英雄伝説外伝 金の軌跡   作:魔ギア

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第九十六話 黒金の太刀

「聖なる光よ」

 

 白い翼を大きく広げ、オランピアは上空に飛び立つ。剣を頭上に掲げると金色に輝く円陣が夜空を覆いつくす。

 

「降り注げ!」

 

 剣を振り下ろした瞬間、円陣から無数の光が降り注いだ。迫りくる光に《庭園の主》と三幹部はそれに目を見開くも難なく躱した。

 

「ガァアアアアア!!」

「ギャァアアアア!!」

 

 だが、刺客たちは躱すことができず、そのまま光に飲み込まれた。絶叫を上げた刺客たちは光が収まると同時に地面に倒れこんだ。

 

「おいおい。まさか……」

 

 ピクリとも動かない刺客たちを見て、トヴァルは最悪の展開を考えてしまう。

 

「大丈夫です」

 

 そんなトヴァルの考えを払拭するように、オランピアが隣に降り立って、首を横に振る。

 

「肉体ではなく、精神の方にダメージを与えました。彼らはただ気を失っているだけです」

「そ、そうか。いや、そんなことより!」

 

 トヴァルはホッと一息つくが、我に返って、オランピアに指差す。

 

「お前、その姿はなんだよ!」

「あ、これですか」

「合体、っていうか融合したんだよ。イシュタンティと」

 

 トヴァルの問いに横からエドが答える。

 

「イシュタンティって、あの人形のことか! あれは《古代遺物》だぞ、大丈夫なのか!」

 

 その答えにトヴァルは思わず声を上げてしまう。現代の技術では解析が不可能と言われている《古代遺物》との融合。今まで見たことも聞いたこともない現象を目の当たりにして、トヴァルだけでなく、その場にいる全員が驚愕を露わにする。

 

「大丈夫です。イシュタンティは私の願いに応えてくれたんです」

 

 その場で一回転するオランピア。天使のように無邪気な笑顔を見せながら、自分は問題ないとアピールする。その様子を見ていた《庭園の主》は珍しく動揺していた。

 

「まさか適合したというのか? 天使の器に」

「天使の器だと?」

 

 《庭園の主》の呟きに、隣にいた《皇帝》は訝しげに睨みつける。

 

「器とはどういうことだ? オランピアは儀式の生贄ではなかったのか?」

「そうだ。彼女はイシュタンティと契約を交わした者。それが生贄の条件であり、同時に天使イシュタンティの器でもあるのだ」

「まわりくどいぞ! 器とは何だ!」

「元々イシュタンティは女神の遣いとして降り立った天使なのだ。だが、彼女は女神の教えに背き、魂を抜かれてしまったのだ」

「つまり、俺たちが知っているイシュタンティは魂が抜けた器だったっていうことか」

 

 アリオッチの見解に《庭園の主》は頷いて、それを肯定するのだった。

 

「《庭園の主》は俺とオランピアが相手します。皆さんは幹部の相手をお願いします」

「大丈夫なのか? 相手はバルクホルン師父を倒した男だぞ」

「問題ありません。あいつの力の正体ですが、たぶんわかりました」

「そいつは本当か?!」

「えぇ。奴は…………」

 

 エドは敵に気づかれないように声を小さくする。トヴァルたちは聞き逃さないようエドの話に耳を傾ける。

 

「……ということです」

「ハァッ!! なんだそりゃあ!!」

「チートすぎない、それ?」

 

 トヴァルは度肝を抜かし、ワジは驚きを通して、呆れていた。

 

「なるほどな。いろいろと合点がいったぜ」

「俺としては一度止まった心臓を吹き返したあんたに驚きだよ」

 

 《庭園の主》と殴り合い、全身血だらけのルトガー。今は団員に治療をしてもらい、休息をとっていた。《庭園の主》との戦いで一度、心臓が止まったことを聞かされたエドは彼の恐るべき生命力にドン引きしてしまった。

 

「それでお前さんなら、あいつと渡り合えるのか?」

「あぁ。俺とオランピアの二人でな」

「任せてください」

「……そうか。なら、お前さんらに任せるぜ」

 

 治療を終えたルトガーは立ち上がり、バスターグレイブを肩に乗せる。

 

「それじゃあ、幹部の三人は俺たちが相手するぜ。俺もあの大男とはもう一度、殺り合いてぇからな」

「はぁ……、変わらないわね、この人は」

 

 闘争心を隠そうとしないルトガーの笑みを見て、サラは呆れながらも、その頼もしさに一安心する。

 

「露払いは私たちに任せなさい。その代わりに絶対に勝ちなさいよ」

「総長たちももうすぐ着くはずだから、無茶はしないようにね」

「お前……、まさか、母さんの教え子だった?」

 

 エドはワジの顔を覗き見て、生前、教会で母が教えていた子供であることに遅まきながらも気づく。

 

「うん。アルマ先生には本当に世話になってたよ。……正直、先生を殺したっていうその子にはいろいろと言いたいけど……」

 

 ワジは冷たい目線でオランピアを見つめる。その目をオランピアは逸らさずに見つめ返す。じっと何かを訴えてくる視線。そんな彼女の強い眼にワジは根負けしたのか息をこぼす。

 

「言う必要はないみたいだね」

「うむ」

 

 隣で立ち聞きしていたアッパスも頷き、二人もサラたちに加勢する。

 

「オランピア」

「はい」

 

 エドとオランピアは肩を並べる。

 

「……行くぞ!!」

 

 最初に飛び込んだのはエドだった。向かった先にいる《庭園の主》は拳を構え、迎え撃つ。

 

「隙あり!」

 

 だが、横からメルキオルが奇襲をかける。

 すぐに気づいたエドは自分に迫ってくるナイフに向かって、剣を振るう。

 

「っ?!」

 

 剣がナイフに触れた瞬間、ぬっ、とナイフの刀身に剣がめり込む。メルキオルは咄嗟に腕を捻らせて、エドの剣を横に反らす。そのまま地面に転がりながら距離を取り、すぐに立ち上がるメルキオル。すると、彼の正面に赤い何かが落ちてきた。

 

「嘘……、ナイフが斬られた?」

 

 落ちてきたのは、メルキオルが持つナイフの刃先。先程の一振りでナイフが斬られていたのだ。もう少し判断が遅れていれば、ナイフは使い物にならなくなっていただろう。

 

「メルキオル!」

「っ!」

 

 アリオッチの声にメルキオルは前を見る。エドがメルキオルに向かって、剣を振り下ろした。受け止めようとはせずに、メルキオルは横に跳んで剣を躱す。空を斬る剣はそのまま地面に当たる。

 

 瞬間、地が二つに裂かれた。

 

『なっ!!』

 

 その現象に誰もが驚嘆する。

 何の工夫もない一振り。しかし、その一振りで地面が割れたのだ。

 

「何か無茶苦茶、強くなってない?」

 

 メルキオルは思わず、口端を引きつらせてしまう。エドはゆっくりとメルキオルに顔を向ける。彼の蒼い眼はじっとメルキオルの姿を捉えていた。

 

 

 ~~~~~

 

 

「エドが修めた肆の型は斬ることに特化した型じゃ」

 

 月のない星空を眺めるユンは岩の上で酒を飲みながら、愉悦に浸っていた。

 

「型を極めれば、万物全てを斬ることができる。じゃが、エドは無意識に力を収めておったから、《魔眼》を使わなければ、それもできんくらいになっておった」

「彼が抑えていたのは、やっぱり彼女が原因ですかね?」

 

 うむ、とユンは後ろに立っているシズナの言葉に頷き、酒を入れた盃を口に近づける。

 

「どれだけ力と技術が優れていようと、心が未熟なれば極めた剣も衰えてしまう。あやつは母の死をずっと心に引きずっていたからの。その元凶ともいうべき彼女の存在が、あやつの心をかき乱したのじゃ」

「心技体。武芸者には必須のものですね。で、ここで心を鍛え直して、最後にあんな試しをしたのですか?」

「お主が持ってきた太刀を見て、咄嗟に閃いてな。確かめるにはちょうどいいと思っていたのじゃ」

「最初は少し冷や汗をかきましたが、それは杞憂でしたね」

 

 シズナはユンの側に置かれていた二振りの太刀を見る。

 何かに斬られたように刀身が折られていた「雪花」とボロボロながらも原型を保っている木刀が並ばれていた。

 

「まさか、あんな木刀で『雪花』を斬るなんてね……。彼の実力を見誤っていたわ」

「どれだけ優れた武器を持っていようと、持ち手が未熟者なら鈍ら同然じゃ。じゃが、逆もまた然り」

「どんな鈍らだろうと、持ち手が一流ならば、その武器は業物になるってことですね」

「うむ。今のあやつなら問題ない。娘の方も大丈夫じゃろう」

「ふふふ……そうですね。しっかし、参ったなぁ……」

 

 シズナはユンと同じく夜空を見上げて笑っていた。その笑みは子どものように無邪気で、

 

「次、斬り合う時が楽しみになってきたよ」

 

 極上の獲物を見つけた獣のように恐ろしいものだった。

 

 

 ~~~~~

 

 

「メルキオル、下がるんだ」

 

 《庭園の主》はエドの危険性をいち早く察知する。即座にメルキオルを下がらせて、エドに襲い掛かる。拳を構える姿を捉えたエドは剣を返して、《庭園の主》に向かう。

 

()()()()()よ!」

 

 向かってくる剣の軌道を見切り、紙一重に躱して拳を放つ。だが――、

 

「ガッ!」

 

 エドの剣は《庭園の主》の肩を斬り込む。そのまま腕を斬り落とそうとするが、《庭園の主》は咄嗟に足を使い、エドの剣を上に跳ね返す。

 

「ぐぅ……、バカな、確かに視えていたはずだ!」

 

 何が起きたのかわからず、《庭園の主》は動揺を隠せない。その隙を狙いエドは再び刃を振るう。

 《庭園の主》は身体を逸らす。エドは休まずに前に踏み込む。

 エドの連撃を《庭園の主》は全て躱し、反撃の機会を窺う。

 

「ここだ!」

 

 剣を弾いて、懐に潜り込む《庭園の主》。ガラ空きになった胸の中心に手刀を打ち込む。

 

「させません!」

「なに!」

 

 横からの奇襲。翼を広げて滑空して接近してくるオランピア。

 気づいた時には、光の剣が《庭園の主》の腕を斬っていた。

 

「チッ!」

 

 腕から血が飛び散る。

 斬られた傷口を抑えながら、《庭園の主》は距離を取った。

 

「くっ、()()()()()()! オランピア、君は……」

「どこを見てやがる!」

 

 エドに気づいた《庭園の主》は身体を逸らす。逸らした場所にエドの剣が通り過ぎた。《庭園の主》は即座に剣の側面部を捉える。太刀は構造上、横から力に対して非常に弱い。武器の破壊を狙い、《庭園の主》は拳をぶつける。

 

「ガッァ!」

 

 だが、剣を切り返したエドは向かってくる拳に、そのまま刃をぶつけた。

 刃を食い込んだ拳。食い込み口から血が流れ、エドの剣に流れ落ちる。《庭園の主》はすぐさま拳を引いて、距離を取った。

 

「っ! また……」

 

 《庭園の主》は冷や汗をかきながら、何とか体勢を立て直す。エドは深追いをせずに剣についた血を振り払う。

 

「帝国の時とはまるで違う。いや、それよりも……」

「お前の力が効かないことか?」

「! なぜ……」

「お前の腕は帝国で見た。お前の力はじっちゃんたちと同じ達人クラスだ。にもかかわらず、じっちゃんたちを圧倒する実力。技術以外の能力を持っていてもおかしくない」

「……」

「《庭園》の幹部は全員、《古代遺物》を持っていた。なら、リーダーであるお前も持っていると考えてもおかしくはない」

「なるほど。道理だな。しかし、仮に持っていたとしても、その能力まではわからないはずだ。だが、君はその能力を見抜いている。違うかね?」

「あぁ。最初は未来予知だと考えた。だが、《猟兵王》の話を聞いて、それは違うとわかった。だが、あんたの動きは未来がわかっているような動きだ。……正直、俺もこれが正解だという自信はなかったが、今回の一戦でようやく確信を持てた。俺の最初の攻撃と最後の攻撃。一瞬だけ、俺の刃が折れるビジョンが()()()。あれはたぶんお前が選択した未来」

 

 一度、息を整え、解放した《魔眼》を《庭園の主》に向ける。

 

「お前の能力は未来()()ではなく、未来()()。これから起こりうる未来を予見し、好きな未来を選択する能力だ。それならば、じっちゃんたちが手も足も出ずにボロ負けしちまうのも頷ける」

 

 未来は枝分かれのように分岐している。ある時、ボールが自分に向かった時、受け止めるか、弾くか。この時点で二つの未来が生まれる。枝分かれした未来はそれこそ無限に存在しており、お互いに干渉することはない。だが、もしもその中から、自分は無傷で相手が全滅する未来を選択することができるとすれば……

 

「じっちゃんを一人で足止めできたのも納得だ。勝利が確定した未来を選択すれば、数も武人の腕前なんて関係ない。必ず勝つって決まっているんだからな。だけど、どんな力にも欠点はある。お前がオランピアの行動を読めなかったところを見るに当たりのようだな」

「なるほど。そういうことか。しかし、そこまで見抜いていたとは……」

「正確に言うと教えてもらったんだよ。……お前があの底穴に落とした男にな」

「!」

「そして、お前の未来改変が異能の力ならば関係ない。俺の剣は異能の力を斬る」

「私が未来を改変しようとしたその時に、斬って無効にしたということか」

 

 合点がいって納得する《庭園の主》だったが、一つだけ疑問が残る。

 

「ならば、なぜ、帝国で戦った時、それをしなかった。君ならば、あの戦いでそれを実行することができたのではないのか?」

「……視えなかったんだよ」

「なに?」

「視えなかったんだ。あの時、俺はお前が力を使った予兆を見ることができなかった。でも、その理由も今ならはっきりわかる。……俺はどこかで躊躇していたんだ」

 

 エドはふと自分の隣に立つ少女を見つめる。視線に気づいたオランピアはエドを見つめ返す。

 

「あの時、俺は気づかないうちに自分の力を抑えていたんだ。自分の中にある黒い感情。それが俺を蝕んで、《魔眼》の力を、俺自身の力を弱くしていたんだ。でも、今は違う」

 

 エドはオランピアから《庭園の主》に再び、視線を向ける。

 

「俺はもう迷わない。俺の全てを持ってお前を倒す。お前らにオランピアは殺させねぇ!!」

「……そうか」

 

 《庭園の主》は手を腰に添える。その行動に二人は警戒を強める。

 

「ならば、その覚悟に敬意を持って、こちらも本気で行かせてもらおう」

 

 腕を引き抜くと、その手には金色の剣があった。

 

「あの人の言った通りですね」

「だが、関係ない!」

 

 エドは剣を斬ろうと一足で詰める。剣の根元に向かって一閃。《庭園の主》は剣を振るい、受け止めた。

 

「なに?!」

「これをただの剣だと思うな。たとえ万物を斬り裂くことができても、これを斬ることはできない!」

 

 剣に力を乗せて、エドを押し返す。すぐさま、腰を低くしてエドに斬りかかる。

 

「やぁああ!」

 

 

 ――ガキンッ!!

 

 

 オランピアの剣が《庭園の主》の剣を止める。エドは上に跳び、頭上に向かって剣を振り下ろした。

 

「フン!」

 

 オランピアの剣をはじき返し、同時にエドの剣を受け止めて、横に反らした。

 

「螺旋撃!」

 

 両者の剣がぶつかり、《庭園の主》は後ろに吹き飛ぶ。

 

「舞疾風!」

 

 空からの追撃に《庭園の主》は素早く反応する。一度、距離を離すオランピア。そこに交代して、今度はエドが迎え撃つ。

 エドの重い斬撃と機動力が上がったオランピアの斬撃。二人の剣舞を《庭園の主》は落ち着いていなし続ける。

 

「光よ!」

「ガァッ!」

「キャッ!」

 

 《庭園の主》の剣が光り、刀身を伸ばして二人を薙ぎ払う。二人は咄嗟に剣で受け止めるが、後ろに吹き飛ばされてしまう。

 

「つ、強いっ」

 

 エドは《庭園の主》の剣の腕に脱帽する。拳闘の実力はグンターに並ぶが、剣の実力は自身の師であるユンを軽く凌駕していた。

 

「エドワード・スヴェルト。君は一つ勘違いをしている」

「なんだと?」

「私は拳よりも剣を使った時間が長い。……圧倒的にな」

「圧倒的?」

「あぁ。私はアリオッチよりも長く生きているのだよ。少なくとも千年くらいは生きているな」

「せ、千年……」

 

 あまりの長さに言葉を失ってしまうエド。だが、同時にどこか納得したように重々しく頷く。

 

「そうか……。じゃあ、お前はやっぱり……」

 

 エドはどこか苦悩するかのように顔を歪ませるが、すぐに切り替える。

 

「だからといって、負けるわけにはいかないな」

「君にできるのかな? 私はこの千年、剣の鍛錬だけは一日も欠かしたことはないぞ」

「エドさん……」

「大丈夫だ。策はある」

 

 バレないように口元を隠して、オランピアに作戦を伝える。

 

「いけるか?」

「大丈夫です」

「それじゃあ、行くぜ!」

 

 二人は同時に動く。オランピアは空に飛び、エドは前を走り、斬撃を放つ。

 

「――斬!」

 

 《庭園の主》は剣を振るい、斬撃を打ち払う。斬撃は横を通り過ぎて地面を抉る。《庭園の主》はそれを一瞥もせずに前を見るがエドの姿は消えていた。

 

「……後ろ」

 

 身体を捻ると同時に剣を振るう。ガキンッ! という音を鳴らし、エドの剣と激突する。

 エドはすぐに後ろに下がり、再び斬撃を放つ。それを《庭園の主》はもう一度、叩き落とす。

 

「まだまだ!」

 

 それからエドは斬撃を何度も放つ。《庭園の主》の周囲を駆け回りながら、死角から狙う。しかし、《庭園の主》はその場から動かずに、斬撃を次々と地面に落とす。

 

「いつまで続ける気だ?」

「やめさせたいのなら、お得意の未来改変でどうにかしたらどうだ!」

「その手には乗らないよ」

 

 《庭園の主》は理解している。未来改変を使えば、エドはそれを斬ろうと接近してくる。改変を無効化されるとわずかにだが、怯んでしまう。次、隙を与えれば負ける。ゆえに、《庭園の主》は能力を使わず、剣のみで対応しているのだ。

 

「ならば、こちらからも行くぞ」

 

 《庭園の主》の剣が光りだす。刀身から眩い光を放ち、エドに向かって突きつける。

 

「ハッ!」

「うぉおお!!」

 

 すると、切っ先から光線が放たれた。エドは間一髪で光線を避ける。

 

「クソッ、何なんだあの剣は?!」

 

 エドは悪態をつきながら、斬撃を放つ。《庭園の主》は斬撃を落としながら、光線を放って反撃に出る。

 その様子を頭上から眺めるオランピアは、

 

(まだ……、まだ、その時じゃない)

 

 何かを待っているかのように、二人の戦いから目を離さない。二人の戦いはさらに激しさを増す。地面は抉れ、美しかった草原地帯は岩と砂の荒地へと化していた。

 

(エドさん……)

 

 オランピアは剣を強く握りしめ、真下で戦っている青年を見守る。彼から与えられた役割。失敗すればこちらの負け。そんなことはさせない。彼と明日を生きるために。

 

(絶対に負けない!)

 

 だから待つ。彼からの合図が来るまで、決して目を離すな。そして――、

 

「一の太刀」

 

 炎を剣に、身体に纏わせるエド。

 

「改!」

 

 その場で高く跳ぶ。炎は形作り、やがて一頭の龍になった。

 

「炎龍!!」

 

 炎の龍は《庭園の主》ではなく、地面へと向かう。龍が地面を打ち大地が崩壊した。幾度も放ち続けたエドの斬撃は地面を抉り続け、地盤を弱くしていたのだ。

 

(来た!)

 

 オランピアは翼を広げ、急降下する。狙いは《庭園の主》。

 

「行って!」

 

 翼から羽が抜ける。ひらひらと落ちる数羽の羽たちは光を放ち、白い天使となった。

 

「囲って!」

 

 白い天使たちは《庭園の主》を囲い、一斉に襲い掛かる。

 

「オォオオオ!!」

 

 向かってくる天使を《庭園の主》は叩き落とす。達人を超える絶人の剣技に全方位から狙う天使たちはすべて落とされる。

 

「力を一つに!」

 

 落とされた天使は光に戻って、オランピアの剣に集まる。剣は光を強くし、その輝きを強くする。

 

「ヘブンリー・シャングリラ!!」

 

 切っ先を向けた瞬間、白き極光が放たれた。

 《庭園の主》は剣を両手で持ち、上段に構える。

 

「――破ァアアアアアアア!!!」

 

 全力で剣を振り下ろす。剣にぶつかった光は二つに分かれ、《庭園の主》の横を通り過ぎる。

 

 

 ――ドォオオオオオオオオオオオン!!!

 

 

 光は地面に直撃し、砂塵が飛び交う。

 《庭園の主》は勝ち誇ったように口端を上げ、オランピアを見つめる。しかし、オランピアの顔は真剣な眼差しで彼を見つめていた。

 失敗したのに彼女は落ち込んだ様子が見られない。なにかあるのかと考えようとした次の瞬間、

 

「うぉお!」

 

 《庭園の主》の足場が揺らぐ。足元を見ると、オランピアの光で抉れた地面の下にエドの姿があった。

 

「螺旋撃!!」

 

 遠心力がかかった力強い斬撃は《庭園の主》が立っている地面を斬り、彼もろとも上空へと投げ飛ばした。

 

「三の太刀・改!」

 

 エドは剣に闘気を込め、練り上げる。

 

「天咆!!」

 

 巨大な斬撃が上空に浮き立つ地面に激突し、崩れ去る。

 

「っ、しまった」

 

 如何に達人越えの実力があるとはいえ、空中に投げ飛ばされた《庭園の主》は身動きが上手く取れずにいた。それを見たエドは剣を鞘に収める。

 

「二の太刀・改」

「くっ!」

 

 同じくエドを視界に捉えた《庭園の主》は向き合うように身体を強引に捻らせる。迎え撃とうと剣を構えようとする《庭園の主》。その時――、

 

「やっ!」

「なっ!」

 

 飛び散る岩に潜んでいたオランピアが《庭園の主》の剣を叩き落とす。剣を飛ばされた《庭園の主》は丸腰になった。

 

「雷光!!」

 

 放たれた神速の抜刀が《庭園の主》を捉える。《庭園の主》はその刃を受け、被っていたフードが夜空へと吹き飛ばされた。




 エドと《庭園の主》の戦い。これ、例えで言うと、
 Bleach 二枚屋王悦の鞘伏(幻想殺し付与) VS Bleach ユーハバッハの全知全能(ジ・オールマイティ)
 のような感じですね。(見識が間違っていなければ……)
 自分で書いたのもなんですが、ヤバくね? って思っちゃいました。
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