文章力は…………
まだかな!
それでは、ご覧ください!
煉獄門からあふれ出て来る魔物は何十体の群れとなってエド達に襲い掛かる。
「はっ!」
エドは近づいてくる魔物を次々と切り裂く。
魔物は体を保てなくなったのか、黒い残滓を残して消えていった。
エドの攻撃は止まることなく、魔物に近づいては斬るを繰り返し、その数を少しずつ減らしていく。
「せいっ! やっ!」
リンは自身が修めている拳法、泰斗流を駆使して、迫ってくる魔物を正拳で貫き、回し蹴りで薙ぎ払う。
「ふっ!」
リンに吹き飛ばされた魔物に向かって、エオリアはメスを放った。
放たれたメスは魔物の頭を突き刺し、魔物は崩れ落ちて消えていった。
三人の猛攻は魔物の数を確実に減らしていったが、煉獄門から魔物がどんどん現れ、その数は一向に減らない。
「キリがねぇな!」
エドは忌々し気に煉獄門を睨みつける。
一方、エド達の後ろにいるオランピアはヨルグからもらった戦術オーブメントを取り出し、導力を送る。
「イシュタンティ、お願い!」
リュックから飛び出してきたイシュタンティは近づいてくる魔物達を蹴散らし、オランピアとイリアを守った。
「……ドライブ開始!」
オランピアは自身が元々持っていた、もう一つの戦術オーブメントを手に持ち、アーツを放とうと集中する。
オランピア達に襲い掛かろうとする魔物達は、イシュタンティの攻めに立ちふさがれ、二人に近づくことができずにいた。
「エアロストーム!」
オランピアはアーツを放ち、大竜巻を発生させる。
魔物達は抵抗する間もなく竜巻の中へと飲み込まれ、上空へと投げ飛ばされる。
空に飛ばされた魔物達はそのまま落ちていき、地面に叩きつけられる。
高所から叩きつけられた魔物達は、しばらくその場でうずくまっていたが、何事もなかったのようにゆっくりと起き上がる。
「そんな……効いていない!」
上級アーツが命中したにもかかわらず、ダメージの影響が見られない魔物達を見て、狼狽えるオランピア。
次の手が思いつかず、迫りくる魔物達を見て後ろに下がってしまう。
「三属性だ!」
すると、魔物の群れの中で奮闘していたエドが、オランピアに向かって叫んだ。
「四属性じゃなく、上位三属性のアーツを打て! こいつらにはそっちの方が効く!」
オランピアはエドの言葉に一瞬、理解が追い付けなかったが、それを考える間もなく、すぐさまオーブメントを駆動する。
(今、私が使える三属性のアーツは……)
「シャドウスピア!」
アーツを放ち、一本の血のように染まった真紅の剣が上空に現れた。
剣は一体の魔物に狙いを定め、弓矢の如く突き刺した。
突き刺された魔物は断末魔をあげながら消えていった。
「やった!」
魔物を倒したことに喜ぶオランピア。その様子を見たエドは一つの確信を得た。
(煉獄門が現れたから、もしかしたらと思ったが……、ここら一帯、上位三属性が働いていやがるな)
魔獣は、地・水・火・風の四属性のいずれかが弱点となっており、弱点のアーツを与えることで通常よりも大きなダメージを与えることができる。
だが稀に、霊的な場や何らかの条件で発生する特殊な空間では、時・空・幻の上位三属性の方が効きやすい場合がある。
今回は《古代遺物》の力で特殊な空間が発生し、 煉獄門が現れると同時に上位三属性が働いたのだ。
「きゃっ!」
「?!」
エドは考えにふけこんでいる中、オランピアの悲鳴を聞いて我に返った。
オランピアの方に視線を向けると、大量の魔物がオランピアとイリアを囲っていた。
「しまったっ!」
「オランピアちゃん!」
リンとエオリアはすぐに二人を助けようと向かうが、魔物達に阻まれる。
「秘技……」
エドは、その場で剣を水平に構え、深く腰を落とした。
「裏疾風!!」
次の瞬間、エドの姿が消えた。
すると、魔物が次々と身体を二つに裂かれ、消えていった。
目にも止まらない素早い斬撃が、立ちふさがっている魔物達を蹴散らしていき、エドはオランピアの方へと駆けて行った。
やがて、オランピアの周りにいた魔物が全滅し、姿が見えなかったエドが現れた。
体を大きく捻り、勢い良く剣を振る。
「――斬!!」
エドから放たれた真空の斬撃は、軌道上にいる魔物達を次々と巻き込んで消滅していった。
「無事か?!」
「は、はい!」
エドは二人の安否を確認した。魔物が少なくなった隙にリンとエオリアも合流する。
しかし、状況はあまり良くなかった。
先程の攻撃で魔物の数を多く削ったにもかかわらず、いまだ大量の魔物がうごめいていた。それどころか門から続々と魔物が出てきて、その数を増やしていった。
「おいおい、このままじゃゲームオーバーになっちまうぜえ」
絶体絶命の状態に陥っているエド達を、いつの間にか柱の上に移動していたアリオッチがつまらなさそうな顔を浮かべながら見下ろしていた。
「高みの見物とはいいご身分だなぁ!」
エドはアリオッチの様子を横目で見て、悪態をつく。
「でも、エドさん。このままじゃ……」
「わかってるっ!」
徐々に悪化していく状況を何とかしようとエドは思考を巡らせるが、打開策を見つけることができず、額には汗がにじみ出ていた。
「ねぇ……」
そんな時、今まで沈黙を貫いていたイリアが口を開いた。
「あの《古代遺物》を何とかすれば、この状況をどうにかできるのよね」
《古代遺物》が光った直後、煉獄門が現れたことから、《古代遺物》を無力化すれば門が消えると同時に魔物も消えるのではないかとイリアは推測した。
魔物の群れに視線を向けたまま、エドはその場で静かに頷いた。
それを確認したイリアは笑みをこぼし、砦の上でいまだ光り続けている《古代遺物》に目を向けた。
「それじゃあ、私があれを持ってくるわ」
「ハァッ?!」
突然の宣言にエドは目の前の魔物のことを一瞬忘れて、発言者のイリアの方に振り向いた。
イリアの宣言は、あまりにも無謀で、危険すぎる行為だったからだ。
「だ、だめです!!」
イリアの宣言を聞いたオランピアも驚きを隠せずにいたが、すぐにイリアを止めようと説得する。
「あまりにも危険です! 怪我だけじゃ済まされませんよ!」
「そうよ! 無謀にも程があるわ!」
「遊撃士としても、了承できません!」
「でも、このままじゃ私達全員、魔物達にやられちゃうのよ。どっちみち危険なのは変わらないじゃない」
イリアはオランピア達の説得を軽く受け流しながら、その場で準備運動をし始める。
「私がただ黙って、あなた達の戦いを見ていたと思う? あいつらの動きをずっと観察していたのよ」
準備運動を終えたイリアは、履いていたヒールを脱ぎ、裸足で足場に着く。
「あいつらの動きはすごく単調だし、目で追いきれないほど速くはなかったわ。あいつらの攻撃をかいくぐりながら砦の上まで行くなんて楽勝よ」
イリアは魔物達を恐れている様子などなく、その顔には絶対に成功できるという自信に満ち溢れていた。
「……怖くないのですか? 怪我をするかもしれないのですよ。いいえ、最悪、死んじゃうかもしれないのですよ! どうしてそんな危険なことを……」
「それは私がアーティストだからよ」
イリアはオランピアの言葉を遮り、オランピアに近づいて膝を着く。
「あの中には、村の人達が閉じ込められている。その中には私のファンの人だっているわ。なら、一人のアーティストとして、ファンのために今、自分がやれることを精一杯やるだけよ」
借りるわね、とイリアはオランピアが持っていた戦術オーブメントを借り、魔物達の方へと足を進める。
「大丈夫よ。今の私は無敵と言っても過言じゃないわ」
イリアの顔には先程までのお気楽な表情はなかった。
目は鋭く、口元は不敵な笑みをこぼしていた。
「……どうして?」
オランピアは何がイリアをここまで動かしているのか理解できずにいた。
「言ったでしょ」
イリアはその場でオランピアの方に振り向いた。
「私が今、やるべきことをやるだけよ」
見ていなさい。私の舞台を。
視線から伝わってくる無言の言葉にオランピアは黙ってしまった。
「……本気なんだな」
「えぇ」
エドは最終確認と言わんばかりにイリアに尋ねたが、彼女は即答した。
「……わかった」
「ちょっと!」
「それはさすがにっ!」
「イリアさんの言う通り、どうせこのままじゃ全員やられるんだ。やれることをやるしかない」
それに、とエドは言葉を続ける。
「俺の知り合いと同じ目をしている。止めても無駄だ」
エドはイリア達の前に出た。その目は魔物の群れを見据えていた。
「まずは、俺が奴らの数を減らす。その隙にイリアさんは《古代遺物》のところまで突っ切ってくれ」
「わかったわ」
エドの作戦内容に、イリアは頷く。
「リンとエオリアはイリアさんの護衛だ。イリアさんの後に続け」
「護衛なら、前衛のあなたとリンの方がいいのでは?」
「いや、今回の場合は互いにフォローしあってやらなきゃ失敗する。なら、この中で一番長くタッグを組んでいるお前達が適任だ。俺が後ろからフォローする。だから、迷わず突っ切れ!」
「あぁ、もう。わかったわよ!」
「遊撃士として、必ず守ってみせます!」
腹をくくったのか、リンとエオリアも覚悟を決める。
「最後に《古代遺物》の所までたどり着いたら、俺の真上へと投げてくれ。俺が破壊する」
エドは自身の闘気を剣に込める。剣はその身を赤く染め、やがて炎を纏った。
「いくぞっ! 緋空斬!」
剣に纏っていた緋色の炎は巨大な三日月の形をとり、前方の魔物達に迫る。
魔物達は次々と斬撃に飲み込まれていく。
斬撃が通った場所には、魔物の姿はどこにもいなかった。
「ふっ!」
道が作られたことを確認したイリアは身体を前に出し、全速力で砦へと向かう。
それに続き、リンとエオリアも後ろから追う。
魔物達は近づいてくるイリア達に気づき、命を狩りとらんと襲ってくる。
まずは、二体の魔物がイリア達へと向かってくる。
エオリアがイリアの前に入り、メスを放つ。
メスは魔物の頭を正確にとらえ、突き刺した。
続けて、一体の魔物が上から奇襲してくる。
リンが即座に反応し、魔物に向かって跳ぶ。
「はっ!」
リンの鋭い蹴りは魔物をとらえ吹き飛ばす。
その様子をイリアは確認しずに、走り続ける。
リンとエオリアもイリアの後を追い、魔物を無視してそのまま前へ。
その後も二人は襲いかかってくる魔物達から、順調にイリアを守っていき、砦までの道を作っていく。
すると、今度は三体の魔物が迫ってくる。
リンとエオリアは再び前に出ようとするが、横から襲ってきた魔物に妨害される。
その隙に三体の中から一体の魔物がイリアに接近し、自身の黒い腕を振るう。
イリアは足を止めず、その場で軽快なステップを踏んだ。
魔物の腕は空を切った。
イリアはすれ違った魔物に目もくれず、前へと走る。
続けて、残った二体の魔物が正面からイリアに突貫する。
しかし、イリアはそのまま、二体の魔物に向かって突っこんでいく。
そして――、
「ほっ!」
腕を振りかぶり、イリアに殴りにかかろうとした魔物の頭上を跳び越えた。
着地した瞬間、もう一度、跳びはね二体目の攻撃を躱す。
二体の魔物の後ろで綺麗に着地したイリアは先に進む。
魔物達は振り返り、イリアを襲おうとするが、後ろからリンとエオリアの反撃で消滅する。
その後も次々と襲い掛かる魔物をイリアは柔軟な身体を駆使して避けて、跳んで、くぐり抜けて行く。
リンとエオリアも迫ってくる魔物を倒していき、イリアを守っていた。
後ろからはエドが斬撃を飛ばして、三人のフォローしていた。
「……すごい」
オランピアはイリアの動きから目が離せずにいた。
オランピアから借りた戦術オーブメントで身体能力を上がったことで、イリアは魔物達の動きに見事対応していた。
だが、オランピアが目を離すことができなかったのは、それが理由ではない。
魔物を躱しながら進んで行くイリアの動きが、とても洗練されていたからだ。
彼女が小刻みにステップしながら進む姿は、とても優雅のものだった。
彼女が回りながら躱していく姿は、まるで蝶のようにとても美しかった。
彼女が魔物の頭上を何度も跳び超える姿は、とても流麗でかっこよかった。
イリアは今、戦場という舞台で踊っていたのだ。
憧れの人が踊っている姿を直視するオランピアの心臓は強く、激しく、熱く震えていた。
情熱と美しさを兼ね備え、エドが放った炎の残滓が飛び散る中で踊り続けるその姿は、まさしく《炎の舞姫》そのものだった。
そして、舞台は最終幕へと向かう。
砦までたどり着き、階段を駆け上がっていくイリア。
イリアの正面には、頂上への道をふさいでいる魔物が雪崩となって向かってきた。
しかし、イリアの足は止まらなかった。
その足はさらに加速し、魔物達との距離をどんどん縮めていく。
そして、イリアは魔物の前で、両足をおもいっきり踏み込んで膝を曲げる。
「ハァッ!」
飛んだ。
イリアは、大きく跳躍して、数十を超える魔物達の頭上を飛び越えた。
手を翼のように横に広げ、鳥のように高く飛んでいくその姿にオランピアは心を奪われてしまった。
そして、宝玉の隣に着地したイリアは体を横に捻らせる。
「いっけぇえええええええ!!」
声を張り上げながら、右足を前に出し、宝玉を天高くへと蹴り上げた。
天に昇った宝玉はやがて放物線を描きながら落ちていく。
落ちていく先にいたのは、太刀を構えた一人の剣士がいた。
「ふぅぅぅぅ…………っ!」
全神経を集中し、大きく息を吐いたエドは宝玉に目掛けて大きく跳んだ。
エドと宝玉の距離は徐々に短くなっていく。
そして――、
「紅葉切り!」
――キンッ!
宝玉はエドの後ろに行き、真っ二つに割れた。
すると、宝玉は光を放ち、中から青い光が一斉に空へと放たれた。
無数の青い光は四方に飛び散り、遠くへと飛び去っていった。
「皆の魂が……」
青い光は、宝玉によって捕らえられていた人と魔獣の魂だと気づくオランピア。
流星群のように降り続いている命の輝きに目を輝かせていた。
「うまくいったか……」
エドも降り続く光に魅入られながらも、魂が解放されたことに安堵していた。
ギイィィィィィィィ……!!
開かれていた煉獄門が徐々に閉まっていき、外で群がっていた魔物達が徐々に消えていった。
「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!」
イリアはどでかい歓声を上げながら、戻ってきた。
「イリアさん!」
オランピアは勢い良くイリアのもとへと駆けて行った。
「はい、オランピアちゃん。言った通り、上手くいったでしょ」
「はい! すごいです! とってもすごかったです!!」
憧れの人が踊って見せた舞は、自分の想像をはるかに超えていたものだったことにオランピアは興奮を隠せずにいた。
その姿を見たイリアは、目の前にいるファンに向かって満面の笑みを送る。
エドは遠くから二人のやり取りを見て、微笑する。
「やったわね」
「ええ」
リンとエオリアはイリアを守り抜くことができたことに一安心し、ハイタッチをする。
「ハッハハハハ……!!」
その時、柱の上で行く末を見守っていたアリオッチが、口を大きく広げ、豪快に笑っていた。
「いや、すげえな、アンタ。戦場で心奪われるなんて生まれて初めてだぜ」
芸術に関して疎かったアリオッチでさえも、イリアの舞に惹かれてしまったようだ。
アリオッチは純粋にイリアを称賛し、エド達を上から見据えていた。
「《古代遺物》は破壊した。次はどうするつもりだ」
エド・リン・エオリアは武器を構え、前に出る。その様子にアリオッチは手を横に振る。
「クク……安心しろ。今回のゲームは俺の……」
アリオッチは自分の負けだと告げようとしたが、口が止まった。
「……いや、どうやらまだ終わってねえみたいだな」
「何?」
アリオッチは何かに気づき、門の方へと首を動かした。
「エドさん! 門が!」
オランピアの声にエドも即座に門の方に目を向けた。
《古代遺物》の力が消え、存在が保てなくなったはずの煉獄門があと少しで閉じる所で扉が止まっていた。
「さっきまで閉まろうとしていたわよね」
「なんで止まったの?」
「いったい、何が……」
誰もが予想だにしていない事態に皆の思考が一瞬、止まってしまった。その時――、
グゥォオオオオオオオオ!!
門の向こうからこの世の者とは思えない、おぞましい雄叫びが砦全体に響き渡った。
ギイィ……! ギイィィィィィィィ……!!
閉じようとしていた扉が徐々に開き始め、中から禍々しい手が出てきた。
「ひっ!」
「うわ、何あれ!」
門の向こう側から出て来たそれに、オランピアは悲鳴を上げる。
イリアは初めて見るそれに今までに感じたことがない嫌悪感を示す。
それは先程まで現れた魔物のよりもはるかに大きく、異質な存在だった。
くすんだ銀色の鎧のようなものを腕と肩、頭に身を纏わせ、むき出しの体は、赤みがかった紫色に染まっていた。
足はまるで大蛇のように一つの巨大な尻尾が生えており、人のような足はなかった。
両手には、ハンマーにも見える巨大な鈍器が一つずつ持っており、
腕には円盤の盾のようなものが一体化していた。
「なるほど。さっきまでの魔物の群れ、いや軍勢はあれの仕業だったのか」
『なんだ、これ?』
『ああ、煉獄に住まう住人だよ』
『ふ~ん。あ、でもこいつらをぶっとばせば、すぐに騎士になれるんじゃねぇか?!』
『いや、こいつらは煉獄にいて、この世界にはいないからぶっとばすどころか、会うこともできないからな』
昔、あいつと一緒に読んだ聖典。その中に書かれていた煉獄の中でもっとも強力な力を持った住人。
その総称は……
「教会の聖典に記されし、《七十七の悪魔》の一柱。煉獄を守る門番にして、数多の魔を従える軍団長。《暴虐》のロストルムっ!」
この世のものを恐怖に陥れる、本物の
次回、第13話「悪魔」
お楽しみください!