申し訳ありません。
第一章、ラストです。
ご覧ください!
太陽が沈み、夕日に染まったアルモニカ村は、観光客の声で賑わっていた。
そんな中、宿酒場《トネリコ亭》のとある一室では、
「それじゃあ、しばらくはあなた達が私の護衛につくってわけね」
「はい。その通りです」
「しばらくの間、よろしくお願いします」
丸いテーブルを挟み、イリアは準遊撃士のリンとエオリアと対面していた。
指名手配犯を取り逃がした後、気を失っていた正遊撃士、アリオス・マクレインは意識を取り戻した。
アリオスの指示でイリアを連れて、アルモニカ村に戻った遊撃士一行。
村に着いた時には、まるで何事もなかったかのように村の住民達が楽しく日々を過ごしていた。
《庭園》が持ってきた《古代遺物》によって、煉獄門を顕現するための生贄として捕らえられた住民達は、奇跡的に犠牲者は一人もいなかった。
アリオス曰く、生命力が高い魔獣を先に生贄として使ったからではないかと。
住民達全員の無事を確認した後、遊撃士達は逃走した指名手配犯の捜索に入ったが、その姿はどこにもいなかった。
すでに逃走したと結論付けたアリオスはその後、リンとエオリアの証言により《庭園》の存在を知ることになった。話を聞きイリアの身が危険と判断したアリオスは、イリアを遊撃士協会本部があるレマン自治州で一時的に保護することを決める。
イリアはこれを了承し、アリオスはスコッチとグランを連れて、クロスベル市に戻った。
リンとエオリアは村に残り、アリオスがレマン行きの手配を準備するまでの間、イリアの護衛につくことになった。
「まぁ、あの赤毛じゃないだけマシか」
「それは……」
「その件に関しては申し訳ありません」
イリアの愚痴にリンとエオリアは申し訳なさそうに謝罪した。
イリアは二人の謝罪を受け入れ、テーブルに置いてあるコップを取って口につける。
「あら、このココア結構いいわね。あなたの自作?」
口から広がる甘い味がそうとうおいしかったのか、イリアはココアを作った本人に声をかける。
「ああ。この村の蜂蜜を使った、オリジナルのココアだ」
顔を上げた先には、すでに逃走したと思われた指名手配犯、エド・ヴェルガが立っていた。彼は今、眼鏡を外して気だるそうな顔でココアを飲んでいた。
エドの傍にはイリア達と一緒にテーブルを囲って座っているオランピアがいた。
「……やっぱり、おいしい」
オランピアもエドのココアを堪能しており、口元が緩んでいた。
「まさか、イリアさんの部屋に隠れていたなんてね……」
実は、エドとオランピアは村から出ておらず、遊撃士が帰るまでイリアの部屋で身を潜ませていたのだ。
「いや~、あれには私も驚いたわ。まさか、天井に張り付いて隠れるだなんて」
「そうね。共和国で聞いた、『忍び』みたいだったわ」
イリアの部屋に入り、エド達は身を隠せる場所がなかったからか、エドはオランピアを抱えたまま息を殺して天井に張り付いていたのだ。
「……実際に教えてもらったからな。本物の『忍び』に」
エドはライバルである少女のお目付け役をしている覆面の忍びを思い出していた。
「しかも、アリオスさん、それをわかっていて、わざと見逃したんですよね」
そして、なんとアリオスはエドの存在に気づきながらも、気づかないフリをして見逃していたのだ。
「俺とアリオスさんの師、ユン老師が手を回してくれたみたいでな。少なくとも、八葉の関係者で俺の事を疑っている奴はいないらしい」
「かの《剣仙》殿が……」
リンはエドの口から出た人名に目を丸くした。
ユン・カーファイ
八葉一刀流の創始者で、《剣仙》の異名を持った御老人。
武術家、特に剣士の中で、その名前を知らない人はまずいない。
エドとアリオスはユンの直弟子で、彼の指導の下、八葉一刀流を修めたのだ。
「アリオスさんにも立場がある。表立って俺のことで協力することはできないからな。あの場では、俺達が何とか逃げれるように手加減して戦ってくれたんだ」
もし、本気で捕える気があったのなら、会話を長引かせたりして、エドの体力を回復させるようなことはしない。
剣の勝負でも、わざわざ相手に合わせて技を放ったりはしない。《風の剣聖》の実力なら、エドよりも一手早く技を放てたはずだ。
「あなたの事って……、二年前に法国であったっていう殺人事件?」
イリアの言葉に、部屋から音が消えた。
女性四人の視線は一人の男に集中する。
「まあ、知っちまったからには隠してもしょうがないな」
観念したのか、持っていたココアをテーブルに置いた。
「エド・ヴェルガっていうのは偽名だ。エドワード・スヴェルト。それが俺の本当の名だ」
エドはまず、自身の本名を四人に告げた。
しばらく沈黙が続いたが、オランピアが恐る恐る口を開く。
「エドワードさんは……」
「エドでいい。親しい連中からはそう呼ばれている」
「……エドさんは、二年間、ずっと事件の真相を探っていたんですか」
エドは静かに頷き、窓際に近づいて赤く染まっている村の景色を眺める。
「二年前、法国の連中から何とか逃げ切った俺は、レミフェリア公国で行き倒れになってな。そこでガイさん達に会ったんだ」
当時、ガイはクロスベルにある《聖ウルスラ医科大学》で入院していた少女を故郷のレミフェリア公国に連れて行くところだったらしい。
助けてくれた時、ガイと一緒にいた水色髪の少女のことをエドは思い出していた。
「ガイさんに事情を話したら、俺の事を疑いもせずに調べてくれたんだ」
少女を実家に送った後、ガイの協力の元、事件の調査を始めた。
ガイは休暇をとり、アルテリア法国まで足を運ぶなどして、事件の調査を行った。
エドは逃亡しながらガイと連絡を取り合い、自由にクロスベルの外に行けないガイの代わりに調査をしていた。
「よく気づかれませんでしたね。二年もそんな事すれば、あなたに気づく人だって少なからずいたと思うのですが……」
「あぁ。それはこいつのおかげだ」
エドが取り出したのは、昨日までかけていた眼鏡だった。
「まさか、それをかけたからバレなかったの?」
「そうだ。まぁ、当然だが、ただかけただけじゃない。この眼鏡にはちょっと細工をしていてな。『法術』っていう教会に伝わる特殊な術を使って、とある条件を満たしていれば俺の顔を認識できないようにしているんだ」
高度な法術を使えないエドは少し難易度を下げて、すれ違った時の人物や初対面の人物を対象に設定していた。そうすることで、街中にいても気づかれないようにしていたのだ。
ちなみに、エドとアリオスは八葉一刀流の修行の際に一度、会ったことがある。
だから、アリオスは眼鏡をかけていたエドの正体を見抜くことができたのだ。
「へぇ〜、そんなものがあるなんて」
「眼鏡かけただけで、正体を隠せるわけないだろう。まぁ、そんなこんなで二年間、ずっと調査をしていたんだ」
だが――、
「二週間前、ガイさんとの連絡が急にとれなくなったんだ。何かあったんじゃないかと思って、クロスベルを訪れたら……」
「亡くなっていたのよね。一ヶ月前に……」
エドの言葉の続きをイリアが引き継ぐように続けた。
「イリアさん。あんた、ガイさんのことを……」
「親友の婚約者だったのよ。それで知り合ったわ」
意外な接点に驚くエドだが、すぐに話を戻した。
「何か手掛かりを残していないか、ガイさんのここ最近の行動を調べていたんだ。そしたら一度だけ、ウルスラ間道をバスも使わず、徒歩で出向いたことがあったらしい」
オランピアは湖畔でのエドとの会話を思い出した。
「それじゃあ、エドさんが言っていた探し物って……」
探し物をしていた。
エドは確かにそのようなことを言っていた。
エドはオランピアに頷き、自身の懐を漁った。
「これだ」
エドが懐から取り出したのは、年季がだいぶ経ち、少しボロボロになった分厚い手帳だった。
手帳の表紙部分には、クロスベル警察のシンボルが描かれていた。
「それは?」
「俺の事件についての考察が記されている、ガイさんの手帳だ」
エドは手帳を開き、テーブルに置いた。
「まだ、最初らへんしか読めていないが、ここ最近の出来事を考えるとガイさんの推測は今のところ間違ってはいない」
「ここ最近の出来事?」
「《庭園》だ」
エドは真剣な表情を浮かべ、話を続ける。
「ガイさんの手帳にも、正体不明、もしくは新規の暗殺組織が関与している可能性があると指摘していた。《庭園》は二年前に立ち上がった組織だ。可能性はゼロとは言いきれない」
手帳には、ガイの推察が書かれた文面の他にも、資料が写った写真などで埋まっており、ガイの執念が滲み出ていた。
「それに、奴らは俺のことを知っていた。俺の異名や眼のことも」
「異名……、確か《黒金の剣聖》でしたよね」
「眼っていうと、金色になっていたわね」
リンとエオリアは、《太陽の砦》での出来事を思い出した。
《庭園》の幹部、アリオッチはエドのことを《黒金の剣聖》と呼んでいた。
悪魔、そしてアリオスとの戦闘では、エドの蒼い眼は金色に変色していた。
「俺はアリオスさんのような華々しい実績はないしな」
アリオスはクロスベルだけでなく、他国でも大きな活躍をしている。その結果、《風の剣聖》の異名が世界中に知れわたるようになった。
対して、エドは《剣聖》の称号をもらってから事件が起こるまでの間は、数ヶ月しか経っていなかった。
その間に、実績を立てたことはなく、事件が起きてから二年間、表舞台に全く姿を見せなかったので、その存在はあまり知られていない。
「眼のことだって、親しい奴らにしか教えてないしな」
「そもそもその眼はいったいなんなのですか? 病でもないのに目の色が変わるなんて聞いたことがありません」
エオリアは多少の医学の心得を持っており、医学の知識でも聞いたことがない症例に興味を持っていた。
「俺も詳しくはわからない。物心ついた時には、すでにこの眼はあったからな」
エドは眼を金色に変え、四人に見せる。
「この眼になることで、動体視力といった目の機能が飛躍的に上がるだけじゃなく、見えないものが見えたり、透視したりすることもできる。《魔眼》と、俺のおじいちゃんは呼んでいた」
エドは眼を蒼色に戻して話を続ける。
「《庭園》は世間では知られていない、俺の異名と《魔眼》のことを知っていた。もしかしたら……」
「エドさんの事件に《庭園》が関わっている?」
エドのことを第三者が詳しく知る機会があるとすれば、法国で起きた事件以外にない。暗殺組織である《庭園》が知っているのならば、事件に関わっている可能性は高い。
「俺は《庭園》を追う」
決意が籠ったエドの眼光に四人は押し黙る。
「オランピアの件もそうだが、奴らを追えば事件の真相にも近づくことができる」
二年間、全く掴むことができなかった事件の手掛かり。
これを逃せば、二度とチャンスは訪れない。
オランピアの件も含め、エドは己の無実を証明するために《庭園》と正面から渡り合うことを決めた。
「オランピア」
「何ですか?」
エドはオランピアに顔を向けて、頭を下げた。
「今まで、黙っていてすまない。だが、俺自身も奴らに用ができちまった。これからも一緒に行動してほしい。頼む」
言えない事情とはいえ、今まで黙っていたこと、自分のことを信じてくれてたのに裏切るような行為し続けたことに関して、申し訳なく思い謝罪するエド。
「頭を上げてください」
オランピアは、エドに頭を上げるように促す。
「エドさん、私はあの砦で言いました。あなたを信じると」
オランピアもまた、あの砦で決意した。
確かに彼は嘘をつき、今まで騙していたのかもしれない。
しかし、自分のことを気を遣い、助けてくれたのは、紛れもない事実だ。
そんな彼を今度は自分が助けたい。
彼の冤罪に《庭園》が関わっているのなら、かつて所属していたものとして、自分の自由以外に助けてくれた恩人のために戦う。
それが今、自分がやるべきことだから。
「だから、大丈夫です。これからもよろしくお願いします」
オランピアはエドを許し、笑顔を向けるのだった。
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クロスベル市 東通り 遊撃士協会クロスベル支部
「なるほど。大体の事情は理解したわ」
すでに辺りは夜で静まり返っている中、遊撃士協会クロスベル支部では、二人の男が密会していた。
「正直、遊撃士としては褒められることではないわね」
一人は、窓口で受付をしており、話し相手の内容にため息を吐いている、がたいのいいおと……、オネエさん――ミシェル。
「最悪、俺達がお尋ね者になるかもな」
そして、もう一人は太陽の砦でエドと対峙したA級遊撃士、アリオス・マクレインだった。
アリオスは冗談のように笑みを浮かべたが、すぐに真剣な表情へと切り替わった。
「だが、これが事実なら見過ごすこともできない」
「そうね」
アリオスの言葉にミシェルも同意した。
アリオスは昼に起きた出来事を説明していた。
《庭園》と呼ばれる謎の暗殺組織のこと。
そして、アリオスの弟弟子にして、指名手配犯のエドワード・スヴェルトのこと。
《庭園》を放置すれば、被害が徐々に増え続ける。
エドが冤罪だった場合、民間人の保護を第一とする遊撃士としては見過ごすことはできない。
「こちらの方でも、色々と情報を集めてみるわ。でも、あまり期待しないでよね」
事件が経って、すでに二年。本部の方でもエドを容疑者として捜査が進められており、無実に繋がるものを見つけるのはとても難しい状況だ。
「迷惑をかけてすまないな」
「気にしなくていいわ。あなたからの頼みなんて滅多にないことだし。それであなたの方はこれからどうするの?」
「まずは、イリア嬢を本部に連れて行く手配をしなければならない。彼らについては警察への協力は難しいから、別口で何とかするつもりだ」
予定では、イリアと一緒にエドも国外に連れていこうと考えている。
だが、指名手配犯がクロスベル内にいることはおそらく警察方面にも知れ渡っているだろう。国外へ出るには、正規の方法で行うのは非常に困難だ。
「当てはあるの?」
「明日、そこへ尋ねるつもりだ。彼女ならば今回のことも上手くやってくれるだろう」
値は張るがなと少し肩を落として微笑するアリオス。
エド達の件はアリオスに任せることにしたミシェルは、別の問題を思いだし再びため息をつく。
「それにしても、グランに関しては驚いたわ。まさかこんな暴挙に出るなんて」
問題というのは、遊撃士グランのことだ。
共犯だとまだ断定できない段階で、オランピアに攻撃をしたこと。
従わなければ、共犯として拘束すると脅したこと。
クロスベルで遊撃士活動をしているグランは、そのような暴挙はしていなかった。むしろ、その真逆で法と秩序を重んじて活動をしており、アリオス程ではなくても街ではそれなりに人気があった。
今回の彼の行為は、それら全てをぶち壊してしまう程の行為だった。
報告を聞いたミシェルは、アリオス達同様、信じられず、驚きを隠すことができなかった。
「確か、明日に《聖ウルスラ医科大学》で診てもらうことになったんだったな」
「えぇ。性格が反転するなんて異常なことよ。しばらく、彼には休暇をとるようにしているわ」
ハァとミシェルは頭を抱える。
「人員が一人減っちゃったし、少しスケジュールを調整しなくちゃね」
「その心配はないだろう」
「え?」
ミシェルの心配にアリオスは問題ないとフォローする。
「今回のことで、新人二人はかなり成長した。すぐに即戦力として使えるだろう」
アリオスは準遊撃士のリンとエオリアを思い浮かべていた。
「そう。それはありがたいことね。あなたの弟弟子にもお礼を言った方がいいのかしら?」
「好きにしろ。ただ、無実を証明した後でな」
そうね、とミシェルは微笑むのを最後に二人の密会が終わった。
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七耀暦1201年 クロスベル自治州 アルモニカ村 3月23日
アリオスの手配が来るまでの間、エド達はアルモニカ村でゆっくり体を休めていた。
オランピアはイリアの指導の下、舞の練習をしていた。悪魔の一件から今後、役に立つのではないかと思い、イリアに頼んで稽古をつけてもらっていた。
他にも、連携の強化のため、エドとオランピア、リンとエオリアでタッグを組み模擬戦などしていた。
そして今朝、アリオスからの連絡が届き、出立のためにエド達は村の入り口で別れの挨拶をしていた。
「三日間、本当にありがとうございました」
オランピアはお世話になった準遊撃士の二人に頭を下げてお礼を言っていた。
「いいのよ。私達も世話になっちゃったし」
「はぁ……、でも、オランピアちゃんとしばらく会えないなんて、寂しいなぁ……」
「まだ、言ってんのかよ」
エオリアの発言にエドはツッコむ。
村にいる間、エオリアのオランピアに対するスキンシップはとても激しかった。可愛いもの好きのエオリアにとって、オランピアの可愛さはドストライクだったようだ。
「な~に言ってんの。これが最後じゃないでしょ。全部解決したら、また会えばいいじゃない」
「……そうですね」
「私の方もあなた達には世話になったわね。劇団の人達への仲介、ありがとね」
「いえ、遊撃士として、当然の勤めをしただけですから」
イリアが横からはいり、リン達にお礼を言った後、少しため息をついた。
「それにしても、折角の羽休めがとんでもないことになっちゃったわね……。いや、これはある意味、いい機会ね」
「そういえば、お忍びでここに来た理由ってなんだったんだ?」
《庭園》の襲撃があって、聞くことができなかったことを、エドは再びイリアに聞いた。
「ああ、一言でいうとアイデア探しね」
「アイデア?」
「ええ。今よりも劇をよくするための案を探していたのよ」
イリアの発言に一同は首を傾げた。
アルカンシェルの劇はレベルが高く、素人目から見ても完璧と言っても程の完成度があった。
しかし、イリアのどこか不満がある様子にエド達は不思議に思ったのだ。
「今の劇に不満があるのですか?」
「ないわよ。でも、もっと高みに行けると思うんだけど、そのためには今のままじゃダメだと思ったのよ。そのアイデアを探していたんだけど……、それも見つかったしもういいわ」
「それはいったい何ですか?」
今の劇よりも、よりすごい劇にするもの。それが一体何なのかオランピアは興味を隠せずにいた。
「それはね……、パートナーよ!」
イリアは自信満々な顔をして話を続ける。
「あなた達を見て思ったのよ。お互いに信頼し、助け合って成長していく。一人で成長したって、いつかは限界がくるわ。でも、互いが支え合って、対等に渡り合える相方がいれば、私は今よりももっと高みに行けるわ。だから、しばらくはパートナーを探すことに専念するわ。もしかしたら、レマンでその相手が見つかるかもしれないし。たとえ、見つからなくても別のところで探せばいいわ」
イリアの回答を聞き、エドはつい苦笑いした。
イリアは世界でも名が知られているトップスターだ。そんな彼女と肩を並べる実力者など、はたしているのだろうか。
だが、イリアの凄さを間近で見たエドは、彼女なら本当に見つけそうだなと思ってしまう。
「もし、そのパートナーが見つかったら、プレ公演で私達の舞台を見せてあげるわ!」
「本当ですか!」
「えぇ。アイデアを見つけることができた、そのお礼よ」
破格のお礼に目を輝かせるオランピア。その姿に笑みを浮かべながら、イリアはオランピアの視線に合わせるようにしゃがむ。
「だから、オランピアちゃん。絶対に諦めちゃだめよ。自分を信じて、前へ進みなさい」
「っ……はい!」
憧れの人からの激昂に力強く返事するオランピアを見て満足し、立ち上がって今度はエドを見つめる。
「エド君、あなたもよ。ガイさんの意志、無駄にはしないでね」
「あぁ」
決意が籠った返事に安心し、大きく頷くイリア。
「あ、来ましたよ」
すると、エオリアが古道からこちらに向かって来る二台の車を指す。
二台の車は村の入り口で止まり、ドアが開いた。
一台の車から降りたのは、イリアの護衛を勤めるA級遊撃士のアリオス。
もう一台から降りてきたのは、タバコを咥えながら、ワイルドな雰囲気を匂わせる紫髪のお姉さん。
そして、その後ろには、どこかで見たことがある赤髪の幼女。
「「「あ……」」」
エドとオランピア、そして赤髪の幼女は同時に声を上げた。
「あの人って、旧市街の交換屋の人よね……」
「えぇ。確か、アシュリーさんよね。あの人が、オランピアちゃんの手伝いをしてくれる人なのかしら?」
リンとエオリアは、見覚えがあったからかそんな事を呟いていたが、エドとオランピアはそれどころではなかった。
「お~、やっとみつけたぞ~」
赤髪の幼女はエド達を、より正確にはオランピアが背負っているみっしぃのリュックを見てそう呟く。
「なんだいジンゴ、顔見知りか?」
「おお」
アシュリーの言葉に頷いたジンゴと呼ばれた幼女は車に戻り、何かを物色し始める。その様子にエドはとてつもなく嫌な予感がした。
「エ、エドさん……」
「えっと、やっぱり俺達は別口で……」
ズカンッ!
「うわぁっ!」
「にげるなよ~」
逃げるのを察知したのか、ジンゴは片手にドでかいアタッシュケースを引きずりながら、もう片方の手にある導力銃(違法改造)をエドの足元に発砲した。
ジンゴはアタッシュケースの中のものを取り出して、肩に乗っけて構えた。
取り出したのは、携帯対戦車グレネードランチャー。
通称、
「それじゃあ、
そのみっしぃ、よこせ」
ドォオオオオオオオオオオオン!!
とてつもない爆音と、男女二人の絶叫が、クロスベルの空へと木霊するのであった。
独自設定③ ガイ・バニングスの命日
調べると、七耀歴1201年しか判明されていなかったので、2月に設定しました。
次回、第2章「人形達の学園祭」
お楽しみください!