友人へ なぜか死んだので神に頼まれ異世界に行きます 作:ASSSr
「繰り返す、カンシスルモノ、テンスベルモノが出現、戦闘可能な者は直ちに防衛に参加してください、繰り返す...」
船内からデッキに出た少年たちの体にその声が痛い程響く。
「は?なんの冗談だ?」
少年は船の上の光景を見てそう声を出した。
その船の上では人と同じくらいの大きさの蜂に似た怪物とそれより一回り程度大きい蜻蛉に似た怪物が船とその上にいる人を襲っていた。
「これが冗談に見えるの?それなら貴方の頭は相当イカれてるよ」
「そういう意味で言ってないが、まあ否定はしない」
そう言葉を交わした少年たちの元に二匹の蜂に似た怪物が襲いかかってきた。
ナマドは幼児を抱えてない方の手で剣を抜き、迫ってきたうちの一匹を両断してその死体を船のデッキに転がさせた。
「いい?こっからh...どこ行った?」
フーと息を吐いたあと剣を鞘にしまい、
少年に声を掛けながらその方向に視線を向けた、ナマドは誰もいないことを確認し、眉を潜め辺りを見渡したが少年は見当たらなかった。
「そこの赤髪の鎧を着た人!こちらへ!」
そんなナマドの鼓膜に警報の時と同じ声がそう響いた。
そしてナマドは即座にその声を発したであろうナマドより軽装で、クロスボウを持った黒と銀髪が混ざっているポニーテールの女性の元へ駆けつけた。
「私は何をすればいいですか?」
その女性の元に着いたナマドは先程少年と言い合っていた時と違う声色で即座にそう女性に聞いた。
「近くの島に着陸して援護を求める、だから船が落ちないように船の防衛に徹してくれ」
その女性は船の上の方にいる蜂の怪物を打ち落としながらナマドにそう答えた。
「話ながら4体も倒したな」
黒と銀髪の女性の話を聞き頷いたナマドの後ろからそう声がした。
「あんた、どこ行ってた?」
「独特な服のヤツ、君いまどこから出てきた?」
「とりあえず、なにすればいい?赤毛」
ナマドが少年に問い、黒と銀髪の女性が少年に話しかけたが少年は睨むナマドに視線を向け、少年は問いかけられたそれらを無視し、顎を少し上げ偉そうナマドにそう問い返した。
それにナマドは少しの沈黙のあと剣を鞘から抜き、先端を地面に向けて口を開いた。
「この船が島に着くまで防衛する、下手に船体の外にいるモンスターに攻撃しないで」
少年はそれを了承したとばかりに頷きナマドから視線をずらし、船の端で蜂の怪物に襲われている男性に視線を移すと、床を蹴りすぐさまそこへ移動し、透過した手と手首を怪物の体内に突っ込んだ。
透過解除後ワンテンポ遅れて浮いてる怪物を腕から両足で蹴り離し、死体と一緒に船体の上に着地した。
「あ、ありがとう」
少年に助けられた透明な液体まみれの男性は感謝の言葉をのべた、が少年はそれに首をかしげた。
「?、当然のことだろ?」
「そうかもだけどありがとう」
そんな少年に男性は再度お礼を言い手を伸ばした、その手を少年は掴み自分の方に引き男性を直立させた。
(今、頭数が減ったら困るのは見ればわかるだろうに...変わったヤツだ)
そう考えながら。
「ケルセ、3時の方向!来るぞ気を付けろ!」
その掛け声に少年の手を握っていたケルセと呼ばれた男性が船の進行方向から見て3時の方向に顔を向けた。
少年も少し遅れその方向に顔を向けた、そこにはかなりの速度で近づいてくる蜻蛉の怪物の姿があった。
少年はそれを視界にいれた瞬間握っていたケルセの手を離しその手を透過させたが無理だと判断し上半身を透過した。
それと同時にケルセがなにかを口ずさんだ。
「この世の理を解き、力となれ、我拳よ、魔の力を纏いて、何者にも動じぬ楯となれ、プロテクト!」
その宣言中ケルセの腕に二つ、手に一つの三角形の魔法陣が現れ、宣言が進むに連れ速く回転していき終わると同時にケルセが体制を崩しながら突き出した左腕に溶け込んだ。
その腕は見事に蜻蛉の怪物に当たり少し青み掛かった透明な液体が辺りにちらばった、衝突したケルセはその衝撃で船の反対側まで吹き飛んだ。
船の上に落とされた顔が潰れている蜻蛉の怪物は6本の足を動かして踠いていたが横にいた少年によって体内を抉られ、動きを止めた。
(今の速度でぶつかられてよく生きてるなあの男...それほど魔法が強いのか?この世界では、それとも俺の世界との自力の差か、もしくは...)
二人の男性から血が出ているところに包帯を巻くなどの応急処置を受けているケルセを視界の端にいれ、少年はそんな思考をしていたがそれが長く続くほど怪物たちは甘くなかった。
一匹の蜂の怪物が後ろから少年に鋭い顎で噛みつき、少年に喰い込んで体にヒビを入れた、そして怪物は黒と黄色で段段に彩られた腹を振り毒針を十数回刺した。
(痛い、痛覚はあるんだったな...まあ、だからどうしたって感じだが ''透過,,)
少年の体が頭から段々と姿を消していき船の上から少年の姿が見えなくなった、がしかしそれでも怪物の黄色い顎は少年を挟み、黒い牙は少年の体に食い込んでいた。
(は?)
それに少年は少し驚き、動きを完全に止めてしまっていた、その隙を怪物は好奇とばかりに少年の肺や臓などの胸辺りにある臓器を噛み潰し、体を両断した。
蜂の怪物と少年が再び船の上に現れたとき、紺色のジャージと腹の部分を白い布で覆っている体、の上で黒い牙の生えている黄色い顎が噛み合わさっていた。
「なぜ触れる?」
少年は視界に写る少し暗い地面にそう言葉を小さくぶつけてそう自問した、そしてそれに思考をとらわれてしまい動かなくなった。
「死ね、怪物め」
その動かなくなった少年の上を飛ぶ怪物目掛け、ケルセが駆けていき、少量の血液と目から涙を滴しながら大声でそう言い怪物を空中から船体の床に殴り落とした。
そして両断された少年のハダ色と白色が混同する方を抱え上げた。
「恩人、ちゃんと埋葬するからな」
ケルセは小さな声で抱えている少年の破片にそう語り掛け、目からこぼれる涙をポツポツと少年に垂らした。
「勝手に殺すな、ついでに胴体にくっつけろ」
そんなケルセにそう少年の低く冷めた声が聞こえた。
「ああそうだよな、認めたくないよな、わかるよ」
「なにもわかってねえよ、口じゃなく手を動かせ」
「大丈夫、もうなにも言う...なんでそんなに意識はっきりしてるんだ?」
ケルセは涙を絞り出していた目を大きく開け、潤っている眼で腕の上で動いている少年の破片を見た。
「そういうヤツだ、察しろ」
「そ、そうなのかs...」
「話してる暇ねえだろ、速くくっつけろ」
そう急かす少年とケルセの回りには黒と黄色の怪物が十数匹群がっていた。