英雄伝説外伝 金の軌跡   作:魔ギア

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第百九話 意地

 最初に動いたのは二人の剣聖。アリオッチの左右を一瞬で取り、挟み撃ちする。

 

「「疾風!!」」

 

 そして、最大速度でアリオッチに向かっていった。

 

「……フンッ!」

 

 アリオッチの斧槍がアリオスの剣を受け止め、もう片方の手でエドの腕を掴み取った。アリオッチはアリオスを押しのけて、斧槍の向きを変える。向かう先にいるのはアリオッチに掴まれたエド。

 

「させっかぁ!」

 

 そこにセリスが間へと割り込み、法剣を盾にして斧槍を止める。

 

「ぐぅぅっ!!」

 

 アリオッチの斧槍を何とか受け止めたセリスだが、予想以上の力に身体が後ろへと押されていく。その隙にエドは自身の腕を掴むアリオッチの腕にしがみつく。上半身の力で身体を持ち上げてアリオッチに目掛けて蹴りを放つ。

 

「フグゥッ!」

 

 アリオッチの頬にエドの足がめり込む。だが、アリオッチはそれにまったく動じず、エドから腕を離さない。アリオッチはエドに向かって笑みを浮かべ、なんと顔でエドの足を弾き返す。

 

「しまっ……」

「オラァ!」

 

 バランスを崩したエドを片手で持ち上げるアリオッチ。セリスを吹き飛ばして、フリーになった斧槍を再びエドに向かって振りかぶる。

 

「オーロラウィング!」

 

 そこにオランピアがアリオッチに向かって突撃。小太刀を斧槍にぶつけて軌道を逸らす。

 すぐに体勢を直そうとするアリオッチだったが、スコッチが足にめがけて銃弾を放つ。

 バランスを崩したアリオッチにリンが接近。エドを掴んでいるアリオッチの腕に手刀を放つ。衝撃で掴んでいた手の力が緩み、エドはすぐさまアリオッチから離れる。

 

「逃がすかっ!!」

 

 しかし、アリオッチはリンたちを押しのけて、エドに飛び掛かる。振り下ろされた斧槍をエドは咄嗟に剣で受け止める。

 

「お、もいっ……!」

 

 反響する金属音と腕から全身へと回る衝撃にエドの顔が歪む。すぐさま、剣を横に流して斧槍を逸らすが、アリオッチの攻撃は止まらない。

 

「まだまだっ!」

 

 逸らされた斧槍をすぐに返す。迫りくる応酬を何度も受け止めながら、エドは何度も距離を取ろうとするが、すぐに距離を詰められる。押してくるアリオッチの勢いにエドは攻めに入れない。

 

「どんなものも全部、斬っちまうテメェの剣は、武器を持っている俺たちにとっては天敵といってもいい。……だがな、それは攻めだけの話だ!」

「ぐぅ!」

 

 押しつける力にエドは膝を着いてしまう。

 

「斬るためには剣を振らなきゃならねぇ。つまり、振らねぇように攻め続ければ、テメェの剣なんざ怖くはねぇ!」

 

 無防備になっていたエドの腹にアリオッチの前蹴りが炸裂する。空気を吐き出し、仰向けに倒れるエドの上にアリオッチが跨った。

 

「終いだぜ、《黒金の剣聖》!」

「エドさん!」

 

 オランピアが駆けようとするが、時すでに遅し。アリオッチの斧槍がエドの脳天目掛けて振り下ろされる。

 

 瞬間、エドがその場から消え去った。

 

「むっ!」

 

 空振りした斧槍を見て固まるアリオッチ。だが、すぐにその場で身を縮める。

 

「紅葉斬り!」

 

 背後から突然現れたエドが斬撃を放つ。紫の髪が飛び散る中、アリオッチは斧槍を振りかぶって、エドを吹き飛ばす。

 

「そこだ!」

 

 アリオッチは吹き飛ばされたエドに向かって斧槍をぶん投げる。地面を抉りながら迫ってくる斧槍を、エドは足を付けた瞬間に横ㇸ跳び、直撃を躱す。

 

「捕まえたぜ!」

 

 すると背後からアリオッチが現れ、エドを羽交い絞めにする。

 

「このまま首をへし折ってやるよ!」

 

 首に回していた腕を引いて、エドを絞めあげるアリオッチ。エドは苦しそうに顔を顰めながらも《魔眼》を開いて、アリオッチを見つめる。すると――、

 

「なにっ!」

 

 腕から重みが消える。先程まで拘束していたエドがまた消えてしまった。

 

「ハァアア!!」

「チッ!」

 

 すると、今度はアリオッチの上に現れたエドが剣を振り下ろす。斬撃を躱したアリオッチは地面に刺さった斧槍を引っこ抜いてエドから距離を取る。

 

「やっぱり、そういうことか」

 

 一瞬でその場から消える現象。それを二回、いや三回も目にしたアリオッチは確信する。

 

「瞬間移動しやがったな。テメェ……」

 

 アリオッチを見つめながら、無言で剣を構えるエド。そして、二人の一部始終を遠くから見ていたオランピアたちはアリオッチが発した言葉に驚愕する。

 

「しゅ、瞬間移動?」

「たしかに、エドさんが突然消えていましたが、あれはただ速く動いただけなのでは?」

「いや、あの状況はとても動ける状態ではなかった。足掻いても逃げ出せなかったはずだ」

 

 スコットたちが考え込む中、アリオスだけが目を鋭くする。

 

「ボスの言う通り、眼の力が高まってるみたいだな」

「やっぱり、こいつは《原初》の《魔眼》の力か……」

 

 予想していたのか、エドは特に驚く様子はなかった。

 

「ボスの持つ《魔眼》は『過去』、『現在』、『未来』のそれぞれに干渉できる力を持っている。『未来』は望んだ結末に強制的に変える未来改変能力。そして、『現在』はその眼で視た光景へと跳躍する瞬間移動能力。龍來で見た時にまさかとは思っていたが、自力で使えるようになったんだな」

「意識して使えるようになったのは今回が初めてだ」

「だろうな。たぶんだが、エデン村に飛んだ時に感覚を掴んだか?」

 

 龍來でオランピアを助けに行った時に一回。そして、ユンの下からエデン村へ向かう時にもう一回と、エドは計二回の瞬間移動を無意識に発動していたのだ。

 

「だが、次はねぇ。移動する前に仕留めてやる」

 

 エドはちらりとアリオスと目を合わせる。アリオスは静かに頷き、エドも頷き返す。

 

「今度はこっちから行くぞっ!」

 

 エドが地面を蹴ると同時にアリオッチも蹴る。両者は再び激突して距離を詰める。エドの斬撃をアリオッチは当たる直前に斧槍を傾かせて、剣の軌道を上に逸らす。剣を返そうとするが、その前にアリオッチが懐に入り込む。

 

「こいつでぇ!!」

「裏疾風!」

 

 エドを斬ろうとするアリオッチだったが、アリオスの刃が斧槍を弾く。そこに今度はエドが飛び込んだ。

 

「螺旋撃!」

 

 エドの斬撃をアリオッチは武器で逸らして直撃を避ける。

 

「斬っ!」

「ぐぅ!」

 

 エドを攻めようとしたところにアリオスの二撃目が直撃する。顔を顰めるアリオッチだったが、気にせずに斧槍を振り下ろした。だが、斧槍は剣にぶつかるのと同時に跳ね返された。

 

「なにっ!」

「ハァアアアア!!」

 

 隙ができた胴体に一撃を加える。アリオッチは後ろに引くが、すぐに前に出る。

 

「ラ゛ァアア!!」

「させん!」

 

 今度はアリオスがアリオッチの斧槍を弾く。武器を弾かれ、がら空きになった胴体にアリオスは無数の斬撃を放つ。

 

「ダァアアアアアアア!!」

 

 獣如き咆哮でアリオスを押し返す。アリオッチは後ろに下がり、エドたちと距離を取る。

 

「テメェら、なにしやがった」

「ただ普通に弾いただけだが?」

「さっきまで受け止めていただけだったのに……」

 

 そこでアリオッチは目を丸くして言葉を止めた。

 

「なるほど。わざと受けて止めて、観察していたのか」

「あんたの技量はすごい。俺やアリオスさんをも凌駕する技とキレ。そして実践経験。百年以上も生きていたのは伊達じゃない。……だがな、百年生きていようが、使われているのは人の技。ならば、対処の仕方なんかいくらでもある」

 

 八葉一刀流が持つ「勧の目」。アリオッチとの打ち合いの中で、エドとアリオスは彼の技量を常に観察していた。

 

「貴様の技は見切った。今までのようにはいかんぞ」

「ククク……、いいじゃねぇか。やっぱり、戦いっていうのはこうでなくっちゃな!」

 

 アリオッチから噴き出る紫紺の闘気。肥大化する闘気がピリピリとエドたちの肌を突き刺す。

 

「さてと、暴れるぜぇ!!」

 

 アリオッチは周囲を破壊しながらエドたちを追い詰める。斧槍を振るうたびに、地面や壁が弾け飛び、果敢に攻めようとするエドたちもアリオッチの猛威に何度も弾き返されてしまう。

 

「これでも……」

「喰らいやがれ!」

 

 すると、オランピアとセリスが遠くから砲撃を放った。だが――、

 

「エインシェント・ハザード!!」

 

 アリオッチの渾身の一撃が砲撃を一瞬でかき消した。目を丸くして固まる二人の姿を、赤く光るアリオッチの目が捉える。

 

「セリスさん!」

「ちっ!」

 

 セリスの手を掴んで、オランピアは空へと逃げる。すると、強烈な爆音と共にオランピアたちがいた場所が吹き飛ぶ。

 

「これじゃ不用意に近づけません」

「オランピア!」

 

 下からエドが声をかける。オランピアはエドに近づいてセリスを下ろす。そこにアリオスたちも集まる。

 

「エドさん。なにか作戦が?」

「このままやっても、たぶん倒せない。ちょっとの傷をつけても、すぐに傷がふさがる」

「《古代遺物》による超速再生か」

「重い一撃を連続で放たなきゃ、こっちに勝機はないな」

「ですが、与えようにもあれでは近づけません」

 

 まさに厄災のごとく周囲を破壊し、広間に多くのクレーターを作り出すアリオッチ。今は攻撃を一旦、止め、エドたちの様子を窺っていた。嵐の前のような静けさに緊張感が一気に跳ね上がっていく。

 

「エド。俺たちはどうすればいい」

「一瞬でいい。あいつの懐に入り込めるように隙を作ってほしい」

「その後は?」

「俺が奴を無防備にさせる。そこに一撃を与えるから、それを合図にそれぞれ必殺の一撃を与えてくれ」

「このメンツで考えると……」

「アタシとオランピアと、《風の剣聖》だな」

「だが一瞬、か……」

 

 全員が顔を前に向ける。そこにはエドたちの挙動を見過ごさないようにアリオッチがじっくりと見つめる姿あった。

 

「これ以上の作戦会議は無理だな」

「皆さん、隙を作るのは俺たちでやります」

 

 スコットが真剣な顔つきをしながら前に出る。彼に続いて、リンとエオリアも前に立つ。

 

「いつでも出れるように準備をお願いします」

「大丈夫なのか、三人で?」

「問題ないわ。修行の成果を見せてあげる」

「倒すことはできませんが、隙を作るだけなら問題ありません」

 

 銃をアリオッチに向けるスコット。リンは拳を握り、エンネアはメスを取って、戦術オーブメントを構える。その姿をアリオッチは見つめながらも、進む足を止めない。

 

「お前さんらで俺の相手が務まるか?」

「遊撃士の意地。そして、クロスベルの意地を見せてやる!」

「それじゃあ、行くわよ!」

 

 リンが地面を蹴り、アリオッチに向かう。正面から向かってくる彼女にアリオッチは足を止め、斧槍を上げる。

 

「その意気は悪くねぇが、相手が悪いぜ」

「女だからって舐めないでよ!」

 

 斧槍が吸い込まれるようにリンの頭へと向かう。だが、斧槍はリンの上を通り過ぎた。

 

「ハァアア!!」

 

 紙一重で重心を落としたリンは懐へと飛び込んで拳打を放つ。続けて脇腹を蹴り、正拳突きを連打する。躱されたことに固まるアリオッチだったが、すぐさま斧槍を手放す。密着した状態で斧槍は振るえない。肉弾戦へと切り替えたアリオッチの拳をリンに両腕で受け止める。

 

「ぐっ!」

 

 圧し掛かってくる一撃にリンの顔が歪む。両腕に力を込めたリンはアリオッチの拳を弾いて、前に出る。

 

「シッ!」

 

 突き、蹴り、肘打ちと身軽な身体を活かして、怒濤の連打を放つ。だが――、

 

「軽いぞ!」

 

 アリオッチはそれを躱し、捌き、受け止める。巨体にそぐわない体捌きにリンの攻撃が当たらない。

 

「雷神掌!!」

 

 リンの拳がアリオッチに当たる。手応えを感じるリンだったが、彼女の腕に巨大な手が掴む。

 

「いい拳打だが、まだ軽いな」

 

 アリオッチの強靭な肉体はリンの一撃を受け止めて見せたのだ。身動きが取れないリンに拳を振るう。

 

「クロックアップ!」

「フォルテ!」

 

 すると、リンはアリオッチの腕を上に弾いた。リンはそのまま足を前に踏む。

 

「タァアアア!!」

 

 リンは見開くアリオッチの目に目掛けて正拳を放つ。強化された一撃にアリオッチは怯む。

 

「今よ!」

 

 拘束が取れたリンはアリオッチから離れ、入れ替わりにエオリアとスコットが左右を挟む。エオリアのメスとスコットの銃弾が同時に放たれた。

 

「舐めるなぁああああ!!」

 

 アリオッチは頭を守りながら攻撃を受ける。すると、放り投げられた斧槍が勝手に動き出してアリオッチの手に収まる。

 

「オォォォリャァアアアア!!」

 

 そして、身体を回転させて、突風を生み出した。強烈な風圧に二人は吹き飛ばされてしまう。

 

「ふぅ……、ちっとは危な……」

 

 目を開くアリオッチ。だが、その視線の先には銀色に輝くメスが迫っていた。

 

「おぉ!」

 

 首を捻って避ける。だが、咄嗟のことにバランスを崩し、片膝を着いてしまう。

 

「獲った!」

 

 エオリアからもらったメスを投げたリンが高く跳ぶ。落下するスピードを乗せて跳び蹴りを放つ。

 だが、アリオッチは斧槍を逆手に持ち、リンに投げつける。投擲された斧槍はリンに直撃し、彼女を弾き飛ばす。

 

「がぁ!」

 

 そして、吹き飛ばされたリンに急接近して、彼女の首元を掴んだ。

 

「お前らの意地とやら、しかと見届けたぜ」

 

 アリオッチはリンを持ち上げて、じっと彼女を見据える。その目には自分に挑んできた戦士に対する純粋な敬意と称賛が籠っていた。

 

「だが、これで終わりだ」

「っ……、まだ……」

「ん?」

 

 リンはアリオッチの前に腕を持ち上げる。

 

「まだ、終わってない!」

 

 その手にあったのはピンが外れた缶。スタングレネードだった。

 

 

 ――バンッ!!

 

 

「ぐぅおおおおお!!」

 

 強烈な光と音を食らったアリオッチ。拘束が解かれたリンは即座にその場から離れる。

 

「アースランス!」

「シャドウスピア!」

 

 そこにエオリアとスコットが同時にアーツを放つ。放たれた槍はアリオッチの身体を貫き、地に縫い付ける。

 

「っ! 身体が!」

 

 スタングレネードを受け、アーツで身動きが取れないアリオッチ。いかに百戦錬磨の武人でも、しばらくは動けない。

 

「捕まえた」

 

 そこにエドがアリオッチの身体に触る。アリオッチはうっすらと目を開き、エドの姿を捉える。

 

「なにっ!」

 

 すると、景色が突然変わった。先程までいた地面が遠くに離れていた。

 

「テメェ、まさか瞬間移動をっ!」

「どんな達人だろうが、空中じゃ身動きが取れねぇだろう!」

 

 アリオッチと共に空中に移動したエドはアリオッチを踏み台に跳躍する。

 

「三の太刀、改!」

 

 剣を構えるエド。斧槍を手放しているアリオッチは両腕をクロスする。

 

「天咆!!」

 

 白い斬撃がアリオッチを飲み込む。それを合図に三人が動く。

 

「我が深淵にて震えし赫灼の刻印よ。暗き魔を喰らう炎の顎となれ!」

 

 赤き《聖痕》を解き放ち、法剣に炎を灯すセリス。大きく腕を動かし、法剣を振りかぶった。

 

「フィアンマ・ミズガルド!」

 

 炎の大蛇が背後からアリオッチを飲み込む。前方からの斬撃と後方からの炎に挟み撃ちされながらも耐えきるアリオッチ。

 

「受けてみよ……、滅びの太刀!」

 

 そこにアリオスが飛び込んだ。静かに呼吸を整えて剣を構える。鷹のように目を鋭くし、アリオッチを捉える。

 エドと同じ八葉一刀流。弐の型を修めたアリオスが持つ終の太刀。

 

「絶技、黒皇剣!!」

 

 刹那の一撃がアリオッチを斬り裂き、彼の守りを崩した。

 

「これで決めます!」

 

 白い翼を広げて、天高く飛ぶオランピア。剣を両手に持ち、アリオッチに目掛けて急降下する。

 

 ――八葉一刀流 漆の舞

 

「無想天舞!」

 

 目にも止まらない斬撃の応酬にアリオッチは身体を引き裂かれ、そのまま地面に叩きつけられるのであった。




 界の軌跡のWebCMとうとう出ましたね!
 リィン、アルティナ、ルーファス、ユン老師、そしてケビン!
 ようやく出てきましたね、ケビン。
 しかも、ヨルダを操作できるみたいですし、
 次回作も期待度Maxです!
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