友人へ なぜか死んだので神に頼まれ異世界に行きます 作:ASSSr
ワイシャツを着た少年の一部を持っているケルセは黒と黄色を基調とした怪物に包囲されていたその数およそ十数匹。
「やべ、囲まれてる」
それに気づいたケルセは少年から少しボケている視界を離し、周囲の敵に視線を向けた。
「今気づいたのか?なにか手はあるのか?ないなら俺をすぐに直せ」
そんなケルセに少年は速さを変えずに坦々とそう言い、切断された自分の半身を指差した。
「大丈夫だ、これぐらいなら」
ケルセは潤っている目を拭い、そう言ったあと少年の一部を片腕に持ち船の中心へと駆け出した。
「師匠!お願いします!」
そしてケルセは幼児を抱えているナマドとクロスボウを持つ黒銀の髪の女性の方へ走りながら大きくそう発した。
その直後黒銀の髪を持つ女性がクロスボウをケルセたちの方へ向けた。
「この世の理を解き、力とせよ、ヘキサゴン」
「この世の理を解き力となれ、我肉体よ魔の力を纏いて、何者にも動じぬ楯となれ、プロテクト!」
黒銀髪の女性の大きくユッタリとした声とケルセの早くしかっりとした宣言がぶつかり合った、そしてそれらは静まるよりも前に黒銀髪の女性が放った爆炎と爆風によって掻き消された。
「死ぬかと思いましたよー」
少年を抱えたケルセが爆炎の中を駆け抜けフゥーと息を吐き、それを放った黒銀の女性に視線を向けて少し項垂れながら安堵の入った声でそう言った。
「安心しろ、骨ぐらいは拾ってやる」
その言葉を黒銀の女性は背中で受け、怪物を次々に狙撃しながらそう冷たく返した、それを首の後ろを擦りながらヘラヘラとした笑顔でケルセは受け取った。
「おい赤毛、あとどのぐらいで船は陸に着く?」
それをよそに怪物を切り伏せているナマドに少年はケルセに抱えられた状態のまま変わらぬ声色で声をかけた、がその落ち着いた声へのナマドからの返答はなかった。
しかしその少年の声にナマドの近くにいた黒銀の女性がメリハリの着いたハッキリとした声で返答した。
「三分程度だ、支援が来るまではもう少し掛かる」
(三分か、幼児は赤毛が守っているからいいだろう、船の方は三分持つか?...不可能に近いか?)
そう思いながらケルセに抱えられている少年はナマドを一瞬見たあと当たりを見渡した、そこには無事着陸できるか怪しいほど損傷した船のデッキがあり、少年に懸念を与えた。
「少年、一つ聞きたいんだがなんで下半身がくっついてるんだ?」
そんな少年にケルセは目を見開きながらそう聞いた、少年はそれを聞き腕を伸ばし、手で足に触れて自分の下半身があることを確認した。
「おい待て少年、まだ万全じゃないだろ」
そして体を透過させ、止めるケルセの腕を通り抜け、足で床を蹴り近くにいた船の木材を頑丈な顎で引き剥がし、噛み砕いている蜂の怪物の体内を抉り倒しす。
ケルセは少年を追いかけたがその行く手を一匹の怪物に阻まれ、その対処に手間取っている間に一匹また一匹と増えた怪物の処理に追われた。
その後も少年は周辺を見渡し、船を噛み砕いている怪物を視界に入れるとそこへ走り怪物の体内に腕を侵入させその勢いのまま怪物を殺す。
少年は多数の怪物と戦闘を行っている少数の冒険者達を視界に入れていたが船を噛み砕く怪物を優先的に倒して回った。
(他のヤツをみてる感じ、基本的に一対一で互角程度のようだな、船体を破壊してる怪物は最初の一、二撃で倒せば驚異じゃない、ただそれで倒せないと船の外で飛んでる怪物たちの中から増援が来るようだな)
そう思考しながら船の木材を噛み砕いていた怪物の体内を抉り、最初の一撃で倒している少年の視界に二人の冒険者が同じく怪物に息を会わせて、頭とからだの付け根に剣を振り下ろす。
しかしその一撃は怪物に到達する寸前でズレ、怪物の黒い背中に二本の剣が浅い傷を入れただけに終わった。
そして二人の冒険者は依ってきた四匹の怪物と傷を入れた一匹の怪物に襲われた、少年はそんな二人を正視した状態で動かなくなった。
こちらを見て静止している少年に二人の冒険者の内一人が、協力してくれ、と声を上げ助けを求めるが少年は静止したまま動かない。
他に助けを求められる相手が回りにはいないその冒険者は何度か少年に助けを求める言葉を掛けた。
しかし少年はその全てに静止を決め込みピクリとも動くことしなかった、ついに助けを求めていた冒険者が怪物に押し倒され地面に背中を接触させた時、冒険者は今までとは比べられない程の大きな声で少年に助けを求める旨の言葉を再度掛けた。
「頼む!助けてくれ!」
その声が響き少し経った後、少年は顎を下げ、言葉を発した冒険者がいる方向に前傾姿勢になり手を地面に着ける。
左足を下げ怪物の死骸をスタブロのように足をセットし、腰を上げるとほぼ同時に右足で自分のからだを蹴り飛ばす。
地面に着地した左足で勢いと体重を支え、勢いそのまま二人の冒険者に向けて少年は走った。
声を上げた冒険者はそれを見て怪物に襲われていながら安堵の表情を表す。
「今俺とやりあってるヤツを頼む」
安堵していた冒険者はそう言い体を大きく動かし怪物たちに隙を晒しながらも覆い被さっている怪物を押し、突き放しす。
それに向かって少年は跳び、右足を伸ばした。
そしてハードル走かのごとくその怪物を上半身を固定しながら腕と首、それと下半身だけを動かしキレイに飛び越えた。