英雄伝説外伝 金の軌跡   作:魔ギア

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 一万字をやったからか、結構早く書けました。
 それと、お気に入り数200を超えていました。とても嬉しいです。

 それでは、ご覧ください。


第三十三話 悪魔を崇拝する教団

 わかっていたことではあるが、ジェニス王立学園の学園祭は中止にならざるを得なかった。《庭園》の騒動のせいで知らない間に時間が経過していることに気づいた参加者の人達はひどく混乱していた。

 さらには、屋台や演劇の小道具などが損傷しているところがいくつも見られ、とてもではないが祭りをこのまま継続することはできない状態になっていた。

 全員、納得できない気持ちでいっぱいではあったが、このまま続けられないのでは仕方がないと、諦めの境地に達していた。

 特に、二、三年の生徒達はひどく落ち込んでいた。

 三年生にとっては最後の、二年生にとっては自分達が主催の学園祭だったからだ。

 今日という日を一番に待ち望んでいた彼らにとって、学園祭中止はかなり心にくるものだった。

 

 しかし、そんな誰もが絶望する中、一人の救世主が立ち上がった。

 その者は、巧みな交渉術と持ち前のカリスマ性を駆使して、中止を防ごうとあらゆる問題を見事に解決してみせた。

 その結果、一日目の継続と共に、なんと前代未聞の二日目の学園祭開催をもぎ取ってみせたのだ。

 その吉報を受けて誰もが喜びを爆発し、その救世主に感謝を告げようとその者の下へと駆けて行った。

 そして、今、誰もが注目している救世主はというと……

 

 

 

「な~んか、納得できねぇな」

 

 ふて腐れていた。

 

「中止を防いだだけじゃくて、二日目の主催をもぎ取ったのは俺だぞ。感謝されてもおかしくねぇのに、なんで俺だってわかったら、回れ右して皆、退散するんだよ」

「それはお前の日頃の行いのせいだろう」

 

 グラウンドに続く階段に座り、頬に顔をつけてぶつくさ言うレクターに対して、元生徒会書記のレオ・E・ローレンツが辛辣に答える。

 元生徒会長の子供みたいな反応に対して、隣に座っていたルーシーはため息をついて追撃する。

 

「あなたが生徒会長だった時に、周りの人達がどれだけ被害を被ったと思っているのよ。彼らに言わせれば、『こんなことができるなら、去年の時から、もっと早くやれ』ていう気持ちでいっぱいなのよ」

「あ、あはは……」

 

 容易に想像できてしまったのか、近くで話を聞いていたクローゼは軽く苦笑いをしてしまう。

 

「で、でも、レクターさんのおかげで二日目ができるので、みなさん、本当は感謝していると思います。ですから、元気を出してください、レクターさん」

 

 そして、クローゼの隣で、必死になってレクターをフォローするオランピアがいた。

 

「おぉ~、サンキューな、嬢ちゃん。やっぱ、わかってくれる人にはわかるんだな~。誰かさん達とは大違いだぜ」

 

 感極まってそんなことを言ってくるレクターにルーシーはカチンッ、と頭の中を鳴らす。

 

「そう。だったら、もっと頑張らなくちゃいけないわね」

 

 ガシッ、とレクターの腕を拘束し、無理矢理立たせる。

 

「え、えっと、ルーシーさん? いったい、なにを……」

「そういえば、言い忘れていたのだけれど、二日目の方針について、現生徒会がいろいろと話したいそうだから、今から行くわよ」

「い、いや、俺様はこれから、とても大事な用事がありまして……」

「だ~め♪」

 

 言葉とは裏腹に目がまったく笑っていないルーシーの優しい微笑みにレクターは気圧され、抵抗する間もなく、そのまま校舎の方へと消えていった。

 レオはその様子に呆れながらもクローゼ達に挨拶して、二人の後を追うのだった。

 

「えっと、なんだか、大変なんですね。生徒会というのは……」

「そ、そうですね……」

 

 何を言っていいかわからず、お互い苦笑いを浮かべて、先程の出来事を隅においやった。

 

「そ、それでオランピアさん。エドさんはどちらにいるのですか?」

「あ、はい。今はカシウスさん達と一緒にいます。今後のことでいろいろとお話ししたいそうで……」

 

 オランピアの若干落ち込んでいる様子に、クローゼは首を傾げるが、その理由はすぐに思い浮かんだ。

 

「そういえば、エドさんと一緒に回りたくて、彼を探していたんでしたね」

「……はい」

 

 先の騒動で忘れかけていたが、自分達が一緒に行動していた理由を思い出す。

 

「でしたら、お話が終わったら、二日目に一緒に回るように誘ってみたらどうでしょうか? さすがに今日は無理でしょうし……」

「そうしたいのですが……」

 

 何度も邪魔をされてしまったからか、上手く誘うことができるのか自信が持てないオランピア。

 その様子を見たクローゼは、オランピアにある提案を持ちかける。

 

「オランピアさん。誰にも邪魔されないで誘う方法が一つあります」

「え?」

「話は歩きながら。まだ、一日目は終わっていませんから、一緒にゆっくり楽しみましょう」

「あ……、はい!」

 

 オランピアはクローゼの誘いに乗り、校舎の方へと一緒に足を運ぶ。

 その時の彼女の表情は、不安や恐れといったものは影も形もなく、そこにあるのは年相応の子供のような無邪気な笑顔だった。

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 一方で、王立学園にある会議室では、そうそうたる面子が顔を険しくして揃っていた。

 エドとその関係者として、八葉の使い手であるカシウスとアネラス。

 遊撃士協会の代表として、クルツとキリカ、そして先程ルーアンから来たジャン。

 後に女王へと報告するために、王室親衛隊からはユリアが出席していた。

 他の遊撃士と親衛隊のメンバーは《庭園》の追撃を考え、警備に回っていた。

 

「カシウスさん、それは本当なのですか?」

「あぁ。アリオスと共に何度も調べたから、間違いない」

 

 S級遊撃士、カシウス・ブライトの発言に驚きを隠せないジャンは思わず聞き返してしまった。

 その話に耳を傾けていたエド達もまた、ジャンと同じ心境だった。

 

「捏造や工作をした形跡はない、ね……」

「これだけ彼が犯人であるという証拠が揃っていたら、作為的なものを感じて仕方がないが、まさか、その痕跡がまったくないとは……」

 

 今、議題に上がっているのは、エドが犯人として挙げられている、二年前の事件について。

 カシウスは師であるユンから、エドの事件の調査を頼まれアリオスと共に調べていた。

 調べて最初に思ったのは、余りにも出来すぎているということだった。

 目撃情報はエド以外に誰もおらず、状況証拠も全て、エドが犯人であることを指し示していた。

 誰かが作為的にエドを犯人に仕立て上げたのだと、当時のカシウスとアリオスは疑問を抱かなかった。

 だが、調べた結果は全て空振り。

 目撃情報も証拠も全て本物であり、偽証の物は何一つ出てこなかった。

 

「もし、これらが誰かの手によるものなら、敵は相当のやり手だ。一国にいる人間全ての行動パターンを把握し、隙間隙間を的確に狙って、エドを見事、犯人に仕立て上げたのだからな」

「バカな! そんなこと……」

「あぁ。少なくとも、俺にはできないな」

 

 リベールの英雄は断言する。

 敵は自分をも上回る、相当の切れ者であると。

 

「下手をすると老師と同等か、それ以上なのかもしれないな」

「かの《剣仙》と並ぶ人なんて、聞いたことがないわね……」

 

 武の道に精通しているキリカは心当たりのある人物を探すが、これといった人物は思いつかなかった。

 

「だけど、《庭園》が俺の事件になにかしら関わっているのは間違いない」

 

 誰もが頭を悩ませる中、エドは力強くそう主張する。

 全員がエドに注目する中、エドはカシウスに視線を向ける。

 

「カシウスさん。俺はあなたに確認したいことがあって来ました。たぶん、アリオスさんも同じことを尋ねた思いますが、単刀直入に聞きます。今回の事件を引き起こした《庭園》、奴らは《Ⅾ∴G教団》となにか関わりがあると思いますか?」

「《Ⅾ∴G教団》だって!」

 

 エドの口から出てきた、名前にクルツは思わず立ち上がってしまう。

 いや、クルツだけではない。

 キリカ、ジャン、ユリア、そしてカシウスも険しい顔を浮かばせ、エドを見ていた。

 

「あ、あの~」

 

 いまだ状況を理解できていない、アネラスを除いて。

 

「先程、エドさんが言っていた《Ⅾ∴G教団》ってなんですか?」

 

 何かしらの宗教団体であることは理解できたが、自分を除いた全員がここまで深刻そうな表情を見せて、場違いなところに来てしまったのではないかと少し焦りを見せる。

 

「そうか。アネラス君はその時、まだ遊撃士じゃなかったね。知らないのも無理はない」

 

 アネラスの説明も含めて、一度、状況を整理するためにジャンは《Ⅾ∴G教団》について説明を始める。

 

「《Ⅾ∴G教団》とは、三年前まで大陸中で活動していた宗教団体だ。女神を否定し、悪魔を崇拝する教団だ」

「え? 悪魔を、ですか?」

 

 アネラスが真っ先に思い浮かんだのは、数時間前に旧校舎で戦った蜘蛛の悪魔。

 あれを崇拝するなど、とアネラスはすでに《Ⅾ∴G教団》に嫌悪感を抱いていた。

 それがまだ生易しいものとは知らず……

 

「ただ、悪魔を崇拝するだけなら、それでよかったのだが……、彼らがやってきた所業は到底、人が為せることではない」

「えっと、いったいなにを……?」

「人体実験だ」

 

 おそるおそるジャンに聞くアネラスの質問に横から答えたのは、腕を組んで険しい表情でアネラスを見るエドだった。

 

「じ、人体実験?!」

「そうだ。世界各地から、子供達を誘拐して、各地に築いたロッジで『儀式』という名の人体実験をやっていたんだよ」

 

 エドは一息ついて、説明を続ける。その表情は怒りと嫌忌に満ちていた。

 

「その『儀式』で犠牲になった子供達の数は何十、いや何百を超えたという。最低にして、最悪の教団。それが《Ⅾ∴G教団》だ」

「そんな……」

 

 あまりにもむごく、吐き気がしてしまう教団の存在にアネラスは言葉を発することができなかった。

 

「三年前、各国の軍、警察、遊撃士が一同に集って、国際的な犯罪捜査組織が立ち上がった。俺やアリオスも参加していて、各ロッジを同時に制圧したことで《Ⅾ∴G教団》を壊滅状態まで追い込んだのだ」

「そして、制圧後、《Ⅾ∴G教団》の存在を世間に公表することはまずいと判断し、事件を公にせずにそのまま密かに終結を迎えたんだ」

 

 《Ⅾ∴G教団》が残した爪痕はあまりにも深かった。

 下手に公表すれば、彼らを模倣する犯罪組織が増える可能性があり、さらなる被害が出かねなかったからだ。

 

「あれ、でもどうしてエドさんがそれを知っているんですか? エドさんは遊撃士とかじゃないはずですけど」

 

 三年前、エドは八葉一刀流の修行をしていたため、教団制圧の事件には関わっていない。教会上層部の知り合いがいるとはいえ、当時、一般人であった彼が教団の存在を知っているはずがないのだ。

 

「その答えは簡単だ。俺の親父が教団の幹部司祭で、俺は親父が仕切っていた教団ロッジでモルモットにされていた子供達の中の一人だったからだ」

「えっ?!」

 

 エドの独白に誰もが驚愕を受け目を見開いた。唯一カシウスだけは目を閉じ、眉を顰めている。

 

「物心つく前から俺は数々の実験を受けててな、この《魔眼》はその時に生まれたみたいだ」

 

 エドは《魔眼》を開き、その眼の奥に宿る激情に誰もが息をのんだ。

 

「親父の所業を知った俺の母さんは俺を助けようとしたが、ロッジにいた親父の部下に拘束されて、助けることができずにいた。だが、母さんは諦めなかったんだ。十一年前、俺が七歳の時に、五年の歳月をかけて、なんとか俺を連れ出しロッジを脱出したんだ」

 

 その後、エドの母、アルマ・スヴェルトは自身の父で、エドの祖父にあたる、オーバ・スヴェルトに保護してもらうため、アルテリア法国へと出向いた。父に再会したアルマは事情を話し、それを理解したオーバはすぐに二人を保護した。

 

「このことがきっかけになり、《D∴G教団》の存在は世に知られることになった。ちなみにおじいちゃんがその後、ロッジの方に出向いたけどすでにもぬけの殻だったようだ。親父もいまだ行方不明らしい」

 

 エドの壮絶な過去を知り、誰も言葉を口にすることができなかった。

 

「話が脱線したな。カシウスさん、あなたの意見を聞かせてもらえますか?」

 

 エドはカシウスに再び視線を向けて、彼が答えるのを待つ。

 腕を組み、静まっていたカシウスは重い口を開く。

 

「《庭園》が各地の子供達を誘拐するやり口や、設立した時期が壊滅した時期と近いこと、そして、クロスベルに続いて、リベールに現れた悪魔。とてもじゃないが無関係とは言い切れない」

 

 カシウスはエドの意見に対して、否定の意見を示さなかった。

 

「もし、《庭園》が教団と何かしらの関わりがあるのなら、遊撃士として見過ごすことはできない」

 

 カシウスはクルツ達、遊撃士の代表の三人に目を配らせる。視線を向けられた三人は同意の意を示すかのように頷く。

 

「遊撃士協会は本格的に《庭園》の調査に入る。エドワード君、君とは今後とも協力体制を取りたいのだが構わないかい?」

 

 現在、《庭園》はエドとオランピアを意識している。唯一、彼らと接触でき、手がかりを掴めることができるエド達と協力すれば、《庭園》の情報を手にすることができるとジャンは考える。

 

「俺の方は問題ありません」

「ありがとう。ユリア少尉、リベール王家は今後どのように動くかわかりますか」

「例の教団が生き残っているとわかった以上、我々も見過ごすわけにはいかない。至急、女王陛下にはこのことを伝えて、協力の申し出を要請するつもりだ」

「陛下のことだ。断るようなことは絶対にしないだろう」

 

 女王と交友があるカシウスの言葉に、ユリアは頷く。

 

「さて、エドよ。今後のお前の予定だが、これからどうするつもりだ?」

 

 カシウスは話を変えて、エドの今後の予定を聞く。

 エドはカシウスに会うためにリベールに来たがその目的は今、果たされた。

 エドはしばし考える素振りを見せるが、すぐに口を開く。

 

「教会にいる協力者に連絡を取ろうと思います」

「教会に?」

「はい。今回のことで、一つわかったことがあります。《庭園》はどうやら、教会にも手を付けている」

 

 足止め目的で、《外法狩り》をあんないいタイミングで送り込んできた。《外法狩り》は教会上層部の人間しか知らない、いわばトップシークレットの内容だ。

 教会がそれを露呈するようなことはおそらくしない。

 考えられるとするなら、教会の上層部に《庭園》のスパイがいるということだ。

 

「今日、会ったケビン神父に頼めないんですか?」

「無理だ。あいつは今、別件で動いている。それに《庭園》はあいつが俺の協力者と接触しないように監視すると思う」

「そう考えると、俺もダメだな。奴らは俺を相当警戒している。俺の行動も監視されていると思った方がいいな」

「えぇ。だから、協力者に直接連絡するんじゃなく、誰か仲介してくれる人に頼もうかと思う」

「あてはあるの?」

 

 キリカの質問にエドは首を落として横に振る。どうやら、彼自身、協力者の知り合いに心当たりはないらしい。

 

 このリベールに来るまでは……

 

「カシウスさん。そして、遊撃士のみなさん」

 

 エドはカシウス達、遊撃士に顔を向ける。

 

「あなた達に依頼をしたいことがあります」

「依頼とは?」

「ある人物を探してもらいたい。その人はおそらく、俺の協力者の知り合いだと思うのです。その人に会って、仲介を頼もうと思います」

「あてがなかったんじゃないの?」

「はい。俺もその人がどこの誰なのか正直知りません。でも、もしかしたらと思う人がいます」

「なにか手がかりはあるのかい? さすがに手がかりなしでは、我々も手がつけられない」

 

 顔も名前も知らない。どこにいて、何をしているのかも不明。そして、手がかりはなし。

 さすがの遊撃士でもそれでは、なにもできないとクルツは忠告する。

 

「手がかりはこれです」

 

 エドは懐からあるものを取り出した。

 一同がそれに視線を向けて、かすかに目を丸くする。

 

「これって、まさか……」

「はい。この本に載っている人を探してください。おそらく、その人が俺が探し求めている人です」

 

 エドが取り出したのは、一冊の本。

 リベール王国の書店で最近、人気がある小説。

 その小説の表紙には「カーネリア」と書かれていた。

 

「トビー。この小説の主人公のモデルとなった人物を探してください」




 独自設定⑤ ユリアの階級
 空の軌跡FC時は中尉だったので、一年前のこの時は一つ下の少尉にしました。

 独自設定⑥ D∴G教団
 古い時代から存在していた教団がどのような形で世間に知らされてたのかわからなかったので、エドが原因で露呈したことにしました。

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