友人へ なぜか死んだので神に頼まれ異世界に行きます 作:ASSSr
フードのついてないパーカーにセンスのないズボンを履いた少年があたりを見渡した。
しかしそこには何も無かった、再度辺りを見渡しながら歩いた、がやはり何もない殺風景な景色が一向に続くばかりだった。
いくら歩こうが走ろうが見えるのは空のように青白い面一色だけだった。
「やぁ、厨二病くん」
突然少年の目の前から、歯が見えるぐらいの怪しげな笑みを浮かべた幼女がその姿と違和感のない幼い声でそう少年に声をかけた。
声を発した突然目の前に出現した、シスターの帽子を被った何処かの学校の制服を着た白髪の幼女らしきものに少し驚いたあと眉間にシワを寄せたまま少年は沈黙を保った。
「お主も自覚してるじゃろ?」
幼女が再度ヘラヘラとバカにするように笑いながらそう確認を取ってきた。
しかし少年はその返答をせずに自分の疑問をぶつけた。
「お前神か?それとも化物か?」
それに幼女が間を開けて大きなため息を吐きはいて呆れたような顔で肩をすくめ話しを再開した。
「人の話を聞かずに人に問いを投げかけるなんてお主さてはコミュ障じゃな?」
「お前がそう思うならそうなんだろうな」
「それなら勝手に話を進めさせて貰うぞ」
「どうぞ、ご勝手に」
その発言を聞いたその幼女はそこに椅子でもかあるかのように空中に座り偉そうに足を組ふんぞり返った。
徐々に浮いていき頭の高さが少年を少し越えると上から目線で話し始めた。
「お主に折り入って頼みたいことがあるのj」
「断る」
少年は睨みながら浮いている幼女の話を低い声で単直的にさえ切った。
しかしその事がまるでなかったかのように幼女の口は衰えることなく開き続けた。
「お主には色々な世界を回ってもらいたいのじゃ」
(こいつ、人の話を聞いてないコミュ障かな?)
そう思いながら少年は真顔でどこか不機嫌な目線を相手に送り、ため息を吐いた。
その誰にも聞こえないであろう思考の文言に幼女からの返答があった。
(お主の神じゃからの)
頭に響いたその返答に、返答を期待していなかった少年は後退り、目の前で浮いている幼女から距離を取った。
「うわ、キモ」
「キモとはなんだ、神に向かって」
幼女はそう言われ気分を悪くしたのか、腕を組ながら頬を膨らませそっぽを向いてしまった。
「いやその脳ミソで考えろ、いきなり頭ん中に他人の声が出てきたらビックリするだろ?」
「私とお主は、一心同体じゃぞ」
「...ん?」
少年は眉を潜め首を大きく傾げ、肩をすくめる。
幼女はそんな少年のまえまで階段を降りていくように向かい、目の高さが同じぐらいになったところで歩みを止めた。
「今はわからなくてもいい...それと、もう一度聞く"はい"か"いいえ"でこたえるのじゃ、お主は異世界に行きたいか?」
少年の肩に手を置き、真顔で目の前にいる相手に圧をかけた。
しかしその相手はその圧を同じような真顔で受け取り、長いため息を吐いた。
「答えとしては、"はい"だが幾つか要望がある」
「なんじゃ?言ってみるのじゃ」
幼女がそう言い終えるとその空間から音が消え、少年の肩に手を置いている幼女と少年がしばらく見つめ合うだけになるという変な間が出来た。
その間に幼女は少年から少し離れ、浮いた状態のまま目線を合わせ、今度は横たわった。
「思考が読めるんじゃないのか?」
「読むのがめんどくさいのじゃ」
そのままコロコロと奥の方へと数回転がり、地面に顔を向けた状態で停止した。
(変なところでめんどくさがる、確かに一心同体と言うだけあるのかもな)
少年は右手で後頭部を掻き、少々気だるげそうな口調と調子で要求を唱えた。
「一つ目、時間を止めたりとかのあからさまに強い能力をくれ」
それを聞きながら幼女は寝っ転がった状態から体を起こし、先程より高い位置に再度空中で椅子に偉そうに座っているような格好に戻った。
「それは、出来ないのじゃ」
「何故だ?」
「やり方を忘れたのじゃ」
少年が再度真顔になったあと大きいため息と共に肩を落とし、話を続けた。
「まぁいいや二つ目、人間の男の姿であっちに送ってくれ」
「わかったのじゃ」
「三つ目、これで最後だ、ちょっと降りてこい」
そう言い人差し指を下にチョイチョイと動かした。
幼女が空中から降りてきたのを確認し、座っている幼女に近ずいて行き間合いに入る、右手と右足を引いた。
「歯ー、食いしばれ」
低いトーンの言葉を放った直後大振りの拳を付きだし渾身の一撃を食らわせた。
と思えたがその拳は何にも当たらず幼女を通り抜けていた、その事を少年は鼻で笑った。
「さすが神と言ったところか?自体が無いみたいだな」
「そうじゃの、お主は、水面に映る自分を殴ったにすぎないのじゃ」
幼女は右手を開いた状態で顔にかぶせ、左手を右肘までもっていって少し左へ体を捻った厨二病的ポーズをとったままそう言った。
「水面に映った自分てのはどう言うことだ?ただ空気を殴ったじゃないのか?」
「仕草にツッコムかと思ったのじゃが、スルーかの?まあいいのじゃ、さっき言った通り私とお主は一心同体じゃ」
首をかしげた少年は少しボーと考えた後ハッとして言葉を発した。
「あー、俺は概念的なもう一人の自分を殴ったにすぎないってことか?」
「そう言うことじゃな、本題に戻るのじゃが、さすがに私はお主みたいな畜生ではないのでな、これをやるのじゃ」
「一心同体なんじゃ?」
「うるさい」
幼女は空間の歪みらしきものを作り出した後そこから分厚いガラス板のような物のを取り出し、少年より少し高い位置からその鈍器を思いっきり降り下げ少年を殴った。
その攻撃は見事に少年の頭部に当たった。
「イッテーなー、何しやがる」
「さっきの仕返しじゃ、それと明確な強さのない能力を与えてやったのじゃ感謝するのじゃぞ」
「そうかいありがとよ、飴と鞭を同時に食らった気分だがな」
少年は怒りを押さえつつ気になったことを幼女に確認した。
「で、どうやってその能力とやらわ見れるんだ?」
「頭の中でSKILLと念じれば出るのじゃ...たぶん」
「たぶんなのかよ、てか発音いいな」
(まあ、やってみるか、スキル)
《スキル》
虫の知らせ、解析、山カン、以心伝心、透過、?
「...何だこれ?」
(お主の能力じゃろな)
「声出して言えよ、しかも何だこのハテナは、どんな能力だか想像もつかねえよ」
「それは、私にもわからんのじゃ」
そう幼女が話した時、突然少年の足元から小さな光の粒が振られた炭酸ジュースの泡のようにわき出てきた。
「ナイスタイミングじゃ、異世界に行けるようになったのじゃ」
「そうなのか?、なら早速行くとするか」
少年は準備運動を光の粒の真上でやり始めた。
「はい、これ、注意事項じゃ、では頑張るのじゃ」
準備運動をしている少年の足元に幼女が看板を投げると少年はガラス細工のような精密な作りの黄金色の光の檻に囲まれ幼女の姿が見えなくなった。
(オシャレなエレベーターに乗ってるみたいだな重力は感じないけど、えっと注意事項は)
少年は、先ほど神に渡された一番上に注意事項と書かれた少し古びた木製の看板を見た。
『 《注意事項》
1つ目、これは、お主用の武器じゃ。
2つ目、召喚者の願いを叶えるのじゃ。
※お願いします、と頭につけないと願い判定されないのじゃ。
3つ目、召喚者を必ず守るのじゃ。 』
その木製の看板に書かれていた文字は、読み終わると同時に消え、脳裏に染み付いた。
(...あのやろー、不利になると踏んで情報を伏せてやがったな)
少年は看板を投げ、ガラス細工の檻に刺さった看板を蹴ったが看板は、キシッと言う音を立てることすらなかった。
(カッテーな...どーすっかなー)
少年は看板をボーと見ながら親指を咥え何かを考え始めた、しばらくしてはっ、となにかを思い出した。
(とりあえずスキルの使い方見るか、多分...)
少年はスキルと念じ思い浮かんだ、数ある単語の中から解析をさらに念じた、すると看板に薄い青のターゲッターが現れ、そこから引かれた線の上に看板と書かれた、白い文字があった。
(ビンゴ、とすると虫の知らせと山カンは常時発動と考えるのが普通か?まあ、やってみるか)
解析のスキルを使用した時のように虫の知らせを頭の中で繰り返し念じた、しかし先程と違って今度は、何も変化がなかった。
(やっぱ常時発動かな?後は透過ぐらいかな?一人で試せるのは)
少年は考察を立てたあと、先程の行程を透過に変えて能力を発動させた。
(透過だから通り抜けるかな?)
光の檻に刺さった看板に触れようと手を伸ばした、そして予想どうり手が看板を通り抜けた。
(手が通り抜けた...どうやって立ってんだ?)
少年が地面を見渡し、そして屈み手で握りこぶしを作り地面をドン、ドンと殴った。
(ダイジョブそうだな)
地面を通り抜けないことを確認すると少年は立ち上がり辺りを見渡し、再度看板に注目した。
(この看板、透過中に掴んで同化できたりしねえかな?...イメージしたらできたりして)
少年は看板を見たままゆっくりと手を看板へ近づけ柄の部分に手を着け、看板を握り締めた。
(お、持てる持てる...どう解除するんだ?ま、今までの流れからたぶん"解除”)
少年は念じたあと看板を手放し、ボーとなにも考えずに看板を再度拾い上げた。
(たぶん成功かな?イメージが大事なのか)
そうこうしているうちにガラス細工の檻は、上の方から段々と消えていき少年の瞳に景色が飛び込んで来るのだった。