友人へ なぜか死んだので神に頼まれ異世界に行きます 作:ASSSr
船が島から離れ、空を航海してしばらくたった。
(どーやって飛んでるんだ?この船)
少年は部屋の中にある椅子の座る部分に背中を置き天井をボーと見上げていた。
「アミ、起きた?」
そう言葉を発した色々な暖色の毛が混じる炎のような色の髪を持つ少女が、そんな少年がいる部屋の扉を勢いよく開けた。
「誰だ?」
扉を開けた音に反応した少年は座っていた椅子から立ち上がりテーブルに食い込みだあと横に移動して、三つ編みをカチューシャのようにしている顔以外を鎧で覆ってある少女を目の前にしてそう言い放った。
「私よ、ナマド」
それを聞いた少年は少し首をかしげ、しばらく硬直したあと口を少し開けあーと言葉を発した。
「髪型が違うからわからなかった、それにしてもなんだ?その格好」
「倉庫に預けてた装備よ」
「...色々あるがまず重たくないのか?」
「少し重たい」
少年はそれを聞いたあと口を閉じ、ジーと無表情に見つめたあと横を向き、幼児が横たわるベットに移動した。
少年は後ろから付いてきた鎧を着きているナマドの方に振り返り、幼児を指差した。
「ご覧の通りまだ起きてないぞ」
「そうみたいね、これ飲ませてくれる?」
そう言いながらナマドは緑と紫色でスイカのような波模様の入った手に収まるくらいの果実を少年に差し出した。
それを少年は右手で受け取り、拳の中に納めたあと再度手を開き幼児をチラッと見たあとナマドに顔を向けた。
「胃に入れればいいのか?」
「ええ、頼める?」
「ああ」
少年はそう返したあと果実を指で包み拳の中に納め、手を透過した。
そして振り替えると共に小さな幼児の鳩尾に手首を食い込ませた、次の瞬間少年の左脇腹から右肩にかけて細い鉄が通り、体にズレが生じた。
そして間を置いて上半身が床へと落下し、両方の体から赤い液体がこぼれ出た。
「痛いな、なんのようだ?」
上半身と共に地面へ落下した少年の顔が鞘から剣を抜いていたナマドの方に向き、口を動かしてそう発言した。
「言わなきゃわからない?」
「ああ、わからない」
ナマドはそう、と呟き顎を引き地面に転がっている少年の顔に剣を突き付けた。
両者の目が合い、部屋の中に冷徹で重々しい空気が漂いどっからが動けば起爆するであろう空間がそこにはあった。
しかしその時限爆弾は幼児が上体を起こしたことにより起爆することなく消えていった。
「アミ!」
ナマドがそう叫び手に持っていた剣を床に突き刺し、ベッドの上にいる幼児に抱きついた。
「痛いよー、お姉ちゃん」
幼児は眠そうな瞼と緩んだ頬でニコニコとしながらそれに答えた。
しばらく幼児とナマドがハグしたあと幼児はふと地面に滴る赤い液体を目にし、それをたどり二つに割れた白と紺色の物体を見た。
「わー!大丈夫ですか?悪魔様」
「これが大丈夫に見えるならお前は大丈夫じゃなさそうだな」
「え?そうなんですか?」
「...安心しろ俺も大丈夫だからお前も大丈夫だ」
そして少年はめんどくさいとばかりにため息をつき、上半身と下半身をくっ付けようと地面を這った。
その少年の顔にナマドは再度剣先を向け、先程までの気の抜けた表情とは一変して般若のような顔をしていた。
「で?さっきのはどいうこと?」
(情緒不安定か?)
そう思いながらも少年はいつもと変わらないテンポで言葉を発した。
「さっきとは?」
その言葉を聞きナマドは沈黙し、を眼力さらに上げて鋭利のように鋭くなった視線を少年に向け続けた。
返答を返してこないナマドに少年はさらに淡々と言葉をぶつけた。
「おい、聞いてんのか?睨んでるだけじゃなにもわかんないんだが?」
「おーい、固まってどうした?...本当になんなんだ?意味不明すぎるぞ、おまえ」
そんな言葉に耳を傾けずナマドは変わらず地面に這いつくばる少年に剣を合わせていた。
少年はそんなナマドに言葉を掛け続けるが次第に文脈が短くなっていき最終的には無言になり、着々と自身の体を直していった。
少年の体がほぼ完璧に治るころナマドは口を開き少年に問いかけた。
「あんたは敵?それとも味方?」
しかし少年はその言葉の返答をせずに別の話題を幼児に話し始めた。
「おいミニ、この船を見て回りてえから着いてこい」
「ふぁーい、わかりました」
瞼がほぼ閉じたままの幼児が少年の言葉に欠伸混じりで返答しフラフラと少年に近づいた、がその幼児をナマドが片腕で持ち上げ進行を止めた。
「めんどくさいな、おまえ」
「答えなさい」
「めんどくせぇて言ってんだ、聞こえないのか?」
ヒートアップするナマドと変わらぬテンポで淡々と言葉を話す少年の主張が平行線上に進んでいく。
しかしその平行線はなにかを知らせるアラートによってどこかに消えていった。
「緊急!緊急!テンスベルモノとカンシスルモノが現れました、戦えるものは直ちに船のデッキまで、繰り返す...」
それを聞いたナマドは険しかった顔をもっと険しくしたあと剣を納め、腕に抱えていた幼児をベットに戻して動かない少年を引っ張りドアまで急いだ。
「アミ、そこで待ってて」
「?ふぁーい」
「ちょっと待て俺を連れてく気か?」
「当たり前でしょ、今は少しでも戦力が欲しいのだから言い合ってる暇なんてない」
「なら、あいつも連れてくことになるぞ」
少年は先程と変わらぬ速度とテンポでそう言いながらベットの上にいる幼児を指差した。
「アミは関係ないでしょ!」
「いいやあるね、俺はあいつから離れすぎるとあいつのとこに戻される呪い紛いなものがある」
それを聞きナマドの額に血管が浮き上がり険悪だった表情がさらに険悪なものへとなっていった。
「怖いからって言い訳すんな!怖いのは誰だって一緒だ!」
「悪いがこればかしは事実だ、まぁ嘘だと思うんならやってみればいい」
ナマドはなにかを言おうとしたが少年のその言葉を聞きそれをグッとこらえ、視線を少年から少しずらし動きを止めた。
そしてしばらくして口からギギギと言う歯軋りを鳴らしたあと一回だけ深呼吸をした。
「わかったアミを連れてく、けど絶対死なせない」
「そうか、でどっちが持つ?」
「...私が持つ」
「そうか、なら行こう案内頼む」
ナマドと少年は最後にそう言葉を交わし、ナマドが幼児を抱え船内を駆けていくその後ろを少年は着いていくのだった。