プロデューサーはじめました。   作:テラリウムA

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43話 みりあ is NUMBER ONE(5)

* 【5】 *

 

 青いグラデーションが綺麗なガラスコップを結露でできた雫が滴り流れて細い跡をつけ、やがてコースターに吸われて消えた。

 

 プロデューサーはテーブルの上のそれをそっと手に取り、注がれていた麦茶を飲む。氷がからんと鳴る。ほどよい濃さの麦茶が喉を潤す。

 

「うちの子が、ご迷惑をおかけしたみたいで」

 

 そう言って軽く頭を下げたのは、みりあの母親だ。産まれたばかりの赤ん坊はすやすやと寝息を立てている。

 

「いえいえ、ご迷惑だなんて。みりあさんはよくやっています。今日の撮影も大きなトラブルもなく、無事に終了しています」

 

 プロデューサーは今日の撮影の際のみりあの様子をかいつまんで説明する。

 

「そうでしたか。それなら良かったです」

「こちらのほうこそ、お泊まり会を許可していただきありがとうございます」

「いえ、本当なら私たち夫婦が対応しなくちゃいけない問題ですから」

 

 みりあの母親は麦茶で喉を湿らせて話し出す。

 

「私たちもなんとなく、みりあが妹のさりあを避けているようだと気づいていました。とはいえ、さりあの世話で忙しく、みりあも意地悪とか悪戯をした訳ではありませんでしたし、手伝いを頼めばやってくれますから、ついつい先延ばしにしてしまって……」

「みりあさんは家庭環境の変化に戸惑っているのだと思います。誰しも経験することですから、そこまで深刻ではないはずですよ。心の整理が付けばけろっと元通りです」

「お仕事で忙しいでしょうに、そこまで気をかけていただいてありがとうございます」

「お気になさらないでください。心身ともに良い状態だと結果的に良い成果につながりますから」

 

 話が一段落ついたとき、階段を駆け降りるドタドタという足音がして、リビングのドアがばたんと開けられた。

 

「プロデューサー! 準備できたよ!」

「こら、みりあ。危ないから階段を駆け降りちゃダメでしょ」

「あ、ごめんなさい、お母さん」

「怪我をしちゃったら台無しだからね。次から気を付けること」

「はーい」

 

 何気ない親子のやり取りがプロデューサーには新鮮だった。

 

「すみません、騒がしい子で」

「元気があるのはいいことです。場にいるだけで華やかになりますから」

「あれ、みりあ誉められてる?」

「もちろん」

「えへへー♪」

 

 嬉しそうなみりあはすでに準備万端で、肩掛けのバッグを持っていた。1泊しかしないというのにぱんぱんだ。いったい何が入っているのだろうか。

 

「ねぇ、プロデューサー早く行こ? ねーぇ」

 

 みりあが袖を掴んで引っ張って催促してくるので、プロデューサーが立ち上がると今度は背中をぐいぐい押してくる。これが若さかとしみじみ思うプロデューサーだった。

 

「わかったわかった。さあ行こうか」

「よーし、しゅっぱーつしんこー! お母さんいってきまーす!」

 

 楽しみ過ぎて興奮覚めやらぬみりあに押しに押されて玄関へ急ぐ。

 

「ええ、楽しんでいらっしゃい」

「うん!」

 

 母親からの言葉にみりあは笑顔で返事をした。

 

 

 

 

 みりあを乗せた車はとあるマンションに到着し、駐車場に止まった。

 

「うわぁ、おっきいね。ここでお泊まり会をするの?」

 

 車を降りたみりあがマンションを見上げながら言う。

 

「そうだよ」

「へぇー、じゃあ誰かのお家ってこと? 誰だろう」

「すぐにわかるさ。お、噂をすれば」

 

 玄関まであと少しの距離になったとき、人影が飛び出してきた。それは小柄で、見覚えのある人物だった。

 

「ん? あ、みりあちゃん、来たんだね! 待ってたよ! それにプロデューサーさんもちょうどいいところに」

 

 いつも事務所で見るトレーニングウェアではなく、ラフな私服に身を包んだ慶である。普段見慣れていない服装だからか新鮮で、いつもより大人っぽさが2割ほど増している。

 

「慶ちゃん、こんにちは!」

「こんにちは、みりあちゃん。撮影どうだった?」

「ふっふっふ、ばっちりだよ!」

 

 勝利を掲げるようにVサインをするみりあに慶は良かったと言わんばかりにうなずく。

 

「ねぇねぇ、ここは慶ちゃんのお家なの?」

「うん、そうだよ。といっても全部じゃないけどね、マンションだから1部屋だけ。あ、そうだ。スーパーに買い出しに行かないといけないんだった。あのぅ、プロデューサーさん。車、出してくれたりしませんか? すぐそこのスーパーまでなので、お願いできません?」

 

 これまたなんとも良いタイミングで、スーパーまでの“プロデューサー(移動手段)”が見つかったようである。

 

「わかった。無理してお願いした手前、少しは協力するよ」

「やったぁ。あ、みりあちゃん、ひとまず部屋まで案内しようか?」

「ううん、大丈夫! 1人で行けるから、2人は買い出し行ってきて!」

 

 そう告げたみりあに『7階のエレベーターを降りて右側の青木という表札の部屋』だと慶は教えた。

 

 みりあは買い出し班の2人と別れてその部屋を目指す。ボタンを押してエレベーターに乗るだけなのでものすごく簡単だが。

 

 何一つ迷う要素もなく、その部屋──つまり青木家のドアの前まで来ることができた。どうやらこのフロアには2つしか部屋がないようだ。

 

 インターホンを押す。動きはない。ふと、開放廊下から空を仰ぐ。

 

 今日は撮影の時から晴天が続いていて、もう少し時間が経って暗くなれば星が綺麗に見えそうだ。今の季節はなんの星座が輝くのだろうか。学校でやったような気がしないでもない。

 

 なんだったか、と考えていると、ガチャンとドアの開く音がした。

 

「おお、君が赤城みりあ君か」

 

 姿を現したのは聖や明、慶と顔や背格好がそっくりだけれどもその3人とは明らかに違う人物だった。

 

「は、はい! 今日はお世話になります!」

「うむ! 元気でよろしい。さ、入りなさい」

「お邪魔しま~す」

 

 その人がドアを押さえている間にみりあは、するりと玄関へ入った。

 

 

 

 

 夕焼けに染まるバルコニーに立ち、みりあは景色を眺める。

 

「すごーい! ここから海が見えるんだぁ!」

 

 自宅や346プロダクションから見える景色は、数多くの建物が乱立するコンクリートジャングルで、それはそれで圧巻なのだが、ここからのは水平線の彼方まで続く海の雄大さと街並みがセットで楽しめる。

 

「はー、私もこんな夕焼けを見ながらワインを転がして優雅なディナーをしてみたいなぁ。ルネッサァンス!」

 

 お泊まり会メンバーの未央がワイングラスで乾杯をする動作をする。

 

「えー、未央にはなんか似合わなくない? ワインって言うより……パンツ一丁に首からタオルかけて牛乳一気飲み、みたいな★」

 

 同じく美嘉が言う。

 

「なんだとぉー! 華の女子高生である私は、2、3回に1回しかやらないぞー!」 

「結構やってんじゃん!」

 

 美嘉がツッコミをいれる。

 

「いやぁ、あの爽快感がたまらんのですよ。ね、みりあちゃん」

「うん! お風呂上がりの牛乳って美味しいよね! あれ、なんであんなに美味しいんだろう?」

 

 話を振られたみりあは答える。

 

「その味がわかるのは大人への階段を1歩昇った証拠さ。この未央ちゃんが保証しよう」

「ほんと!? えへへー」

 

 未央の話の内容が本当かどうかは不明だが、あの牛乳が美味いのだけは確かである。

 

「こらこら、みりあちゃんに変なことを吹き込まないの」

「ははっ、美嘉ねぇの仰せのままに」

 

 大袈裟な仕草をする未央はふと同じくメンバーの美波へ視線を移す。彼女は景色を眺めたまま一言も発しない。

 

「みなみん、どうかした?」

「あ、ううん、綺麗な景色だなぁって思って。こういうの私好きだなぁ」

 

 不意に柔らかな風が吹いた。

 

 それは美波の茶色がかった髪をもてあそぶように揺らして、その度に夕焼けの陽光と混ざりあって亜麻色のような髪色を醸し出す。乱れないように手を添える仕草はとても自然で、大人の雰囲気を漂わせる。

 

「風が気持ちいい──ってあら? みんなどうしたの?」

 

 3人が目をぱちくりさせていたので美波は尋ねた。

 

「……いやぁ、今のはこう、ぐっときたね★」

「美波お姉ちゃん、すっごく色っぽかった! 大人の女性みたい!」

「え? そういうつもりじゃなかったんだけど……へ、変だった?」

「ぜーんぜん! 私も将来美波お姉ちゃんみたいになりたいなぁ!」

「ふっふっふ、セクシー路線ならこの未央ちゃんも負けないぞぉ! うっふ~ん……」

 

 未央が体をくねらせて、いわゆるセクシーポーズを披露する。さきほどまでとは違い、冷たい風が叩くように吹き付けた。

 

 美波と美嘉が困惑して言葉を探す中、みりあが先んじた。

 

「未央ちゃん、無理しなくていいんだよ?」

「……みりあちゃんの優しさが痛い!?」

 

 わいのわいのと騒いでいると、明が開けっ放しだったガラス戸から顔を出す。

 

「みんな、ごはんができましたよ」

 

 その号令でぞろぞろとバルコニーから上がると、テーブルの上に大皿の料理が並べられているのが見えた。からあげにサラダ、おにぎり、その他豆を使った煮物とか卵焼きとかいろいろある。

 

 みりあのお腹がぎゅるるると鳴ってしまい、ぱっと顔を赤らめる。

 

「あらあら、みりあちゃんお腹空いちゃってた?」

「う、うん! えへへ、その、美味しそうだっから」

「じゃあさっそく食べましょうか。はい、席に着いて」

 

 場を取り仕切る明に促されて、全員が座る。みりあの隣は麗である。さきほど玄関で出迎えてくれた彼女で、聖たち3人の姉だという。道理で顔が似ている訳である。

 

「じゃあ麗姉さん、乾杯の音頭を」

「ん? 私でいいのか?」

「急なことを許可してくれましたから」

「そうか。では僭越ながら私が。赤城みりあ君の初仕事の成功を祝って、乾杯!」

 

 麗の音頭に全員がコップを掲げた。みりあも負けじとオレンジジュースが注がれたコップを掲げ、カチンとガラス製のそれがぶつかり合う澄んだ音が鳴る。

 

 こうして愉快な夕食会が始まった。

 

 

 * * *

 

 

 夕食会は終わり、みりあと未央、美嘉、美波の4人は青木家のお風呂で入浴中だ。

 

「あぁぁぁ、ほぐれるぅぅ~」

「アタシもぉぉ~」

 

 肩を並べて湯船に浸かる未央と美嘉はふにゃっとした表情を浮かべている。みりあや美波も彼女たちほどではないが、リラックスしている。

 

「みりあちゃん、かゆいとこない?」

「大丈夫! 次は私が美波お姉ちゃんの髪を洗ってあげるね!」

「ふふ、ありがとう」

 

 マンションの最上階にあり、かつフロアに2つしかない部屋のうちの1つだから家賃はきっと高いだろう。その分、内装は豪華だ。湯船も広い。なんせ4人が同時に、脚を伸ばして入れるほどだ。

 

「いやぁ、こんなに広いお風呂って旅館とかホテル以外にあるんだなぁ」

「ほんとにね。でも掃除とか大変そう」

「そこはほら、4人で分担してるんじゃない? 明さんとかルキちゃんはテキパキ終わらせそう」

「あー、聖さんは忘れてて慌ててやってそうかも」

 

 そうして話題は夕食時の聖に移る。

 

「てか、聖さんって酔っぱらうと笑い上戸になるんだね。未央は背中バシバシ叩かれてたし、アタシは褒めちぎられたし」

「『おい未央、お前はいつもがんばってるぞ! はっはっはははは!』」

 

 未央が聖の声真似をする。

 

「あっはは、似てなーい★」

「酒に酔うと人が変わるっていうけど、ほんとなんだ。美嘉ねぇも笑い上戸になったり?」

「どうだろ。まだ飲んだことないし。未央こそ、泣き上戸かもしれないじゃん。『うっ、うっ、どうしてこんな……私が不甲斐ないせいで……。もういいよ! 私アイドル辞める!』みたいに言い出すかも」

「いや、そんなこと……ないって言いきれないのが悔しい! むしろもうどこかで言ってそう! ちっくしょぉぉぉ!」

 

 未央が悔しがる中、体や頭を洗い終えたみりあと美波も湯船に入る。

 

「なになに、どうしたの?」

「未央が自己嫌悪にはまってる」

「えぇ!? 未央ちゃん、大丈夫!?」

 

 未央は手招きでみりあを傍へ呼び、彼女の耳へ小声でぼそぼそと何かを言う。

 

「うん、うんうん。いいよ! ごほん。あー、あー……未央お姉ちゃん、元気出して?」

「──ぉぉぉおおお! 未央ちゃん、ふっかぁつ!」

 

 がばっと立ち上がり、水しぶきが派手に飛び散る。

 

「ちょっと未央! 顔に掛かるじゃん!」

「お風呂だもん、問題なーし! そぉれ、ばっしゃあ!」

 

 未央が美嘉へお湯を盛大にぶっかける。

 

「ちょ!? やったなぁ! えい★」 

 

 美嘉も負けじとやり返す。

 

「おわっ、へへ。やられたらやり返す……倍返しだ! それそれー、みりあちゃんにもみなみんにもだァーッ!」

 

 未央はみりあと美波へもお湯をぶっかけた。ちゃっかり美嘉もぶっかけている。

 

「きゃあー♪」

「きゃっ、もぅ。やったなぁ。ふふ、えーいっ!」

 

 美波が手遊び水鉄砲で反撃に出る。

 

「みなみんだとッ。おぼぼぼぼ」

 

 放たれた水鉄砲は、未央の顔に目掛けて綺麗な曲線を描きながら命中する。

 

「おおお、すごーい!? ねぇねぇ美波お姉ちゃん、どうやったの!?」

「これはね、手をこうして、こう。なるべく隙間はないようにして」

 

 美波がやり方を伝授している中、未央もまた水鉄砲の構えをしていた。

 

「ふっふっふ、この未央ちゃん式水鉄砲を喰らえぇ!」

 

 そう言って未央もまた放ったが、ピュッとお湯が飛び出たくらいで、凄まじいのを期待させるような発言に対して威力は激弱、スマホ1台分の飛距離しかなかった。

 

「……未央、あんた下手だねー。アタシでももうちょっと行くよ」

 

 美嘉が実践してみると未央の倍ほどは飛距離が出た。

 

「こ、これはほら練習さっ。次はすごいのおぼぼぼぼ!」

 

 またしても未央の顔に放たれた水鉄砲が炸裂する。放ったのはみりあだ。

 

「やったぁ! 上手くできたぁ!」

「うんうん上手! よくできました」

「えへへ、美波お姉ちゃんのおかげだよ! よぉし、美嘉ちゃんも覚悟!」

「えっ? アタシも? ちょ、待おぼぼぼぼ!」

 

 美嘉の顔にもみりあ砲2発目が炸裂する。

 

「……アタシだってやるときはやる女だかんね★」

 

 お湯が滴る中、ぽかんとしていた美嘉も本格参戦し、この戦いは数分間続いた。

 

 

 

 

 戦いは終結し、4人は湯船に肩を並べて浸かっている。誰が勝者とかはないが、未央が最も被弾していた。

 

「いやぁ、年甲斐もなくはしゃいでしまいましたなぁ」

「アタシも~。でも、楽しかったっしょ★」

「うん! 水掛け合戦楽しかった! ね、美波お姉ちゃん」

「そうね、私もこんなにはしゃいだのは久しぶりかな」

 

 さきほどまでとは打って変わってゆったりとしていて落ち着いた空間が流れていた。

 

「「「「ふぅ~」」」」

 

 緊張がほぐれていき、心も体もリラックスできているように感じられる息の吐き方だった。

 

「いい湯だなー。あー、こんな風にはわいわいお風呂入るの久々だわー★」

「またまた。りかちーと一緒に入ったらこんな感じでしょ」

「いやいや、莉嘉と一緒だとどうしてもお姉ちゃんになっちゃうというか。頭とか背中洗ってあげたり、ちゃんと湯船に浸かるように言ったり。なんやかんや世話焼いちゃうんだよね。未央も……って未央は弟だっけ。じゃ、一緒に入らないか」

「まぁね、この歳になっても弟と一緒にはないかな。それに私のダイナマイトボデーは刺激が強いから♪」

 

 未央がセクシーポーズを取るものの、美嘉はスルーした。

 

「あれ、美波さんも弟?」

「うん。私も弟だよ。今年高校入学したんだ」

「そっか。じゃあアタシとみりあちゃんだけが妹かー」

 

 天井にふらっと視線を移した美嘉は、ちょっとしてからみりあへ話題を振った。

 

「どう、みりあちゃん、妹可愛い?」

「うん! とっても!」

「それは良かった。他には何か……悩み事はある?」

「えっ」

 

 みりあは美嘉のその問いかけに一瞬目を丸くする。彼女の眼は確信に満ちていた。まるで最初から知っていたかのように。不意にぼんやりとプロデューサーのことが頭に浮かんできて、なんとなくだが、察した。

 

「その、プロデューサーから聞いたの?」

「うん。みりあちゃんが悩んでるみたいだから話を聞いてあげてくれ、私じゃ力になれないからって」

 

 美嘉は隠さずすっぱりと答えた。

 

「無理にとは言わない。ただ、みりあちゃんから話してくれたらいいなとは思うな」

「そっか……えへへ、ありがとう美嘉ちゃん! それに未央ちゃんに美波お姉ちゃんも!」

 

 きっと未央と美波の2人もプロデューサーから事情を聞いた上で参加してくれているのだろう。共通点は皆、下に弟か妹がいる。今のみりあにとって最も共感してくれるであろう人選だ。

 

「あの、ね……私、その、モヤモヤするの」

「モヤモヤ?」

 

 みりあは小さくうなずく。

 

「妹が産まれて、お父さんもお母さんも妹が泣くとそっちに掛かりきりで。赤ちゃんが泣いちゃうのは仕方ないけど、私はなんだかぽつんとしちゃうんだ。私だけ遠くにいるみたいで、そこにいるんだけどいないみたいな感じがする」

「そっかそっか。うん。きっと、みりあちゃんはお父さんとお母さんの注目が妹に集まってて、それで寂しくて、でも甘えられずにいるんだね」

 

 美嘉はそう言う。きっとそうなんだろうなとみりあも思う。

 

「そう、かな…………そうかも。もっといっぱいお話して褒めてもらいたいし、お出かけして一緒に遊びたい。前と同じは難しくても、私にも構ってほしい。これって、わがままかな……」

「全然わがままじゃないよ。むしろ普通かな。弟妹いる人あるあるだし。なんならアタシだってそんなときあったもん★」

「えっ!?」

 

 いつも莉嘉と仲良く過ごしている光景を見ているからか、例えば幼い頃だとしても美嘉が甘えたがるのはイメージしにくかった。

 

「そりゃあ、今は莉嘉と仲良くしてるけど、ちっちゃい頃はやっぱり親にチヤホヤされてるのが羨ましくてね。意地悪しちゃったときもあるなぁ」

「美嘉ちゃんが莉嘉ちゃんに?」

「そそ。姉妹仲の良さを知ってる人には驚かれるけどねー。未央も美波さんも似たようなことあったりするんじゃない?」

 

 みりあは2人の反応を伺う。

 

「まぁね、家族で出掛けるとき弟が優先されたりとか、はしゃいでて私だけ怒られたりとか」

 

 と未央が言う。

 

「私はお姉ちゃんだから我慢しなさいって言われたときにムッとしたことはあるかな」

「「ああ~」」

 

 美波の発言に未央と美嘉は納得したように頷いている。みりあにもこれから先にわかるときが来るのだろうか。

 

「ま、アタシも含めて案外こんな感じなんだ。決して、みりあちゃんの思ってることはわがままとかじゃないよ」

「そっか……。そうなんだ……。私だけじゃないんだ」

「少しはモヤモヤ取れた?」

「うん、なんだか軽くなった気がする。ありがとう、美嘉ちゃん、未央ちゃん、美波お姉ちゃん! また相談してもいい?」

「もちOK★」

 

 美嘉はそう答えた。

 

 

 

 

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