英雄伝説外伝 金の軌跡   作:魔ギア

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初の戦闘描写です。
難しいです。


第二話 《金》のオランピア

 イシュタンティは主の障害を排除するため、翼を広げてエドに襲いかかる。

 腕を振り上げ、手を開き爪を伸ばした。

 血で染まっていた赤い刃がエドを引き裂こうとする。

 イシュタンティの刃が届く瞬間、エドは後ろに跳び躱す。

 地面に着地する瞬間、膝を大きく曲げた下半身をばねにしてイシュタンティに向かって飛び込む。

 急接近してくるエドにイシュタンティはもう片方の爪を伸ばして突き刺す。

 

 キィンッ!

 

 エドは剣を前に構えて、近づいてくる腕を横に逸らした。

 剣でイシュタンティの腕を抑えたまま前進し、懐に入り込む。

 ジリリッと、剣はイシュタンティの腕を擦りつけ、そこから火花が飛び散った。

 火花は徐々に勢いを増していき、エドの剣に集まっていく。

 エドの闘気と混ざり合い、激しさを増していった火花は、やがて炎となり剣に灯る。

 

 

――八葉一刀流 (さん)の型

 

 

業炎撃(ごうえんげき)!!」

 

 ドカァァンッ!!

 

 炎を纏ったエドの剣は、イシュタンティの懐を叩きつけ、爆発した。

 爆発の衝撃に耐えきれなかったイシュタンティはオランピアの後ろまで吹き飛ばされた。

 エドはその隙に無防備に立っているオランピアに接近する。

 

(あの人形を操っているのは彼女だ。彼女を気絶させれば……!)

 

 エドは、気絶させるべくオランピアに峰打ちをする。

 

「聖なる盾よ」

 

 ガキィィンッ!!

 

 しかし、エドの剣は甲高い音を鳴らして防がれた。

 防がれたことに驚きながらもエドはその原因にすぐに気づいた。

 オランピアの後ろには、吹き飛ばされたイシュタンティがいつの間にか戻っていたのだ。

 エドは後ろに下がり、剣を構えなおす。

 視線を前に戻すと金色の盾がオランピアを中心に回っていた。

 

 あれで防いだのか。それにしても、

 

「速いな……、まぁ、人形だからな」

 

 エドはイシュタンティの立ち直りの速さに驚きながらも、どこか納得している表情をしていた。

 エドの渾身の一撃はイシュタンティの懐に直撃した。本来なら立ち直るにかなりの時間がかかるはずだ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 イシュタンティは吹き飛ばされた状態のまま、常人ならば悲鳴を上げてもおかしくない動きで、体を無理やり動かした。

 そして、体勢を素早く立て直したイシュタンティは、オランピアの元に戻り、あの盾をはったのだ。

 

「今度はこちらから行きます。イシュタンティ」

 

 オランピアはイシュタンティに指示を出した。

 イシュタンティは翼を広げ、上空へと飛んだ。

 上空で止まり、爪が伸びている両手を合わせて、前に突き出した。

 そして、その状態のまま体を横に回転しながらエドに向かって、突撃してきた。

 鋭利な一本の矛となった両手を前に急降下してくるイシュタンティは巨大なドリルとなって、エドに襲いかかる。

 

「ちぃっ!」

 

 ドカァァァァンッ!!!

 

 急接近してくるイシュタンティをエドはギリギリ躱した。

 イシュタンティはそのまま地面に衝突し、土ぼこりを上げる。

 やがて土ぼこりが晴れ、徐々に視界が良くなった。しかし、そこにはイシュタンティの姿が見当たらなかった。

 かわりにあったのは、人間が一人入るくらいの大きな穴。

 

「穴? っ!」

 

 危険を察知したエドはすぐにその場から離れた。すると――、

 

 ドオォォォォンッ!!!

 

 先程エドが立っていた地面の下からイシュタンティが出てきた。

 イシュタンティは地面に衝突して、そのまま穴を掘り続けたのだ。

 そして、エドの真下まで移動し出てきたのだ。

 上空へと昇っていき体勢を維持しながら急旋回したイシュタンティは、再びエドに突撃した。

 エドは回避に専念した。剣で受け止めれば、折られてしまうと察したのだ。

 戦場に穴を増やし続けながら、イシュタンティの突撃を躱し続ける。

 イシュタンティは速度を落とさないまま、繰り返しエドに攻撃し続ける。

 すると、エドは突然、立ち止まり上空にいるイシュタンティを見上げながら向き合った。

 

「……来い!」

 

 突然、イシュタンティに向かって挑発するエド。 

 そして、挑発に乗っかるかのようにイシュタンティはエドに向かった。

 エドはその場から一歩も動かずに剣を下段に構えて、

 

「――そこだ!」

 

 ガキィンッ!!

 

 金属が激しくぶつかりあう音と同時にイシュタンティが両腕を上にあげて、体が後ろにもっていかれた。

 イシュタンティの前には、剣を振り上げた状態のエドが立っていた。

 エドはイシュタンティの攻撃をただ耐えているわけではなかった。

 回避しながら、イシュタンティの動きを常に目で追いかけ、その動きを常に観察していたのだ。

 そして、目がイシュタンティの速度に慣れていったエドは、イシュタンティの攻撃をギリギリ躱し、伸ばされた腕の肘部分に目掛けて、すくい上げるように剣でぶつけて上へと弾いたのだ。

 

「もらった!」

 

 両腕を上にあげ、懐ががら空きになったイシュタンティに一撃与えようと、すくい上げた剣を振り下ろした。

 しかし、イシュタンティは後ろにもっていかれた体勢を利用し、そのまま体を一回転して強烈な蹴りをエドにぶつける。

 

「ぐっ!」

 

 エドは攻撃を中断して後ろに下がったが、イシュタンティの蹴りはエドの顎を掠めた。

 突然の襲撃に驚いたエドだが、体を宙で回転して、無防備になっているイシュタンティに再び接近する。

 イシュタンティは一回転し終えて、そのまま膝を折り曲げた。

 

「オーロラウィング」

 

 瞬間、金色の閃光となってエドに向かって突撃してきた。

 エドは咄嗟に剣を前に出して受け止めたが、衝撃に耐えきれず後ろに吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされたエドは空中で剣を鞘に納めながら体勢を変えた。

 

「イシュタンティ、もう一度」

 

 オランピアはエドが着地する瞬間に突撃するようイシュタンティに指示を出した。

 だが、エドは地面にではなく、木の横に両足をつけた。

 居合の構えをとったまま身体を縮め、足に力を込める。

 木を蹴り、弾丸のような速度でイシュタンティに突っ込んだ。

 

「オーロラウィング」

 

 閃光となって突撃するイシュタンティ。

 距離を縮めていく両者。腰に納めていた剣に手をかけたまま、エドはイシュタンティを捉える。

 

 

――八葉一刀流 ()の型

 

 

「残月」

 

 キン!!

 

 すれ違った瞬間、エドが放った静かな斬撃はイシュタンティの翼を一枚斬り落とす。

 突然、翼を一つ失いバランスを保てなくなったイシュタンティはそのまま地面に抉りながら引きずっていく。

 エドはチャンスと思い地面に着地した瞬間、そのまま地面を蹴ってオランピアに近づく。

 

「イシュタンティ」

 

 無防備にもかかわらず落ち着いた声音でイシュタンティを呼ぶオランピア。

 エドは、今度こそオランピアを気絶させようと再び峰打ちをする。

 

 ガキィン!!

 

 しかし、またもや金色の盾によって攻撃が防がれた。すると、オランピアの周囲を回っていた盾が消えた。

 

「これで……、っ!?」

 

 追撃を加えようとしたエドだが、すぐに後ろを振り向いた。

 起き上がったイシュタンティが腕を前に出し、エドを突き刺そうと迫ってきた。

 エドは咄嗟に横に跳んでその場から離れ、イシュタンティの攻撃を躱す。

 転がりながらもすぐに立ち上がった。

 顔を上げるとイシュタンティが目の前に立っており、自身の爪を振り下ろす。

 エドは頭を下げながら、剣を上に構えてイシュタンティの腕の軌道を逸らす。

 そのまま身を低くして前進し、横なぎに一閃。

 イシュタンティは振り下ろした勢いでその場で高速に回転。

 エドの一閃は弾かれ、エドはそのまま後退する。

 イシュタンティは翼を広げて、回転を止めてエドに向かって突貫する。

 突く、裂く、振るうと怒涛の攻撃をエドに仕掛け続けるイシュタンティ。

 それを躱す、受ける、逸らすなどしてエドはイシュタンティの攻撃をしのいでいた。

 二人の攻防はしばらく続いたが、これ以上は無駄と判断したのか、イシュタンティは攻撃を止めオランピアの後ろに戻った。

 

「やりますね」

 

 オランピアは先程までの戦いを見てエドを称賛した。

 

「ここまでやるとは思ってもいませんでした」

「それはどうも」

 

 エドはそう返しながらも警戒を緩めずに構える。

 

「ですが、これ以上時間をかけてはいられません。次で終わらせます」

 

 オランピアは手を空へと上げた。

 

「死の救済を」

 

 イシュタンティの頭上から放たれた光。

 空へと昇った光は、無数に別れ、地上へと降りそそいだ。

 エドは降ってくる光を小刻みにステップしながら躱していった。

 躱しながら前へと進みんで行き、エドはオランピアに剣を振った。

 しかし、刃が届く前にオランピアはイシュタンティの腕に乗って、上空へと飛んだ。

 

「これにて終幕です」

 

 オランピアの声を合図にイシュタンティは上空で分裂した。その数は七体。

 オランピアを乗せていない六体が一斉に襲い掛かった。

 

「踊りなさい。イシュタンティ」

 

 六体の分裂体はエドを囲うように回りだした。

 降り注いだ光で土ぼこりがひどくて辺りが見えず、四方から縦横無尽に来る不可視の刃にエドは防ぐのに精一杯だった。

 そして、回りながら分裂体は再び上空へ昇った。

 分裂体がオランピアが乗っているイシュタンティを中心にして周りに集まった。

 オランピアはイシュタンティに命じ、分裂体に力を注いだ。力が徐々に注ぎ込まれ、オランピアは手を上げ勢い良く振り下ろす。

 

 

 

「アウルム・シャングリラ!!」

 

 

 

 空が黄金に輝き、六体の分裂体から同時に放たれた六つの巨大な光。

 全てを焼き尽くす六つの光がは徐々にエドに近づていき、

 

 ドオォォォォンッ!!!

 

 地面が大きく揺れ、巨大な光の柱が天を衝いた。

 オランピアは上空から見下ろす。

 地上は大量の砂塵が飛び散りエドの姿は見えなかったが、やがて砂塵が薄まり、地表が見えた。

 そこには、巨大なクレーターがあり、エドの姿はどこにも見当たらなかった。

 

「終わりですね」

 

 エドを始末したことを確認したオランピアはイシュタンティに指示を出し、その場から離れようとする。

 だが――、

 

「え……」

 

 オランピアの視界が少し暗くなった。

 いや、違う。オランピアの後ろに何かが現れ、影に覆いかぶさられたのだ。

 オランピアはすぐに後ろを振り向く。

 そこにはエドが剣を構え、オランピアを見据えていた。

 

 なぜ彼がいる? どうやって離脱した?

 

 何が起きているのかわからずオランピアはその場で固まった。

 エドは巨大な光を受ける直前、近くにあったものに気づいたのだ。

 それは、イシュタンティによって掘られた人一人が入れるサイズの穴。

 エドは咄嗟に穴の中に飛び込んで、攻撃を退いたのだ。

 オランピアよりも上空へと跳んだエドは剣を持つ両手に力を入れ、彼が一番得意とする技を放った。

 

 

――八葉一刀流 (よん)の型

 

 

紅葉(もみじ)切り!!」

 

 エドの剣はイシュタンティの頭を捉え、右上半分を切り落とした。

 イシュタンティは制御を失ったのか、そのまま地上へと落ちていく。

 イシュタンティに乗っていたオランピアは空中に投げ出された。

 オランピアは呆然としたままそのまま地面に落ちていく。

 

「おっと」

 

 エドは咄嗟にオランピアの腕を掴んで、自分の腕の中に納めた。

 オランピアを抱えたまま、エドは地面に着地する。

 

「さて、これで終わりだ」

 

 エドは腕の中にいるオランピアの顔を見た。

 オランピアの顔は先程までの無表情な表情とは打って変わって、どこかあどけない表情を浮かんでいた。

 そして、彼女の目は無機質な目をしておらず、その目には光が灯っており意思を感じとれた。

 

「……」

 

 オランピアは何も発せず、そのまま黙っていた。

 

「? おい、どうした」

 

 エドは反応を示さない少女の様子にどこかおかしいと気付き、声を掛けた。

 

「……ぁ」

「ん」

「あ、あ、あぁあああああああああ!」

 

 すると突然、オランピアは大声を上げ、半狂乱になった。

 

「ど、どうした?!」

 

 エドは腕の中で急にパニックになった彼女に驚き、体勢が崩れそうになった。

 

「いやだ! いやだ! いやだ! いやだ! 怖い! 苦しい! 痛い! 死にたくない! 助けて! いやだ! いやだ!」

「おい! どうした! 落ち着け!」

 

 エドは彼女を落ち着かせようとしたが、収まる気配が微塵もなかった。

 

(彼女がこうなったのは、おそらく俺があの人形を破壊したからだ。破壊した結果、最初とは違って、意思を感じることができた。《古代遺物》の人形に、突然、意思を感じるようになった彼女……)

「まさか、感情を吸い取られていたのか!!」

 

 エドはオランピアはイシュタンティによって感情を奪い取られていたのだと推測する。

 彼女が人を殺すことに何も感じないのは、感情を奪い取られていて感じることができなかったから。

 彼女の目に意思を感じ取れなかったのも、意思のもとである感情がなかったからだ。

 そして、イシュタンティが壊れたことで、今まで吸い取られていた感情が一気に彼女の中に入ってきたのだ。様々な感情が一気に入ってきたことでオランピアは、パニック状態に(おちい)ったのだ。

 

「助けて! お父さん! お母さん! 怖い! 怖いよ!」

 

 

 

 

 

 

『ひっく……、エド……、うぅ、ううう……』

『なきたいなら、ないてもいいんだぞ、●●●』

『うるさい! ないてなんかいない!』

『そんなかおでいわれてなあ……。とにかく、てをはなすなよ』

『うん……ひっく……』

 

 薄暗い森の中をさ迷う二人の子供。

 男の子は女の子の手を引っ張りながら、泣いている女の子を慰めていた。

 目に涙が溜まっている女の子の顔は、怯え助けを求めているようだった。

 

 

 

 

 

 

 突如、浮かび上がった記憶の一ページ。

 目の前で苦しんでいる彼女の姿はかつて"あいつ"の姿にすごく似ていた。

 

「っ……、すまん!」

 

 苦しんでいる彼女をこのまま放っておけなかったエドは彼女の顔に手を掲げた。

 すると、手から陣のようなものが現れ光り始めた。

 

「あ……」

 

 オランピアはその光をあびた。声が静まり、そのままゆっくりと目を閉じていった。

 

「ふぅ…… どうにかなったか」

 

 エドは彼女を眠らせることに成功し安堵した。

 

「さて、この子をどうするか」

 

 エドがオランピアをこの後どうしようか考えようとしたその時、

 

 ドゴンッ!!

 

「……」

 

 エドは突然の爆音に嫌な予感を感じ、音がした場所に振り向く。

 そこには、顔の半分が斬り落とされたイシュタンティが立っていた。

 

「おい、おい、あれでまだ動くのか」

 

 エドはめんどくさそうな表情でイシュタンティを見る。

 イシュタンティの動きは所々ぎこちなくなっているが、翼を広げエドに襲い掛かった。

 

「失せろ」

 

 ――斬!!――

 

 エドはオランピアを抱えたままイシュタンティを斬った。

 イシュタンティは胴体を真っ二つに斬られ今度こそ動かなくなった。

 

「ったく、ようやく終わったか」

 

 エドはようやく戦闘が終わったのだと剣を鞘に納め、視線を下に向ける。

 エドの腕の中にいる少女は、無邪気な寝顔を浮かべて、夢の世界へと旅立っていた。




 次回、第3話「少女」
 お楽しみください!
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