せた左手は同調して逆方向に上下させているので、そういう揺れはあまり無いはずだが。だが加減速などで、かなりのGや別方向の揺れがあるはずなのだ。

 

 

『ロジャー・スミス、『あれ』かね?』

「そ、そうだ。うわ! くう……。よし、試してみる! 『ビッグ・オー!!』」

 

 

 ロジャーが腕時計に向かい叫んだ瞬間、目標のビッグ・オーの1体が、ビクリと躯体を一瞬硬直させた。……間違いなさそうだ。

 

 

「……ビッグ・オー! ショータアアアァァァイム!」

『……』

 

 

 だがそのビック・オーは、挙動が不確かになったのは確かだが、それでも周辺味方機に対する戦闘行動を辞めない。

 

 

「っち、なかなか強情だな。こうなれば直接的なネゴシエーションに移るとしよう!」

「わかったわロジャー」

「え。いや、そういう意味で言ったのはそうだが、まてドロシ、うわっ!?」

 

 

 ……R・ドロシー・ウェインライト嬢が、ロジャー・スミスを抱えて『わたし』の機体(からだ)上を駆けて行く。がんばれ、ロジャー・スミス。『わたし』はドロシー嬢が助走距離を取れる様に、肩口から右手を真っ直ぐに、目標のビッグ・オーの方向に伸ばしてやった。

 そのついでに空いた左手からはワンセブン・クロスを放って、目標右隣のビッグ・オーを縛り付けて邪魔をさせない様にする。目標左隣のビッグ・オーが目から白色レーザー、アーク・ラインを発射して来るので、腹部装甲を表裏反転させて反射鏡にし、それを相手にそのまま返してやる。ビッグ・ファウが邪魔をしに来るので、脛ミサイルで迎撃。相手は電磁バリアで防御するが、その防御行動により一瞬動きが止まる。

 

 ドロシー嬢は、『わたし』右手の指先までフルに使って助走し、ロジャーを掴んだまま目標のビッグ・オー首元まで跳躍して見せた。すばらしい。超オリンピック級、いや彼女はロボットだから元より出られないが。そしてロジャー……。ナムナム。

 彼らはビッグ・オーの乗降ハッチを強制開放。目標のビッグ・オー首元が、上下に大きく動く。そして元に戻った時、ロジャーとドロシー嬢は姿が見えなくなっていた。

 

 

(CAST IN THE NAME OF GOD,YE NOT GUILTY.)

 

 

 何処からともなく、声が響いた……気がした。いや、『わたし』にはニュータイプ的感覚が、確実に存在する。その感覚に乗って、聞こえたのだ。更に通信波とビッグ・オーの外部スピーカー音声に乗って、声が聞こえる。

 

 

『ビッグ・オー……。アアアァァァクション!!』

 

 

 何と言うか、迫力が違う。存在感が違う。目力(めぢから)が全く違う。ロジャー・スミスが搭乗したビッグ・オーが、両拳をガツン! と叩き合わせて気合を入れる、その姿が。あまりに。あまりに力に満ち溢れている。他のビッグ・オー型の機体群とは、形状もカラーリングも同じはずなのに、一目で違いが判るのだ。

 

 そしてロジャーのビッグ・オーは隣のワンセブン・クロスに捕らわれていたビッグ・オー型機体に向けて拳を叩きつける。肘のシリンダーが激しく煙を吹いて伸縮……。サドン・インパクトをもろに喰らったその機体は、胴中央から部品をばら撒きつつ後方によろめき、爆炎を発して吹き飛ぶ。

 更にそのままビッグ・オーは、ビッグ・ファウに向かい目からレーザー、アーク・ラインを発射。バリアーで防いだビッグ・ファウだったが瞬間、そのバリアを解除して行動に移る瞬間を見極めたロジャーの操縦で、ビッグ・オーはビッグ・ファウに対してもサドン・インパクトを叩きつける。強烈なパンチにより胴体に風穴の開いたビッグ・ファウは崩れ落ち、これも爆炎に消えた。

 

 

『あれだけ苦戦したビッグ・ファウが……。やはり操縦士(パイロット)が居ないというのは、このような物、か』

『油断しないでロジャー。AIの経験値不足ね。けれど武装の威力や機体防御力は同等』

『なるほど! 了解だ!』

 

 

 空には、既にビッグ・デュオは舞っていない。既に全機、撃破されたか地上に叩き落されている。と言うか、飛行能力を失った個体が機銃を撃ちながら『わたし』に突っかかって来る。その懐に飛び込んで、肩車で投げ落としつつ、胴体に膝を叩き込む。背骨に相当するフレームがへし折れて、胴体が直角に曲がり、そいつも爆炎に沈んだ。

 そして同時に『わたし』の背中から襲い掛かる、ビッグ・オー型機体。サドン・インパクトを叩き込もうと言う腹だろう。だがその後ろから電童が飛び掛かる。

 

 

『『旋風回転脚!! からのぉ……。爆砕重落下!!』』

 

 

 一気に吹き飛ぶ敵機。北斗少年も銀河少年も、データウェポンに頼り切りでは無い。素の実力で、十二分に戦える様になっている。

 

 

『さすがだな、北斗少年に銀河少年。同僚として、鼻が高い。鼻は無いがね』

『へへへ、ワンセブンにそう言ってもらえると、なんだかこそばゆいぜ』

『そうだね、銀河。……あ、また敵だ! 今度はバリアー張るやつだ!』

『あいつバリアー解除のタイミング、狙うのが難しいんだよなぁ』

 

 

 という事は、既に彼らビッグ・ファウも1体以上は倒してるって事か。あちらではそのビッグ・ファウ別機体に向けて、シロウのヒュッケバインNextが襲い掛かっている。

 

 

『うおおおぉぉぉ!! てめえにゃ数打てねえシャイニング・フィンガーはもったいねえ! これで、どおだあああぁぁぁ!!』

 

 

 ビームソードの出力が、ブラックホールエンジンの強大なパワーを受けて、更にサイコフレームの共振も交えて強大化する。ロシュセイバー・オーバーブレイク、だ。その強大な威力は、ビッグ・ファウの電磁バリアーごと機体を真っ二つに裂いた。……いや、凄いな。

 

 

 

*

 

 

 

 そんなこんなで、幸いな事に今回のTHE・BIG兵団による異界からの攻撃は、民間人の死者はゼロで対処する事ができた。ただし隣接都市へのクロム・バスター集団発射で、警備していたジェガンが1機撃破されて機体放棄されている。操縦士(パイロット)は重傷を負ったそうだ。まさかあそこまでクロム・バスターが届くとは……。ロジャー・スミスからはレーザー兵器だとの申告を貰っていたので、標準的なレーザー兵器の到達距離を見積もっていたのだが、大気の透明度具合で届いてしまった様だ。万が一を考えて、早期撤退してもらうべきだったな。

 それと、隣接都市の外縁ハイウェイを始め、戦場になった都市の水供給設備やら送変電施設やらのインフラが、多大な被害を受けている。復旧にはけっこうな予算と期間、マンパワーが大量に必要だろう。正直な話、かなり問題だ。ロジャーの会社も、民生MS(モビルスーツ)MW(モビルワーカー)、プチモビ、作業用自律ロボット等などを大量に現地に安値で売り込んでいる。

 

 ちなみにロジャーの会社では、安値であっても機体類を購入できない自治体や業者に対し、レンタルで貸し出すサービスも始める事になった。無論、長期間であればレンタルではなく購入した方が安くなるのは確かだ。だが購入は初期投資額が大きいため、厳しいのも事実。短期間であればレンタルという選択肢も充分に魅力的なのだ。

 

 

「ふう……。とりあえず山は越えた、か?」

「まだよロジャー。貴方が貴方を(あなど)らせる様に噂を流したから、『お客さん』がたくさん寄って来たわ」

「それがあったか」

「あなたのネゴシエーター時代の経験が、生きるわね」

「待ちたまえドロシー。わたしは現役のネゴシエーターだ。社主業は、副業だ」

 

 

 なんだろう。こう、見ていると何と言うか。心の奥底から笑いがこみ上げて来るんだが。

 

 

『ロジャー、コーヒーと紅茶、どちらがいいかね』

「今日は、紅茶で頼む。コーヒーは少し、胃に来る」

『了解だ。お茶請けには、頭脳に糖分が効くチーズケーキを用意しよう』

「……甘さは控えめで頼みたいんだがね」

『頭脳の糖分補給だ。我慢したまえ』

 

 

 そして『わたし』は、笑みを含んだ口調で言う。

 

 

『会社社長でも、平和を守れるんだ。がんばりたまえ』

 

 

 サラリーマンでも、平和を守れるんだ! と叫んだ青年は、この世界には居なさそうだが。その言葉は、ここでも生きていた。

 

 

 

*

 

 

 

 とりあえず様々な事態に即応すべく、『スタイシュッツ』は宇宙に、静止軌道上に上がった。必要時にはここから可能な限りの速度で、各地に赴くのだ。……と思っていたら、何やらまたしても緊急事態の様だ。

 

 

「ワンセブン! シグコン・シップⅡの長距離センサーが、異星文明の物と思しき艦船をキャッチしたって!?」

『弁慶、そうなんだ。地球圏、火星圏、木製圏で建造されたどの艦船とも形状が合わん。それどころか、地球人系列の技術からして、この船舶の形状だと推進技術などがまったく合わなくなる。同じことが、ガルファ系列の艦船、ゼントラーディ軍やメルトランディ軍の艦船にも言える』

「また別系統の宇宙人、てか」

 

 

 ……だけど、『わたし』はこの艦船を知っている。弁慶が、周囲の面々に聞こえない様に壁の意識端末に近寄ると、こっそり小声で聞いて来た。

 

 

「なあ、こいつもなんか『物語』に出て来る船、か?」

『ああ。問題になりそうな情報は、流すよ』

「頼むぜ」

 

 

 しかし、この艦船というか中型戦艦、随分とボロボロになっている。それと記憶にある形から、エンジンブロックが大きく改修されている様だ。あの戦艦はたしか二重太陽サンズを中心にした5つの惑星で構成されている星系を航行する艦艇であったはず。つまりその星系がある場所、おそらく他銀河系からここまで航行するための、恒星間航行システムいや銀河間航行システムを後付けで無理矢理に装備したんだろう。

 ……この艦の名前はターナ。正式名称クォート・ターナ。ペンタゴナ・ワールドの強圧的強権的支配者であるオルドナ・ポセイダルに対する反乱軍の指導者の1人、ダバ・マイロード指揮下の中型戦艦である。とりあえずは、接触を試みるつもりではあるが、だが並行異世界間誤差というものは何処にでもある。最大限の注意が必要だろう。




サラリーマンだって、平和を守れるんだ! ……いい、言葉です。世界は違っても、常にこの言葉を胸に刻んでいたい物ですな。ロジャーの社長業というか社主業は、今日も続きます。

そして唐突に出現したクォート・ターナ。HM(ヘビーメタル)6機を搭載可能な、中型戦艦。ダバ(カモン)・マイロードの乗艦。とうとう、出現しました。つまりはあのはた迷惑な、他者を駒の様に扱って喜ぶオッサンがこの世界に現れる、っつう事ですな。オッサンつうか爺さん。せめてガルファ問題終わってから来てほしい物ですな。
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