プロデューサーはじめました。   作:テラリウムA

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12話 ニュージェネレーションズ

 ニュージェネレーションズ。それは私としまむーとしぶりんとのユニット名だ。

 

 346プロのオーディションに見事合格し、晴れてアイドルとなった私──本田未央が初めて結成するユニットであり、アイドルとしてデビューする第一歩である。

 

「ワン、ツー、スリー、フォー! ワン、ツー、スリー、フォー!」

 

 ダンスレッスンを担当してくれているベテトレさんの掛け声がレッスンルームに響く。

 

 ユニットの結成、デビューとお披露目を兼ねたミニライブを行うことが決まり、プロデューサーから聞かされたあの日から私たちのレッスンはより厳しくなってきた。

 

 リーダーにも任命されて、この未央ちゃんにまっかせなさい! と意気込んでみたものの中々どうして難しい。

 

 曲が終わってポーズを決める。

 自分だけじゃなく、他の2人の荒い息づかいも聞こえる。

 

「未央、自信がないところは適当になりがちだ。卯月はペースが少し遅れている。凛は自分のペースを追い過ぎだ」

 

 私も含めて全員にダメ出しが飛ぶ。

 

「はい!」

 

 聖さんは厳しい。ちょー厳しい。少しは上達していると思いたいが、果たしてどうなんだろう。

 

「3分休憩だ。汗を拭いて水分補給をしろ」

 

 もうすでに半分ほど湿ったタオルで汗を拭く。水分補給をしながらしまむーとしぶりんの様子を確認する。だって私がリーダーだもんげ!

 

「しまむー、さっきの振り付け、前より合ってきたんじゃない?」

「そ、そうですか? えへへ、良かったです!」 

 

 しまむーは肩で大きく息をしている。養成所のレッスンよりもかなりきついと言っていたから相当きついはずだ。

 

「しぶりんはすごいね。ビシッと決まってたよ!」

「ありがと。未央も振り付けが正確になってきたんじゃないかな」

 

 しぶりんは息があまり上がってない。というよりは、整うのが早いんだ。

 

「ちょっとちょっと、それだと私の振り付けが不正確だったみたいじゃん」

 

 相変わらず私は振り付けが不正確というか手抜きをしてしまっているというか。もちろん、私個人としては大真面目に取り組んでいるつもりではあって、自主練も重ねている。

 

 不意に頭をパコッとクリップボードで軽く叩かれた。ベテトレさんがやったらしい。

 

「未央はだいぶマシにはなったな。初めて振り付けを踊らせたときはくにゃくにゃのふにゃふにゃだったんだぞ」 

「そ、そんなにですか?」

 

 くにゃくにゃのふにゃふにゃってどんなんだ? こんにゃくみたいな感じかな。

 

「そんなにだ。さて、休憩終わり。もう一度頭からだ。それぞれさっきの注意を忘れるな! では始める!」

 

 3人で所定の位置に立ち、曲の始まりに合わせて振り付けを踊る。

 

 これに加えてミニライブでは歌もあるのだから、レッスンはどうしてもハードになってしまう。これを普段からやるとなるとかなりの体力が必要になる。

 

 アイドルがデビューすることの大変さを、今、身をもって経験していた。

 

 

 

 

 曲のアウトロが流れて、私たちはポーズを決めた。

 

「そこまで!」

「はぁ……はぁ……はぁ……ふうぅ」

 

 ベテトレさんの掛け声とともに私たちは維持していたポーズを崩した。

 

「3人とも私がさきほど注意した点は意識できていたな。良かったぞ」

 

 よっしゃ。私は心の中でガッツポーズを決める。

 

「ただし、意識できているとはいえ、お前たちはまだ荒いな。明日以降は荒さを削って磨きをかけていく。今日の感覚を忘れないように!」

「はい!」

 

 私たちの返事が被る。

 

「クールダウンをしっかりするように」

 

 本日のレッスンプログラムは無事に終了した。先に組まれていたボイスレッスンは優しめのトレさんが担当してくれているけど、さすが姉妹だ。厳しくなるところはとことんそっくり。

 

 10分ほどダウンジョグを行い、次にウォーキング、最後にストレッチでゆっくりと体を伸ばす。

 

 クールダウンなんてめんどいなぁって初めは思ったけど、言われた通りにやると次の日の疲労感が軽かった。やっぱり専門的な知識のある人はすごいなと感心した。

 

「しまむー、しぶりん、お疲れ! いやー、今日もスパルタでしたなー」

「未央もお疲れ様。これくらいが当たり前なんてアイドルの世界は厳しいんだね」

「しぶりん、挫けてはいけないよ。さあ、あの夕日に向かって走ろう!」

「室内からじゃ見えないでしょ」

「えへ」

「もう、調子いいんだから」

 

 微笑んだしぶりんは先にシャワーを浴びてくるからというのでそれを見送り、次はしまむーのもとへ。

 

「し・ま・むー」

 

 ぴょんこらぴょんと彼女に近づく。

 

「今日もお疲れ!」

「……あ、未央ちゃん」

 

 少し表情が暗いなぁ。ペースが遅れていたことかな、たぶん。

 

「ほら笑って笑って! 笑顔笑顔! いぇい!」

「えーっと、い、いぇい!」

「そうそう、やっぱしまむーはそうでなくちゃ! 今日にだって着実に良くなってるんだから、元気にいこっ! ね?」

「そう、ですね。ありがとうございます、未央ちゃん。もしかしたら私足手まといかもってちょっと考えちゃってました。えへへ、未央ちゃんがリーダーで頼もしいです!」

 

 うんうん、いつもの笑顔を見せてくれるしまむーに一安心。

 

「ふむ、この未央ちゃんがいる限り、世界に悪は栄えない!」

「カッコいいです!」

 

 しまむー、いや、そこはツッコんで欲しかったな。アイドル要素どこいった!? とか。んー、ま、いいか。

 

「ふふふ、じゃあ、しぶりんのいるシャワー室に突撃しようぜ」

「はい! 行きましょう!」

 

 しぶりんのあられもない姿が今明らかに──なりません。ごめんちゃい。

 

 

 * * *

 

 

 ミニライブまで残り2週間とちょっとになった。

 今日はなんとぉ……衣装合わせをすることになっている! ニュージェネレーションズの3人で着るお揃いの衣装の封印がいざ解かれるとき!

 

「サイズはいかがですか?」

「ピッタリです!」

 

 私はちひろさんへ語気を強めに返事をしてしまった。

 

 だってねぇ、待ちに待った初衣装だもん! ついつい興奮しちゃうって! みなみんの……あ、みなみんっていうのは新田美波さんのニックネームなんだけど、その衣装を見たときにいいなぁ私も早く欲しいなぁってずっと思っていたわけですよ、未央ちゃんは。

 

 しまむーとしぶりんも私とは色ちがいで、私がオレンジ、しまむーがピンク、しぶりんがブルーだ。

 

 自画自賛するみたいで恥ずかしいが、ぶっちゃけ今の自分に超似合ってると思う。

 

「どう? どう? 似合う?」

「もちろん似合ってるとも。ニュージェネをイメージしながらデザイナーと相談したんだから」

「さっすがプロデューサー!」

 

 その場でくるくるまわってみる。見た目に反して動きやすい。

 

「プロデューサーが全部デザインしたの?」

「いや、大まかなところはデザイナーだ。小物は私」

「このリボンとか?」

「そうだ。それぞれに合ったデザインにしてある」

 

 プロデューサーがそう言うので、私は他の2人とリボンを見比べてみた。確かに違う。しまむーとしぶりんは別々の花をあしらわられているし、私のは星だ。

 

「ふぅん。結構おしゃれだね」

「しぶりんからお褒めの言葉頂きました! いやー、ちゃんと考えられていてこの未央ちゃんも納得!」

「未央も似合ってるよ。あ、プロデューサー、この衣装って名前とかあるの?」

「私も気になるー!」

 

 ステージオブマジック。それがこの衣装の名前だとプロデューサーは教えてくれた。

 

「ステージオブマジック。魔法の舞台のための衣装、か。へへ、こりゃあ見る人みんなに魔法をかけられるようにならないといけませんなぁ。ね、しぶりん!」

「うん、やるからには成功させよう」

「頼もしい! しまむーもね! しまむー……?」

 

 そういえば、さっきからしまむーは黙ったままだ。

 呼び掛けても返事がないから、しぶりんもプロデューサーもちひろさんも鏡の前に立ち尽くすしまむーを心配そうに見てる。

 だって、しまむーが一番喜びそうだから。

 

「おーい、しまむー?」

 

 後ろから近づいていくと、肩越しの鏡にしまむーの表情が映っていた。

 

 目を輝かせて、じっと鏡に写る自分の姿を嬉しそうに見ている。それはもうすっごく、すっごく嬉しそうだ。ある意味当然かな。アイドルになりたくて養成所に通って必死にレッスンに励んでいたんだから、この場にいる誰よりも嬉しいに違いない。

 

「しっまむー!」

「わわっ!?」

 

 あまりにも嬉しそうだったから、なんだか私まで嬉しくなってきちゃって、飛びかかるように肩に手をまわしてしまった。てへへ。

 

「どう、衣装? 気に入った?」

「はい! とっても気に入りました。こうやって鏡に衣装を着た自分自身が写っているとなんだかアイドルになった気分です!」

「チッチッチ、それは違うよしまむー。みたいじゃなくて、アイドルなんだよ私たち! ね、プロデューサー!」

 

 プロデューサーは大きく頷いて「ああ」と言う。

 

「あ、そうでした! 島村卯月、アイドルとしてこれからもがんばります! ぶいっ!」

「よっしゃー! ニュージェネレーションズ、ファイト、オー!」

「オー! です!」

「オ、オー!」

 

 このまま元気よく、ミニライブまで突っ走る! この私の名にかけて!

 

 

 

 

 はてさて、衣装合わせだけが今日のイベントではない。

 なんと、今日は私たち3人が初めて芸能雑誌記者の取材を受ける日でもあるのだ!

 

 事務所の応接室でその記者さんが来るのを待つ。しまむーもしぶりんもソワソワしてる。私もなんとなく落ち着かないから、ソワソワ3人娘の完成である。

 

 ふと、ドアの向こうでプロデューサーが誰かと話しているみたいだ。

 

 はじめまして、と縁なし眼鏡でハンチング帽を被ったおっちゃんが入ってきた。カメラマンもいる! プロデューサーも後ろにいるから、きっとこの人が記者なんだ。

 

「僕は善澤、芸能雑誌の記者をやっている者だ。君たちがニュージェネレーションズだね」

「は、はい!」

 

 やば、声が上擦っちゃった。

 

「あはは。大丈夫、落ち着いて。では、まずは……」

 

 取材が始まってからのことは実はあんまり覚えていない。緊張し過ぎて記憶が飛んだらしい。同行したカメラマンに写真を何枚か撮られたのはなんとなく覚えている。

 

 はっきりと覚えているのは、善澤さんがすごいのか記者がみんなそうなのかは不明だけど、取材はスムーズだったこと。

 

 話を聞き出すのが上手いって言えばいいのかな。早く話せよ、みたいな圧を感じないんだよね。

 

 私も含めて3人とも、最後のほうはガチガチだった緊張もだいぶほどけていたと思う。

 

「では最後に、観客のみなさんに何を伝えたいですか? 本田さんからお願いします」

「はいっ! 私は、私たちのステージからいっぱい元気をもらって欲しいと思います! 毎日いろいろあるけれど、また明日1歩踏み出していけるように元気をチャージ!して欲しいんです!」

「ありがとうございます」

 

 変なこと言ってないよね? ああ、急に不安になってきた。

 

「島村卯月さん、お願いします」

「はい! 私は魔法をかけられたらいいなって思います!」

「魔法、ですか?」

「はい。見てくれた人が笑顔になれる魔法です! 楽しかった、来て良かったと心に刻んでみんなで笑顔でお家に帰れるようなステージにしたいです!」

 

 しまむーならきっとできる。そんな気がする。私の勘はよく当たるのだー!

 

「渋谷凛さん」

「私はグッと惹き付けたまま掴んで離さないステージにしたいと考えています。息をするのも忘れるくらいにくっきりと印象に残りたいです」 

「3人ともありがとうございます。以上で取材を終わります」

「ありがとうございました!」

 

 私たちは一礼をして応接室を出た。入れ違いでファミリアツインの美嘉ねぇと莉嘉ちーが入室していった。

 

 プロデューサーに一言断りをいれてプロジェクトルームに3人で向かった。初取材を終えたからか、肩が羽毛のように軽い。飛んでいっちゃいそうだ。

 

「お疲れ様、3人とも。ジュースいれたから飲んでくださおね」

「さっすがちひろさん! よっ、できるアシスタント!」

「もう、未央ちゃんったら。煽てても何もでませんよ?」

 

 そう言いつつも、ジュースに加えて来客用のお茶菓子も特別に出してもらえた。ぐへへ。

 

「この調子なら、明日のレコーディングもバッチリですね!」

「まっかせてください!」

 

 勢いよく答えたけれど、翌日のレコーディングで私は何度かミスをしてNGを出してしまった。けれど、なんとか無事に終えることはできた。 

 

 

 * * *

 

 

 ミニライブまで残り1週間を切った。

 

「未央! お前だけまた振り付けが乱れているぞ! 凛と卯月に合わせるんだ!」

「は、はい!」

 

 今の私、はっきり言ってヤバいです。何がヤバいかっていうと、とりあえずヤバい。語彙力が低下してしまうくらい。

 

 某ショッピングモールで開催される私たちニュージェネと美嘉ねぇと莉嘉ちーのファミリアツインのお披露目デビューライブまで1週間もない。本来なら仕上げをしないといけないのに。

 

「ストップ! 未央、お前本当にどうしたんだ……? 振り付けは雑だし、ペースは乱れている。テンポもずれがあるな」

「えっとぉ……」

 

 この通り、絶不調です。もはや言い訳すら思い付かないくらいの絶不調。ジーザス。

 

 先週に衣装合わせをして、取材も受けて、レコーディングをした時はこんなんじゃなかった。息ぴったりだったし、ぐだぐだしてなかった。

 

 2人の物憂げな視線が私に刺さる。

 

「ふぅむ、少し早いが今日はここまでとする。各自、クールダウンを行うように」

「はい」

「……はい」

 

 しまむーたちの返事から一拍の間をおいて私も返事をした。

 

 3人ともに終始無言でクールダウンを行い、ロッカールームに一旦戻った。でも、私も誰も言葉を発しない。ただただ無言が続く。

 

 私が原因なのは明らかだ。こんなお通夜みたいな雰囲気、私は嫌いだ。

 

「あ、あはは! 今日はごめんね、2人とも! 明日からまたこの未央ちゃん完全復活するから! 期待して待っててくれよな!」

「う、うん。ま、また明日がんばりましょう! 私もがんばります!」

「そう、だね。明日は大丈夫だよ」

 

 しまむーもしぶりんも優しく声をかけてくれるけど、ああ、2人とも表情が硬いなぁ。きっと無理やり笑顔を作ってるのがバレてるんだろうな。

 

 はは、リーダーとして、2人に気を使わせるんじゃなくて、引っ張っていかないといかないのに……。

 

 その日は浮かない顔をして帰った。

 

 

 

 

 私はいつの間にかステージオブマジックを着てステージに立っていた。体が眼球以外金縛りにあったようにさっぱり動かないので、棒立ちのままその会場を見渡す。

 

 見覚えはある。そこはプロデューサーから写真で見せてもらったミニライブのショッピングモールだった。

 

 耳にキンキンくるほどにとても騒がしい。残念ながらブーイングでだ。声援ならどれだけ良かったか。

 

『下手くそー!』

『アイドルなんてやめちまえー!』

『何あれ、変なの。時間の無駄じゃん』

 

 戦場を飛び交う銃弾のごとく私の心を傷だらけにしていく。

 

 会場の奥にプロデューサーがいる。常務も今西部長も、ベテトレさんたちも他のアイドルたちも。その表情はみんな暗い。

 

『未央ちゃんのせいです』

 

 背後からしまむーの声がした。

 信じられないほどに冷たく鋭利で、私の心に突き刺さる。深々と抉るように。きっと出血してしまっているんだろう。

 

『未央のせいだよ』

 

 しぶりんの追撃もある。大量出血だ。

 

 2人は同じセリフを壊れたカセットのように繰り返す。何度も何度も、何度も何度も繰り返す。

 

 この場所で、敵は私たった一人だけ。

 

『……っ……ぁ……!』

 

 ごめんと謝ろうとしても上手く声がでない。必死に試してもやはりダメだ。

 

 動いて動いてお願い! 早くっ! 私のせいだからっ! せめて謝ることだけでも!

 

『お前を選んだのは失敗だったよ』

 

 気付いたら、親の仇を睨み付けるように怖いまなざしを向けるプロデューサーが目の前にいて、その瞬間に視界がぱっと暗転した。

 

「……っ!」

 

 そこで私は飛び起きた。

 

「夢……か……」

 

 なんて嫌な夢なんだ。もはや悪夢じゃん。

 身体中は脂汗にまみれているし、呼吸も荒い。

 

 枕元のスマホに手を伸ばし、起動させる。ロック画面に表示されている時刻は午前3時をまわったところである。

 

 ひとまずティッシュで汗を処理して、もう一度寝ようと横になる。

 

「……寝れない」

 

 結局寝つけなくて、スマホをいじりながら朝を迎えた。

 今日のレッスンもまた私がダメだった。むしろ昨日よりひどくなった気がする。

 

 レッスンはまた早めに終了。あの厳しいベテトレさんが若干優しかった気がしたのだから、それだけ末期的なのかもしれない。

 

 しまむーとしぶりんと一緒の空間にいるのが辛くて、

 

「ほらほら、疲れたでしょ! 今日もゆっくり休むんだぞ!」

 

と空元気でウィンクをしてさっさと帰らせた。

 

 2人の振り付けはぴったり合っている。邪魔しているのは私。乱しているのも私。

 

 私が足手まとい。リーダーの私が。

 

 更衣室のロッカーに額を当てる。ゴンという鈍い音が鳴る。結構痛かった。

 

「未央? 大丈夫? なんか音したけど」

 

 美嘉ねぇの声がして視線を向けると更衣室の入り口に立っていた。心配そうに私を見ている。

 

 天上天下唯我独尊のギャルっぽいけど、実際は気のきくお姉さんだ。みなみんとはまた違う、頼れるお姉さん。

 

「あ、うん。大丈夫」

 

 笑顔を顔に張り付けて返事をする。

 

「そっか。ちょっと忘れ物しちゃってさ」

 

 そういうと自分のロッカーを開けて、がさごそ漁っている。お目当ての物はあったようだ。

 

「ねぇ、未央。もしアタシにできることがあるなら協力するからね。いつでも連絡してね」

「だ、大丈夫! 美嘉ねぇもファミリアツインがあるでしょ! 私はノープロブレム!」

 

 こんなときでも空元気だなんて、あはは、きっと私はバカなんだ。

 

 

 

 

 外はもう日が暮れていて、ここで初めて自主練を初めて1時間以上経っていたことに気付いた。

 

「ふっ、ほ、は、ここで……ターン!」

 

 もう誰もいないレッスンルームに床と靴の擦れるきゅっきゅっという音が虚しく響く。

 

 美嘉ねぇとちょっぴり話したあと、私はレッスンルームに戻り自主練をしている。他のアイドルたちはもう帰っただろう。

 

 なんとかして抜け出さなければ。今のままではいけないのは痛いほどわかっている。わかっているのに……。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 腕で頬に垂れてきた汗を拭った。逃がした汗が床に垂れてたまっている。

 

 良くなっているのだろうか? いやそうでなければ困る。時間はギリギリだが、まだある。

 

「もう一回……!」

 

 大きく息を吸い、曲の初めから振り付けをスタートする。ここで腕を出し、その後ターン……!

 

「おわっ!?」

 

 上手くターンができずに足がもつれてスッ転んでしまった。

 

 起き上がろうにも気力が湧いてこない。このまま踊らずに寝そべっていたい。

 

 また上手くできなかった。今日も昨日も、その前も。

 どうして上手くできないの。

 どうして乱れてしまうの。

 どうしてこんなことになってしまったの。

 

「あは……あはは……」

 

 どうしよう、ミニライブはもうすぐなのに。

 どうしよう、私のせいでニュージェネレーションズを台無しにしちゃう。

 どうしよう、しまむーにもしぶりんにも迷惑をかけちゃうよ。

 どうしよう、プロデューサーにも顔向けできないよ。

 

「……う……ひぐっ……うぁ」

 

 涙なんか流したくない。でも止まらない。

 

 どうしようもない私は床で縮こまるように背を丸めた。

 

 どうしよう、どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう!?

 私のせいで何もかも台無しにしちゃう! 

 ニュージェネレーションズもファミリアツインもミニライブもみんなのデビューも!

 私、リーダーなのに……。こんなことしてる場合じゃないのに。

 

「ふ……ぐぅっ……」

 

 どうしたらいいの? どうして私がこんな……。

 誰か……ねぇ、誰かっ! ねぇってば! ねぇ……。

 

「ねぇ……お願い、誰か……助けてよぉ……」

 

 声にならない声で私は言う。ひとりぼっちのレッスンルームで、届くはずなんてないって思っ──。

 

「未央」

 

 不意に泣きじゃくる私の名前が呼ばれた。誰かに頭を撫でられている。

 

「もう大丈夫だ」

 

 視線の先に私の、私たちのプロデューサーがそこにいた。

 

 夢の中みたいに怖いまなざしなんてしていない。いつもの少しくたびれたようなプロデューサーが。

 

「未央の声、確かに聞いたから」

 

 こんな姿見せたくなかったのに、それでも大粒の涙が頬を伝う。

 

 私はそのまま彼の胸に飛び込んでしまって、それが止まるまで泣きじゃくっていた。

 プロデューサーはただ黙って背中をさすってくれた。

 

 

 

 泣くだけ泣いてようやく落ち着きを取り戻した私は、シャワーを浴びて涙やら汗やら鼻水やらを綺麗さっぱり流した。

 

 鏡に写る自分には、泣き腫らした跡がまだ残っている。

 

 服に着替えて、汚れたタオルやトレーニングウェアは鞄に詰めこんでシャワー室を出る。そのままの足でプロジェクトルームに行く。

 

「落ち着いたか?」

 

 ドアを開けるとソファにいたプロデューサーが声をかけてくる。

 

「うん。さっきはありがとう、プロデューサー」

「そうか。ま、座ってくれ」

 

 促されるままに私はソファに腰をおろす。

 

「みんなはもう帰ったの?」

「ああ。残っているのは私だけだ」

「……ごめんなさい」

 

 最初に出たのは謝罪の言葉だった。何に対しての言葉なのかは自分でも釈然としない。

 

「謝らなくてもいい。今、未央がどんなことを感じてるのか教えてくれ」

「私……理由はわからないけど、最近のレッスンが上手くいかなくて。なんとかしようって思うんだけど、それも空回りしてる」

「聖さんや明さんからレッスンが不調だとは聞いてるよ」

 

 こくりと私は頷く。

 

「私、ニュージェネレーションズのリーダーなのに、どんどん下手になっていって。もうすぐミニライブなのに足手まといになっちゃってて。しまむーのこともしぶりんのことも引っ張っていかなくちゃいけないのに……!」

「未央がリーダーになってから今日まで卯月と凛を気にかけているのは知ってる。がんばったじゃないか」

「でもっ! 私……!」

「未央、リーダーっていうのはもっと頼っていいんだ」

 

 頼る……どうやって頼ればいいんだろう。

 

「そこは……よく、わからなくて」

「未央、緊張してるか?」 

「うん」

「不安はあるか?」

「うん」

「そうか。実は、私もだ」

 

 私には衝撃だった。だってプロデューサーはそういうのまったくないと思っていたから。緊張も不安もそんなもんはない!というイメージがあるからかもしれない。

 

「え、プロデューサーも?」

「当たり前だ。私のことなんだと思ってるんだ?」

「そういうのは全然なさそうだから」

「人間だもの。絶対あるさ。ただ表に出さないだけ。未央もリーダーとしていろいろ考えたんだろう?」

「……考えたよ、それはもうたくさん。このミニライブは、私たちにとって、ううん、ファミリアツインも含めたみんなにとって大切なものだから。だから成功させなきゃって」

 

 きっとこれこそが私ががんじがらめになっていた要因かもしれない。

 

「お前はリーダーとしてちゃんとやってきたんだ。考えて考えて、成功させるためのその重圧になんとか耐えようとしていた。偉いよ、よくやった」

「うん……」

「未央、その重圧はな、リーダーだけが背負うものじゃない。ライブに関わるみんなで背負うんだ。お前は決してひとりぼっちじゃないんだ」

 

 そっか、私は今までなんとか自分だけで成功させようと背負い込んでいたんだ。リーダーという役割にこだわりすぎて空回りしてた。しまむーもしぶりんもユニットのメンバーだっていうことも無視してた。

 

 私は、ひとりぼっちじゃなかった。あ、やばい。また涙出てきちゃった。顔洗ったばっかりなのに。

 

「大丈夫、私が聞くから」

 

 ああ、そんなこと言われちゃったら、もう。

 

「私……ライブ成功するか毎日不安で、なんだか押し潰されそうで……っぁ……私のせいでもし失敗しちゃったらって考えちゃって」

「うん」

「わだじ……アイドル続けたいがら! みんなど一緒に! だがら、いっばい練習じて! でもだんだん不安が大きくなってぎで! 自分じゃどうしたらいいかわがらなくなって!」

「うん」

「それで!」

 

 最後のほうは何を吐き出していたか覚えていない。感情の赴くままにただただ聞いてもらった。もしかしたら同じ内容を繰り返していたかもしれない。

 

 とれくらい経ったかわからないけど、心はだいぶスッキリした。

 

「ほら、ハンカチ」

 

 プロデューサーから受け取ったハンカチで涙を拭いて、ついでに鼻もかんだ。

 

「ありがとう、未央」

「……?」

「そこまで考えてもらえていたなら、企画した甲斐があったよ。お前をリーダーにしてよかった。これからも頼むな」

「……うん。私もひとりじゃないってわかったから、みんなとがんばる」

「その意気だ。さて、夜遅くなる前に帰ろう。送っていくよ」

 

 プロデューサーに言われて時計を確認すると、すでに20時を回っている。

 その日の夜はぐっすりと眠ることができた。

 

 

 

 

 翌日。ミニライブまでもう数日だ。

 ベテトレさんにしまむーにしぶりんが心配そうに私を見ている。ここ最近絶不調だったのだから、当然の反応だ。

 

「……では、レッスンをはじめる。『できたて』を通してやる。いいな」

「はい」

 

 ベテトレさんの指が端末の再生ボタンに触れると、スピーカーから音楽が流れ始める。

 

 もしかしたらまたできないかもしれない。一瞬脳裏をよぎる不安が息を詰まらせる。

 

 でも、もう大丈夫。私はひとりぼっちじゃないって、ちゃんとわかったから。

 

 ……! 腕も足も、体全体が思うがままに動く! ちゃんと踊れてる、気がする。

 

 昨日までのまとわりつくような重さは感じない。背中に羽でも生えているのではないだろうか、まるで天使のように! あ、はい、すいません。調子乗りました。

 

 曲は終盤に差し掛かる。今まで言われたこと、覚えたことを意識して気を抜かずに。

 

「そこまで!」

 

 曲が終わり、ベテトレさんの号令が出た。

 

「……はぁ……ふぅ……ふー」

 

 さっぱりした気分だった。持てる力のすべてを出しきったあとの余韻はこんな感じなのかな。

 

「……お前たち、合格だ。よく仕上げたな。これならライブに出しても恥ずかしくないぞ!」

 

 ぱあっとみんなに笑顔が広がる。

 やった、やったんだ! 不調を克服したんだ! そう喜んでいると、2人が駆け寄ってくる。

 

「しまむー、しぶりん! 今までごめん! 私、リーダーだからふた──」

 

 まだ私が喋ってる途中なのにしまむーが飛び付いてくる。

 

「未央ちゃぁぁぁぁん……ぐしゅ……」

「しまむー、泣かないで!? ほぉらよしよし」

「未央」

「もしかしてしぶりんも!?」

 

 あの普段はクールなしぶりんが涙を見せるというのか!?

 

「復活、だね」

 

 涙ではなかったけれど、しぶりんはにこっと笑いました。これがクーデレというやつですね。わかります。破壊力抜群です。私のHPは0です。

 

「うん、お待たせ。ってしまむー、いつまで私に引っ付いてるの?」

 

 半べそのしまむーを宥めながら、私はレッスンルームに顔を出したプロデューサーにグッドサインをした。

 

「よし、お前たち。もう一度通しでやるぞ。今度はプロデューサー殿にも見てもらうぞ」

「はい!」

 

 私たちの返事が重なった。

 

 

 * * *

  

 

 本日はいよいよミニライブ当日。

 

 開始10分前に舞台袖から会場の様子をひょっこり確認する。めちゃくちゃ多いってほどでもないが、まあそれなりといったところだろうか。

 

 メッセージアプリで手当たり次第に連絡しまくったから、ちらほらと友達の姿もある。私の努力の賜物だね!

 

「今日はパパとママが見に来るそうです……。うぅ、緊張する」

 

 会場には他のアイドルたちや常務に今西部長もいる。もちろん家族もいる。

 

「しまむー、大丈夫! ベテトレさんからもプロデューサーからもお墨付きをもらったでしょ! ほら、笑顔笑顔♪」

「は、はい! いぇい♪」

「しまむー最高!」

「えへへ、ありがとうございます未央ちゃん」

 

 うーん、やっぱりしまむーの笑顔は可愛いねぇ。さすだニュージェネの可愛さ担当なだけある。

 

「しぶりんはどう?」

「ちょっと緊張してるよ。未央もでしょ」

「うん。緊張してるし、やっぱり不安もある。でも、私たち3人なら背負っていけるから。だからこの未央ちゃんにどんとついてきて!」

「ふふ、頼もしいね。今日まで未央が引っ張ってくれてたから、今度は私が背中を押してあげるよ」

 

 ニュージェネのクール担当は伊達じゃない。

 

「ひぃー、なんとか間に合った。お、未央たちは準備万端だね☆」

 

 莉嘉ちーが急にトイレ行く!って、トイレと反対方向に駆け出していき美嘉ねぇがそれを追いかけるというちょっとしたハプニングで着替えが遅くなった2人がバックヤードに現れる。

 

「ごめんなさい、お姉ちゃん……」

「もういいから。次からはちゃんと場所を確認しておくこと?」

「はぁい……」

「じゃあほら元気出して! もうすぐ始まるんだからね☆」

 

 それにしてもファミリアツインの衣装は、そこはかとなくエッチだ。プロデューサーの趣味が混ざっているのだろうか。それともコスプレが趣味のちひろさんかな? みなみんの衣装も布面積削ろうとしていたらしいし。

 

「準備はできてるか?」

 

 プロデューサーはニュージェネとファミリアツインの全員の顔つきを確認している。

 

「はい!」

「よろしい。今日が346プロアイドル部門の、そして君たちの正式デビューとなる。緊張や不安もあるだろうが、それはこの場にいる全員が感じている。無論、私もだ。きっちり乗り越えて先に進もう」

「はい!」

 

 まもなく開演の時間だ。

 

「時間だ。まずはファミリアツインからだ。美嘉も莉嘉も今日のこのライブを楽しんでほしい」

「ふふ、任せてよ! アタシの魅力でみぃんなをメロメロにしてあ・げ・る☆」

「……美嘉、無理はするなよ」

「そうだよお姉ちゃん。いつも通りでいいって」

「ちょ、なんなのその反応!?」

「アタシは元気いっぱいに頑張ってくるね、Pくん★」

「美嘉のこと頼んだぞ」

 

 プロデューサーが莉嘉ちーの頭を撫でる。そういえば私も撫でてもらったけど、結構安心するんだよね。思い出すと恥ずかしいから心にしまっておくけど。

 

「うん! へへ」

「アタシへの反応とまるで違う! うぅ~、いいもん、カリスマギャルの力見せつけてあげるっ! さ、行くよ莉嘉!」

「うん!」

「よし、行ってこい!」

 

 プロデューサーは2人の背中を優しく押す。ステージに立つのを確認すると、バックヤードを出ていった。観客側から見るのだという。

 

『ファミリアツインの城ヶ崎美嘉と』

『莉嘉だよ★』

『今日が初ライブだけど、この場の全員虜にしちゃうからね☆』

『じゃあさっそく行くよ! 曲はTwin☆くるっ★テール!』

 

 会場が少し薄暗くなり音楽が鳴り響く。

 

 2人のパフォーマンスは息がぴったりで、姉妹だということを加味してもきっとたくさん練習したに違いない。

 

「すごいね美嘉ねぇたち」

「うん。目を離せなくなる」

「2人ともキラキラしてます」

 

 たまたま通りかかった人が立ち止まる。そして、また1人、また1人、と増えていく。

 

 これがアイドルとして人を惹き付けるということなのだろうか。

 

「私たちも負けてられない。このステージから私たちの新しい時代が始まるんだから」

「ニュージェネレーションズ、だからね」

「そうそう、しぶりん分かってるぅ!」

 

 ファミリアツインの曲が終盤に近づき、いよいよ私たちの出番となる。

 

 やば、足震えてる。一回、深呼吸。まだ震えてる。いやいや、これは武者震いだから!と自分に言い聞かせる。

 

「うぅ……」

 

 しまむーの顔がふと目に入る。やっぱりちょっと強ばってる。初ライブだし緊張するのは仕方ないけど。そうだ。

 

「しまむー」

「は、はい……えっ」

 

 私は彼女を呼んで、そして抱き締めた。

 

「いっぱい緊張していいよ。ステージに立てばさ、楽しくていつの間にか緊張なんか感じなくなるからさ、私たち3人一緒に笑顔でいこう」

「未央ちゃん……はい!」

 

 しまむーから離れると、彼女の笑顔が戻ってきている。やっぱりこうでなくちゃ。

 

『みんな、ありがとー! 次に披露するのはニュージェネレーションズの3人だよ!』

 

 ファミリアツインとしての初ステージを披露し終えた美嘉ねぇたちがバックヤードに戻ってくる。

 

 息は上がっているし、汗も多い。それでもその表情は晴れやかだ。

 

「次はニュージェネレーションズの番だよ! アタシたちより盛り上げないとダメだぞ☆」

 

 美嘉ねぇに激励されて、背中を押してもらった。

 

「まっかせて! さ、行こう、しまむー、しぶりん!」

 

 舞台袖から一歩踏み出して、ついに私たちニュージェネレーションズはステージに立った。

 

「初めまして! 私たちは……せーのっ、ニュージェネレーションズですっ!」

 

 ステージの上からだと全体がすごくよく見える。どこに誰がいるかすぐにわかる。

 

 わかる、わかるぞっ! あの蛍光色の黄緑はちひろさんに違いない! その隣がプロデューサー、その隣の若いスーツの人は知らん! 常務と今西部長とか友達とか、その他たくさん!

 

「リーダーの本田未央です! 黒髪の子が渋谷凛ちゃん! 笑顔が可愛いのが島村卯月ちゃんです! それでは、さっそくですが、聞いてください! ニュージェネレーションズで『できたてEvo!Revo!Generation』です!」

 

 曲が始まった。

 

 自分を信じて、しまむーとしぶりんを信じて、歌って踊る。ぎこちなさはまったく感じない。いたってスムーズだ。

 

 レッスンで叩き込んだ振り付けを、音程を、感情の込め方を、それはもう遺憾なく発揮する。

 

 しまむーもしぶりんも私も届けたい想いがある。きっとと届くよね。いや、届かせるもんね!

 

 養成所にスカウト、オーディション。バラバラな方法で集まった私たちが今一つの形になってるんだ。

 

 三人寄れば文殊の知恵って言うし、今回の成功はぐっと近づいてきている、はず。

 

 曲はアウトロに突入する。

 

 最後まで気を抜いてはダメだ。ステージが終わり、家に帰るまでがライブなのだ。

 

 まるで時間の進みが遅くなったように長く感じられていたデビュー曲もやがて終わりのときを迎えた。

 

 流れていた音楽が止まり、ライトはステージの上の私たちに向けられた。

 

 まるで灰かぶり姫の魔法がとけたみたいな静寂が会場を包み込む。でも今はそれでいい。とけてしまったのなら、また魔法をかけてしまえばいいのだから。

 

「本日は聞いていただきありがとうございました! これからもニュージェネレーションズをよろしくお願いします!」

 

 それを打ち破るようにちらほらと拍手が聞こえてきて、あふれんぱかりの拍手とまでは行かなかったが、私たちのステージを聞いてくれていた人々はみんな拍手をしてくれた。

 バックヤードに下がると、アイドルのみんなもプロデューサーもそこにいた。

 

「凛、未央、卯月、お疲れ様」

「ねぇ、プロデューサー! 私たちの初ライブは成功だよね?」

「もちろんだ。最高だったぞ!」

「うん、うん! えっへへ、私も楽しかったよ! こんなに楽しいとは思わなかった!」

「そういってもらえて何より」

「ふっふっふ、ここから私たちの快進撃が始まるのだ!」

「すぐ調子乗るんじゃない」

「てへ♪」

 

 ファミリアツイン、そしてニュージェネレーションズのデビューライブはこうして成功を納めた。

 

 

 

 

 ミニライブの翌日は、ファミリアツインとニュージェネレーションズはオフとなっている。

 

 初ライブまでのレッスンでの肉体的負担のみならず精神的負担もあるというプロデューサーの判断のもと今日は1日自由なのである。

 

「あっ、見てみてしまむー! 私たちちゃんと記事になってるよ!」

「『新しい時代の到来を告げる新アイドルたち』って書いてあります!」

「いやー、なんだか照れるねえ」

「私、がんばります!」

 

 善澤さんの記事が載った昨日発売の芸能雑誌をしまむーと2人ではしゃぎながら見ていると、

 

「お前たち、今日はオフにしといたのになぜ事務所に来たんだ」

 

とプロデューサーが一言。

 

「だって、気分が高まっちゃって落ち着かないんだもん。それに雑誌も読んでなかったから、じゃあ事務所でオフを過ごそうかなって」

 

 昨日のミニライブが終わった後、事務所に戻って反省会で、さらに常務たちもトレーナーさんたちも呼んでちょっとした祝賀パーティがあった。もちろんお酒はなかったから安心してね。

 

 そんな訳で、こんな風にソファでくつろぎながら、ゆっくり落ち着いて雑誌を読んでいる暇がなかった。

 

「別に事務所で過ごしたって問題ないよね?」

「まあ、構わないけど、他のアイドルたちの邪魔しちゃダメだからな」

 

 プロデューサーからのお許しも出たところで、今度はしぶりんが現れた。

 

「おはようございます。ってあれ? 未央も卯月もいる」

 

 きょとんとするしぶりん。

 

「おはよう、しぶりん!」

「おはようございます!」

「2人ともどうして?」

 

 理由を話すと、案の定私たちと似たようなものらしい。ユニットを組むと考え方が似てきたりするのかな。

 

「しぶりんも一緒に雑誌見ようよ! ほらこれ!」

「みんなバッチリ写ってます!」

「うん。あ、ソファもうちょっと詰めて」

 

 3人で肩を寄せ合い、談笑しながら、雑誌を読み進める。

 

 その後、さらに美嘉ねぇと莉嘉ちーまで来て事務所はより賑やかになったのだった。

 

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