友人へ なぜか死んだので神に頼まれ異世界に行きます 作:ASSSr
抱えられた少女はすぐに幼児に手を伸ばしたが寸前のところで少女の手は空を切った。
少女の顔が絶望に染まり始めたそのとき少女を片手で抱え直した、少年が空中に放り出された幼児の腕をガシッと掴み、胴体に引き戻した。
少年たちはそのまま外壁を完璧に通り抜ける寸前に堀を飛び越えられないと判断した少年によって急に止まり、衝撃をその身に受けた。
衝撃を受けたあと少女はアミと呼んだ弟がいることを確認して安堵した。
「あんたどういうつもり!アミを殺す気?!」
「黙れ」
少年は、少女の怒号を看板を咥えている口から静かに深い声で一括し無機物のように動かなくなり、その場に沈黙が訪れた。
しばらくして沈黙と微妙な空気に耐えきれず少女にアミと呼ばれた幼児が少年に腕を捕まれて宙吊りの状態で何かを喋ろうと口を開きかけた。
その時少年は、何かを察知して思い切り壁を蹴り飛ばした。
それとほぼ同時に外壁を破壊するほどの暴風が吹き、それが追い風となり少年たちは数十メートルある堀を強引に飛び越した。
少年は、腕を掴んでいた幼児を引き寄せ少女と一緒に抱き抱え地面に背中から着地した。
「大丈夫か?」
少年は抱えていた幼児と少女にそう問いかけた。
少年に庇われた二人は、その問いに呻き声で答えたあと地面に手をつき少年の懐から起き上がった。
その直後何処かで聞いたことのある調子に乗ったような口調の何者かが少年たちに声をかけてきた。
「いやー、やっぱりなんかいたようッスねー」
少年は仰向けの状態から少女達を抱えながら上体をあげ、空中で浮き手をポケットに突っ込み腰を曲げている若い冒険者風の男に目を合わせた。
「死ぬ前にその子達返してくれないっすかねー」
「別にお前らのものじゃないだろ?なら返すとか以前の問題だ」
少年は少女たちを抱えたまま無表情でそう若い冒険者風の男にため息混じりにそう答えた。
その返答を聞いた冒険者風の男は、浅いため息をついて顔を横に振り曲げていた腰を戻した。
「ならすぐに殺すッしかないっスわー」
そう言葉を口にした瞬間少年の腕にいた少女と幼児に魔法陣が現れ、少年の腕を砕いて同じ方向へ吹き飛ばされその直後紅い魔法陣が少年下に現れ周辺が青い炎柱に包まれた。
その横を空中から降りてきた若い冒険者風の男が素通りして、同じ方向に自身同様ふんわりと飛ばされた幼児を抱えた唖然としている少女の目の前で立ち止まりにこやかに笑い、少女に手を伸ばした。
「お嬢さん方、帰りますよ」
少女がその手を取ろうと腕を伸ばそうとしたその時、男は振り向き様に抜刀して蒼炎で作られた円柱から発生した煙を掻き分けて飛んできた傷んだ看板を弾き飛ばした。
「はー...なんで初っぱなからこんな化け物が相手なんだ?もしかしてこれがこの世界の基準値の強さなのか?」
大きなため息をつき、そう言いながら炎で焼かれたはずの少年が煙の中から背中を曲げ左手で首を撫でながら気だるそうに姿を表した。
その少年の疑問に男は、鼻で笑ったあと調子良さげに、見ているとイライラする身振り手振りをしながら返答した。
「そんなことないっスよー、この世界で俺に勝てるのなんて指一本で数えられる人数だけっスカラー」
「そうか、まぁ、どうでもいいけど、ただただメンドそうだなお前、色々と」
「そうっスかねー、あの魔法を食らってピンピンしてる方がメンドウだと思うンッスけどねー」
「ああ...それもそうだな」
少年はそう言い、目の前にいる冒険者風の男に向かって、全力で地面を蹴り近づこうとした。
しかしそれと同時に少年に向かい風が吹き少年は、数十メートルほど転がりながら派手に吹き飛ばされ、最終的にうつ伏せの状態で着地した。
「イッて」
うつ伏せで着地した少年は起き上がりながそう言葉を吐き、表情の変わらない視線で自分を吹き飛ばしたであろう正面に堂々と立っている冒険者風の男を睨んだ。
「どーしたんッスか?、そんなにトークに離れッて」
その言葉を聞きうつ伏せで横になっている少年の堪忍袋は切れ、赤い何かが少年の思考の中を駆け巡った。
そして少年はその駆け巡った赤い何かに身を任せるようにうつ伏せの状態から起き上がり再度、冒険者風の男に向かって走り出した。
それを見た冒険者風の男が少年を鼻で笑ったかと思えば男の背後に大きな浅緑色の魔法陣が現れ、また少年を吹き飛ばした。
少年はまた数十メートルを地面に数回接触しながら後退して行き最終的に先程と同じようにうつ伏せの状態で地面に衝突した。
「おーい、それだけッしか出来ないんッスか~?」
冒険者風の男は少年の耳にもうるさいぐらいに響く大きな声で少年を挑発した。
その挑発に乗るように少年は立ち上がり無表情のまま、自分の障壁となった冒険者風の男を見つめながら男に向かって突進していった。
「あいつほんとにバカッスね~」
冒険者風の男は、そう言い先程と同じように大きな浅緑色の魔法陣を背後に出現させ少年に向かって暴風を発生させた。
しかし少年は、なぜ走れるのか不思議なぐらい上体を下げた状態で全く変わらない速さで走りそれを回避した。
「お、マジッスかー」
それを冒険者風の男は、ビビりもせず笑いながらある程度の速度で近づいてくる少年の真下に黒を帯びた茶色の魔法陣を一瞬出現させた。
そして魔法陣が消えると同時に少年が踏むはずだった緑色の草が被さっていた焦げ茶色の地面は少年を中心に半径1メートルほど、高さ約3メートルの円柱状に抉れていた。
少年の柔軟に伸びた足が空を切ったあとその穴に少年は、当然のごとく落下して根っこの先端が見える焦げ茶色の土の壁に衝突し仰向けで盛大に倒れた。
「いっ」
「残念ッスねー、あとちょッとだったんッスけどねー」
冒険者風の男は数メートル離れた穴に落下した少年に、のけぞり腹を抱えて笑顔を天に向けながら声をかけた。
「まぁ、楽しかったよじゃあな」
しばらく笑っていた冒険者風の男は何も反応の帰ってこない少年を気にせず、お調子者の口調が抜けた真面目な声と言葉で少年にそう最後の言葉をかけた。
それと同時に冒険者風の男から数メートル離れたポカンと空いた穴から蒼炎のときより少し小さい白炎の柱が天に向かって昇り、冒険者風の男を巻き込み辺り一体を煙に包んだ。
冒険者風の男は、目の前の白炎から発生した煙のなかで軽くため息をつき頭を左手でかいたあと真後ろに振り返り、放置していた少女たちの方向へと歩んで行き、煙が晴れた場所へとでた。
しかしそこには少女達の姿は全く見当たらなかった。