英雄伝説外伝 金の軌跡   作:魔ギア

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第百十六話 《魔眼》対《魔眼》

「フッ!」

 

 一歩踏み出すと同時にレーヴェの身体がブレる。もう一歩、前に踏み出すと一人だった《剣帝》が突如、三人に分裂した。

 

「分け身か……」

「ハァッ!!」

 

 一人目の斬撃を受け止めるシモン。その隙に残りのレーヴェたちが彼の死角から刃を振るう。

 

「その程度で私を仕留められると思うな」

 

 一人目を押し返したシモンは振り返って死角から来るレーヴェたちの攻撃を弾く。その後もレーヴェは阿吽の呼吸で放つ連携でシモンに斬りかかるが、まるで動きがわかっているかのように、レーヴェの斬撃を全て弾き、いなしていく。

 

「君の動きはリベールの時に見切った。三人に増えようが、結果は変わらん」

「くぅっ!」

 

 三人のレーヴェがシモンの四方を囲って同時に突っ込む。三方向から来る斬撃をシモンは剣一本で受け止めて、弾き返す。

 

「フンッ!」

「ガハッ!」

 

 隙が生まれたレーヴェたちに蹴りや拳を放って後ろへと吹き飛ばす。そのすれ違いに今度はエドが仕掛ける。

 

「紅葉斬り!」

「ハァッ!」

 

 万物全てを斬り裂くエドの斬撃を正面から受け止めるシモン。エドはすぐに後ろに下がり、再びシモンに斬りかかる。

 

「くそっ、やっぱり斬れねぇか!」

 

 何十と剣を交えながらも、刃こぼれをしないシモンの剣にエドは舌打ちする。なぜかわからないが、シモンの剣は斬られることはなく、エドの剣と何回も打ち合っている。

 

「我々の《魔眼》と同じだよ」

「なに?」

「どれだけ強力な力にも欠点というべきものは存在する。そして、君の斬撃と《魔眼》は同じ欠点を持っている」

「同じ欠点だと?」

「そう。君の剣も我々の《魔眼》もこの世全てのものに干渉できる強力な力。だが逆にこの世のものではないものに対しては干渉できない。……例えば、君たち教会の言う『外の理』の産物だ」

 

 外の理。

 

 エドたちが住む世界とは違う、まったく別の世界のことを示すもの。

 

「その剣も『外の理』の産物だっているのか? いったいどうやって……」

「それを知ってどうするのかね? 如何に君の"観の目"が優れたものだとしても、『外の理』を理解することはできない」

「くっ……」

 

 エドの思考を読んだシモンは剣を強く打って、エドを後ろに下がらせる。

 

「だったら、アンタを直接斬るだけだ」

「やれるのかね、君に?」

「やれるさ。俺、いや、俺たちならな!」

 

 エドが前進すると共に後ろから付いてくる影が三つ。

 そのうちの一人、オランピアが天使の翼を広げて、上空から打って出る。

 

「業炎撃!」

「シッ!」

 

 シモンはオランピアの一撃を難なく弾く。その隙にセリスが法剣を伸ばして、シモンの剣に絡ませる。

 

「先生!」

「応っ!」

 

 法剣を引っ張り、シモンの身体を崩すセリス。彼女が作った隙をついてグンターが懐に飛び込む。

 

「フンッ!」

「ハッ!」

 

 両者の拳がぶつかり合う。咄嗟に剣を手放したシモンはグンターと同じ《崑崙流》で迎え撃つ。

 正拳。回し蹴り。裏拳。

 両者が技を打ち込む中、エドとレーヴェが左右から迫る。

 

 その時、シモンの《魔眼》がわずかに光る。

 

「っ! エド!」

「わかってる!」

 

 《魔眼》の力を発動したとわかり、エドはさらに加速する。能力発動を無効化すれば、シモンに隙が生まれる。絶好の機会を掴もうとエドは刃を振るう。

 

 バコッ!

 

 踏み込んだ瞬間、エドの足元が陥没する。すると、そこを中心に地面がひび割れる。

 

「エドさん!」

 

 ひび割れて、落とし穴に落ちそうになるところをオランピアが咄嗟に彼の腕を掴んだ。

 

「もらった!」

 

 一方、レーヴェは自身の間合いまで詰め寄り、ガラ空きになっているシモンの背中に刃を振り下ろした。

 

 ボコッ!

 

「ガッ!」

 

 レーヴェが上に吹き飛ばされる。地面から土石が盛り上がり、レーヴェの腹へと直撃した。

 

「なにっ!」

「隙を見せましたね」

 

 驚くグンターを弾いて、そのまま連続の突きを放つ。防御が遅れたグンターは、シモンの攻撃を全て食らい、その巨体を吹き飛ばされる。

 

「邪魔だ」

 

 シモンはまたもや《魔眼》を光らせて、剣を手に取る。剣を思いっきり引っ張った次の瞬間、剣を絡めていたセリスの法剣が粉々に砕け散る。

 

「なんだとっ!」

 

 武器が壊されたことに目を見開くセリス。そこにシモンが接近する。

 

「まずは一人」

「させるかっ!」

 

 セリスに向けられた刃をエドが受け止める。止められたシモンは後ろに下がろうとするが、その前にエドが彼の腕を掴む。

 

「オランピア!」

「はい!」

 

 拘束したシモンにオランピアが急降下。切っ先をシモンに向けて、さらに加速する。

 

 ――シュンッ!

 

「えっ!」

「っ!」

 

 オランピアの剣は地面に突き刺さる。エドに捕まっていたシモンが突然、姿を消した。

 

「瞬間移動か!」

 

 エドはその現象に目を見張る。周囲に視線を配ってシモンを探すエド。すると彼の後ろにシモンが音もなく現れた。

 

「後ろっ!」

「遅い」

 

 セリスが声を掛ける前にシモンの剣がエドに襲いかかる。

 

 ――シュンッ!

 

 すると、今度はエドの姿が消えた。それに目を開くシモンだったが、すぐさま《魔眼》の力を使う。

 

「裁きの光よ!」

「ガッ!」

 

 エドが現れる位置を未来改変で書き換え、そこに極光の光を放つ。現れたエドは防御が間に合わず、光に呑み込まれた。

 

「炎龍!」

「天の守りよ!」

 

 だが、瞬間移動で回避したエドが頭上から奇襲。シモンはすぐに察知して、自身の前に光の膜を張り出す。

 

「怒りの鉄槌よ!」

 

 膜で攻撃を止められたエドにシモンが剣を振り下ろす。光が収束された剣はエドに触れた瞬間、爆発した。

 

「くっ!」

 

 爆発直前に膜を蹴って後退したエド。直撃は免れたが、あまりの威力に焼かれるような痛みが全身を走る。

 

「エド!」

 

 そこにセリスが駆け寄り、治療を行う。シモンはセリスを止めようと仕掛けるが、

 

「うぉおおおおお!!」

 

 上からグンターが地面を叩きつける。地面はシモンに目掛けて亀裂が走り、崩壊を始める。だが、シモンは避けた後、《魔眼》で飛び散る石礫を避けながら、エドの下へと向かう。

 

「させんっ!」

 

 そこにレーヴェが立ちはだかる。二つの黄金の剣が甲高い音を鳴らして撃ち合い続ける。拮抗する応酬の中、レーヴェは後ろに下がり、手を前に突き出して突風を放つ。

 

「――斬っ!」

 

 迫りくる突風を上から両断するシモン。その隙にエドたちはシモンから距離を取った。

 

「エド! 無事か!」

「問題ねぇ。まだ、やれる」

「じっとしてろ! 今、回復しているんだ」

「エドさん!」

 

 エドの下にオランピア、そしてレーヴェも合流する。

 

「お前らも大丈夫そうだな」

「はい、なんとか」

「それよりも、エド。奴が仕掛けたさっきのあれは……」

「あぁ、わかっている」

 

 エドとレーヴェが引っかかったトラップ。自分たちの行動を完璧に熟知しなければ、あんな場所に設置できるわけがない。

 

「いったい、いつあんなトラップを仕掛けた?」

「そうだね。一年前くらいに設置したよ」

「一年前って……、過去改変か」

「未来改変よりも手間が少ないのでね、君の攻撃よりも速くできるんだよ」

 

 微笑するシモンにエドは冷や汗をかく。シモンが過去改変を駆使すれば、トラップを好きな位置に、好きな種類のものを設置することができる。地の利は完全にシモンの方へと傾いたのだ。

 

「さて、今度はこちらから行こう」

「っ! セリスとオランピアは援護! 俺とじっちゃん、レーヴェの三人で迎え撃つ!」

 

 達人をも越える武芸者に武器のないセリスと、まだその域に至っていないオランピアでは相手にならない。達人クラスであるエドたち三人が前に出る。

 

「たしか、こういうふうにやるんだったな」

 

 ぼそっと呟いた瞬間、シモンの身体がブレる。すると、シモンが三人に増えた。

 

「分け身!」

「奴も使えたのか!」

 

 レーヴェが使った分け身をシモンも使ったことに驚愕するエドたち。しかし、シモンはエドたちに向かって、首を振る。

 

「残念だが、分け身は先程、覚えた。初めてにしては上手くいったものだ」

「なに!」

「まさか……、レーヴェの分け身をコピーしたのか?!」

 

 戦闘の序盤で見せたレーヴェの分け身。あれを視ただけでシモンは、分け身を完璧に自分のものにしたのだ。

 

「異能の力が《魔眼》の全てではない。副次的に上昇した観察力ならば、こんなことなど造作もない。……もちろん、これも使える」

 

 三人のシモンは同じ動作を取る。剣を水平に構えて、一斉に振り出す。

 

「「「緋空斬!!」」」

 

 放たれた三つの斬撃が一つに混じり、巨大な炎の斬撃となってエドたちに襲いかかる。

 

「紅葉斬り!」

 

 エドが前に立ち、炎を断ち切る。その隙にシモンたち三人は散らばり、エドたちを分断させる。

 

「業炎撃!」

「螺旋撃!」

 

 シモンの一撃をエドは弾き返す。エドは彼に飛び込んで刃を振るう。

 

「八葉一刀流までっ!」

「何度も視てきたからね。剣技を模倣することは私にとっては朝飯前なのだよ!」

 

 シモンの攻撃を受けながら、エドは内心、焦りを隠せない。

 考えてみれば当然だ。シモンは千年もの間、剣の鍛錬を積み重ねてきた男。その技量はもはや、達人クラスを凌駕する域まで至っている。彼の言うとおり、剣技の模倣など造作もないことだろう。

 

「ハァッ!」

「フンッ!」

 

 一方でレーヴェは別の場所でシモンと打ち合っていた。レーヴェは休む間も与えずに剣を打ち続けるが、全て受け止められる。

 

「どうした、《剣帝》。君の実力はその程度かな?」

「舐めるな!」

 

 レーヴェは距離を取り、剣を前に掲げる。すると赤い闘気が炎のように燃え、レーヴェに収束する。

 

「受けてみよ、《剣帝》の一撃を!」

「いいだろう、ならば……」

 

 シモンはレーヴェと同じ構えを取り、黒い闘気を収束させる。

 

「「鬼炎斬!!」」

 

 赤と黒の斬撃が激突する。微かに生じた拮抗。だが、その拮抗はすぐに崩された。

 

「がっ!」

 

 レーヴェが後ろに飛ばされた。シモンの斬撃がレーヴェの一撃を押しのけたのだ。

 

「君と私では積み上げてきた研鑽が違うんだよ」

 

 千年という重みを実感するレーヴェ。だが、彼は再び、立ち上がる。

 

「望むところだ。ならば、この場でその千年の差を埋めつくしてやる!」

 

 レーヴェは果敢にシモンへと斬りかかる。

 

「ハァアアア!!」

「グッ!」

 

 一方でグンターの所は、シモンの圧倒的優勢だった。シモンの連撃にグンターはただただ躱す一方だった。

 

「どうした、師父。避けるだけで精一杯か!」

「……フンッ!」

 

 グンターは振り下ろしてくる剣を受け止め、懐に潜り込む。ガラ空きになっている腹に強烈な肘打ちを放つ。

 

「ぐっ!」

「驕るな、シモン。如何にお主の修練が千年以上だろうと、それが人の技ということに変わりはない。そして、武道とは時を重ねるごとに進化する。剣への対抗手段も当然、組み込まれている」

「さすがは師父。では、ぜひとも見せてもらおう!」

 

 剣の刀身に光を灯すシモン。グンターは後ろに下がるが、光の刀身が彼の身体に届いた。

 

「こういう手もあるのだよ」

 

 シモンは光を操り、刀身の長さを調整する。時には長く、時には短くして、グンターを翻弄する。

 

「セリスさん!」

「わかってる!」

 

 セリスは《聖痕》の力を送り、エドたちの力を底上げする。だが、元々の実力差が離れていたためか、あまり効果がみられない。

 

「光よ!」

 

 オランピアは剣に光を集めて、シモンに向かって放つ。無数に分裂する光はシモンの頭上に降り注ぐが、エドたちを相手しながら、シモンは剣で弾き飛ばす。

 

「このままじゃ……」

「粘ってそのまま打ち続けろ! エドが絶対に何とかしてくれる!」

 

 セリスの目がエドへと向けられる。そこには彼に対する絶対的な信頼が籠もっていた。それを視たオランピアは少し悔しそうにしながらも、エドを信じて、援護を続ける。

 

「ふっ!」

 

 エドはシモンの攻撃を捌き続ける。容赦のない猛襲にエドの身体が徐々に傷がつくが、致命傷を負わないように上手く対応していた。

 

(……おかしい)

 

 シモンはエドと何度も打ち合っている内であることに気づく。

 

(攻撃が徐々に当たらなくなってきている)

 

 最初はエドが防御しようとも、その前に刃が届いていたりするなど、対処ができていなかった。だが、打ち合えば打ち合うほど、その回数も少しずつ減ってきていた。

 

「はぁっ!」

 

 エドの刃がシモンの頬に届いた。防ぐだけだったエドが反撃に転じるようになった。

 

(いったいなにが……)

 

 シモンはエドの動きを注意深く観察する。自分と同じく《魔眼》を開いた彼の目は、自分と同じように己の動きを観察していた。

 

「……まさか!」

 

 シモンはエドの動きであることに気づく。八葉一刀流としての動きは変わらないが、細かいところで少しずつ変化している。

 

 

 自分の似たような動きに。

 

 

「私の動きを模倣しているのか!?」

 

 千年間、積み上げてきたシモンの動きをエドは"観の目"と《魔眼》で掛け合わせた観察力で自分のものにしつつあった。格上の剣客の戦い方を視て、分析し、自分の糧とする。飛躍的な技術の上昇は、まさにそれが原因だ。

 

「だが、それだけでは……」

 

 いかにエドに剣の才が優れていたとしても、千年という単位は大きい。それをこんな短時間でものにするのは不可能に近い。そう思っていたシモンはエドの体内を回り続ける紅い力に気づく。

 

「エド君、君はっ!」

「一錠だけだが、あいつからくすねてきたんだよ!」

 

 エドはギースが使用していた薬を一錠、盗っていたのだ。その薬の正体に気づいていたエドはもしものためと思い、自分の懐にしまっていたのだ。

 

「久しぶりに使ったが、あの時よりも性能が上がってるな! 頭が嫌に冴えきっているぜ!」

「まったく、無茶をする!」

 

 薬の恐ろしさを身をもって知っているはずのエドが自分の意思で再び、それを飲んだ。彼の怖じけない精神にシモンは脱帽していた。

 

「……おもしろい!」

 

 シモンはエドを弾き、距離を取る。すると、レーヴェたちを相手にしていたシモンたちも下がり、三人だったシモンが一人に戻った。

 

「分け身を解いた?」

「こっちの方が全力を出せるのでな」

 

 シモンは剣に灯す光を強くする。同時に彼に溢れる闘気がさらに膨れ上がった。

 

「行くぞっ!」

 

 地面を蹴ったことで、シモンがいた場所が吹き飛ぶ。デュバリィよりも上回る超神速でエドに飛び込んだ。

 

「ハァアアアア!!」

 

 だが、《魔眼》の出力を上げていたエドの眼は彼の姿をしっかりと捉えていた。タイミングを合わせて剣を振るい、両者の剣が激しくぶつかり合う。

 

「エドを援護するぞ!」

 

 グンターに続けてレーヴェも前に出る。セリスはエドに力を送り、オランピアは剣に光を集める。

 

「ハァアアアアアアア!!」

「ウォオオオオオオオ!!」

 

 エドとシモンの剣が何度もぶつかり火花が飛び散る。時には逸らし、受け止め、反撃する。二人の身体に切り傷が少しずつ増えていくが、両者は一歩も後ろに退かずに攻め続けた。

 

「処断の極光よ!」

 

 シモンは上段に剣を構えて、光を剣に収束する。剣はけたたましい音を唸らせ、周囲の空間を震え上がらせていた。

 

「天罰!!」

 

 眩い光を放つ剣はエドの頭上目掛けて、上段から一気に振り下ろされる。

 

「螺旋……」

 

 エドは回転してシモンの一撃を躱す。剣はエドの背を掠め、燃えるような熱さがエドを襲う。エドは唇を強く噛みながら、シモンの懐へと足を踏み込んだ。

 

「撃!!」

 

 振り下ろされたシモンの剣にエドは勢いよく叩きつける。突然の衝撃にシモンは剣を持った腕ごと上に持ち上げられた。

 

「我が深淵にて煌めく金色の刻印よ……」

 

 無防備となったシモンの懐に、今度はグンターが入り込む。背中に金色の《聖痕》を宿し、その力を両腕に集める。

 

「その猛き咆哮を持って、我が拳に無双の力を与えよ!」

 

 利き足を勢いよく地面に叩きつける。すると、地面が陥没し、バランスを保っていたシモンの身体が前屈みに崩れる。

 

「奥義、獅子戦吼!!」

 

 両拳がシモンの身体を貫く。シモンの身体が地面から離れて、空へと持ち上げられる。

 

「セリスさん!」

「あぁ、行くぜ!」

 

 すると上空からセリスを持ち上げたオランピアが先回りする。セリスは《聖痕》を解き放ち、両手を前に出して、シモンに狙いを定める。

 

「我が深淵にて震えし嚇灼の刻印よ。天上の光と交えて、悪鬼を打ち払う炎と化せ!」

 

 セリスの手から強烈な紅い炎が集まる。そこにオランピアが集めた光が吸い込まれ、白い炎と変わる。

 

「「いっけぇええええ!!」」

 

 放たれた白炎がシモンを飲み込む。炎は地面を貫き、噴火のごとく火柱が飛び出す。

 

「燃えさかる業火であろうと、砕き散らせるのみ!」

 

 そこに冷気が広がる。すると、シモンを呑み込んだ白炎が一瞬で凍り、シモンを閉じ込めた。

 

「絶技・冥王剣!」

 

 凍てついた地にレーヴェが剣を突き刺す。すると、剣から放たれた衝撃に凍った炎が砕かれた。

 

「エド!」

「いまです!」

「いっけぇええええ!!」

 

 氷が砕かれ、意識が朦朧とするシモンにエドが飛び込む。かろうじて残っていた意識がエドの姿を捉えて、剣を盾にして前に構える。

 

「これで決める!」

 

 八葉一刀流 肆の型

 

「終の太刀・改!」

「天の守りよ!」

 

 シモンを守る光の膜にエドは剣を振り下ろす。エドの剣は光の膜を、そしてシモンを通り過ぎて、地面に着いた。

 

 

 ――ピキッ

 

 

 亀裂の音が走った。だがそれはシモンからでも、剣から聞こえた音でもない。

 シモンの背後に立つ空間に突如ヒビが現れるヒビは徐々に亀裂を広げていき、シモンと剣を巻き込んで斬り裂かれた。

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