英雄伝説外伝 金の軌跡   作:魔ギア

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第八十二話 届かぬ手

「ハァアアアア!!」

「ゼェエエリャアアアア!!」

 

 夜空へと響く激突。

 剣と斧槍が何度もぶつかり合い、夜の闇に火花が何度も飛び散る。

 車上で繰り広げる戦い。ぶつかり合う衝撃に打ち合っている二人が乗る車は何度も地面を跳ね上がる。

 

「ハッ! 馬上戦とは少し違うが、これはこれで楽しいな!」

「てめぇの話に付き合う気はねぇ!」

 

 問答無用とエドは剣を振り下ろす。

 アリオッチは斧槍の持ち手で剣を逸らし、すぐさま持ち上げて勢いよく振り下ろす。

 躱すこともできたが、躱せば車が真っ二つだ。

 

「ハァッ!!」

「チッ!」

 

 だから、エドは正面からアリオッチの斧槍を弾き返す。

 剣聖としての技術を最大限に使い、アリオッチとの力の差を補う。

 

「アハハ! こっちもこっちで楽しませてもらおうかな!」

 

 バックミラーから二人の戦いを見物していたメルキオルはハンドルを横に切る。

 メルキオルたちが乗っている車はエドたちが乗るリムジンに激突する。

 突然の衝撃にエドは思わずバランスを崩しそうになるが、すぐに持ち直す。

 

「ぐっ、このっ!」

 

 襲い掛かってくる衝撃に対して、ナージェはハンドルを巧みに操り、何とか体勢を持ち直す。

 そして、反撃とばかりに今度はナージェの方がメルキオルたちの車にぶつけてくる。

 

「おっとっと……。やるね~。それじゃあ、次行くよ!」

「させん!」

 

 両者が共に相手の車をぶつけ合う。

 衝撃でエドとアリオッチはバランスを何度も崩されてしまうが、徐々に慣れていったのか、揺れ動く車上で再び斬り合いを始めた。

 

「……今ならば!」

 

 厄介な幹部二人が自分を見ていないと判断したシェリドはこっそりと相手の車へと近づく。

 エドたちが彼らと相手をしている隙にオランピアを救出しようと動き出した。

 だが――、

 

「むっ!」

 

 突如、正面から襲ってくる黒い手にシェリドは後ろに下がる。

 手は空を切り、影の中へと消えていった。

 

「やらせるかよ!」

「……だめ」

 

 眠っているオランピアの前に双子の兄妹がシェリドに立ちはだかる。

 

「よくやったね~。そのまま、しっかりと見張るんだよ。もしも、彼女を奪われたら……わかってるよね?」

「「っ!!」」

 

 ドスが入ったメルキオルの声に表情を固める双子。その様子を見ていたシェリドは二人の境遇を漠然と察する。

 

(とはいえ、これでは迂闊に近づけない)

 

 先程少女が出した黒い手と少年が持っているアンティークのライフル。

 車上では躱せる場所がなく、距離も近い。

 これでは下手に動くことができない。

 シェリドが打開策を考える中、突如、メルキオルたちの車が加速する。

 不意なことに対応が少し遅れたが、ナージェは即座に車の後を追う。

 その時、メルキオルが後ろに向かって何かを投げつける。

 メルキオルが所持する爆弾型の《古代遺物》だった。

 

「っ! まずい!」

「ほいっと!」

 

 メルキオルが指を鳴らすと同時に爆発した。

 爆風に押されたエドたちの車は、爆発の煙で視界を封じられる。

 エドはすぐさま剣を横振りに一閃。車を包んでいた煙は一瞬で霧散する。

 しかし、前にはメルキオルたちの車がどこにも見当たらなかった。

 

「なっ! 彼らはどこに!」

「……しまった! 分断されたか!」

 

 追っていた車が消えてしまったことに驚くシェリドを余所に、後ろを見たエドはその理由を察する。

 

「分かれ道だったんだ。爆風で俺たちをこの道に行かせて、自分たちはもう一つの道に行ったんだ!」

「なっ!」

「いけません。仮にここで引き返しても、間に合いません!」

 

 敵の策にまんまとかかってしまい、相手を見失ったエドたち。

 どうしようかと考える中、エドは前方をじっと眺めていた。

 

「エドワード君?」

「……ナージェさん。これから俺の言ったとおりに進んでください」

「え?」

「たぶんですけど、何とかなるかもしれません」

 

 エドの目が黄金に輝く。

 本人も気づかずに開かれていた《魔眼》は入り混じった山道を一瞥し、エドはボソッと呟きながら、その道を目で追っていた。

 

 

 ~~~~~

 

 

 一方、龍來で《庭園の主》と対峙していたグンターたちの方は、予想外の結末になっていた。

 

「はぁ……、はぁ……、はぁ……」

 

 グンターは片膝を地面に付き、荒れた息を必死に整えていた。

 彼の目に映るのは、毅然とした立ち姿でこちらを見る《庭園の主》。足元には《黒月》の構成員が何人も倒れていた。

 

「どうした? これでおしまいか?」

 

 周囲に視線を送った《庭園の主》は、どこかがっかりした声色で肩をすくめる。辺りには彼と対峙した者たちが地面に倒れ伏せて、気を失っていた

 セリス、リオン、ツァオ。名を知れた者たちが地面に倒れており、残っているのは満身創痍になっているグンターと彼と同じく片膝を付いているジンだけだった。

 

「これだけの人数がいながら、いまだ私に傷一つも負わせられないとは。少々、期待外れだったよ」

「ぐっ、舐めるな!」

 

 ジンはボロボロの身体を何とか持ち上げて《庭園の主》へと向かう。

 放たれるのは豪腕の拳。《泰斗流》で磨き上げられた拳は重く、防げば骨折は免れない。

 

「フッ」

 

 《庭園の主》は身体を逸らし、その拳を難なく躱す。

 ジンは焦らずに連撃を放ち、相手に攻撃の隙を与えさせないように打ち続ける。

 しかし、まるで強風で飛ばされる落ち葉のように滑らかな動きでジンの攻撃を躱し続ける。

 

「ぐっ……(この男、俺たちの動きを完璧に読んでやがる!)」

 

 何度も打ち合うことで生じた疑念。その疑念が間違っていないことを理解したジンは、苦い表情を浮かべる。それはグンターも同様だった。

 

(どこを打ってくるのかがわかっているかのような立ち回り、死角から攻撃を容易く躱し、一瞬の隙をできる前に移動し、そのタイミングを合わせて崩していく)

 

 八葉一刀流が持つ《観の目》でもそこまで見抜くのは難しい。もはや未来予知といってもおかしくない《庭園の主》の先読みにグンターたちは苦戦を強いられていた。

 

(しかも、奴のあの動きは……)

 

 グンターはジンと戦う《庭園の主》の動きにどこか既視感を覚える。

 

「フンッ!」

「遅い」

 

 ジンが放った裏拳に対して、《庭園の主》は紙一重に躱してカウンターを打つ。

 防ぐことができなかったジンは顔面に拳をもらい、よろめく。

 

「獅子王靠!!」

「ガァッ!」

「っジン殿!」

 

 ガラ空きなった懐に強烈な一撃をもらったジン。 

 グンターは重い身体を持ち上げて加勢に入ろうとする。

 だが、《庭園の主》はそれがわかっていたかのように、一瞬でグンターの懐に入りこむ。

 

「ぐぅっ?!」

「……乾坤一擲」

 

 手刀で怯ませ、反対の拳を強く握り、闘気を集中する。

 

「天!」

 

 上げ突き。

 

「地!」

 

 肘打ち。

 

「陰!」

 

 両打ち。

 

「陽!」

 

 振り下ろし。

 

「梵!」

 

 裏回し蹴り。

 

「吼破六合衝!」

「グゥアアアアアア!!」

 

 最後の正拳が命中し、グンターは後ろに吹き飛ばされる。

 何度も地面に叩きつけられ、最後はうつ伏せの状態で倒れてしまう。

 

「ぐぅ、うぅぅ……」

「……さすがは《吼天獅子》。致命傷を避けたか」

 

 グンターは骨まで染み渡るほどの激痛を耐え、ふらつきながらも立ち上がる。

 その背に金色の《聖痕》が浮かんでおり、《庭園の主》に打たれた所にもその輝きが残っていた。

 

「《聖痕》の力を打ち込んだ場所に集中させて、ダメージを最小限までに抑えたか」

 

 《庭園の主》は簡単にそう説明するが、実際はそんな簡単なものではない。

 発動が遅ければ当然、効果はなく、逆に速ければ勘づかれてしまう恐れがある。

 グンターは拳が身体に触れるタイミングに発動して、見事に対応して見せたのだ。

 

「全盛期の頃なら、ノーダメージですんだかもしれないな。《吼天獅子》といえど、老いには勝てぬか」

「ぐぅ!」

 

 いまだ痛みが引かないのか、片膝を付いてしまうグンター。だが、その目は真っ直ぐに《庭園の主》を見つめていた。

 

「……お主の動き、技のキレ。そして、この重み。私はこの重みに心当たりがある」

「……」

「だが、それはありえぬ。あやつのはずがない。貴様、いったい何者なのだ?!」

「……フフフ、私が何者なのか、か。それは私自身が知りたいものだ」

 

 《庭園の主》は《イシュガル山脈》の方に視線を向け、そのまま立ち尽くす。

 

「……どうやら、あっちも終わったようだな。ここで退かせてもらおう」

 

 そう呟いた瞬間、《庭園の主》は何の前触れもなく、姿を消した。

 まるで、最初からその場にいなかったかのように。

 

「ぐぅっ、エド……」

 

 立ち上がろうとするグンターだが、上手く立ち上がれない。

 悔しげな顔をしながら、山の方に視線を向け、孫のように大切にする彼の無事を祈るのだった。

 

 

 ~~~~~

 

 

 《イシュガル山脈》の山道を車で駆けるメルキオルたちは時々、後ろを確認しながら、狭い道を進んでいた。

 

「追ってくる気配がねぇな。振り切ったんか?」

「かもね。あの分かれ道からこっちにくることはできないからね。念のために道も塞いだし、もう追ってこれないでしょ」

 

 鼻歌を交えて楽しそうにドライブするメルキオル。それに対して、アリオッチは少しつまらなさそうに顔をしかめる。

 

「……あん?」

「? どうしたの?」

「いや……、何か車の音が聞こえねぇか?」

「車の音って、僕たち今、車に乗ってるんだけど」

「違う。この車じゃなくて、別の車の音だ」

「別の車?」

 

 アリオッチは目を閉じて、耳に神経を集中する。

 かすかな音も聞き逃さないよう、物音をたてずに押し黙る。

 

「…………上だ!」

「上?」

 

 疑わしそうに上を見上げるメルキオル。そこにあるのは夜空に浮かぶ星空と、両側を隔てている高い壁。

 特に何もないと視線を前に戻そうとしたその時、

 

 

 一台の黒いリムジンが高い壁から飛び降りてきた。

 

 

「うおぉ!」

 

 メルキオルはすぐさまハンドルを横に切る。

 落ちてくる車はドンッと何度もバウンドしながら着地する。

 その車上にはエドたちがこちらを見つめていた。

 

「ちょっと、ちょっと、追いついてきたの!」

「壁をよじ登ってくるとはな。なかなか派手な登場じゃねぇか!」

 

 驚くメルキオルと、どこか期待していたアリオッチを無視し、エドは再び、剣を彼らに向ける。

 

「オランピアを返してもらうぞ!」

「さすがにちょっとウザくなったな。二人とも、アリオッチを援護して。もちろん、断らないよね♪」

 

 バックミラー越しに見せるメルキオルの笑みに双子は身震いしながら、アリオッチの後ろに付く。

 兄はライフルを構え、妹は影から巨大な手を出す。

 

「そうはさせないよ!」

 

 シェリドは懐から宝石を取り出し、彼らに向けて放つ。

 

「星海より降り注ぎたる七石よ――毅き力となれ!」

 

 詠唱のようなものを呟くと同時に宝石はひとりでに輝き、アリオッチと双子の間に壁を作る。

 エルサイム公国の王家のみに伝わる宝石を用いた秘術。

 シェリドはそれを使って、双子の援護を妨害する。

 

「エドワード君!僕は壁の制御に集中する。君が彼を倒して、オランピア君を助けるんだ!」

「了解!」

 

 エドは剣に炎を纏わせ、アリオッチを睨む。彼から伝わる強烈な殺気にアリオッチは極上の笑みをこぼす。

 

「いいね。いい殺気だ。それじゃあ、第二ラウンドと行くか!」

 

 再び火花が飛び散る。

 両者一歩も退かずに、その場で剣と斧槍を打ち続ける。

 アリオッチが力でねじ伏せようとすれば、エドは卓越した技術でそれを弾き返す。

 互いの研鑽を最大限に発揮した打ち合いは空気が震わせ、熱を帯びる。

 

「ダァアア!!」

「チィ!」

 

 拮抗していた二人の接戦はエドの方に少しずつ傾いていく。

 接近戦では相手の隙を狙うのが常識。その隙を躱し、防いで、逆に相手の隙を突く。

 だが、車の上という躱すスペースがない場所では、必然的に相手の攻撃を防がなくてはならない。

 そして、その際に有利に回るのは、切り返しが速い方だ。

 アリオッチが持つ斧槍はその重量から小回りが利かず、切り返すのがとても難しい。

 対して、エドの剣は振り終わった瞬間にすぐに切り返すことができる。

  

「そこだ!」

 

 ――ガキンッ!

 

 打ち合いのさなかに見せた微かな隙を狙い、エドはアリオッチの斧槍を上に弾く。

 斧の重さに引っ張られ、アリオッチは無防備な胴体をエドに見せる。

 

「獲った!!」

 

 炎を纏った剣はアリオッチの心臓に目掛けて突き刺す。

 超速再生を持つ彼でも心臓を穿てば、ただではすまない。

 誰もが勝負が付いたと思ったその瞬間、メルキオルが突然、アクセルを全開にする。

 アリオッチの身体が横にずれ、突き刺そうとした剣は彼の鎧をかすめた。

 

「残念だけど、ここで時間切れ! このまま逃げさせてもらうよ!」

「ナージェ!」

「承知!」

 

 ナージェもアクセルを全開にし、全力でメルキオルを追いかける。

 両者の距離は離れず、だけど縮まらず、距離を維持したまま、山道を駆け抜けていった。

 

「っ! おい! この先に急カーブがあるぞ!」

 

 エドは《魔眼》で先の道を確認し、注意を呼びかける。

 整備されていない山道には落下防止用の柵などない。踏み外せば、そのまま下へと一直線だ。

 しかも両者共にアクセルを全開にして最高速度で走っている。たとえ高名なレーサーだったとしても最高速度で急カーブを曲がりきるのは至難の業だ。

 

「ぐっ!」

 

 ナージェはブレーキペダルを全力で踏む。速度が一気に落ちていき、メルキオルたちとの距離が徐々に離れていく。

 

「! 彼らの速度が落ちてないぞ!」

「なっ、このままだと下に落ちるぞ!」

 

 相手が速度を落とさずに進んでいることに驚愕するエドたち。

 驚いている間にも、距離がどんどん離れていく。

 彼らの速度は落ちることなく、崖へと向かう。

 そして――、

 

「なっ!」

「嘘だろ!」

 

 メルキオルたちの車は急カーブすることなく一直線に突き進み、そのまま下へと落ちていった。

 エドたちの車はナージェの急ブレーキのおかげで落ちることなく、停車する。

 すぐに車から降りたエドはメルキオルたちが落ちた場所へと走る。

 

「オランピア!」

 

 崖の下を覗き込み、少女の名を必死に呼ぶエド。

 しかし、視界は夜の暗闇に覆われ、何も見えなかった。

 

「? 何だ?」

「これは……」

 

 エドの後ろにいたシェリドたちは突如、鳴り響く騒音に眉を潜める。

 音は下の方から徐々に近づいていき、暗闇から正体を現す。

 

「あれは!」

「飛行艇だと!」

 

 下から現れたのは真っ黒なボディをした飛行艇。夜の闇に紛れて、姿を隠していたのだ。

 

「エドワード君。甲板を!」

 

 シェリドは何かに気がつき、エドに声をかける。

 

 昇っていく飛行艇の甲板には落ちていったメルキオルが乗っていた車とその隣に立つ黄金の甲冑を着た男の姿があった。

 

「《皇帝》! 重力を操って、着地させたのか!」

「まずい。このままでは逃げられてしまうぞ!」

 

 障害物のない空からの逃走。今から山を降りていったら、確実に姿を見失ってしまう。

 

「っ! うぉおおおおおおおおお!!」

「エドワード君!」

 

 エドは昇ってくる飛行艇を捉え、自ら崖から落ちていった。

 シェリドは驚き、止めようとするが、すかさずナージェが彼を留める。

 

「テェエエエエエエエイ!」

 

 

 ――ガァアアン!!

 

 

 エドは剣を逆さに持って、飛行艇の鉄のボディに深く突き刺した。

 飛行艇はエドをぶら下げたまま上昇していき、《イシュガル山脈》を離れる。

 身体に押し寄せて来る強風がエドを襲う。まるで見えない手が彼を掴み、飛行艇が引きはがそうとしているようだった。

 

「グゥウウ!」

 

 しかし、エドは耐える。

 丸まった外装に足をかけ、飛空艇に張り付く。

 

「オランピアッ!」

 

 ここで見失えば、彼女の命は風前の灯火だ。

 守ると約束した少女の笑顔が消えてしまう。

 そんなことは絶対にさせない!

 

 エドは腕に力を込める。剣の柄に血が染み渡る。

 デッキによじ登ろうと上へと目指す。

 

「びっくり……、まさかここまで来るなんてね」

「っ!!」

 

 横から聞こえてきた声にエドは首を振る。

 そこには上にワイヤーの伸ばして降り立ったメルキオルが心底驚いた様子でこっちを見ていた。

 

「メルキオル!」

「ハァーイ♪ こうしてちゃんと話すのはノルド以来だね」

「てめぇら、オランピアをどうするつもりだ!」

 

 さんざん命を狙ってきた《庭園》が方針を変えて、彼女を殺さずに誘拐してきた。

 朝の異変での彼らの動きが少し妙だと感じていたエドだったが、全てはこの時のためなのだと遅まきながら気づく。

 

「さぁね、ボスからのオーダーで彼女がどうしても必要みたいでさ。《皇帝》も大変ご不満だったみたいだけど」

 

 メルキオルは腰からナイフを取り出す。

 正面からこちらを睨みつけるエドの姿を赤いナイフは妖しく写しだす。

 

「さて、いつまでもここにいられても困るから。サクッと殺っちゃおうか♪」

「クソッ!」

 

 武器は飛空艇に刺さり、手は剣を掴んだままで使えない。

 今のエドは無防備だった。

 

「あぁ、それと。ボスから君に伝言だって」

 

 メルキオルはエドの焦る姿に笑みを浮かべながら、話を続ける。

 

「……新月」

「何?」

「次の新月の日にボスはある儀式を執り行う。その儀式の生贄としてオランピアを使うってさ」

「何だと?!」

「彼女を助けたいなら、それまでに僕たちを見つけて、儀式を止めてみせろだってさ。……もっとも」

 

 ナイフを持つ腕を振り上げて、嘲笑うように口元を歪ませる。

 

「君が生き残れたらの話だけどね!!」

 

 

 ――ザンッ!

 

 

 赤い血が空中に撒き散る。

 身体に赤い線を刻まれたエドは剣から手を離してしまう。

 空中に投げ飛ばされたエドはそのまま、下に広がる暗闇に飲み込まれ消えていった。

 

「ゲームオーバー。さようなら、エド君♪」

 

 その様子を楽しそうに見下ろすメルキオルはデッキへと登り、飛行艇の中へと戻っていった。

 

 

第四章 煙に潜む思惑 ~白銀の姫君(シズナ・レム・ミスルギ)~ END




 誤字・脱字の報告いつもありがとうございます!
 感想・評価の方もお待ちしております!
 次回は第五章。
 プライベートが忙しくなり、ストーリーを少し見直したいと思うので、次回の更新は少し遅れます。
 ここまできたら、完結まで目指します!
 お楽しみください!
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