英雄伝説外伝 金の軌跡   作:魔ギア

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 お待たせしました。
 第三章、ラストになります。
 それではご覧ください。


第五十三話 自分の力で

 七耀暦1201年 エレボニア帝国 レグラム 6月20日

 

 夏至祭が無事に終わり、幽霊騒動も終息したことで、レグラムは日常の生活に戻った。

 朝早くから練武場には門弟たちの気合いの入った声が響き渡っていた。

 街中では、子供たちが元気に遊んでいて、大人たちは些細な話で楽しんでおり、平和な日常がそこに広がっていた。

 そんな当たり前の日常が広がっているレグラムの領主が住むアルゼイド邸では、外の明るさとは対照的に、暗く重たい空気が漂っていた。

 

「それでは、今後のことについて改めて話し合おう」

 

 アルゼイド邸のとある一室。ヴィクター・S・アルゼイドはその場に集っている一同を見渡し話を進める。

 遊撃士協会所属のトヴァル・ランドナー。

 七耀教会所属のセリス・オルテシア。

 鉄道憲兵隊のミハイル・アーヴィングと、クレア・リーヴェルト。

 そして、重要参考人であるエドワード・スヴェルトとオランピア・エルピス。

 一同が深刻そうな表情を浮かべており、その場にはしばらくの間、長い無言状態が続いていた。

 

「アタシはまだ納得できねぇ」

 

 長い沈黙を打ち破り、最初に口を開いたのは、教会所属のセリス。

 

「結社の人間と協力関係を結ぶなんて、とてもじゃねぇが了承できねぇ。うちとあいつらは何度もぶつかり合ってんだ。今さら、仲良しこよしだなんてできるわけねぇだろう」

「遊撃士協会も同様だな。子爵閣下、各地で発生している事件の裏には、奴らが関与しているものがいくつもあります。はっきり言って信用できませんよ」

 

 セリスに続いてトヴァルも結社との共闘に苦言を呈する。

 彼女達の言う通り、結社《身喰らう蛇》は過去に七耀教会と遊撃士教会との間で何度も争いをしていた。

 昨日まで対立していた者が、急に手を取り合おうと言われても、それは無理な話だ。

 

「そなたらの考えも理解できる。だが、《庭園》が我々の想像をはるかに超えた組織であることがわかった以上そうはいってられない。《庭園の主》。特にあの男の存在はな」

「ここ最近、未解決の殺人事件が世界各国で増加傾向にある。昨日もすでに三件、帝国内で確認されている」

「おそらく、自分達の存在が各国に知れ渡ってしまったのが原因だと思います。今までのように密かにやる必要がなくなったので、積極的になっているのかもしれません。事件を起こした犯人はいまだ捕まっていませんが……」

 

 反対の意見を示すセリスとトヴァルとは逆に、ミハイルとクレアは、世界の情勢を考慮した上で、結社との協力に同意していた。

 

「俺も今回の件には賛成だ」

「なっ! エド!」

 

 セリスは驚きのあまり、エドの胸ぐらを掴む。彼がまさかの賛成を意を示したことに、彼女は言葉を失ったのだ。

 エドは胸ぐらを掴まれたまま、彼女を見つめながら話を進める。

 

「ヴィクター卿の話では、今回の件は結社と協力するんじゃなくて、《鋼の聖女》個人と協力するということになっている。つまり、結社が組織だって動くということはない。そうですよね、ヴィクター卿」

「うむ。主である《盟主》に誓って、と彼女が私にそう言ってきた」

「そうか。ならば、一層安心だな」

「なにがだ?」

「結社の人間が何かしらの契約を交わす際、『《盟主》に誓う』というのは奴らにとっては絶対の誓約みたいなものだ。俺が知る限り、奴らがそれを口にして契約を違えたことはない。何よりも相手は《鋼の聖女》。結社の中でもまだ話が通じる人物だ。信用してもいいと思う」

 

 それに、とエドは一度、言葉を切って話を続ける。

 

「じっちゃんもかの聖女のことはそれなりに信用しているみたいだからな」

「せ、先生が!?」

 

 驚きの内容に目を丸くするセリス。トヴァルは、二人の会話から出てきた人物の正体がわからず、エドに訊ねる。

 

「エド。お前らが言う、じっちゃんやら、先生やらって誰なんだ?」

「俺の祖父《爆拳》のオーバの上司にして、星杯騎士の《守護騎士》の一人。《吼天獅子》グンター・バルクホルンだ」

 

 エドはトヴァルの質問に軽く答え、話を戻す。

 

「三年前にあった《D∴G教団》のロッジ制圧作戦。あの時、《結社》の人間も秘密裏に協力していた。教団の後身である《庭園》を放置するとは思えない。別に仲良くしろとは言わない。共通の敵を打倒するために、互いに利用し合えばいいだろう」

「お前……、そんな他人事みたいに……」

「他人事だからな」

 

 開き直って語るエドの姿にトヴァルは呆れてため息をついた。

 

「敵の敵は味方ってか? わかったよ。お前さんの言う通り、精々この状況を利用させてもらいますよ。教会の方もそれでいいな」

「ちっ……、わかったよ」

 

 セリスはエドの胸ぐらから手を放し、納得がいかないものの事情を受け入れた。

 

「話はまとまったな。それでエド、そなたらはこれからどうする?」

「そうですね。お師匠さんに頼んだことも空振りになっちまったし……」

 

 エドは先日、法国から連絡が来た、アインの伝言を思い出す。

 本来なら、二、三日で連絡が届くはずだったが、教会に潜り込んでいると思われる《庭園》のスパイを探るのに一週間以上もかかり、連絡がだいぶ遅くなっていたのだ。

 そして、その結果はすでに手遅れだったとのことだ。

 エドの推察通り、《古代遺物》を保管していた施設からは何点かが盗まれていた形跡があった。そこでクロスベルとリベールで使われていた《古代遺物》は教会がすでに回収していたものだったということがわかった。

 そして、それらを盗んだ容疑者に該当する人物を判明することはできたのだが、その人物はエドの事件から一ヶ月後に行方不明となっていた。

 《庭園》が自分達の存在が外部に漏れないようにするため、密かにその人物を保護、もしくは暗殺をしたのだろう。

 

「別の糸口から探すしかねぇな」

「何か手がかりがあるのですか?」

 

 クレアの問いかけにエドは両腕を組んで思考を巡らす。

 レグラムに来る前は、手がかりが皆無だったため、アインに頼るしかなかった。

 だが、それが空振りとなってしまった以上、エドにはもはや他の手がかりになるものがない。

 

「……《獅子》殿に会ってみればどうだ?」

 

 そんなエドの様子を見ていたヴィクターは、一つの提案を思いついた。

 

「じっちゃんにですか?」

「うむ。城で対峙した《庭園の主》。あれほどの拳闘家はそうそう見かけない。顔の広い《獅子》殿なら奴が何者なのかわかるかもしれない。……それに」

「それに?」

「奴の動き。多少アレンジしているところはあるが、あの動きは《獅子》殿が使う《崑崙流》に似ていた」

 

 その言葉にエドは《庭園の主》との戦闘を振り返る。

 あの時は命がけだったから、そこまで気にすることができなかった。エドは冷静に《庭園の主》との戦いを振り返る。

 

「……確かに《崑崙流》に酷似する部分はあった」

「わかるんですか?」

「剣を習う前は《崑崙流》を習っていたからな。つまり、《庭園の主》は《崑崙流》の門弟だった?」

「見様見真似という線もあるが、あれほど研ぎ澄まされた功夫はただ見るだけで身につけられるようなものではない。ちゃんとした師の指導の下で鍛え上げられたものだろう」

「《崑崙流》の師範代であるじっちゃんならわかるかもしれない、ということか」

 

 ヴィクターの推察に一理あると感じたエドは深く頷く。

 しかし、問題が一つ残ってしまう。

 

「じっちゃんが今、どこにいるのかだよな」

 

 いざ、探そうにも巡回神父として大陸各地を飛び回っているグンターが今、どこにいるのかエドには見当がつかなかった。

 どうしたものか、と頭を悩ませるエドにセリスは声をかける。

 

「エド。それならアタシの舟に乗るか?」

「え?」

「同じ《守護騎士》のアタシなら、先生の居場所がわかるかもしれねぇ。何なら総長あたりが何か知ってるかもしれねぇしな。それに、移動するにも足が必要だろう? だったら、アタシの舟を貸してやるよ」

 

 セリスからの提案にエドは口をつぐむ。

 特に反対するような内容ではなく、むしろ願ったり叶ったりの提案だ。

 だが、二年前の最後のことを気にしているエドはすぐには賛同しなかった。

 エドは考えながら、セリスの顔をじっと見つめる。

 ここに来てから遠くからしか見たことのなかった少女が、思っていた以上に大人びていることに気づいた。

 身長はあまり伸びなかったが、それでも魅力的な女性に成長しており、エドは内心、少しドキッとする。

 

「おい、エド。今、何考えてた?」

 

 身長のことを考えていたことに気づいたのか、ジト目で睨んでくるセリス。こういうことに敏感なのは、相変わらず変わっていなかった。

 

「……わかったよ。お前の舟に乗せてもらうよ」

 

 結局、他の案を思い浮かべなかったエドはセリスの提案に甘んじて乗ることになった。

 その後、今後の方針を決めた一同は解散する。

 ヴィクター、トヴァル、ミハイル、クレア、そしてオランピアという順に一室から出ていき、続いてエドも出ようとする。

 

 ぽすっ

 

 扉の少し前でエドの背中に何かが当たる。何だ、と首を後ろに向けるとセリスが顔をうずめていた。

 

「おい、セリス。どうしたんだよ」

「黙ってくれ」

 

 彼女から発せられた声は小さく、少しくぐもっていた。

 

「……セリス」

「今は黙って、こうさせてくれ」

 

 セリスは両腕をエドの腰に回す。

 それ以降、一言も喋らなくなったセリスにエドも黙って背中を貸す。

 耳から聞こえる小さな小さな啜り泣きを無視して。

 その様子を扉の隙間から覗いていた白髪の少女はまるで逃げるようにその場から立ち去った。

 

 

 ~~~~~~~~~~

 

 慌ててアルゼイド邸から出て行ったオランピアは湖港にあるベンチに座っていた。

 彼女の正面には先日、死闘を繰り広げていた《ローエングリン城》がそびえ立っていたが、彼女の視線は城を眺めておらず、下に向いていた。

 

「……痛い」

 

 オランピアは胸に手を置き、ぼそっと呟く。

 エドと共に旅をしてから、時々、胸が苦しくなることがよくある。

 彼と二人っきりの時は胸の鼓動が速くなるものの、どこか心地良いものを感じていた。

 だが、彼が女性の、特にセリスの話をする時はきつく締め付けるような痛みが走ってくる。

 今回の痛みはこれまでのものとは比べることができないほど激烈だった。

 

(……エドさんのことは信じている。私を見捨てたりなんかしない。……だけど)

 

 オランピアは先程までアルゼイド邸でエド達と今後の方針を決めていた。

 解散後、部屋を退室したが、忘れ物に気づいた彼女は踵を返して部屋に戻っていった。

 

 その時に見てしまった。

 エドの腰に腕を回して、背中から彼に抱きつくセリスの姿。

 そして、それを拒絶せずに、黙って受け入れているエドの姿を。

 

 その光景を覗き見してしまったオランピアは、再び踵を返して部屋から離れる。

 その後のことはあまり覚えていない。

 何も考えられず、呆然とさまよい、気づいたら湖港にたどり着いていた。

 

(やっぱりエドさんは、今でもセリスさんのことを……)

 

 セリスを拒絶しなかったエドの姿に軽いショックを受けるオランピア。

 セリスに抱きしめられた時に見せた彼の顔は今まで見たことがなかった。

 自分の知らない彼の側面を見せてもらえるセリスのことを羨ましいと思ってしまう。

 

 わからない。

 どうして、拒絶しない彼を見てショックを受ける。

 どうして、彼女のことを羨ましいと思う。

 

「デュバリィさんなら、わかるかな……」

 

 この街で出会い、共に戦ってくれた若き騎士を思い出す。

 彼女ならば自分が抱くこの気持ちが何なのかわかるかもしれない。だが、彼女はすでにこの街から立ち去ってしまった。それでもオランピアは彼女を求めてしまう。

 

「こんなところで何をしていますの?」

「え!?」

 

 聞き覚えのある声に、思わず声を上げてしまうオランピア。

 まさかと思い、湖港の入り口に慌てて振り返る。

 そこには最初に会った時と同じ、町娘の装いをしたデュバリィが腕を組んで立っていた。

 

「ど、どうしてまだ街に?」

「あなたへの挨拶をしていませんでしたから。それで来ましたわ」

「え? それだけ、ですか……?」

 

 彼女がこの場にいる理由にオランピアは目を丸くし、首を傾げる。そんなことのためにわざわざ来てくれたのか。

 

「何ですの? 他に何かあると思いまして?」

「いや、えっと。もしかして、この街で何か忘れ物をしたのかなと思いまして」

「ブホッ!」

 

 突然、息を吹き出すデュバリィ。その後、顔を真っ赤にして妙に早口で捲し立てる。

 

「べ、べ、別にそんなことはありませんわ! 本当に、ほんと~うにただ挨拶をしにきただけですわ!」

「は、はぁ……」

 

 忘れてきたんだ。

 そう心で呟くオランピアはデュバリィの平常運転ぶりにどこか安堵していた。

 

「ゴホンッ! それで? 今度は何を悩んでいるんですの? 先程、私の名前を呼んでたみたいですけど」

「えっと、それは……」

 

 自分で言っておいて、話すとなると戸惑いを隠せずにいるオランピア。対する、デュバリィは逃がさないと言わんばかりに彼女の目をじっと見つめる。

 物言わぬプレッシャーに押し負けたオランピアは潔く自身の悩みを吐く。

 ゆっくりと語る彼女の言葉を聞き逃さないよう、彼女の隣に座って耳を傾けるデュバリィ。

 やがて悩みを全て吐き終えたオランピアは、沈黙してしまったデュバリィに意見を求める。

 

「デュバリィさん。この気持ちって何なのでしょうか?」

「え?! えっと……それは……」

 

 デュバリィはオランピアから目を逸らす。

 額には汗のようなものが流れ、ひどく焦っている様子だった。

 

(こ、これって、"あれ"ですわよね。小説とか劇とかでよく見る、殿方に抱く"あれ"ですわよね! な、何て答えればいいんですの~~!?)

 

 オランピアの抱くそれに当たりをつけるが、残念なことにそういった経験がないデュバリィにはそれを正確に教えられる自信がなかった。

 デュバリィはチラッと気づかれないようにオランピアを見る。

 純粋な視線をこちらに向けてくる少女。

 納得のできる答えを持っていると疑わない悪意のない無言の訴え。

 

(と、とにかく、考えるのですのよ、《神速》のデュバリィ! 私なりに彼女が納得できる答えを!!)

 

 うぉおお、と雄叫びを上げんばかりに思考を神速回転する筆頭隊士。

 

(………………ダメだ!!)

 

 そして、神速で現実を理解するデュバリィ。

 経験がものを言うというのだろう。

 結局、経験のないデュバリィでは真理に行きつくことがなどできなかったのだ。

 

「……城でのことを覚えていますか?」

「城?」

「スヴェルトのことが好きなのかという話です」

 

 だが、自分を頼ってくれている彼女をこのままにすることはできない。

 だから、今出せる自分の答えを言う。

 

「たぶんですけど、その答えがあなたが求めている答えになると思いますわ」

「そう、なのですか?」

「私はそういった経験がありませんから、絶対とは言いきれません」

 

 デュバリィはベンチから立ち上がり、湖港から出ようと足を動かす。

 

「それでは私はこれで失礼しますわ」

「え、もう行ってしまうんですか?」

「言ったはずですわ。今日は挨拶しにきただけだと」

「でも……」

「甘えるんじゃありませんわ!」

 

 デュバリィはオランピアの正面に立ち、両手を腰に添えて彼女を見下ろす。

 

「何でもかんでも、誰かに答えを求めていては成長しませんわよ。あなたの抱くそれは他ならぬ、あなた自身で見つけなくてはなりません!」

「私自身で……」

「そうです。あなたが多くのことを学んで、感じて、考えて、自分の力で答えを出しなさい」

 

 デュバリィはそう言って、今度こそ湖港を出る。

 その後ろ姿を見ていたオランピアは勢いよくベンチから立ち上がった。

 

「デュバリィさん!」

 

 声を張り上げて、その場から去るデュバリィに声をかける。

 突如、呼ばれた彼女は足を止めてオランピアの方に振り向く。

 

「ありがとうございます! また、会えますよね!」

 

 それに対してデュバリィは、

 

「えぇ! 答えはその時に聞かせてもらいますわ!」

 

 最後に手を振り、今度こそオランピアの前から姿を消すのであった。

 

 

 ~~~~~~~~~~

 

 七耀暦1201年 エレボニア帝国 レグラム 6月22日

 

 二日後、療養と次の目的地が決まるまでレグラムに滞在していたエドは、オランピアとセリスを引き連れてエベル街道へと出る門の前へと向かう。

 次に行く場所が決まったエドは出立のため、セリスが乗ってきた舟へと向かうのだった。

 

「ヴィクター卿。滞在中、お世話になりました」

「よい。そなたには我が道場の門弟達が世話になった。彼らも良い刺激になっただろう」

「そういって頂けるのなら幸いです。ミハイル中尉もお世話になりました。宰相閣下にもよろしく伝えておいてください」

「了解した。次、帝国に来る際は潔白を証明してからにしてくれ。今回のようなことはもう二度とないからな」

「遊撃士協会の連中には俺と子爵閣下が何とか言っておくから、困った時は遠慮なくうちらに立ち寄ってくれ」

「はい。トヴァルさんもありがとうございました」

 

 最後にエドは滞在時に世話になったヴィクター達に挨拶を交わしていた。

 

「オランピアさん。これを受け取ってください」

 

 クレアはオランピアに木で作られた箱を渡す。

 それを受け取ったオランピアは木箱を開け、中にあるものを手に持つ。

 

「これは……神楽鈴?」

 

 オランピアが手に持ったのは、オランピアの舞で本来使われる楽器、神楽鈴と呼ばれるもの。

 木で作られた棒を中心に金色の鈴が円を描くように付けられていた。

 

「私の実家が音楽に縁のあるところでして、倉庫にあったものを持ってきました」

「クレアさん……、ありがとうございます。色々と良くしてくれて」

「いいえ、私の方も肝心な時に役に立てなくてごめんなさい」

「そんなことありません。屋敷でクレアさんにはたくさんのことを教えてくれました。本当に感謝しています」

 

 頭を下げるオランピアにクレアは照れくさそうに頷く。

 

「エド! そろそろ行くぞ」

「わかった。オランピア、行くぞ」

「はい。皆さん、どうかお元気で」

「うむ。そなたらの未来に女神の加護を」

 

 最後にヴィクター達に一礼し、エド達は街道に出る。

 オランピアはエドに近づき、そっと腕に抱き着く。

 

「なっ!?」

「オランピア?」

「すみません、どうかこのままにさせてください」

 

 オランピアの行動にセリスは声を上げ、エドは目を丸くする。

 当のオランピアは顔を少し赤くなりながらもその腕を離さなかった。

 

(……あたたかい)

 

 それでいて、胸から来る高鳴りが心地良い。

 ずっとこうしていたいと思ってしまう。

 

(私の中にある"これ"が何なのか、まだわからない。でも、いつか必ず、自分の手で……)

 

 他人に頼るだけでなく、時には自分の手で探し出さなければならない。

 厳しくも思いやりがあり、少し抜けている所はあるが、いざという時に頼りになる騎士。

 彼女の言葉を胸にオランピアは次の目的地へと向かうのであった。

 

第三章 心に宿りし想い ~雛鳥の騎士(〈神速〉デュバリィ)~ END




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