夜の過ごし方を探して 作:ナナシ
わたしたちがあのセカイに……ひいては夜部さんに拒絶されてから数日。ナイトコードに集まってわたしたちはいつものように作業を行うつもりだった。
けれどいざ手を動かそうとするとどうにも夜部さんに突き付けられた現実がフラッシュバックしてしまう。
言ってしまえば、ただの他人から言われただけの言葉だった。出会って数時間と経っていないような、知らない人と言っていい相手。
――それでも、わたしが救おうとしていた相手だった。わたしが救わなきゃいけない相手だった。
「……ッ」
『
『
『アハハ、あそこまではっきり否定を突き付けられたのは堪えるし、仕方ないよ』
一向にわたしの作業が進まないことに雪が現実的な問題を投げかける。確かにそろそろデモを書き上げないといけない。
それなのに今私の目の前にあるファイルの容量は全然増えていない。普段ならもっとインスピレーションが沸くのに、その感覚を言われた否定が邪魔をする。
『……作り続けるって、言ったのに』
いつかの焼き増しのように突き付けられたその言葉。突きつけられたそれに思わず喉が変な音を鳴らす。
また、普段しない行動をしてみたらこの状態から脱せるのだろうか。
でも、脱せたとしても……。結局、わたし自身が救われてないことに変わりはない。
うだうだとマイナスな考えだけが回り続けている時だった。
『あぁ~、もう! 決めた! 私悩むのやめるから!!』
『ちょっと
……急な大声に驚いて思わず椅子から落ちそうになってしまった。
違う、絵名がいきなりそんなことを叫ぶなんてどうしたのだろう?
『私には、才能なんてない。ニーゴとして必要な絵は描けても、単体じゃ価値がないかもしれない』
それは、あの"鏡のセカイ"で言われた言葉だった。
それを絵名は再び、今度は自分の口から覚悟の表れとして紡がれる。そして、"それでも"を貫く。
『それでも、
『
"後のことはその時考えるわ"と締めくくられたそれは、どこまで行ってもただの開き直りだった。突きつけられた否定を、知ったことかと鼻で笑うそれ。
……でも今必要なものはいっそ、開き直ってしまうことなのかもしれない。
『そうだね。……確かにそうかも』
「
絵名に突き動かされてか、瑞希もまた静かに何かを決めたようだった。
確かな覚悟を感じられる声が、聞こえる。
『ボクは、ボクでいたい。確かに、まだ"ボク"を口にはできない』
どこまでも情けのない言葉だったかもしれない。否定を受け入れることは、できなかったかもしれない。
『それでも、そんなボクをほかでもないボクが肯定する。だってボクがそうしたいんだから』
"自分は敵なんかじゃない"と、瑞希が突き付けられた否定を感情論で否定する。
合理性なんて度外視した完全無欠に自分勝手なだけの肯定だ。
『……
まふゆが静かにわたしに問いかける。残っているのはわたしだけだ。
わたしは、みんなかを救える曲なんて作れやしないと否定された。わたしは、自分すら救えていないと否定された。
「――それでも」
たしかにわたしは未だに自分すら救えていない。
――それでも
たしかにわたしには誰かを救える曲は作れないかもしれない。
――それでも!
「
わたし自身への否定は知らない。そもそもこのメンバーで作ってきたからわたしはこうして成長できているんだ。
だったら、自分一人への否定なんて気に掛ける必要なんてない。否定を否定するんじゃない。突きつけられた否定を完全に無視してしまえばいい。
わたしが自分を救えていない? そんなこと知らない。
わたしがみんなを救う曲なんて作れない? そんなこと知らない。
きっと、主人公みたいな明るい想いじゃない。もっとずっと、泥臭くてどこか依存的な考え方だ。けれど、
突き刺さっていた否定が、わたしを貫いた現実の比率が小さくなる。
抱いた想いが、確かに熱を持った気がした。
『で、具体的にどうするの』
「うぅ……」
どこまでも現実的なまふゆの質問に思わず言葉が詰まる。
締まらないな……。