英雄伝説外伝 金の軌跡   作:魔ギア

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第十四話 エドワード・スヴェルト

「殺人容疑って……」

「エドさん……」

 

 突如、告げられたアリオスの発言に言葉を失うイリアとオランピア。

 エドは黙ったまま、蒼い双眸をアリオスに向けていた。

 

「事件から二年、お前の足取りは全く掴めずにいたのだが……」

 

 アリオスはエドがかけている眼鏡を見て、どこか納得するように頷いた。

 

「なるほど。それのおかげか。何やら細工を仕込んでいるようだが……」

「さすがですね」

 

 初見で見抜いたアリオスに感心しつつ、エドは眼鏡を外した。

 

「エドさん! あの……」

「俺から言えるのは、一つだけだ」

 

 オランピアの言葉を遮ったエドは、振り返り彼女を見つめる。

 今までにない真剣な表情を向けてくるエド。

 オランピアもエドから目を離さず、彼の言葉を待った。

 そして――、

 

「俺は、やっていない」

 

 ただ一言。

 一言を告げたエドはそのまま、アリオスの方に視線を戻す。

 

「アリオスさん。俺は貴方とやりあうつもりはない。ここは見逃してはくれないか」

 

 自分に戦う意思はないと、手を横に広げて主張するエド。

 だが――、

 

「そんな事……させるかっ!」

「グラン!」

 

 アリオスの隣にいた赤髪の遊撃士――グランがエドに突っ込んだ。

 もう一人の遊撃士――スコットの制止を振り切り、剣を抜くグラン。

 

「テメエはここで捕まえるぞ! エドワード・スヴェルト!」

 

 剣の間合いより外にいるにも関わらず、グランは剣を振り上げる。

 エドは不審に思った直後、グランの剣が鞭のように伸びた。

 

法剣(テンプルソード)!」

 

 エドは剣の正体に驚き、即座に避けた。

 鞭のように伸びた剣はグランのもとに戻った。

 

「法剣を使うとはな……」

 

 法剣は、七耀教会が所有する特殊な武具。

 複数に分かれた刀身を内部のワイヤーで繋ぎ、状況に応じて剣にも鞭にもなれるものだ。

 

「まだ、まだぁあああ!」

 

 グランは再び法剣を伸ばして、エドに襲いかかる。

 だが、エドは剣を構えることなく、身体を逸らして攻撃を躱していた。

 攻め続ける蛇のような動きにエドは完璧に対処していた。

 

「こいつで、どうだ!」

 

 工夫もない正面からの突き。

 これもエドは難なく躱し、刀身はそのままエドの後ろへと伸びていく。

 しかし、エドはグランの口角が少し上がったのを見た。

 

「っ! オランピア!」

 

 後ろを振り向き、刀身が向かっているその先には、オランピアがいた。

 突然迫ってくる攻撃にオランピアは反応が遅れてしまった。

 

「オランピアちゃん!」

 

 すると、横からイリアがオランピアを押し倒した。

 法剣は二人の頭上を通り過ぎた。

 

「あ……、イリアさん!」

「大丈夫よ!」

 

 呆けていたオランピアはすぐに我に返って、自分を助けてくれたイリアに声をかけた。

 

「てめぇ……」

 

 エドは視線を戻し、グランを睨みつける。

 躱されるとわかった上で放たれた攻撃。オランピアを狙ったものだと理解したエドは、怒りを込み上げる。

 

「グラン、下がれ」

「な、アリオスさん!」

 

 いつの間にか後ろに立っていたアリオスはグランに声をかけた。その声からは微かな怒りがにじみ出ていた。

 

「お前が勝てる相手ではない。ここは俺が引き受ける」

「でも!」

「下がれ!!」

 

 容赦のない一喝。

 それを正面から食らったグランは、身体をビクッとしながらおずおずと後ろに下がる。

 

「どさくさに紛れてオランピアを狙うなんてな。支える籠手が聞いて呆れるぜ」

「弁解のしようがない。だが、お前を捕らえるのとは別問題だ」

 

 エドの指摘にアリオスは非を認めるが、抜いた剣の切っ先を向ける。

 

「そっちがその気なら……」

 

 アリオスの意図を理解したエドは剣を構え、

 

「押し通らせてもらうぞ!」

 

 一足でアリオスに詰めよった。

 甲高い音が鳴り響いた。

 エドの斬撃をアリオスは落ち着いた表情で、受け止めた。

 すると、アリオスはエドを押し返して間合いを開けるが、今度はアリオスがエドよりも速い速度で詰めよった。

 上段の構えからの袈裟斬り。

 エドは剣をかざして軌道を逸らす。

 そのまま剣を返して、横から一閃。

 アリオスは咄嗟に後ろに下がり、エドは前へ踏み込む。

 アリオスも足が地面に着いた瞬間、前に出る。

 一閃、二閃、三閃。

 両者の剣が激しくぶつかり合い、辺りに火花を散らす。

 未来でも見ているかのような先読みで、互いに剣の動きを見切り、決定打を打てずにいた。

 業を煮やしたエドは勝負に出る。

 後ろに下がり、間合いをとったエドは空に高く跳んだ。

 地上から見上げたアリオスは、剣に炎を灯す。

 

「緋空斬!」

 

 アリオスから放たれた炎の斬撃は真っ直ぐにエドへと向かう。

 

「紅葉切り!」

 

 エドの斬撃は炎の斬撃を断ち切った。

 その様子を見ていたアリオスは、焦らず次々と斬撃を放つ。

 エドは迫り来る斬撃を斬り続け、辺りに炎を撒き散らす。

 徐々に距離が狭まり、エドは斬ったアリオスの炎と自身の闘気を混ぜ合わせ、剣に巨大な炎を灯す。

 アリオスは目を見開きながらも、剣を構え迎え撃つ。

 

「業炎撃!」

「紅葉切り!」

 

 アリオスの斬撃はエドの炎を打ち消し、相殺する。

 互いに背中を向ける形で、エドはアリオスの後ろに着地する。

 そして、両者は勢い良く振り返る。

 

「「螺旋撃!」」

 

 同時に技を放った。

 ぶつかり合う衝撃に両者は後ろに吹き飛ぶ。

 アリオスは地面に着き、腰を落とす。

 エドは飛ばされながら、剣を納刀し、居合の構えをとる。

 

「疾風!」

「残月」

 

 神速の一閃をエドの抜刀が打ち消す。

 両者はすれ違うが、すぐに振り返り間合いを詰める。

 

「エドさん……」

 

 激化していく剣聖同士の戦いをオランピアは静観していた。

 そして、隣にいたイリアも目の前の戦いの行く末を見守っていた。

 

「君達!」

 

 すると、横から声がかかった。

 スコッチが遊撃士全員を引き連れて、オランピア達に近づいてきた。

 

「ここは危険だ。俺達と一緒にここから離れるんだ」

「お断りするわ」

「なっ!」

 

 二人の安全のためにスコッチは声をかけたが、イリアが即座に断った。

 目付きを鋭くしたイリアは、グランに指を指して言い放った。

 

「最後のあれ。オランピアちゃんを狙ったものでしょ。見抜けないって思ったの?」

「何っ! グラン、どういう事だ!」

「グランさん、何を考えているのですか!」

「どうして、オランピアちゃんを?!」

 

 イリアの発言に驚愕の表情を浮かべる遊撃士。

 スコッチはグランを睨み付けて問い詰めた。

 

「……その娘は、あの男と一緒に行動している所を目撃したという証言があった。ならば、共犯の可能性がある。拘束するためにやったことだ」

「拘束目的なら、攻撃する必要はないだろう! 何を考えてる!」

「うるさい!」

 

 スコッチの問いかけを押し抜き、グランはイリア達の前に出た。

 

「そんなことより、一緒に来い! 共犯として拘束するぞ!」

「ちょっと、グランさん!」

「どうしたのですか?! 一体?!」

「何? 脅しのつもり? だったら尚更、断るわ」

 

 グランに対して嫌悪感を隠せないイリアは、先程よりも強い口調で断った。

 

「わかってるのか! あの男は犯罪者、人殺しだぞ! そんな男を信じるっていうのか!」

「あんたよりはマシよ」

「なっ!」

「とにかく、私はここから動くつもりはないわ。もしも、またオランピアちゃんを狙うんなら……、まずは私からやりなさい」

 

 オランピアを守るように遊撃士達の前に立ち、威嚇するイリア。

 グランの暴走という想定外が起き、グランのことを警戒しなければならなくなったスコッチは、迂闊に動くことができなかった。

 リンとエオリアも同様の理由だったが、先程までエドと共に戦ったこともあって、逮捕にあまり乗り気になれずにいた。

 外野が拮抗状態になっている中、剣聖同士の戦いはさらに苛烈さを増していた。

 

「ふっ!」

 

 アリオスは一息でエドの懐に高速の連撃を放つ。

 《風の剣聖》が放つそれは、正に荒ぶる疾風の如く、一撃一撃がとても速く、重かった。

 エドはギリギリで受け止めていたが、顔や服に少しずつ切り傷がつけられる。

 そして、かすかな隙からアリオスは、拳を放った。

 拳はエドの腹をめり込み、その身体を曲げる。

 追撃に蹴りを放ってエドを後方に吹き飛ばした。

 エドは痛みに耐えながらも、空中で体勢を立て直して着地する。

 

「ハァッ……ハァッ……」

「どうやら、限界らしいな」

 

 エドは膝を着いて、息を荒くしながらアリオスを睨む。

 魔物の軍勢に続いて、悪魔との死闘。

 そして、剣聖という武の頂点ともいうべき者との対峙。

 休みのない戦いの連続にエドの体力はピークに達していた。

 

「エドワード、諦めて投降するんだ」

 

 アリオスは再度、エドに投降するよう警告する。

 だが――、

 

「断る」

 

 エドは即座に断った。

 

「…………なぜだ。なぜ諦めない」

 

 長い沈黙の末、アリオスは理由を尋ねる。

 エドの体力は既に限界。対して、アリオスは余力がある。

 仮に、アリオスを退けても、まだ四人の遊撃士がいる。満身創痍の状態で相手するにはとても厳しい。

 状況は詰んでいると言ってもいい。

 エド自身もその状況を理解しているのにも関わらず、投降しなかった。

 

「…………最初は諦めていた」

「ん?」

「逃げるのに必死で、知らない間に指名手配されて、自分はもう終わりだって」

 

 突然、独り言を呟くエド。

 アリオスだけでなく、周りの者も黙って聴いていた。

 

「自分の味方は誰もいない。誰も俺のことを助けてくれないって……」

「エドさん……」

 

 オランピアはエドの独白に思い当たるものがあった。

 それは自分の心の中にあったもの。

 味方がいない孤独と、誰も助けてくれない絶望感。

 エドもかつては、自分と同じ思いをしていたと知り、胸が苦しくなった。

 

「でも、助けてくれた人がいた」

 

 エドは顔を上げる。

 自分に向ける蒼い眼に、アリオスは戸惑う。

 その眼からどこか懐かしいものを感じたからだ。

 

「まったくの初対面にも関わらず、躊躇なく手を差し伸べてくれた人がいた」

 

 

 

『エド。あの子にも言ったことだけどよ』

 

『――安心しろ。きっとお前は幸せになれる』

 

『もし、そうならなかったら、いつでも俺を呼んでくれ』

 

『お前を不幸にする原因を一緒にぶっ飛ばしてやるからよ!』

 

 

 最初に思ったのはバカな奴だと思った。

 自分の気持ちにバカ正直で、

 後先考えずに、バカみたいに前向きな男だった。

 でも――、

 その人は諦めることを知らなかった。

 諦めるなんてことを絶対にしなかった。

 でかい"壁"が立ち塞がろうと、正面からぶつかって乗り越えるような男だった。

 本当に何とかしてくれる。そう思わせるような人だった。

 知らないうちに、俺はその人を信じることができた。

 

「そして、俺のことを信じている人達がいることを知った」

 

 あの人を通して、それを知った。

 

 祖父と母の上司にして、一緒に俺を育ててくれたじっちゃん。

 

 怒ると無茶苦茶おっかないけど、すごく頼りになる姉御肌のお師匠さん。

 

 流派は違えど、同じ師を持った、自由気ままな同期にしてライバルの少女。

 

 それから――、

 

『エド! なまえながいから、おまえはエドだ!』

 小さい頃からの年上の腐れ縁。

 

『うるせぇ! 人が気にしていることを指摘してんじゃねぇバカエド!』

 怒ると手が付けられない面倒くさい奴。

 

『エド、背中は任せるぜ!』

 だが、見た目とは違って頼りがいがあり、

 

『ったく、あんまり心配かけさせんなよ』

 口が悪くとも、面倒見が良く、

 

『ありがとな……、い、いや、やっぱなんでもねぇ!』

 素直ではないが、根は優しい。

 そして、今もなお、俺の無事を女神に祈っている"あいつ"。

 

「俺は諦めない」

 

 エドは立ち上がる。

 あの人に報いるために。

 皆のところに帰るために。

 己の身体に鞭を打ち、その眼光を鋭くして、目の前に立ちはだかる"壁"にぶつける。

 

「無実を証明するために戦い続ける。たとえ、どんなに高い"壁"が立ちはだかろうとも絶対に乗り越えて見せる。

 

 

 

 

 

 ……あの日、俺に手を差し伸べてくれた"ガイ・バニングス"のように!!」

「なっ!」

「エド君、あなた、ガイさんのことを……」

 

 エドの口から出た名前にイリアは目を開いた。

 イリアはその名前を知っている。親友の婚約者だった人の名前だ。

 そしてもう一人、イリア以上にその名前に驚き、動揺を隠せない者がいた。

 それはアリオスだった。

 アリオスにとっては、忘れることができない親友の名前だった。

 目の前の弟弟子から彼の名が出たことにアリオスはひどく狼狽する。

 

「……八葉一刀流、肆の型奥伝、エドワード・スヴェルト……」

 

 エドは剣を正面に構え、意識を集中する。

 

「全力で参る!!」

 

 黄金に輝く眼はアリオスを捉える。

 正面から放つエドの斬撃をアリオスは軽々と弾き、返した刃でカウンターを食らわす。

 先程と同じ高速の連撃。

 至近距離から放たれるそれは避けることも受け止めることも不可能な攻撃。

 しかし、そのカウンターをエドは受け止めることなく、身体を捻るだけで全て躱す。

 連撃を掻い潜ってそのまま懐にはいり、アリオスの腹に目掛けて強烈な拳打を放つ。

 逆にカウンターを食らったアリオスは、その一撃によろける。

 だが、すぐに立ち直り、エドに接近し刃を放つ。

 一方、その様子を遠くから見ていたオランピアは、

 

「イシュタンティ!」

 

 イシュタンティを呼び出し、自身の傍につけた。

 

「君、何を?!」

 

 突然の行動に驚くスコッチは、銃をイシュタンティに向ける。

 

「私は……エドさんを信じます」

 

 オランピアの声は、どこか力強いものだった。

 

「私を、村の人達を助けてくれたエドさんは、決して人殺しなんかしません!」

 

 まだ、片指で数える程しか行動していない短い時間。

 彼のことは、まだ知らないことの方が多い。

 でも、私に向けてくれるあの優しさは、

 先程、彼が口にしたあの決意は、

 決して、偽りなんかではないと言い切れる。

 

「私も戦います! エドさんの無実を証明するために!」

 

 覚悟を決めたオランピアはいつでも動けるように武器を構える。

 その様子を遊撃士とオランピアの間にいたイリアは、そっと微笑んで、視線をエド達に向ける。

 戦いの形勢は逆転していた。

 エドの怒涛の攻めにアリオスは懸命に防いでいた。

 隙をついては連撃を送るが、全て躱されてしまう。

 それどころか、逆にカウンターを全て食らい、じわじわと追い詰められていた。

 

「ハァアアアアアッ!!」

 

 エドの横薙ぎの一撃がアリオスを後ろへと飛ばす。

 

「これで……決める!」

 

 エドは剣を振りかぶるように後ろに構え、そのまま前進する。

 

 

――八葉一刀流 肆の型

 

「一の太刀」

 

 剣聖へと至ったエドが、鍛錬の末に見出した、エドだけの技。

 刀身から燃え出てきた炎は徐々に大きくなり、エドの身体全体を覆いつくす。

 

猛虎(もうこ)っ!!」

 

 包んだ炎は形取り、やがて巨大な虎の頭となってアリオスに迫る。

 迫りくる技にアリオスは通常の技では対応できないと判断し、自身が持つ奥義の一つを繰り出す。

 

「奥義・風神……っ!」

 

 技を放とうとする瞬間、アリオスの動きが急に止まった。

 目を大きく見開きながら、迫りくる炎を見ていた。

 アリオスの目には、エドの姿はどこにも映っていなかった。

 炎の中にいたのは、

 

 

 

 

 

 赤いシャツの上に身に纏った見覚えのあるジャケット。

 

 長く使われ、傷だらけになっているトンファー。

 

 こちらを真っ直ぐ見つめ、決して折れない不屈の闘志が灯った眼をした男の姿。

 

 

 

「ガ……イ……」

 

 一月前までいた、自分が殺してしまった、かつての友。

 もう会うことができない、かつての相棒を幻視したアリオスの頭の中は、真っ白になってしまった。

 

「『オォオオオオオオオオオオオオ!!』」

 

 強い雄叫びを上げながら、ガイ(エド)はアリオスに渾身の一撃を放つ。

 

「『――斬!!』」

 

 炎の牙がアリオスを捉えた。

 太刀を折られ、後ろに吹き飛ばされたアリオスは、砦の石柱に叩きつけられて、そのまま崩れ落ちた。

 

「アリオスさん!」

「ば、バカな!」

「アリオスさんが……」

「敗けた……」

 

 遊撃士達は目の前の光景をすぐに受け止めることができなかった。

 クロスベルの英雄にして、A級遊撃士であるアリオスの敗北が、信じられなかったからだ。

 

「オランピア!」

「! はい!」

 

 エドはその好機を見逃さず、オランピアに声をかける。

 

「光よ!」

 

 イシュタンティの頭上から光が放たれる。

 天に昇った光は雨となって、遊撃士達の周りに降り注いだ。

 

「グッ!」

「きゃっ!」

「うわぁ!」

 

 直撃はしなかったが、上からの襲撃に遊撃士達は身動きが取れずにいた。

 

「イシュタンティ!」

 

 すぐにその場から離脱しようと、オランピアはイシュタンティを呼ぶが、

 

「逃がすかよ!」

「っ!」

 

 光の雨をくぐり抜けたグランは、オランピアの腕を強く掴んだ。

 

「離して!」

「逃がすわけねぇだろうがっ!!」

 

 鬼気迫る勢いでさらに強く掴まれ、逃げられないようにするグラン。

 

「離してよ!」

 

 オランピアは掴まれていない手を大きく振り上げた。

 

「ハッ! そんなもんが俺に効くとおもっグギャッ!!」

 

 オランピアが放った正拳はグランの頬を深く抉った。

 予想以上のダメージにグランは腕を離してしまう。

 

「っ! このやろぉグヘッ!!」

 

 すると、今度はイシュタンティがグランの胸に飛び蹴りをして吹き飛ばした。

 オランピアはグランの様子に目もくれず、イシュタンティに乗る。

 

「エドさん!」

「応!」

 

 エドは砦の入り口に向かってすでに走っていた。

 オランピアはイシュタンティに指示を出して、エドに近づく。

 エドはイシュタンティが頭上を通り過ぎる瞬間、跳び上がってイシュタンティの足を掴んだ。

 イシュタンティはそのまま上昇していき、エドをぶら下げたまま飛んでいく。

 

「逃がさない!」

 

 光の雨が収まり、逃亡を阻止しようとスコッチは銃を構える。

 それを見たエドは懐からあるものを取り出した。

 それは、街で追われた赤髪の幼女から取り上げた戦利品。

 エドは取り付いていたピンを外して、放り投げた。

 すると、煙が大量に撒き散らされ、スコッチの視界をふせいだ。

 

「スモークグレネード!」

 

 目標を見失い、狙いを定めることができなくなったスコッチ。

 やがて、撒き散らした煙は薄まり、視界が徐々に晴れていく。

 しかし、エド達の姿はすでにどこにもいなかった。




 次回、第15話「無実を証明するため」
 第一章ラストです。
 お楽しみください!
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