大鉄人戦記   作:雑草弁士

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第008話:忘れられた機体と黄泉還る悪意

 アラスカの極北の氷原で、『わたし』たちはジオン残党軍のMS(モビルスーツ)部隊と戦いを繰り広げていた。しかしながらこいつら……。そこそこの精鋭っぽい。シグコン・シップに上空からの支援射撃を行わせているんだが、命中率が低いのだ。

 リモコンで動かしているシグコン・シップは、『わたし』が出撃しているとどうしても片手間での制御になってしまう。マルチタスクで思考分割して制御(コントロール)しているのだが、シグコン・ジェットⅡ多数まで飛ばすと支援メカ1つ分に割り当てる演算時間が……。

 

 かと言って、シグコン・ジェットⅡでの周辺警戒を怠ると、敵に増援が来たときが怖いしなあ。やはり『わたし』自身の演算能力を強化しないとまずい様だ。かつての世界では、わたしがコントロールしているリモコンメカはシグコン・ジェットにシグコン・タンク、そして友である南三郎にプレゼントしたサブマシンの3機だけ、しかもサブマシンは緊急時以外は三郎が操縦していたし。

 その程度の数を制御するのならば、『わたし』の演算能力はまったく問題が無かったのだ。けれど今後はシグコン・ジェットⅡなどリモコン偵察機の必要性は更に高まるだろうし、演算能力強化はやはり必要だな。それと、できるならばシグコン・シップは戦闘中は、誰か乗員に操艦を任せてしまいたい。

 

 それはともかくとして、『わたし』は敵ギラ・ズールを蹴り上げて宙に浮かせ、鉄拳を見舞って破壊する。それでこの戦場は、方がついた。

 

 

『……』

 

【シャア大佐、気になるかね?】

 

『ああ。彼らはある意味、わたしの影に踊らされている様なものだからな。振り切ったつもりでも、やはりときどき苦しくなる』

 

『『……』』

 

 

 アムロ大尉とカミーユ君は、何か言いたげだったが無言のままだ。

 

 

【君の今の行いは、贖罪なのかね?】

 

『その様なつもりはない。わたしは許されようなどとは思っていない。そのようなおこがましい真似はできんさ。わたしは許されてはならない。

 わたしは思い知った。わたしには人々を導く器など、無い。であるならば自分の器に見合った、今できる事をせいいっぱいやるしか無いだろう』

 

 

 そうか。たしかにシャア大佐にはカリスマ性も能力もある。だが肝心の性格的な面で、無理があったのだろうな。それを彼の生まれや立場が許さなかった……。そんな面もあるんだろう。

 贖罪のつもりは、無いのだろう。だが少なくとも、何がしかの形で責任を果たそうとしている。裸一貫で。それは一部宗派の僧侶がやるような、苦行にも思えた。

 

 

 

*

 

 

 

 探査機(プローブ)を先行させて、『わたし』はジオン残党軍が目指していた建物を調査する。それは何がしかの、小規模基地の跡だった。無論、連邦軍の物である。

 

 

「どうだ、ワンセブン?」

 

『セキュリティは死んでるな。というか電源自体、動力全てが死んでる。電子的な手段では、扉は開かない模様だ。これからシグコン・タンクⅡを出して、ドリルで建物自体に穴を開けて侵入口を作る』

 

 

 シグコン・タンクⅡはあっさりと建物の壁に大穴を穿(うが)つ。そこから侵入した探査機(プローブ)は、早速この廃棄された基地の調査を開始した。

 とりあえずこの部屋には、幾つかのロッカーがあった。ロッカーでは何枚かカード・キーが発見できたので、そのコードを解析する。基地の動力が全て死んでいるので、シグコン・タンクⅡから電源を引っ張ってきて直結してみる事にした。

 

 幸いにも、見つけたカード・キーは相当に高いレベルの物だった様だ。おかげで電源さえ入れば、奥にある扉は次々に開いて行く。やがて探査機(プローブ)は大型端末を見つけた。それにも電源を繋いで、再起動をかける。データバンクが無事であると良いんだが。

 

 ……!?

 

 

『カミーユ君、これを見てくれ』

 

「どうしたんです? ワンセブン。……これは!」

 

 

 うん、偉い物を見つけた。この放棄された廃棄基地は、『ある物』の封印場所なんだ。アムロ大尉が第二次ネオ・ジオン抗争にて連邦軍の上層部に使わせてもらえる様に上申し、却下されたとの逸話も残っている。うん、Ζガンダムと百式、だ。もっとも大破状態で、修復は手つかずの様子だが。

 スパロボ世界ではどうなのか知らないが、『機動戦士ガンダム』の正史では宇宙世紀0091年と0100年の式典で、Ζプラスのパーツを用いて修復されたこの機体が記念飛行を行ったって話もあるが……。少なくともこの世界では、修復も為されずにアラスカの極北で封印されてたってわけか。いや、連邦の偉いさんたちも、何処に封印したか分からなくなってたって話もあったな。

 

 

「ゼータ……。こんなところにあったのか」

 

『封印倉庫の扉を解放する。それと同時に、いっしょに封印されていた技術資料の類も多数発見した。技術資料は探査機(プローブ)に任せて大丈夫だが、封印機体とそのパーツ類を回収するために、ジェダを出してくれないかね? わたしも作業の手伝いに出よう』

 

「了解、ワンセブン……。大破状態だって言っても、ゼータが手に入れば……」

 

 

 うん、時間をかければ修復も可能だろうし、何よりバイオセンサーの実物が手に入る。『わたし』はシャア大佐に尋ねた。

 

 

『シャア大佐、百式も回収して修復するつもりだが、どうするね? 信頼性ではリ・ガズィの方が上だが、極限までカリカリにチューンナップすれば、性能そのものは百式の方が若干上回るかも知れん』

 

「……いや、わたしはリ・ガズィを使わせてもらおう。Ζガンダムを修復したなら近代化改修を施してカミーユに、百式はこれも近代化改修後、ファに使ってもらう事でどうだろうか。せっかく複製機を造ったのは勿体ないが、ジェダよりはいいだろう。

 それよりもわたしとアムロのリ・ガズィに、バイオセンサーを載せる事はできないか?」

 

『了解した。じゃあ封印機体を洗いざらい回収しに出るとしよう』

 

 

 そして『わたし』はシグコン・シップから離脱すると、『戦闘ワンセブン』形態になって廃棄基地に向かい、歩き始めた。その後を、カミーユ君とファさんのジェダが付いて来る。なるほどな。あのジオン残党軍の連中は、ここにΖガンダムと百式がある事を何処かで知って、やって来たという事か。

 ……連邦軍は、ガタガタだな。特に上の方が。封印機体の情報を、こうもあっさりジオン残党軍に抜かれるなんてな。末端や一部派閥は、それでも一般の人民を護るために必死になっているんだが……。そんな彼らばかりに義務を押し付けて、本来その義務と引き換えに与えられているはずの特権を享受している奴らがいる。

 

 ……せめても、熱い魂を持っている美しい心の人たちの、邪魔だけはしないで欲しいんだがなあ。

 

 

 

*

 

 

 

 バイオセンサーの解析が終わった。Ζガンダムと百式は、現状修復と近代化改修の最中だが、バイオセンサーだけ一足先に複製する事ができた。

 

 

『では、これをアムロ大尉とシャア大佐のリ・ガズィに搭載するぞ。Ζガンダムと百式の修復や改修が済むまでの間だが、2機のジェダにも搭載しておこう』

 

「なあワンセブン、俺のヒュッケバインNextにも積めねえか?」

 

『シロウ……。積みたいなら積んでもいいが……。規格が合うかな?』

 

 

 搭載できた。というか、元々ヒュッケバインNextには制御系の拡張ユニット搭載スロットが、多数存在していた。Ζガンダムから得られたバイオセンサーの複製だが、ちょこっとコネクターに手を加えただけでそこに突っ込む形で接続できたのである。

 そればかりではない。以前から気になっていたのだが、ヒュッケバインNextのフレーム部分には、何かしら補機を接続するような端子が並んでいたのだ。特にコクピット周辺フレームにはそれを取り囲む様な形で多数その端子が並んでいる。

 

 アムロ大尉の意見を聞いたところ、当初単なる高性能機として設計されたνガンダムに、シャア大佐から流されたサイコフレーム技術を組み込んだのだが、その際の改修ポイントに良く似ているとの事だ。おそらくその端子全部にサイコフレームを接続すれば、フル・サイコフレーム機に近い機体となる、らしい。

 

 ……これ、まさか元々は、T-LINKシステム用の接続端子じゃないだろうな。

 

 

 

*

 

 

 

 サイコフレームの事はさておいて。その後我々はインベーダーを狩るために各地を転戦していた。

 

 

『どおおりゃああ!!』

 

『竜馬、単独で突っ込むな! 孤立する!』

 

『ち、わかったよ。ってぇ、ゲッタアアアァァァ、ビイイイィィィム!!』

 

 

 取り囲まれかけたブラックゲッターだが、ボロボロのゲッターマントを渦巻かせてそこから多数に拡散したゲッタービームを放つ。ゲッタービームは周囲のメタルビースト、インベーダーを退(しりぞ)かせ、あるいは撃破して退路を開いた。

 更にアムロ大尉のリ・ガズィBWSが上空からビームとミサイルを放ち、ブラックゲッターは後退に成功した。『わたし』も脛と前腕からミサイルの嵐をお見舞いしている。

 

 

『一気に押し込むぞ!』

 

『『了解!』』

 

 

 シャア大佐のリ・ガズィに率いられたカミーユ君とファさんのジェダが、前進する。『わたし』とシロウのヒュッケバインNextも、同様に敵を叩こうとした。が、わたしは向きを変える。

 

 

『どうした、ワンセブン!?』

 

【周辺警戒させていたシグコン・ジェットⅡから報告があった。招かれざる客が来た】

 

『何!? いったい何処のどいつだ!』

 

【機械獣だ。……野良機械獣、と言いたいところだが、違う。指揮官機が居る】

 

『『『『『『!!』』』』』』

 

 

 その場の全員が驚愕する。だが流石歴戦の戦士たちだ。インベーダーを叩く手を止めることは無い。

 やがて16体の機械獣が、その場に現れる。うち2体が指揮官機の模様だ。……2体の指揮官機のうち、1体は身体の左右が完全に非対称だ。その形状はかつてDr.ヘル事変にて機械獣の指揮を執っていた、あしゅら男爵に酷似している。もう1体の指揮官機は、これまたDr.ヘル配下のブロッケン伯爵を思わせる姿をしていた。

 

 ……こいつらは、アシュラーP1とブロッケーンT9か? となるとまさか、『マジンガーZ INFINITY』か? INFINITYと復活したDr.ヘルが敵として出現することも、覚悟しておかないとならないって事か。

 いや、連邦軍の主力兵機に簡易量産マジンガーのイチナナ式がある事で、それは理解していたんだが。だが目を背けていたかったなあ。

 

 いや、目を背けてたら、駄目だ。兜甲児たちだけに、復活したDr.ヘルとINFINITYの相手をさせてちゃ駄目だ。

 

 

『『ち、兜甲児も剣鉄也もいないではないか』』

 

『誤情報に騙されおったな、あしゅら男爵』

 

『『ええいブロッケン! もとより情報が錯綜(さくそう)しておるのだ! 貴様とて異を唱えなかったではないか!』』

 

 

 アムロ大尉に竜馬は、敵の台詞に驚愕する。彼らは隊内回線で叫んだ。幸い敵に対し問いを投げかける様な真似はしない。こちらは出来る限り、正体不明で居たいのだ。

 

 

『馬鹿な、奴らは15年前に死んだはずだ!』

 

『ちぃっ。地獄から迷い出てきやがったか!』

 

【……彼らが生きていると言う事は、Dr.ヘルも生きているか、もしくは復活した可能性が高い。彼らの台詞から、兜甲児か剣鉄也を狙っているものと思われる。この戦闘が終了次第、アムロ大尉の名義で日本の新光子力研究所に警告を送ろう。

 竜馬はもともと生死不明であり、MIAになっていなければ仮釈放中に逃走した扱いで拘束されかねない。一方アムロ大尉は、幽閉先のシャイアン基地から脱走中ではあるが、生きている事は周知の事実だからな】

 

 

 その他にも、INFINITY関連の情報を探るために、探査機(プローブ)を新光子力研究所に派遣して情報を()るべきだろうな。この世界は『現実』なのだ。前世におけるアニメ情報で全てを決めつけることは、危険に過ぎる。あくまで参考程度に(とど)めて、色々な可能性を考慮に入れて動かないと。

 無論それは、竜馬周辺に関しても言える。『真ゲッターロボ・世界最後の日』の通りにストーリーが進むわけは無いのだ。既に色々と差異は存在するしな。

 

 そして『わたし』たちは戦力を2つに分けると、一方はインベーダーどもの残存勢力、もう一方は機械獣軍団に攻めかかった。

 

 

 

*

 

 

 

 戦闘は危なげなく、こちらの勝利に終わった。インベーダーの残りを殲滅した竜馬のブラックゲッターとアムロ大尉のリ・ガズィBWSが戦列に戻ったら、機械獣軍団などは木っ端程度の相手でしか無い。

 流石にあしゅら男爵のアシュラーP1と、ブロッケン伯爵のブロッケーンT9は強敵ではあったが。それらも『わたし』が両者を捕まえて投げ飛ばし、ひとかたまりになった所でミサイル全開射撃を送り込んでやったら吹き飛んで終わった。

 

 

『だが、シロウやアムロ大尉、シャア大佐、カミーユ君やファさんには、相手の断末魔は聞こえなかったんだね?』

 

「ああ、多分だが奴らは脱出してると思うぜ」

 

「あのしぶとさは、15年経っても変わらないな……」

 

「今度会ったら、地獄へ送り返してやるぜ」

 

 

 優秀なNT(ニュータイプ)能力の持ち主や強化人間である彼らの保証付きだ。まず間違いなく、あしゅら男爵もブロッケン伯爵も、脱出しているだろう。

 

 何はともかく、日本に送り込んで公共のネットワークに侵入した探査機(プローブ)を介し、アムロ大尉名義で新光子力研究所に警告を送る事にした。兜甲児も狙われてはいるが、一番危ないのは軍人として仲間達から離れて活動していると思われる、剣鉄也だ。

 兜シローもまた軍人ではあるが、彼にはDr.ヘル陣営の目は向かない可能性が高い。……いや、マジンガー乗りとしてはともかく、兜甲児たちに対する人質にされる危険はあるか?やはり注意喚起はしておこうか。

 

 それと今、1つ考えている事がある。オーガスタ研からの救出者たちの事なのだが、洗脳解除に目途(めど)が立ったのだ。だが彼らを放り出すわけにもいかない以上、いっそのことシグコン・シップの乗員としてスカウトするのはどうだろうか。

 

 今のまま、片手間にリモコン操作しているだけでは、シグコン・シップの戦力価値は残念ながら低い。火力もあるし防御力も馬鹿高いが、『わたし』がドッキング時と出撃時の攻撃命中率が、あまりにも差がありすぎるのだ。

 まあこれが回避力の低い低位のインベーダーや弱めの機械獣相手であれば、充分なのだが。回避力が高い相手だと……。

 

 だがせめて艦橋(ブリッジ)要員だけでもしっかり居てくれれば、シグコン・シップの戦力価値は跳ね上がる。無論リモコンでも、『わたし』の演算能力を高めれば解決策になるのだが。まあ演算能力を高めるため自己改良するのは、そうそう即座にできることでも無いからな。

 だが演算能力の自己改良は、ここのところ連日取り組んでもいる。まあ近い将来にはある程度の改善が見込めるだろう。けれどやはり即効性がある方策として、オーガスタ研からの救出者のスカウトは考えてみようと思う。

 

 そして『わたし』たちが乗るシグコン・シップは、まずはインベーダー狩を続けるために、次の目的地へと向かい飛翔したのである。




Ζガンダムと百式、手に入れました。まあ大破してますが。強化パーツ『バイオセンサー』も(笑)。
ちなみにヒュッケバインNextの強化パーツスロットは、現状4個あります。フル改造ボーナスとかで、たぶんもう1個増えて5個になります。

……なかなかグラビトンを使う様な敵が出ない。出せない。でも逆にINFINITYとか相手だと、グラビトンじゃ微妙だし……。
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