英雄伝説外伝 金の軌跡   作:魔ギア

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第十三話 悪魔

 聖典に記された悪魔――《暴虐》のロストルムは大地を揺るがすほどの雄叫びを上げた。

 悪魔が放つプレッシャーは、触れるだけで体を萎縮させ、意識がもっていかれそうになる。

 だが――、

 

「――破っ!!」

 

 一番前にいたエドは、丹田に力を込め、強烈な気合いを前方に放った。

 エドの気合いは、迫ってくる悪魔のプレッシャーとぶつかり、相殺した。

 

「……さっきまでの魔物達とは桁が違うな」

 

 エドは悪魔を見上げながら、巨体から溢れる霊圧に冷や汗をかく。

 先程まで現れていた魔物の集団全てを従える軍団長ロストルム。それはつまり目の前にいる悪魔には、あれだけの数の魔物達を従わせる能力と、束になっても退けることができる力を有しているということだ。

 エドは、魔物の群れと対峙していた時よりも状況が悪くなったことに顔を歪ませる。

 

「エドさん!」

「イリアさんと一緒に後ろに下がれ! リンとエオリアは援護を頼む」

「! はい!」

「了解!」

「わかりました!」

 

 守りながら戦うのは厳しいと判断したエドは、即座にオランピアに指示を出して、イリアと一緒に下がらせた。同時に、まだ経験が浅い準遊撃士には荷が重いと判断し、フォローに回した。

 オランピアがイリアと共に物陰に隠れたことを確認したエドは、果敢に前へ出る。

 悪魔はエドの接近に気づき、手に持っていた鈍器をエドの脳天目掛けて振り下ろした。

 エドは咄嗟に横に大きく跳んで避ける。

 目標を失った鈍器はそのまま地面を叩き、爆音を生み出した。爆音と同時に生み出した地面の揺れと暴風に、オランピアとイリアは地面に手を付けて、耐えていた。

 

「っ! エドさん!」

「ちょっ! まずいんじゃない!」

 

 周囲には砂塵がまっており、エドの姿を確認することができない。

 辺りが静まり、砂塵が徐々に少なくなっていき、視界が良くなっていく。

 最初にオランピアの目に映ったのは、剣を構えた男の姿。

 

「エドさん!」

 

 エドの無事に安堵するオランピア。

 続けて彼女の目に入ったのは、まるで隕石が落ちてきたかのような巨大なクレーターと、近くでたたずんでいる悪魔。

 

「受け止めていたら、速攻、あの世行きだったな……」

 

 クレーターの大きさを見て、悪魔が持つ破壊力に戦慄するエド。

 一方、柱の上から戦いを眺めていたアリオッチは悪魔を見据えてた。

 

「聖典に記されている《七十七の悪魔》の一柱か……。ま、一応ボスからのオーダーはこれで完了か」

 

 視線を悪魔からエドに移し、その様子をうかがう。

 近づいてくるエドを目にした悪魔は、再び鈍器を振り下ろす。

 

「ふっ!」

 

 すると、エドは速度を上げて回避した。防御することが不可能と判断したエドは、速度を調整することで攻撃を躱すことに成功した。さらに、鈍器によって生み出した風圧を利用し、エドはさらに速度を上げる。

 

「ハァッ!」

 

 一気に悪魔の懐に入ったエドは胴体を切り裂く。

 突然、伝わってきた痛みに悪魔は絶叫する。傷ついたことに激怒する悪魔は、エドに振り返って腕を上げる。

 

「フォトンシュート!」

 

 しかし、エオリアが放ったアーツによってふさがれた。

 

「ハァァァッ!」

 

 続けて、リンが飛び掛かり、悪魔の顔面を殴りつける。

 顔からの衝撃に悪魔の視線はエドからリンに移った。

 悪魔は振り上げた腕をリンに目掛けて振り下ろす。

 

「リン!」

 

 エオリアは声をかけるが、いまだ滑空しているリンは避けることができない。

 

 

 ドンッ!!

 

 

 鈍い音が響きわたった。

 大砲のように吹き飛ばされたリンは、そのまま柱に激突する。柱は衝撃に耐えきれず、崩れ落ちた。

 

「リン! そんな!!」

 

 目の前の光景にエオリアは悲鳴を上げる。

 

「大丈夫よ!」

 

 すると、崩れた柱の中からリンが無傷の状態で現れた。リンは黄色に光る四面体に覆われていた。

 悪魔の攻撃を目の当たりにしたリンは、無防備に攻めるのは危険と判断し、自身にアーツをかけていた。

 一度だけ攻撃を防ぐことができる地属性の補助アーツ《アースガード》だ。

 

「もうっ! 心配かけないで!」

「ごめん。一声かけるべきだった」

 

 エオリアは怒りながらも、リンの無事にほっとしていた。

 

「油断するな! 構えろ!」

 

 追撃を防ぐため、エドは悪魔に反撃をしながら、二人に声をかける。リンとエオリアは互いの顔を見て頷き合い、再び悪魔に立ち向かう。

 エドとリンが悪魔を挟み撃ちにして、狙いを定められないように同時に攻撃していく。

 エオリアはアーツを駆使して、悪魔に攻撃し、エドとリンに補助をつける。

 しかし、悪魔の強靭な肉体は三人の攻撃をものともしなかった。

 逆に、悪魔の攻撃は一撃一撃がとても重く、直撃すればただではすまない。三人は当たらないように回避に集中しており、攻めることができずにいた。

 

「エドさん!」

 

 オランピアは助けるためにエド達のもとへ向かおうとするが、足が止まった。

 エドの指示でイリアと下がるように言われたことを思い出したからだ。

 

(……違う)

 

 オランピアはすぐにその考えを否定した。

 エドに言われたから止まったのではない。

 怖いのだ。

 エド達のように悪魔に立ち向かうことができなかった。

 立ち向かえても、殺されてしまう。

 そんな考えがよぎってしまい、動けなかったのだ。

 無理もない話だ。過去に暗殺者としての過去はあるが、本来のオランピアはどこにでもいる十二歳の女の子だ。

 猟兵団の家系で生まれたわけでも育てられたわけでもない。

 幼い頃から暗殺者として教育されたわけでもない。

 自分の意思で戦いに赴いたわけでもない。

 小さな村で、静かに暮らしていただけの普通の女の子だ。

 血と惨劇が繰り広げられる戦場で恐怖するのは仕方ないことだ。

 だが、同時に今も命懸けで戦っている三人の為に何かの役に立ちたいという気持ちもあった。

 

(私にできることって何? アーツで援護? イシュタンティで牽制? 他には……)

 

 思考を巡らせて案を出し続けるが、どれもあまり効果がないものだった。

 

(……もう一度、あの時に戻れば……)

 

 脳裏に浮かんだのは、《管理人》であった暗殺者の自分。そんな事を望んではならないとわかっていても、望んでしまう。

 今の自分では何の役にも立てない。自分など所詮、人より舞が少しできるだけのただの女の子なのだから。

 

(…………舞?)

 

 その時、ふとオリンピアは昔のことを思い出した。

 それはまだ村にいた頃、母から舞を教わる前に教えてくれたこと。

 

 

 

『……オランピア』

『私達が踊る舞、神楽はね、大昔に現れた"魔"を払い、女神に捧げる神聖な踊りなの』

『これはね、私達の先祖から代々引き継いできた大切なものなの。だから、途切れることなく、必ず受け継いでほしいの。再び使う時が来るその時まで……』

 

 

 

「……今がその時なの? ……お母さん」

「オランピアちゃん?」

 

 オランピアの小さな呟きにイリアは反応するが、オランピアの耳には届かなかった。

 オランピアの目は真っ直ぐと悪魔を見据えていた。目の前にいるのは、人々に厄災をもたらす煉獄より出てきた"魔"の怪物。

 そして、自分の神楽は、大昔に"魔"を払ったという。

 オランピアはゆっくりと物陰から出てきた。

 目を閉じ、ゆっくりと深呼吸。

 舞に必要な鈴付きの棒――神楽鈴は今はない。

 だが、代わりの物はある。

 オランピアは小太刀を抜き、前にかざす。手首を振り、ブレスレットに付いている鈴を鳴らす。

 

(……いける)

 

 目を開き、その場で踊り始める。

 戦場の中、優しく鳴り響く鈴の音。

 その舞は、"魔"に立ち向かう戦士を鼓舞するかのように強く。

 悪しき心を清めるかのように安らかだった。

 オランピアは一人静かに舞い続ける。

 戦いは激しさを増していく中、徐々に変化が起きていた。

 

「雷神脚!」

 

 天高く飛び上がっていたリンは、鋭い蹴りを悪魔にぶつける。

 悪魔は蹴りの衝撃で身体を曲げ、後ろに倒れそうになった。

 

「え、何?」

 

 リンは攻撃が急に効き始めたことに少し戸惑う。

 

「フォトンシュート!」

 

 エオリアが追撃でアーツをぶつける。

 すると、アーツを直撃した悪魔は悲鳴を上げた。

 

「効いている?」

 

 最初は効かなかった攻撃が通るようになったことにエオリアも疑問に思い始める。

 エドも悪魔の変化を感じ取り、ふと視界の隅で何かが動いているのに気づいた。

 

「オランピア?」

 

 視線の先には、昨日と同じように踊っていたオランピアがいた。リンとエオリアもオランピアが踊っていることに気づいた。

 オランピアが舞い続けるのと同時に、悪魔が呻き声のようなものを上げていた。それを見たエドは、直感で一つの予測が浮かんだ。

 

「オランピアの舞で弱ってるのか……」

 

 戦技の中には敵を弱体化するものがあるのは知っているが、オランピアの舞が悪魔を弱体化させる効果を持っていることに、エドは想像もしていなかった。

 

「この好機を逃がすな!」

「えぇ!」

「はい!」

 

 エドは悪魔に向かって斬りかかり、リンとエオリアも後に続いた。

 オランピアは戦っているエド達の役に立つために、必死になって踊り続けた。

 エド達の猛攻に耐えながらも、反撃してくる悪魔。

 しかし、悪魔の動きは最初の時より鈍くなっていた。エド達は容易に躱していき、攻撃し続ける。

 傷が増え続け、窮地に陥った悪魔は、やけくそに両腕を大きく振りかぶり、地面に叩きつける。力を振りしぼったその一撃は、大地を大きく揺らし、エド達は足を止めてしまった。

 

「あぁ!」

 

 そして、地面が揺れたことで足が絡まり、派手に転んでしまったオランピア。

 オランピアは少し泣きそうになったが立ちあがろうとする。

 

「痛っ!」

 

 しかし、足首から痛みが走り、その場で尻餅をついてしまった。足が絡んだ時に、捻ってしまったのだろう。足首が少し赤く腫れていた。

 一方で、エド達と対峙していた悪魔の雄叫びが轟いた。先程までのが噓であるかのように、巨体に見合わぬ動きで再びエド達に襲い掛かる。

 

「しっかりしなきゃっ……、私がやらなくちゃっ!」

 

 エド達が再びピンチになったのを見て、オランピアは必死に立ち上がろうとするが、足の痛みで立ち上がれない。

 自分が踊らなければ、皆やられてしまう。

 だが、今の足では踊ることができない。

 絶対に失敗してはいけない状況だが、このままやっても失敗してしまう今の状態にオランピアの心は折れそうになる。

 

「そのままじゃだめよ」

 

 その時、足の痛みが引いていくのを感じた。隣には、イリアが座っており、オランピアから借りた戦術オーブメントで回復魔法《ティアラ》をオランピアの足にかけていた。

 

「イリアさん……」

「失敗しちゃいけないなんて考えちゃだめよ。それじゃあ、いつまでも成功しないわ」

「でも!」

「オランピアちゃん、よく聞いて」

 

 イリアは治療しながらも、オランピアの目をじっと見つめていた。

 

「人間はね、失敗しちゃいけないと思っていても、失敗しちゃう生き物なの。私だってデビューしたての頃は失敗したことなんて何度もあったわ。でもね、失敗することが怖いからってそれに目を逸らしちゃいけないの」

 

 イリアは強く、優しい口調でオランピアの頬に流れている涙を拭う。

 

「いい、オランピアちゃん。大切なのはね、自分を信じることよ」

「自分を……信じる……」

「自分が今まで積み重ねてきたものを信じなさい。責任という重圧に自分は耐えられるのだと信じなさい。そして、自分なら失敗さえも成功に変えられるんだと信じなさい」

「失敗を成功に変える……」

「ええ。それが私達アーティストがやるべきことであり、ファンの為にやれることよ」

 

 イリアは目線を前に向ける。オランピアもつられて前を見る。

 そこにはいまだ暴威を振るう悪魔とそれに立ち向かっているエド達がいた。

 

「今は耐えろ! 耐えしのぐんだ!」

「エオリア! もっと後ろに下がって!」

「リン! アーツをかけたわ! 気をつけて!」

 

 エド達は互いに掛け合いながら、悪魔相手に一歩も引いていなかった。

 

「エド君達はあなたを信じて、今も戦っているわ。彼らのために今、あなたができることは何?」

 

 治療を終えたのか、アーツを解除するイリア。

 オランピアはエド達の戦いから目を離さなかった。

 エド達は自分達から攻めようとはせず、回避に専念していた。その戦いは、敵を倒すのではなく、どちらかと言えば時間を稼ぐ戦いだった。

 一体、何の時間を?

 決まっている。自分のためだ。

 エド達は信じているのだ。

 もう一度、自分が立ち上がるのを。

 もう一度、踊ってくれることを。

 ならば、今、自分がやるべきことは。

 

「……っ!」

 

 オランピアは立ち上がった。

 多少の痛みはまだあるが、踊れないことはない。

 失敗して転んでも、また立てばいい。

 何度失敗したって、その度に立ち上がればいい。

 三人からの信頼に答え、踊り切ること。

 それが私が今、皆の為にやるべきことだから!

 

「うん。いい目ね。それじゃあ、最後の一押しといきましょうか」

 

 オランピアの目つきが変わったことに気付いたイリアは立ち上がり、オランピアの前に立つ。

 

「私の動きに合わせなさい。私を見て、まねて、自分のものにしてみなさい!」

「え!」

「大丈夫よ。昨日見た舞で振り付けは頭の中にはいっているわ」

 

 イリアの発言に驚くオランピアを横目にイリアは腕を上げる。

 

「それじゃあ、いくわよ!」

 

 イリアは戦場の中で再び踊る。

 しかし、その踊りは魔物達と対峙した時とは違った。

 あの時の踊りは、炎のように荒々しくも心を焚きつけるような激しさがあった。

 だが、目の前の踊りは、流れる水のようになだらかで、心が洗われるような穏やかさがあった。

 イリアの舞に目を奪われたオランピアはしばらく呆けていたが、すぐに切り替える。

 なぜ、イリアが急に踊りだしたのか、理解したからだ。

 オランピアはイリアと同じように腕を上げて踊り出す。

 足を怪我しているのが嘘のように淀みない踊り。

 時々、イリアの動きを横目で観察しながら、自身の動きを修正する。

 二人の舞姫が踊る中、再び悪魔が苦しみだす。

 

「今が勝機だ!」

 

 待っていたとばかりにエドは準遊撃士の二人に声をかける。二人もまたエドに続く。

 エドの斬撃が、リンの拳打が、エオリアのアーツが徐々に悪魔の身体に傷をつける。

 悪魔は再び、両腕を上げて、地面に叩きつけようとするが――、

 

「「させるかっ!」」

 

 エドとリンが悪魔の腕に剣と拳をぶつける。

 弱体化した悪魔は、その一撃に耐えきれず武器は空へと飛ばされてしまう。

 

「下がってっ!」

 

 エオリアの掛け声にエドとリンは後ろに下がる。

 

「ゴールドハイロウ!」

 

 エオリアがアーツを放つと、金に輝く七つの魔法球が悪魔を中心に回り出す。

 強い勢いで金の球は回り続け、竜巻を起こし悪魔の動きを封じる。

 

「コオオオオオオオッッ……」

 

 リンは気を両手に集めて構える。拳に集まった気は、やがて電気を撒き散らし放電する。

 

「泰斗流、雷神掌!」

 

 両手にたまった気は雷を纏いながら、悪魔に放たれた。

 身動きが取れない悪魔に直撃し、その身体を大きく仰け反った。

 

「これで決める」

 

 エドの()()の眼は悪魔を捉える。

 よろめいていた悪魔は近づいてくるエドに気づき、腕についている盾を前にかざそうとする。

 

「遅い……」

 

 

――八葉一刀流 (なな)の型

 

 

「無想――覇斬!!」

 

 すれ違う際に放たれた、無数の斬撃は悪魔を取り囲み切り裂いた。

 為す術もなくなった悪魔は雄叫びを上げる。

 やがて、淡い紫色の光へとなっていき、現世から消えていった。

 一方、オランピアとイリアも無事に最後まで踊り終えた。目をつぶっていたオランピアはゆっくりと目を開け、目の前に広がる光景を見る。

 

「……やった」

 

 悪魔の姿はどこにもなく、戦っていた三人は無事だった。

 勝敗は決したのだ。

 

「やったじゃない! オランピアちゃん!」

「あ……イリアさん、私……」

 

 イリアはオランピアを強く抱きしめて褒めていた。

 無事に役目を果たせたことに、オランピアは心ここにあらずの状態になっていた。

 

「やったじゃない!」

「オランピアちゃん、すごかったよ!」

 

 オランピアの元に駆け付けたリンとエオリアもオランピアを褒めちぎった。

 

「オランピア」

「っ! エドさん……」

 

 エドが近づいてくることに気づいたオランピアは我に返り、振り返る。

 しばし黙ったまま見つめ合う二人。やがて、エドの口が開き、

 

「よくやったな」

「あ、はい!」

 

 オランピアは満面の笑みを浮かべた。

 

「まさか、悪魔を倒しちまうなんてなあ」

 

 すると、柱の上にいたアリオッチは悪魔を倒したことに驚きながらも称賛していた。

 

「それにオランピアも。いい舞だったぜぇ」

「悪魔は葬った。まだやるつもりか」

 

 エドは先頭に立って剣をアリオッチに向ける。

 アリオッチは自分に向けて殺気を放つエドをじっと見ていた。

 

「なるほど。それがメルキオルが言ってた……」

 

 より正確にはエドの黄金に輝いている眼をじっと見ていた。

 

「ふっ、安心しな。今回のゲームは俺の負けだ。今日の所はここで帰らせてもらうぜ。《黒金の剣聖》、噂に違わねえ実力だったな」

「えっ!」

「《剣聖》ってアリオスさんと同じ?」

 

 アリオッチからでたエドの異名にリンとエオリアは驚く。

 

「《剣仙》ユン・カーファイが立ち上げた《八葉一刀流》。その直弟子の一人にして、十五歳の若さで《剣聖》に至った天才剣士。黒い髪と黄金の眼から《黒金の剣聖》と呼ばれるようになった。なるほど、メルキオルの言ったとおりだな」

 

 エドの実力に納得したアリオッチ。すると、アリオッチの足元が光り出し、彼を包んでいった。

 

「じゃあな。次のゲームも楽しみにしてるぜぇ」

 

 光が強くなり、やがて収まっていくと、そこにアリオッチの姿はどこにもいなかった。

 

「行っちゃったわね」

「ええ」

 

 逃がしてしまったことを残念に思いながらも、脅威が去ったことにリンとエオリアは一安心する。

 

「エドさん」

「ああ。気になることができちまったが、今日の所は帰るとするか」

「そうね。もうすぐ昼になるし、帰ったら一緒に昼食をとりましょう」

「それもそうだな」

「はい!」

 

 エドとオランピアはイリアの提案に賛成し、村に帰ろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ」

 

 すると、砦の入り口から声が聞こえた。

 声がした方に振り返ると、そこには三人の男が立っていた。

 その三人を見て最初に反応したのは、準遊撃士の二人だった。

 

「アリオスさん!」

「それに先輩方まで……」

 

 突如、現れた三人は、クロスベル支部の正遊撃士のようだった。

 

「遊撃士?」

「何、今さら来たの? もう事件は終わってるわよ」

 

 オランピアは二人の反応に現れた三人の正体を知る。

 一方で、来るタイミングが遅いことにイリアは少し悪態をつく。

 

「アリオスさん、あの男っ!」

「ああ、どうやら報告通りのようだな」

 

 赤い髪に腰に剣を括りつけた男は、エドに向かって指を指す。

 アリオスと呼ばれた男は、エドの姿を確認して、腰につけた鞘から太刀を抜く。

 

()()()()()()()()()()()。武器を捨てて、投降しろ」

「なっ!」

「アリオスさん!」

「えっ!」

「……」

 

 アリオスの行動にリンとエオリアは驚愕の表情を浮かべる。

 オランピアもアリオスの行動に驚きながら、エドに視線を向ける。

 エドは黙ったまま、アリオスを見据えていた。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい! 投降ってどういうこと!」

「言葉通りだ、イリア嬢。その男には逮捕状が出ている」

「逮捕って……、というかエドワードって」

「エドさん……」

 

 状況に追いつけずに混乱していたイリアとオランピアを横目にエドは前に出た。

 

「お久しぶりです。こんな形で会いたくなかったですよ。アリオス()()

「ああ。俺もこのような形で会うことになって残念だ。エドワード()()

 

 アイオスは軽くため息を吐き、鋭い目つきをエドにぶつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二年前のアルテリア法国において枢機卿を殺害。および追跡した遊撃士一名を殺害した国際指名手配犯、エドワード・スヴェルト。遊撃士協会規約に基づき、貴様を拘束する」




 次回、第14話「エドワード・スヴェルト」
 お楽しみください!
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