英雄伝説外伝 金の軌跡   作:魔ギア

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それでは、ご覧ください。


第六十話 夜襲

 七耀暦1201年 ノルド高原 7月9日

 

 就寝を迎えた真夜中の深夜。

 星々が広がっていた夜空は突如として雲に覆われ、その輝きを奪われていた。

 立食会を終え、寝泊まりしているテントで寝ていたエドはゆっくりとベッドから身体を起こした。

 

「……何なんだ、あの夢は……」

 

 法衣を脱いで、薄着になっていたエドの背中にはべったりと汗がついていた。

 今日もまた、妙な夢を見てしまい、早く起きてしまったエド。

 前回見たものと同じ、一人の男とそれにまとわりつく妙な声が出てくる夢。

 三回も同じ夢を見たことでエドはついに自分が見た夢に疑いを抱くことになる。

 

(……今回現れた男はだいぶ年を食っていたけど、同じ男なのは間違いない。だけど、どうして老人の姿をしていたんだ?)

 

 今回見た夢はおそらく、例の妙な声と初邂逅した時のものだろう。

 だが、前回見た時の二つの夢に出てきた男は若い青年の姿をしており、その時には例の声はすでに彼にまとわりついていた。

 もしも、三つの夢が繋がっているのなら、老人だった彼は何かしらの原因で若返ったということになる。

 妙な声の持ち主が彼に何かをしたというのか。

 

(……いや、違う。問題なのはそこじゃない。問題はどうして俺がそれを見せられているんだ?)

 

 エドは夢に出てきた男に見覚えがなかった。

 まったく面識のない男の夢を三日連続で見たことに、得体の知れない不気味さを感じていた。

 

「……っ!」

 

 エドは考え込んでいた最中に漂ってきた悪臭に思わず鼻を掴む。その臭いは非常に不快で、彼の思考を一瞬で止めてしまうほどだった。

 危機感を募らせたエドはベッドから起き上がり、同じテントで眠っている二人の下へ向かう。

 

「セリス! オランピア! 起きろ!」

「ん~、んだよ、こんな夜更けに……」

「……エドさん?」

 

 エドの大声に起こされたセリスたちはまだ眠たそうな顔をしていたが、少しずつ体を起こしていった。

 彼女たちもエドと同じく薄着の状態になっており、しみのない柔らかい肌をエドにさらけ出していた。

 まだ意識がぼんやりとしていた二人だったが、鼻に刺さる悪臭に意識が一気に覚醒する。

 

「うっ! んだ、この臭いっ!」

「何だが、とても生臭いです」

「あぁ。外で何かが起きている」

 

 近くに会った法衣を着替えたエドはベッドにかけてあった剣を手に持ち、外へと向かう。

 オランピアたちも慌てて、ベッドから出て準備をする。

 法衣に身に纏ったセリスは大剣型の法剣を背中に抱え、シスター服に着替えたオランピアは小太刀とオーブメント、そして、イシュタンティが入ったリュックを身に着けた。

 二人がテントから出ると、エドがランプを手に持って辺りを照らしていた。

 外は夜の闇に包まれ、先がまったく見えない。

 都会のような街灯がないこの村では、エドが持つランプの光が唯一の頼りだった。

 

「エド、何か見えるか?」

「……周りには何もない。おそらく臭いはもっと先の方だ」

 

 セリスはエドに周りの様子を尋ねていた。彼が暗闇の先を見ることができる手段を持っていることを知っているからだ。

 エドは《魔眼》を開いて暗闇の先を見据える。

 見えないものを視認する《魔眼》の「強制視認能力」。

 エドは淀みない足取りで臭いがする方へと進み出す。その後ろをセリスとオランピアは遅れないように付いて行った。

 

「この臭いはいったい何なんでしょうか……」

「生臭くて、気持ち悪いな。……だが、どっか覚えがあるな……」

「セリスさんもですか? 実は私も……」

 

 臭いの正体を掴もうと意見を交わしあう女性二人。

 その会話に聞き耳を立てていたエドも嗅いだことがある臭いの正体に考えを巡らせていた。

 

「……ここだ」

 

 エドがたどり着いたのは、ノルドで飼っている羊の牧場。

 入り口の柵は、壊れた木の欠片が散乱していた。その破片は、辺り一面に落ちており、強い衝撃を食らい、破壊された跡が広がっていた。

 

「柵が……」

「誰かがぶっ壊したのか?」

「っ! 二人とも静かに。……何か聞こえねぇか?」

 

 エドは静かにするように促し、そっと牧場の奥へと耳を澄ませる。

 二人もエドと同じように牧場の方に耳を澄ませた。

 

「……何か、食べてる?」

「起きた羊が草でも食ってんのか?」

 

 耳の中に入るのは、何かを噛んでいる咀嚼音。

 羊牧場にあるのは羊と餌となる干草や生草だけ。

 セリスとオランピアは音の正体を察して、ほっとため息をこぼす。

 

「……違う」

「エド?」

「こいつはそんな生易しいもんじゃない」

 

 しかし、エドだけは顔を険しくする。

 覚えのある臭い。

 そして、今も続く聞き覚えがある不気味な咀嚼音。

 その二つが見事にエドの中で繋がり、その正体に気づく。

 

「二人とも、俺から離れるな」

「エドさん?」

「……行くぞ」

 

 ゆっくりとした足取りで音がした方へと向かうエドたち。

 咀嚼音が徐々に大きくなる。

 だが、その音はむしゃむしゃといった草を食べる音ではなかった。

 どちらかというと、くちゃくちゃといった肉を食いちぎる音。

 セリスたちもその音を聞き取り、顔が少しずつ青ざめていった。

 

「……おい、誰か倒れてるぞ」

「え! だ、大丈夫ですか!」

「ダメだ! オランピア!」

 

 暗闇で姿が見えない倒れた影にオランピアは近づこうとするが、エドが咄嗟に肩を掴む。

 止められたオランピアはエドに視線を送るが、エドはランプで前にして影を照らす。

 

「うっ!」

「こいつは……」

 

 オランピアは口元を押さえ、セリスは顔を歪ませて"それ"を見る。

 

「……見事に腹を食われてるな」

 

 エドは"それ"の側に膝を着いて、明かりを照らす。

 そこには腹をごっそりと無くした羊の死体がおびただしい血を地面に広げて倒れていた。

 

「臭いの正体はこいつだな」

「血の臭い、か……」

「あぁ。それが俺たちが泊まっていたテントまで届いたんだろう」

「なるほど。道理で覚えのある臭いだと思ったぜ」

「で、でも、ここから私たちが泊まっていたテントまでかなり距離がありましたよ? 風があるとはいえ、届くものなのですか?」

「まぁ、一体だけじゃ無理だろうな」

 

 顔を上げて周りを見るエド。そこには腹や首、頭などを失った羊の死体がいたるところに転がっていた。

 

「こんだけの量があればいやでも届くだろう」

「……ひどい」

「あぁ、むごいことをしやがる」

 

 目の前に広がる惨劇を逸らす女性二人。

 エドもしかめ面になっていたが、勢い良く立ち上がった。

 

「お前ら、周りに警戒しろ!」

「エドさん?」

「どうした?」

「音が止んだ」

「「!!」」

 

 いつの間にか音が鳴り止んでいたことに気づいたエド。

 三人は背中合わせになって周囲に注意を向ける。

 だが、辺りが真っ黒に染まっており、敵はおろか景色すら見えない状況だった。

 オランピアは暗闇の先から来るプレッシャーに息を飲み、汗で滑る小太刀を持ち直す。

 

 

 ……ザ、……ザ

 

 

 草を踏みつける音がいつもよりも大きく聞こえる。

 緊張のあまり、誰かが無意識に地団太を踏んでいるのだろう。

 

(……誰が?)

 

 暗殺者時代からの経験からか緊張はしても余計な音をたてないよう、無意識に注意していたオランピア。

 当然、エドたちも雑音をたてないように注意を払い、周りを警戒していた。

 

 では、先程の足音は誰のものだ?

 

 

 ザッ、ザッ、ザッ

 

 

 今度ははっきりと聞こえた。

 エドたちも音に反応して一斉に振り返る。

 

「「「!?」」」

 

 音の正体に三人は目を見開く。

 白い体毛の狼。

 エドたちの前に現れたのはノルドに生息する魔獣――ホワイトファングだった。

 だが、その姿は異質なものだった。

 身体の筋肉が肥大化し、サイズが一回り大きくなっていた。

 口から見える牙は真っ赤に染まっており、エドたちを睨みつける目も血のように濁っていた。

 だが、エドたちが一番に目がいったのは、首だった。

 白い首の半分がなくなっており、羊の腹と同じようにそこからおびただしい血が地面へと流れ落ちていった。

 

「んだ……ありゃ……」

「い、生きてるんですか?」

 

 あまりにも常識を逸脱した魔獣の姿に立ち尽くしてしまうセリスとオランピア。

 その様子を気にすることなく、魔獣はエドたちを視界に捉え、血まみれの口端を持ち上げた。

 

「来るぞ!」

 

 魔獣が勢いよく跳びこんだ。空気を切る音が耳を鳴らし、踏み込んだ地面は陥没していた。

 血に染まった牙をエドたちに向ける魔獣。

 エドはオランピアたちの前に立ち、魔獣の口に目掛けて剣を突き刺す。

 突き刺された剣は魔獣の口を通り、喉を刺そうとする直前、魔獣は口を閉じて剣の進行を止める。

 

「っ! 強い!」

 

 引き抜こうと剣を引っ張るエドだったが、地面に着いて踏ん張る魔獣の尋常ではない顎の力に剣を抜けずにいた。

 抜けないと判断したエドは魔獣に近づいて、顎に目掛けて強烈な膝打ちをする。

 突然の衝撃に魔獣は口を開いてしまう。口から剣を抜いたエドは続けざまに魔獣に蹴りを入れて吹き飛ばす。

 吹き飛ばされた魔獣は空中で体勢を整え、地面に着地した瞬間、再びエドたちに跳び込もうとする。

 

「遅い!」

 

 だが、それよりも前にエドが魔獣に近づき、横に一閃。

 跳び込もうとした魔獣の身体はそのまま斬られ、消滅していった。

 

「っ……、切れ味が悪いな……」

 

 エドは先程の斬った感触に悪態をつく。

 エドが持っている剣は太刀ではなく、両刃がついた直剣。

 同じ斬る武器ではあったが、使い方の違う武器の性能差にエドは違和感を拭えきれなかった。

 

「エド! まだだ!」

 

 後ろから呼ぶセリスの声にエドは剣から視線を外す。

 先程、倒した魔獣とは別個体の魔獣が暗闇から次々と現れる。

 頭の上、肩肘、背中などが食いちぎられており、先程の個体同様、身体の一部分がなくなった魔獣がエドたちを囲い込む。

 

「どんだけ、潜んでいやがった!」

「泣き言はいい! とりあえず、こいつらを片付ける。お互い離れるなよ!」

「はい!」

 

 一体の魔獣が首を上げて咆哮する。すると、周りの魔獣が共鳴し一体、また一体と咆哮する。

 村全体に唸る魔獣の咆哮に押されるエドたちだったが、お互いに位置を確認しながら、手分けして魔獣の駆除に取りかかった。

 

「オラァアア!」

 

 法剣を振るい連結していた刀身を伸ばすセリス。

 手首と腕を動かし、伸びた剣の軌道を変えながら、果敢に魔獣を攻め続ける。

 赤い刃は魔獣を切り裂き、その数を徐々に減らす。だが持ち前の俊敏性を駆使した魔獣は刃を上手く躱しながら、セリスとの距離を少しずつ縮めていく。

 複数の魔獣がセリスの周辺を取り囲み、逃がさぬよう一斉に襲いかかった。

 

「しゃらくせぇ!」

 

 セリスは法剣を戻し、そのまま地面に突き刺す。

 両手を前にかざし、その中心から赤いオーラが光りだす。

 

「これでもくらいなっ!」

 

 集まった赤いオーラは熱を帯び、やがて炎を宿した。

 

「オグンオリシャ!!」

 

 巨大化した炎はセリスを包み、彼女を中心に巨大な柱が立った。

 柱に突っ込んだ魔獣は焼かれていき、雄叫びを上げる間もなく消滅した。

 

「ヘヴンリーロンド!」

 

 一方、セリスから少し離れた場所でオランピアはイシュタンティと共に魔獣を相手していた。

 イシュタンティはオランピアの周辺を舞い、伸ばした爪と足で魔獣を蹴散らす。

 数を減らしたオランピアは小太刀を構えて、残った魔獣と交戦する。

 魔獣は助走をつけて、オランピアに襲い掛かる。

 正面から迎え撃ったオランピアはギリギリの距離で魔獣の攻撃を躱す。

 

「はぁ!」

 

 すれ違いに魔獣の足に刃を通す。魔獣の足が空に飛び、バランスを崩した魔獣は地面に倒れる。

 

「速いけど、速さでの勝負なら!」

 

 オランピアは舞を活かしたステップで次々と襲い来る魔獣を躱し続ける。同時にすれ違いざまに足を狙い、その機動力を奪う。

 蝶のように舞い、カウンターを駆使するオランピアを噛み殺そうと魔獣は諦めずに襲い続けるが、オランピアに上手く誘導されて、お互いに身体をぶつけてしまう。

 

「行きます!」

 

 

 ――八葉一刀流 二の舞

 

 

 力強く踏み込んだ足は地面を弾き、一瞬で魔獣との距離を縮める。

 トップスピードに乗って、魔獣に近づくオランピアはすれ違いざまに斬り、距離を取る。

 すると、オランピアは小刻みにステップを繰り返して方向転換。

 スピードを保ったまま飛び込み、再び魔獣に刃を向ける。

 距離を取り、再び接近。

 再び距離を取り、またもや接近。

 何度も繰り返し、オランピアの動きが残像となって徐々に加速する。

 

(エドさんのように足をばねにして加速するための筋力はない。ならば、足を止めずにステップを何度も踏み込んで、勢いを殺さずに少しずつ加速する!)

 

舞疾風(まいはやて)!」

 

 かまいたちのように放たれた無数の刃は魔獣の身体をバラバラにしていき、気づいた時には、立っている魔獣はすでにいなくなっていた。

 

(……こいつら、恐怖を感じていないのか?)

 

 一方、二人の近くで戦っていたエドは襲いかかってくる魔獣を撃退しながら、魔獣の様子を注意深く観察していた。

 同胞を何体も討ち取られ、数が少なくなっているにもかかわらず、魔獣たちに撤退をする様子がない。

 魔獣だろうと、敵の圧倒的な力を前にすれば、恐怖して逃げ出すものだ。

 だが、自分たちを襲ってくる魔獣たちは撤退するどころか、逆に勢いを増して、数で押し寄せてくる。

 

(身体の一部がなくなっていながら動けることといい、真夜中に襲ってくることといい、こいつらの様子は明らかにおかしい!)

「……と言っても、まずはこの状況をどうにかすることだな」

 

 エドは一旦、思考を中止して敵に集中する。

 エドの足下にはバラバラとなった魔獣が転がっており、力の差は歴然だった。

 

「悪いが、とっとと終わらせてもらうぞ」

 

 その言葉を最後に魔獣の視界からエドが姿を消す。

 突如、消えた得物を探そうと周辺を見渡すが、死角から表れたエドに一瞬で斬られた。

 エドの姿を捉えるも、また姿を見失い、数が減る。

 気づけば、あと三体しか残っておらず、エドは三体の中心に姿を現す。

 今度こそ逃がさないと、魔獣は全速力でエドに接近。

 その様子を慌てることなく、落ち着いた表情でエドは剣を両手に持ち、下に構える。

 

「……螺旋撃」

 

 剣の間合いに入った瞬間、エドは自分を中心に渦を巻き起こす。

 渦に巻き込まれた魔獣たちは、押し寄せてくる刃に身体を二つにされ、上空へと吹き飛ばされる。

 

「ふぅ……、これで一通り終わったか」

 

 エドはセリスたちに視線を向ける。

 二人とも、相手をしていた魔獣を一体も残さずに撃破しており、エドはほっと息を吐く。

 

「何があった?!」

 

 三人の戦闘が終わったところで、誰かが近づいてくる。

 手にランプを持ち、もう片方には刃が十字の形になっている槍を持ったラカンだった。

 ラカンは周辺に転がる魔獣と羊の死体を目撃し、目を大きくする。

 

「こ、これはいったい……!」

「俺たちが着いた時には、羊たちはこのありさまだ。魔獣はさっき全員、退治した」

「そうか……。だが、なぜこんな真夜中に魔獣が……」

 

 夜襲をしてくる魔獣もいるが、グエンが魔除けの導力灯を村の入り口に設置しているため、中に入られることはない。

 ましてや、皆が寝静まっているこの時間は、魔獣たちも睡眠を取っているはず。

 

「とりあえず、村の人たちを一カ所に集めましょう。奴らがまた襲ってくるかもしれない」

「そうだな。立食会があったテントに集める。エド殿たちも協力してくれるか?」

「はい!」

「了解だ」

 

 ラカンの協力に賛同するオランピアとセリス。

 早速、行動に移そうとしたその時。

 オランピアの後ろを覆う黒い影が彼女に迫る。

 

「あぶねぇ!」

 

 咄嗟にオランピアを抱えたエドはそのまま地面に転がる。

 ラカンは襲い掛かった影に明かりを照らす。

 

「なんだとっ?!」

 

 影の正体に驚きを禁じ得ないラカン。

 ラカンだけでなく、セリスも体勢を立て直したエドとオランピアも言葉を失っていた。

 

「ひ、羊!」

「嘘だろ……、さっきまで死んでたはずだぞ!」

 

 立っていたのは、腹を食われ、先程まで死体となっていた羊だった。

 セリスは羊が突然、動き出したことに動揺を隠せずにいた。

 羊は先程の魔獣と同じく、筋肉が異常に発達しており、一回り大きくなっていた。

 歯も急成長したのか、本来あり得ない鋭い牙をエドたちに見せていた。

 

「いったい、どうなっているんですか……?」

「いろいろ詮索したいが、まずはこいつらを何とかするのが先決だ」

 

 羊の後ろから、足音が鳴る。

 黒を否定する白い塊。

 暗闇から出てきた羊の群れは赤く染まった眼光でエドたちを威嚇する。

 

「魔獣より楽だけどよ、数が多いな」

「たぶん、この牧場で飼っていた羊全員がああなってんだろう」

 

 エドとセリスは先頭に立って、剣を羊たちに向ける。

 すると、ラカンがエドたちよりも前に出てきた。

 

「この子たちは我らノルドの一族が育て、我らに恵みを与えてくれた大切な友人たちだ。この子たちがこうなってしまったのは私の責任。ならば、私の手で女神の下へ送るのがこの子たちにやれる、唯一のことだ!」

 

 ラカンはランプを腰にかけて、両手で十字槍を力強く持つ。

 刃を下にし、腰を低くして構える姿は歴戦の戦士のような重みがある風格を持っていた。

 

「ラカンさん、助太刀します」

「女神の下へ送るのはアタシの仕事だ」

「私もお手伝いします」

 

 ラカンの横にエドたちが並び立ち、武器を構えて、羊たちを見据える。

 

「……感謝する。それでは、行くぞ!」

 

 ラカンの激昂が暗闇に響き、その直後、激しい剣戟の音が鳴り響いた。

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