「はぁ! じゃあ、エドはその魔王がいるところに飛び込んでいったっていうのか?!」
「はい。たぶん、そうだと思います」
エドがサターンと死闘を繰り広げていたその時、旧教団ロッジに取り残されたオランピアたちは、エドの行方を探そうとしていた。セリスはオランピアに詰め寄り、どういうことなのかと話を急かす。
「あの笑い声に、亀裂から感じたあの寒気。間違いありません。あれは村の大穴で出会ったあの悪魔のものです」
「先程の亀裂は魔王が封印されていた空間に繋がっていたということか。シモンめ、この場所を選んだのはそういう理由だったのか」
もしも、自分が敗れた時のことを考えて、すぐに魔王と接触できるように、この場所を選んだのだとグンターは遅まきながら気づいた。
「と、とにかく、一刻も早く、エドの所へ!」
「それは難しい。あの村で例の大穴を調べたが、空間の歪みは一切、感じ取れなかった。おそらく、あの穴からエドのところに行くのは不可能だろう」
「仮に行ったところで、その時、エドが無事である保証もないしな」
「なっ、テメェ!」
レーヴェの冷たい物言いにセリスが彼の胸ぐらを掴む。しかし、レーヴェは態度を変えないまま、セリスを見下ろす。
「落ち着け。空間が閉じかけた今なら、こちらから何かしらのアクションをとれば、再び開く可能性がある。今、俺たちのすべきことは、こんなことで時間を無駄にすることか?」
「セリス」
「……チッ!」
レーヴェを押して、胸ぐらから手を引くセリス。レーヴェは乱れた服装を整えて、オランピアの方に目を向ける。
「オランピア・エルピス。お前は奴らのいる空間に行ったことがあるようだな。今この状況をどうにかできるのは、おそらくお前しかいない」
「たしかに。オランピアよ、あの空間で起きたことを説明してくれぬか」
「えっと……」
オランピアは顔を俯せて思考を巡らす。こうしている間もエドは危機に瀕している。そして、そんな彼を助けることができるのは、おそらく自分だけだ。オランピアはじっくり、だけど素早く記憶の中を駆け回り、手がかりを探していく。
「あの場所は何もない白い空間でした。木や海、空も何もない真っ白な世界です。そこにいたのは、エドさんと私。そして、あの魔王だけでした。そこにイシュタンティが空間を突き破って助けてくれました」
「おそらく、その時はこの世界と空間が繋がっていたかもしれないな。閉じかけていた入り口を無理矢理こじ開けて、中に入ったのかもしれん」
「じゃあ、天使の力を使えば、いけるんじゃねぇか!」
「いや、あの時とは違って、繋がった入り口は完全に閉ざされている。こじ開けたとしても、エドたちのいる空間に繋がっているとは限らない」
「閉じた入り口をもう一度、開けるか。もしくはエドと我らを繋ぐ何かがあれば、いけるかもしれんが……」
「あ~~、クソッ! おい、他にねぇのか?!」
「えっと、それからエドさんと一緒に魔王と戦って、その時に結社の人が割り込んで来て、私たちを逃がしてくれて……」
「待て。結社の人がいただと? そこに俺たちの身内がいたのか?」
「は、はい。私が大穴に入る前に、その人はシモンさんと戦っていたみたいで、その際に大穴に落とされたみたいなんです」
「どんな奴だった?」
「えっと、炎を操っていて、手には赤黒い剣を持っていました。その剣で空間を無理矢理こじ開けて、私たちの所に来たんです」
「……マクバーンか」
レーヴェは顎に手を付けて、深く考え込む。その様子をオランピアたちは静かに見守る。そして、
「もしかしたら、何とかなるかもしれんぞ」
考えがまとまったレーヴェは自身の剣を見つめながら、この状況を打破する方法を三人に伝えた。
~~~~~
一方、サターンと壮絶な戦いを始めたエドは、
「ほらほらほら!!」
サターンは手から黒い砲弾を作りだし、次々とエドへと放り投げる。向かってくる砲弾に対して、エドは地面を蹴って躱し続ける。
「どうしたのかな?! 逃げてばっかじゃ、勝てないよ!」
「チッ!」
挑発するサターンに舌打ちするエドだが、サターンに向かう様子はない。
「それとも、その折れた剣じゃ、倒せないって諦めたのかな!」
サターンはエドに近づき、腕を大きく振るう。エドは折れた剣で腕を受け止めるが、押し寄せてくる力に吹き飛ばされてしまう。
「ぐっ!」
「ハハハハハハ!! さっきからやられっぱなしじゃないか! 最初の威勢はどうしたのかな?!」
何とか受け身をとって、すぐに立ち上がるエド。だが、その表情は険しく、身体もすでにボロボロだった。
「つ、強すぎる……」
何度も攻めてはいるが、攻撃がまるで通じていない。斬った手応えがまるでなく、何もないところに剣を振り回している感じだった。そして、サターンの攻撃は単純に強くて、速い。《魔眼》を使って、何とか致命傷は避けているが、一発くらうだけで、意識が遠のきそうだった。
「これが、女神でさえ倒せなかった魔王の実力」
千年前に世界を蹂躙して、女神の力ですら滅ぼすことができなかった最悪の魔王。あまりの危険性から存在を抹消された七十八柱目の悪魔。この存在が世に放たれば、今度こそ世界は滅ぶ。
「それだけは、絶対にさせない!」
エドの闘志が再び燃える。ここで負ければ、自分の大切なものが奴によって壊される。それだけはさせない。させてなるものか。
エドは悲鳴を上げている身体に鞭を打ち、剣を構える。その姿にサターンはうんざりした顔で見ていた。
「しつこいな~~。まるで昔のこいつみたいだ。これだけ実力差がかけ離れているっていうのに、本気で私を倒そうなんて考えてやがる。……まったく」
サターンは一度、言葉を区切る。そして、《魔眼》を光らせた鋭い眼光をエドに見せる。
「調子ニ乗るなヨ、人ゴトキガ……」
重い声色と共にサターンから黒いオーラが放出される。それは最初の時よりも遙かに大きく、そして、重い。エドは両腕を前に出して、正面からの風圧に耐える。
「ぐっ……、まだ、これだけの力を……っ!」
サターンから視界が外れないように両腕の隙間からサターンの姿を見つめるエド。だが、エドの視界からサターンの姿が突如として消えた。
「ヒャァアア!!」
エドの懐にいつの間にか移動していたサターンの鋭い拳がエドを突き刺す。直撃したエドは身体をくの字にして後ろに大きく吹き飛んだ。
「がっ、あぁあああ!」
腹を抑えて、蹲るエド。拳が当たった際、腹の中から妙な音が響いた。
(あばらをやられたかっ!)
おそらく一本、二本程度ではない。下手したら、半分は持っていかれた。腹から伝わる激痛に耐えながらも、エドは立ち上がろうとする。
「がぁ!」
だが、再びエドは地面に倒れる。立ち上がろうと支えていた足の骨が突如として折れた。無様に倒れ込むエドの姿にサターンは嘲笑っていた。
「ハハハ!! どうしたのかな? 足がぽっくり逝っちゃったのかな?!」
「て、テメェ……、また、未来改変を」
サターンの未来改変で足をやられてしまったエド。サターンを強く睨むエドだったが、その内心はひどく焦っていた。
(やっぱり、予兆が視えない。これじゃあ、未来改変を止められない!)
武器を折られ、身体中の骨も折られて満身創痍。逆に相手は無傷で未来改変という反則技を際限なく使える。状況はすでに詰んでいた。
「さて、もう飽きちゃったし。そろそろ終わりにしようか」
サターンは手から黒い球を生成する。その大きさは三アージュを軽く越えていた。
「安心しなよ。君を殺したら、次は君の大事な人を殺しに行くから。すぐに会えるから、先に逝っちゃいなよ」
「くっ!」
最後の抵抗とばかりに折れた剣を投げつけるエド。剣はサターンの身体に当たるが、当然、傷などなかった。
「ハハハ!! 最後の最後まで足掻くね。……でも、それもこれで終わりだ!」
サターンは身体を振りかぶって、黒い球をエドに目掛けて放つ。
「……がっ!」
……はずだった。
「な、なん、だ?!」
サターンの身体が突如として止まった。サターン自身、本気で驚いており、彼の意思でないことは目に見えてわかった。
「いったい、なにが?! それに、なんだ? この、痛み、は、っ!!」
膝から崩れ落ちるサターンは身体を揺らし続けて、痛みに耐える。だが、我慢ができなかったのか、やがて、仰向けになってじたばたし出す。
「ア゛ァ゛アアアアアアアア!! い、痛い、いたい、イタイ~~~~~!!」
「こいつはいったい?」
いきなり苦しみ始めるサターンにエドはひどく困惑していた。そうしている間にもサターンは地面を這いずり回る。そして――、
「アァアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
サターンに乗っ取られたシモンの身体から黒い影が飛び出してきた。影は空中で激しく動き回る中、地面に寝転がっていたシモンの身体がゆっくりと起き上がる。
「はぁ……、はぁ……、どうやら、上手くいったみたいだな」
「ま、まさか、シモン先生!」
サターンではなく、シモンであることに気づいたエドは思わず声を上げる。シモンはエドに振り向き、口角を上げてうなずいた。
「よくやったね、エド君。君の頑張りがこの結果を実らせたのだ」
「いったい、何がどうなっているんですか?」
「シモン……、キッサマァァァァァァ!!」
黒い影は大きく揺れながら、エドたちに近づく。影の中から《魔眼》が出てきて、その目は大きく開いていた。
「いったい、いったいなにをしたのだ、キサマ?!」
「なに、私の中に溜め込んでいたものを君に移しただけだよ」
「溜め込んでいたもの?」
「あぁ。全てはこの時の為。魔王よ、お前を完全に滅ぼすためにな!!」
シモンは身体を持ち上げて、サターンを睨みつける。その目には溢れんばかりの闘志に燃えていた。
「千年前でのあの戦いの時、私は貴様に為す術もなく負けた。女神の加護を持ってしても、私は君を滅ぼすことができなった。だから、私はある一つの大きな賭けをしたのだ」
「賭け?」
「そうだ。私ではない。私よりも遙か先に生きる者たちに託すこと選んだんだ。今は無理でも、何百、何千年の未来の者なら貴様を打ち倒すことができると信じてな!」
「ふざけるなっ! キサマら人ごときが私を滅ぼせると思うなっ!」
「あぁ。だから、貴様を封印した後、君を完全に打ち倒すために策を用意することにした。幸いにも、貴様のおかげで時間はたっぷりとあったからな。そして、私はある一つの方法へと思いついた」
シモンは身体を引きずり、サターンが投げ捨てた金の剣を手に取る。
「この剣は昔、女神から授かった剣。中には女神の力が内包されており、悪しき者を打ち払う力がある。貴様がどれだけの力があろうと、貴様が悪魔であることには変わりはない。ならば、女神の力が貴様に通じないどおりはない!」
「バカがっ! 実際には効かなかっただろう! あの時、キサマは私に傷一つつけられなかった!」
「あぁ。一回や二回程度で斬ったところでは通じないということは、あの時の戦いでわかっていた。ならば、それ以上の力を貴様に与えればいいのだ」
「そんなもんどうやって……、ま、まさか!」
「あぁ、私を器にしたのが仇となったな! 不死の身体を手に入れた私はどれだけの致命傷をもらっても死なない。その特性を利用して、私はこの剣を自分の身体に突き刺したのだ!」
「だとしても、何でこんなに痛いんだよ! 蓄えているからってこんなにもっ……」
「魔王よ。貴様は人間の力を、想いの力を見くびった。私がこの自傷行為をどれだけやったと思っている」
「どれだけって……」
「千年だ。貴様を封印してから、今日に至るまで、私はこの行為をずっと繰り返してきた。千年も溜め込んだ女神の力ならば、如何に貴様といえど、無傷ではすまされない!」
シモンの独白を横から聞いていたエドはもはや開いた口が塞がらなかった。シモンの言っていたことが事実なら、彼は魔王を討ち滅ぼすために、千年という長い時間を掛けて用意していたのだ。
「正気か、キサマ! キサマの身体は私の器となったことで悪魔と同じ性質になっているのだぞ! そんな身体でそんなことを……」
「あぁ。想像を絶する痛みだった。本当ならやめて楽になりたいと何度も思ったくらいだ。だが、私には為さなければならない理由があるのだ。……ぐっ」
シモンは顔をしかめて、その場で膝を着く。気づいたら彼の顔は青白く、汗が滝のように流れていた。
「先生!」
「はぁ……、はぁ……。こ、この行為をすれば、私の身体にも影響を及ぼすのはわかっていた。そんな私に奴を滅ぼすことはできない。だから、エド君、私は君を待っていたのだ」
「俺を?」
「あぁ。遙か遠い未来。私に変わって、魔王を打ち倒す可能性を持った君を。この眼で君を視た時から、私はずっと待ち続けた。そして、私の大望が今、叶わんとしている」
シモンは折れた金の剣をエドに差し出す。エドは少し呆然とするが、おそるおそると金の剣を取った。
「その剣は女神の力が籠もった神造武具。その者の想いによって、その武器はどんなものにも変化する。エド君、願いたまえ。君が想像する武器。彼の魔王を打ち倒せると思える最強の武器を!」
シモンの気圧に押され、エドは目を瞑り、イメージする。
自身が持つ最強と呼べる武器。そんなものは一つしかありえない。
「……こいつは」
気づいていたら、金の剣は別のものへと形を変えていた。柄も鍔も刀身も全て黄金に輝いた一本の太刀がエドの手の中に収まる。
「それに、身体が……」
満身創痍だったはずの身体が妙に軽い。身体を動き回しても、痛みを感じない。
「まさか、治っているのか?」
女神の力によって完全回復を果たしたエド。人知を超えた力にもはや言葉が出ない。
「だったらどうしたぁああああ!! どれだけ私の力を削ろうと地力の差が埋まることはない! そいつを消せば、キサマの大望とやらもそこで潰える!」
「私の策がこれだけだと誰が言った」
「な、なに?」
「正直、彼の存在は私も予想外だった。だが、それは貴様にとっても予想外な存在であるということ。ならば、使わない手はない」
「何を言って……」
サターンがシモンに食ってかかろうとしたその時、
――ここに逃げてやがったのか
ズトンッ、と空間から何かが突き出す。ひび割れた空間から現れたのは赤黒い剣。剣に灯った黒い炎は苛烈さを増し、空間のひびをさらに広げる。
「俺との勝負を後回しなんて、いい度胸してんじゃねぇか?」
ひびの向こうから現れたのは、禍々しい炎を全身に纏った結社最強の執行者、《火焔魔人》マクバーンだった。
「ど、どうやってこの空間に?!」
「テメェが姿を眩ましてから、適当に空間をぶち破って何回も移動してきたんだよ。ったく、余計な手間をかけさせやがって」
少しイラッとした顔つきで首を回すマクバーン。そして、エドたちの存在にようやく気づいたのか、少し目を丸くしながら、こちらを見てくる。
「あぁ? 何でテメェらがここにいやがるんだ?」
「ちょっといろいろとあったんだよ。そんなことより、手を貸してくれますか?」
「おいおい。人の獲物を横取りしようってんのか?」
「俺も奴を倒す理由があるんですよ。安心してくれ。アンタの邪魔をするつもりはない」
「はっ、好きにしろ。それで、そっちの倒れているのはどうすんだ?」
少し嫌そうな顔をするが、エドの参戦を許したマクバーン。マクバーンはエドからシモンへと視線を移す。シモンは待っていたと言わんばかりに、口角を上げていた。
「これで条件はそろった」
「条件?」
「あぁ。これでダメ押しの一手を引ける」
「それってどういう……」
エドがシモンに問い詰めようとした次の瞬間、
――エドさん!
空間に新たなひびが生まれる。黄金の光が空間を突き抜けて、エドの前に降り立った。
「エドさん!」
「オ、オランピア!」
光の正体は天使の翼を広げたオランピア。エドの姿に涙を流し、彼に抱きついた。
「ど、どうやってここに?!」
「レーヴェさんが手伝ってくれたんです。彼の剣とマクバーンさんが持つ剣を使って」
レーヴェが持つ魔剣《ケルンバイター》とマクバーンが持つ魔剣《アングバール》は身喰らう蛇の盟主から授かった、外の理の剣。二つは対となる存在となっており、その性質を逆に利用して、グンターとセリスの《聖痕》の力をブーストにして、エドとオランピアがいる空間を再び繋げたのだ。
「これで全てのピースが揃った」
「え、シモンさん?」
「オランピア君。突然で悪いが、君も協力してくれるかな」
「協力って……」
「オランピア、前を見ろ」
「前?」
オランピアは不思議そうに前を向くが、サターンの存在に気づき、すぐさま構える。
「ふっっざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!! 私が、私がキサマらのような人ごときに滅ぼされるかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
サターンは自身の影を大きく広げる。影はさらに拡大していき、徐々に形を変えていく。
枝のように細い腕に、鎌のような鋭い爪。
赤黒い肉体に中心に光る黄金の水晶。
ゆらゆらと揺れる黒い長髪にその間から見える黄金の眼。
悪魔を越える悪魔。まさしく、魔王と呼ぶのにふさわしい姿へと変貌を遂げた。
「我こそは最強にして、最悪の魔王。この世全てを蹂躙し、全てのものに恐怖を刻み込む、闇の化身。我は不滅にして、不死! 我を打ち倒せるものなどどこにもいない!」
「なら、その不滅の伝説をここで摘み取らせてもらうぜ!」
「はっ! いいじゃねえか! とことん楽しませてもらうぜ!!」
エドは黄金の太刀をサターンに向けて吼える。一方でマクバーンも気分が高揚したのか、炎をさらに燃やして魔剣を前にかざす。
「オランピア」
「は、はい」
「お前は後ろに下がってくれ」
「え、でも」
「お前にはお前にしかできないことがある。前に出るのは俺たちに任せろ」
「あ……、はい!」
理解したのか、オランピアは後ろに下がり、イシュタンティと分離する。地に足を着いて、小太刀を懐にしまう。代わりに取り出したのは、棒に複数の鈴を取り付けた神楽鈴。
「イシュタンティ。皆を守って」
イシュタンティはゆっくりと首を縦に振る。それを見たオランピアは前を向き、神楽鈴を持った手をゆっくりと持ち上げる。
「……いきます」
チャリンッ、と鈴の音が鳴り響く。音は波紋を広げるように遠くまで届く。オランピアはゆっくりと身体を動かす。音を立てないように静かに、そして、滑らかに舞い続ける。
「な、なんだ?!」
サターンは自身の身体の異変に気づく。
身体が重い。上手く身体を維持できない。力が少しずつ抜けていく。
知らずうちに弱まっていく状況にサターンはひどく動揺する。
「エド君。今の魔王は身体を維持するために力を際限なく放出している。今ならば、奴を確実に滅ぼすことができる! ……頼む、全てを終わらせてくれ」
「……わかった!」
エドは前に踏み出す。彼の《魔眼》は最悪の魔王をじっと見つめる。マクバーンも待ちきれなくなったのか、魔剣を片手に前に進む。
「ククク……、それじゃあ、続きといこうじゃねぇか」
「あぁ。これで決着をつけてやる」
千年にも及んだ人と魔王の決戦。世界の命運をかけた戦いがここに切って落とされた。