Revival of the Dead   作:ボルケシェッツェ

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一部キャラ名はアニメ・実写ドラマ設定から引っ張ってきてます


#0-1

 さっきまでの眠りが幸せなものだったのかは分からない。

 

 温いまどろみの中に揺蕩っていた俺を引き上げたのは、古臭いシャッタ音だった。

 何事かと顔を上げれば、そこにはペンタックスの一眼レフを構えた部活仲間の姿があって、ファインダ越しに悪戯な瞳と目があっていた。

 

「お前、『クラスに一人はいるやつ』って画像を体現してたぞ」

 

 柚村が口元をニヤつかせ、頭上から言う。俺は無防備な寝姿を収められたことへの羞恥を隠すように頭を振った。

 鼻先に学習机の匂いがこびりついている。俺はこの香りが嫌いだ。

 

「趣味が悪い」

「わざわざ部室でサボってるやつよりは偉いんだよ、こっちはちゃんと部活やってんだからさ」

 

 そう言って彼女は得意げにペンタックスを掲げてみせる。

 趣旨のずれた回答ではあったものの、彼女の言うことは間違ってもいない。ここは写真部の部室で、俺と彼女は写真部員で、俺は模範的な幽霊部員だった。

 その枠組みに当てはめて考えれば、実質籍を置いているだけの俺と、手頃な被写体にピントを定めて写真撮影に勤しんでいる彼女では無論、彼女の方が正しい行いをしているといえる。

 たとえ被写体がプライバシー皆無の寝顔だろうと。

 

「ったく、珍しく顔出してると思ったら居眠りかよ。部室を何だと思ってやがる」

「うっせー……大体、そっちこそ大真面目に部活なんぞやってていいのかよ」

「おめーと違って優秀だからな」

 

 ほとんど物置みたいなこの教室にはカレンダがない。けれど、この時期ともなれば自然に時の流れを意識せざるを得ない。真面目不真面目に拘らず、順調不調に拘らず。受験生という肩書きは得てしてそういうものだろう。

 進学するなら芸大か美容専門、大方就職でもするんじゃないかってな見た目の柚村は公立大の経済学部志望で、模試の判定も滞りがないという。思えば昔から卒なくこなすタイプだったが、成人を前にした年頃に至ってもその気質は健在らしい。

 

 対する俺といえば、無理して進んだ理系の道に躓いている真っ只中だ。将来への明確なビジョンがあるわけでもなく、気まぐれと惰性で生きてきたことへのツケを払う時が刻々と迫ってきているのを感じる。

 どこで差が着いたのか、などとほざくほど物分りが悪いわけじゃないが。ただ、周りの人間との温度差に身震いすることは多くなった。

 

「そりゃあいい」

「なんだ、それ」

「頭いてえ」

 

 曖昧な物言いに呆れたのか、深いため息を吐いた彼女は机に腰掛けて、天板を叩いて催促した。

 

「なんだよ」

「やんねえならとっとと帰れよ。部活動の邪魔だ、ゴースト」

「俺以外もゴーストしてんじゃん」

「いつも来てる奴らがたまたま用事なの!」

「ぼっち」

「あぁ!? お前には言われたくねーわ! 自己紹介乙!」

 

 外界が騒がしくなるがお構いなしだ。腕に顔を埋めて、再び微睡みに身を委ねようとしたところを、首根っこを引っ掴まれて部室の外に放り出される。眼前でピシャリと閉じられる引き戸を見るに、どうやらここに俺の居場所はないようだった。

 溜め息を一つ溢して、廊下に立つ。

 窓の外はもう茜色に染まっていた。青ざめた陰の合間を縫って、雁木模様になった西日がつま先まで迫っている。

 

「忘れもんだ」

 

 そのさまをぼーっと眺めていると、背後から通学用のリュックが足元に飛んできた。振り返る間もなく再び扉が閉められる音がする。

 俺はジャージのせいでパンパンに膨らんだそれを背負って、おとなしく家に帰ることにした。

 そもそもどうして部室にやって来たのかも思い出せなかった。

 

 俺は学校が嫌いだ。少なくとも長居したいと思ったことはない。

 

 写真部に入ったのだって、幼稚園、小学校が同じだった柚村に頼まれて、ほとんど名義貸しのようなつもりでだった。

 廃部に成りかけていた写真部を存続させたいから、署名する気分で、と上目遣いに頭を下げられたときはそれはもう面食らった。長らく接点のなかった彼女の目に俺が留まったことにも驚いたし、それ以上に古臭いカメラを首から提げた彼女の姿が想像できなかった。

 それが勝手な先入観でしかなかったことは申し訳程度に顔を出すうちにすぐに分かったが。

 彼女がパンクなアクセサリを揺らしながら鋭い目つきで被写体に狙いを定めるさまには、プロの風格を覚えたほどだ。

 

 結局、そんな熱量を秘めた柚村に対してひどく場違いな気がして、俺は幽霊を決め込むようになった。

 そういうわけで敬遠していた部室は、高三になってなおさら縁のない場所になった。はずだったのだが。

 俺は首を傾げながら玄関口へと歩いていく。

 

 そのうちにすれ違った長髪の女子生徒が微笑みながら会釈してきたから、俺はげんなりした気持ちで頭を下げ返した。

 

 

 


C H A P T E R 0

 

 

モブ・シーン

mobscene

 

───────────────────────────────

 

 


 

 

 

 信号待ちでペダルを空回りさせながら、あの女子生徒の名前を思い出していた。

 若狭───若狭悠理。妹は───なんといったか。

 俺は左腕に巻かれたギプスに視線を落とした。今では痛みもなく、三日後には外せることになっている。しかしこのシチュエーションがそうさせるんだろう。折れた骨の辺りが微かに疼く気がする。

 

 一ヶ月ほど前の話だ。

 ちょうど芝桜がだいたい散ったくらいの頃で、道の上にはときおり湿ったピンクの花びらがへばりついていた。

 その日は模試もどきを受けさせられた翌日で、テンションは最悪だったけれど、俺はいつも通り愛用のシルバー号に乗って家を出た。

 コンビニの傍の交差点に差し掛かったときだった。

 信号が青に変わって、車道の左側面を走っていた俺は視界の端からなにかが迫ってくるのに気がついた。

 それが妹のほうだった。俺は小さな人影とぶつかる直前、反射的にブレーキレバーを絞った。

 そのせいで宙を舞うハメになるなんて露ほども考えずに。

 

 時間の流れが変わる瞬間に立ち会ったのは、そのときが初めてだ。

 幸か不幸か、奇跡的に上手く衝撃が流れてくれたおかげで俺は意識を失わなかった。

 呆気に取られたまま青空を見上げる俺に必死で呼び掛ける彼女の声をよく覚えている。

 

 あえなく俺は緊急搬送され、二週間の入院生活を送ることになった。

 気が動転していたのは処置室に送られるまでの間で、普通車に轢かれたのに五体満足すぎる自らが不自然すぎて逆に安心した。

 知らせを聞いた母親が駆けつける頃には、異世界転生は叶わなんだなどと考えていたが、口にする前に思い直して。

 その後は、床に頭を擦りつけんばかりに謝罪を繰り返す若狭姉をなだめるのに時間を費やした。許しを乞うべきなのはむしろ、フィアットのドライバに過失を負わせてしまった俺なのではないかと思いながら。

 

 三角巾を付けている間、不便ではあったが不自由ではなかった。患部が利き腕ではなかったというのが大きい。

 退院後の学校生活にしても同じだ。

 通学に自転車を使えないのは痛かった(ダメージを肩代わりしてくれたのか、シルバー号はお釈迦になった)ものの、着替えと小便が面倒なくらいで、誰かに甲斐甲斐しく世話を焼いてもらう必要はなかった。

 

 しかしそれで負い目が拭いきれるわけでもなかったんだろう。

 学内でしばしば若狭の気配を感じ取る瞬間が増えたのは、さすがに自意識過剰ではないと思いたい。実際のところ復帰して一週間ほどはよく気遣いの声を掛けられた。

 

 正直、素の人付き合いもロクにできない俺にはじれったいことこのうえなかったのだけれど、邪険にも出来ない。

 俺だって、彼女の立場なら同じようなことをした。まったく縁のない相手ならまだマシだったかも知れないが、同じ高校に通う同学年の生徒だというのが良くなかった。責任感の強そうな若狭の気は休まらなかっただろう。

 

 彼女とぎこちない会話を交わした中で驚いたのが、彼女は俺のことを妹の命の恩人だとも言っていたことだ。

 ああ、そういう見方もあるんだ、と俺は素直に感心した。

 それは結果論に過ぎないけれど、たしかに、あのとき若狭の妹が立ち止まったのは俺が通りがかったからだ。

 信号が青に変わる。俺はペダルを踏み込みながら考える。

 

 どうしてあのとき妹が駆け出して行ってしまったのかは知らない。まだ幼い彼女には俺たちとは違うロジックがあって、きっとそれに従ったんだ。

 

 そうして非力ながらも素早く歩道を駆けていく彼女は、赤いシンボルが灯ったその意味を理解しきれていない。

 

 俺は横を見た。白のマーチが緩やかに減速していく。マイナスの加速度がその初速を打ち消していく。

 

 でも、あの日俺の左手を打ちのめしたフィアットにはそんな遠慮などなかった。

 

 車体の質量と加速度が生み出す力の作用線上には俺がいて、そして少女がいる。

 

 れっきとした物理法則が肉を潰し、骨を砕き、内臓を破裂させ、血をアスファルトに染み込ませる。人々は指を指し、カメラのレンズを向けて、悲劇というタイトルを付けて飾り立てる。

 

 でも今回はそうはならなかった。たったそれだけのことなんだ。

 不謹慎な考え方なのかも知れないけれど、女児が死のうと、男子高校生が死のうと、生き延びようと、恐らくそこに意味なんてない。

 女の子が怪我をせずに済んだことも、俺がこうしてピンピンしていることも嬉しくないわけじゃない。だからといって、恩人と言われても何の感慨も浮かばない。自分の意思で彼女の死を遠ざけたわけでもない。

 

 なんの気なしに居心地の悪さを抱いてしまう俺は、贅沢な人間なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 ドアをくぐり、ただいまと告げてから、自分の部屋に閉じこもるまで、自分の家に帰ってきたとは感じない。

 

 特に飯を食っている間は顕著だ。

 胡散臭い義父の薄ら笑いを尻目に、俺は胸が焼け付くような気分になりながら夕餉を平らげる。

 断っておくと、別に彼が嫌いであるとか、明確な悪感情を抱いているのではないし、無論向こうだってそんな素振りは見せていない。

 ただそれは別としても、人として合わない、というのはどうしてもある。

 それが幼少期から接し、価値観や感性を共有してきた相手でもないなら当然のことだ。

 

 とはいえ、これでもそれなりに分別のつく歳にはなっているつもりだ。

 大抵のこと受け入れられるし、割り切れる。気を遣わせないように気を遣う。

 けれど、母が義父と再婚してから整然としてしまった食卓だけは、息が詰まりそうになる。早々と離脱するのはうっかり胃の中身をひっくり返してしまわないためだ、というのはちょっと大袈裟か。

 

 合わないといえば義姉もそうなのだけれど───彼女は彼女で、波長が合ってしまう方がマズいような気配がする。これも勝手な印象に過ぎないが。

 表面上至って普通で、そしてそれを表面的に感じさせてくる態度に関しては父親譲りらしい。

 意図せず脱衣所でブラウスを捲くりあげているのを目にしてしまったとき、脇腹にあった蛇腹の赤黒い線は、俺の邪推でしかないのだろうか。

 それにしては、風呂上がり、彼女がよく手にしている物騒な剃刀がひどく思わせぶりだった。

 

 その、メンヘラらしい義姉が帰宅してくるのと同時に俺は自室に逃げ込んだ。

 今日もいつも通りのパターンに狂いはない。薄い味付けの、健康志向らしい飯をかきこんで、カラスの行水でシャワーを済ませ、髪も乾かさないままベッドに横たわる。

 そんなことをしているせいだろう。シーツは少しカビ臭い。

 

 デスクにぶちまけた課題に目をやって辟易としたところで、スマートフォンが騒ぎ立てた。

 慌てて手に取る。

 液晶にはチャットアプリの見慣れないアカウント名と、受話器のアイコンが二つ。

 

「……はい」

『もしもし、茅ヶ崎?』

「あ……山神か? どうした?」

 

 聞こえてきたのはクラスメイトの声だった。

 山神弦太。映像研究部の部長だ。

 人付き合いの乏しい俺にとっては友人といえる数少ない人間の一人だが、残念ながらそこまで仲が深いわけではない。どちらかといえば互いの趣味が近しいことを知っているが故の付き合いで───そう、映画を観に行くという話になっていた。

 

『ん、待ち合わせの話だよ。後で連絡するって言ったろ?』

「ああ……どうする」

『上映が21:30〜だから、まあ十分前くらいでいいか? お前足はどうする、チャリか?』

「そのつもりだよ」

『んじゃあ普通にチャリ置き場でいいか、シアタの駐輪場集合ってことで。場所は……初めてじゃないよな』

「一応分かってるつもりだけど、迷ったら電話する」

『へーい……』

 

 会話はそこで途切れ、生ぬるいブレスノイズが電波を伝う。

 

「……用はそれだけ? メッセージでも良かったんだが」

『あーぁ……まあそうなんだけど。そう言うなよ』

「どういうことだよ…………その、なんだ。山神は、今回が初めてなのか。観るの」

 

 山神が曖昧な物言いをするのは珍しいことだった。そう思えば、言葉を濁しがちな俺とは対照的な性格なのだが、どうしてなかなか、話し相手として疎まれているわけでもないらしい。

 

『【地球最後の男】は、そうだな。一九六四年版はこれが初めてだよ。なんだ、茅ヶ崎は観たことあったのか?』

「いや、ない。【アイ・アム・レジェンド】は観たことあるけど」

『ウィル・スミスのな』

「大分前に観たから内容はあんま覚えてないけどな。シェパードの名前がサムだったのは覚えてる」

『エンディング覚えてるか』

「いや、うーん。なんか家に吸血鬼が押し寄せてきて、自爆したんじゃなかったか?」

 

 俺はずいぶんと前の、義父や義姉の顔を知る前のおぼろげな記憶を思い浮かべる。

 血清入りアンプルの冷蔵庫、大挙する影の軍団、割れる窓に、グレネードのピンを抜いた男の咆哮。

 

『それがノーマルエンドだな。アナザーエンドの方は?』

「ええ……観たかも知れないけど覚えてない」

『そうか。原作のあらすじは知ってるか?』

「【吸血鬼】だろ? 大まかには、な」

『それじゃ【地球最後の男】を観た後に観直してみるのもいいかもな。できればアナザーエンドも含めて』

「もったいぶるなあ」

 

 当然だろ、映画好きなんだから、とスピーカの向こうから聞こえる。

 ネタバレなんてもっての外、という質なのだろうか。しかしパロディやセオリィに敏感な映画ファンにしては難儀な感性だろう。今どき珍しいといえばそうかもしれないが、それはそもそも俺や山神が「今どき」の範疇に収まらない人間である可能性の方が高い。

 

「しかし、白黒の映画を観るのは初めてだ」

『そうなのか。俺はそこそこ観てるんだけどな、【燃えよ剣】とか』

「そりゃ映像研には敵わんよ」

『はは、当たり前田のクラッカーってな』

「それはさすがに年齢詐称してないか……?」

 

 それこそ母親より上の世代だろ、とツッコみたくなるが、自ずとブーメランを投げることになるので止めた。

 なんなら幼稚園児くらいの頃にはぐれ刑事の再放送を観ていたことすら思い出して、自分も人のことは言えないと思い直す。

 

「そういえば、部活の方はどうなんだ。なんかまた一本撮ってたんだろ?」

 

 俺はふと、放課後機材を抱えて部員の女子にフォーカスしていた山神の姿を思い浮かべた。

 彼らが笑ったり、叫んだりしながら撮影しているのは、巡ヶ丘高校に通っていればよく見かける風景だった。

 

『あー、もうクランクアップしたよ。大して長い話でもないし、前々から撮り溜めてたやつだったしな』

「へぇ……試写は? また何人か集めてやるのか?」

『いや…………どっちかというと、仲間内で観て反省する用っつーか、な』

「沢渡とか?」

 

 ぶ、と吹き出すような音が聞こえて、思わずニヤける。

 

『参考までに、なんでそう思った……?』

「席が近いんだ、ちょくちょくそんな話してるの聞こえるし。元部員なんだってな、彼女」

『ああ……ウチを出て演劇部に行っちまった、裏切りもんだよ』

「へぇ? そんなに確執めいた関係には見えなかったがな」

『年頃の学生には色々あるってことだ、写真部の幽霊ちゃんよぉ』

 

 茶化した声音で山神が言う。

 

『柚村が寂しがってたぜ?』

「はぁ。そうなのか?」

『アタシが勧誘したやつらが来やがらねえから、後輩に脅迫したんじゃないかと疑われてる、ってさ』

「あっそう……」

 

 仰向けの姿勢では居心地が悪くなってきて、俺は寝返りを打った。

 ああやって頼みこまれるのと脅迫するのと、実際ほとんど同義だと思うが。

 部長を務めている手前小言は言うが、無理に出ろというわけでもない辺り、割と律儀な性格をしている。柚村はつくづく、純粋にカメラをやるのが好きなんだろう。

 

『若狭とはどうだ』

「どう……って、何がだよ」

『何か進展はなかったのか?』

「あるわけねぇだろ」

 

 俺は憤然と息を吐いた。

 意趣返しのつもりだろうか。沢渡に関しちゃ、からかう意図がなかったといえば嘘になるが、別に恋愛的な関係を彼らに期待しているわけではない。

 まして若狭とは、ある種加害者と被害者の関係に近いところがある。俺はそれを忘れられるように努力してきたつもりだ。

 

「接点がないんだ、関わりようがない」

『あれだけ気を遣ってくれてたんだぜ? 友好を築くにはいい機会だったと思うがな』

「その機会を作らないようにしてんだよ」

『なんでだ? せっかく学年きってのスタイルの良い、美人とお友達になれたかもしれなかったのに』

「勘弁してくれよ……俺はこのぼっち生活を満喫してるんだからさ」

『おっと、俺は交友関係カウント外かい? 悲しいねぇ』

「訂正する、ほぼぼっちな」

 

 お前には言われたくない、と柚村にも返された。

 自らの人見知りがちな性格を疎ましく感じることだってあるが、それ以上に俺は孤独を是としている。だからここ二年ほどの高校生活でまともに友人を作らなかったことにも、後悔はしていない。

 ひっそりと生きていければそれで良い。というのが我がモットー。

 

『ん……結構話してたんだな。それじゃそろそろ切るわ』

「あ、ああ」

『おやすみぃ』

「明日はよろしくな」

『おう、また』

 

 それで終わり。幾ばくかの余韻を残して、通話が切れる。部屋には濃厚な静寂が戻ってきていた。

 

「美人とお友達ねぇ……」

 

 ぞっとするような響きを呑み込む。俺は課題の山を一瞥して、アラームをセットしてから、目を閉じた。

 

 

 

 

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