夜の過ごし方を探して 作:ナナシ
事の始まりは瑞希が焦った様子で送ってきたチャットだった。
一枚のスクリーンショットと共に送られてきたテキストメッセージには『Untitledが復活している』と記され、不穏な空気をまとっていた。
慌てて自分のプレイリストを確認するものの、そこには『悔やむと書いてミライ』は変わらず存在しているし『Untitled』はない。
まふゆはまだ学校だから確認できていないのだろうが、絵名もメッセージを見て確認したようで『Untitledは見つからない』というメッセージを送っている。
わたしも絵名に続いて『Untitled』がない旨を送る。しかし瑞希の端末に『Untitled』があることも確かだ。
……なんだか、嫌な予感がする。けれど確証のないものだ。きっとみんなすぐにナイトコードに集まるだろう。それまでの間にカップラーメンを作っておこう……。
『――だから、本当に"誰もいないセカイ"そのものだったんだって……』
絵名と瑞希が既に集まっていたボイスチャットに参加して聞こえてきた最初の言葉は瑞希のめっぽう混乱した声だった。
多分もう絵名とある程度話していた――というか、絵名からの質問攻めは今もまだ続いているようだ。
「二人とも少し落ち着いて。今来たところだから――」
『あっ、
『ちょっと、話はまだ……』
ちゃんと説明して、と続けようとした言葉は二人に遮られてしまった。
とはいえ二人もわたしが説明を求めることはわかっていたようで、しっかりと情報は伝えられた。
一つ。『Untitled』は確かに存在している。これは画面共有機能を使うことでしっかりと証拠まで押さえられた。
一つ。アクセスできるセカイは"誰もいないセカイ"にそっくりである。これは今確かめるのは怖いので全員で一度集合してセカイへ向かうことになった。
一つ。恐らくだがまふゆ当人に変化はない。これは『悔やむと書いてミライ』がしっかりと存在することからも確かだろう。
ほかにもいくつか情報はあるが、確定的と言っていいのは大まかにこの程度。後から来るだろうまふゆのためにもメッセージに投降して残している。
とはいえ、現状の情報の中で一番考えられる有力な可能性としてはやはり……。
「――
『
『でも、前に"誰もいないセカイ"に入ってから数日でしょ? そんな短期間でセカイに入れるようになるほど仲が深まるなんて……』
「うん、まふゆみたいなレアケースじゃないとあり得ないと思う」
『ミクたちに助けを求められた場合ってことでしょ? でもあのセカイにはミクたちバーチャルシンガーは居なかったんだよね』
"まぁすぐに帰ってきたからかもだけど"と瑞希が呟く。
人の想いによって作られるのが"セカイ"なのだから、真逆と言っていい二人によって見た目が同じ世界ができるとは到底思えない。
それに本当の想いを見つけるためのサポート役であるバーチャルシンガーが見当たらなかったというのも……、まるで。
『……来たよ、
「あ、
一度最悪の方向に進もうとした思考を打ち切る。
まだ『Untitled』があるというのならきっと手遅れではないはずだ。
『状況は分かった。それで、どうするの?』
「うん、明日は休みだから一度集まって『Untitled』のセカイに向かおうかなって思ってる」
"誰もいないセカイ"を見ている瑞希からしても同じ見た目と言うセカイ。
まふゆと同じように消えたいと願っている人がセカイの主なのかな……。
『ボクは賛成。現状誰のものかもわからないセカイだけど、やっぱり気になるしね』
『私も……うん、明日なら大丈夫。集合はいつものファミレス?』
「そのつもり。お昼過ぎからにするつもりだけど、
『大丈夫』
「わかった。じゃあセカイのことも気になるけどとりあえず今日の作業を始めよう。それじゃあまた」
『『『「――25時、ナイトコードで」』』』
消えたいという願いを持つ、瑞希との関りがあったであろう誰か。顔も名前も……何も知らない相手だけれど、きっと間に合う。
だから、だから――
「救わなきゃ……」