夜の過ごし方を探して 作:ナナシ
夜部さんの話を聞いたその日。わたしは"誰もいないセカイ"にみんなを呼んで集まることにした。
軽々としていい話ではないと思う。けど、わたし一人だとどうするべきかわからない以上みんなには話すべきだと思ったから。
「……奏」
「ミク、久しぶり」
とてて、と寄ってきたミクが何かあるのかと首をかしげている。少し遠くのオブジェクトにはリンとレンらしき黄色い頭が生えている。
メイコとルカはどうやらすぐ近くにはいないのかな、と思いながらミクにセカイに来た事情を説明する。
「"鏡のセカイ"……」
「うん。多分、夜部さんの約束があるから……」
そういうセカイになって、思った。それにしたって、当人談の"強欲なセカイ"とはずいぶんな物言いな気がする。
……でも、誰かの望みを自分の望みに置き換えるのだとすれば、確かに強欲と感じても仕方がないのかもしれない。
「すごく、優しいセカイなんだね」
「わたしも、そう思うよ」
誰かの望みを叶えようとするのは強欲なんかじゃないと、少なくともわたしは思う。そうやってミクと二人、セカイについて語る。そうして過ごしているうちに呼び集めたみんながやってきた。
改めて顔を見れば――まふゆは普段とさほど変わらないけれど――みんな、覚悟を持った目をしてる。
「みんな、わたしは夜部さんを救いたい。だから協力してほしい」
切り出したその願いと弱音は思ったよりも容易く出ていった。
その言葉を受けて瑞希と絵名がもちろんと言ってのける。
ミクとまふゆは相変わらず無表情だったけれど、静かにうなずいてくれる。
「じゃあ、わたしが聞いた話をするよ」
そう前置きをして話始める。聞いた話をそのままに、伝える。夜部さんの過去を、約束を。そして、突き付けられている現実を。
聞き終えたみんなの反応はまちまちだった。
「ヒトデナシって何よそれ、あり得ない……!」
絵名はそう言って怒りからか拳に力を込めていた。
「……そっか、だからいっつも笑ってたんだ」
瑞希は静かに己の中に落とし込まれた納得を噛み締めていた。
「"人は勝手に前を向いて歩きだす"……」
まふゆは彼の残した言葉を口の中で転がしていた。
「カミサマ……?」
ミクは……。ごめん、その説明はわたしじゃできない。
「……わたしは、救いたい。だけど、多分今のままじゃ救えないと思う」
「そうだね。救われる気がないから」
わたしの吐き出した現実をまふゆが肯定する。
「救うために、前を向かせたい」
「うん、まずはちゃんと前を向かなきゃだもんね」
わたしの掲げた目標を瑞希が肯定する。
「だから、助けてほしい」
「ま、奏ならそう言うわよね。もちろん協力するわよ」
わたしの中にある覚悟を絵名が肯定する。
「ありがとう、みんな」
「みんな、いっしょ」
思わず零れた感謝の言葉をミクが受け止めて、片手をつなぐ。
もう片方でまふゆと手を繋げば、絵名と瑞希がそこから更に繋がる。
「……あの、ボクたちも」
レンがおずおずと隠れていたオブジェクトから姿を現す。ミクと手をつないで、反対の手をリンとつなぐ。
「話は聞かせてもらったわよ。せっかくだから、私たちも混ぜてもらおうかしら」
「ルカに連れてこられた……」
どこからともなく現れたルカがメイコを繋ぎとめていない手を更につなぐ。
この"誰もいないセカイ"にいるみんなで、手を繋いで一つの円になる。唐突に始まったその流れだけれど、こうして完成した。
「みんなで考えよう、夜部さんの救い方を」
投げかけた言葉にそれぞれがそれぞれの反応を返す。
そうして目の前に立ちふさがる問題を誰かが提示する。わたしたちはみんなでそれに答える。
それを繰り返して、繰り返して。そうしてわたしたちの納得のいく答えを導き出す。
人は勝手に前を向いて歩きだす。確かにそうかもしれない。他人の助けなんて要らないのかもしれない。
けれど、誰かの手を取れたのなら。誰かと手をつなげたのなら。誰かと共に歩けたのなら。
きっと、独りで悩むよりもずっと早く前を向ける。より一層遠くへと歩いて行ける。
そのために、それを伝えるためにわたしは……わたしたちは。
「……よくわからない」
「確かにそうだけど、せめてもう少し言い方ってものが――」
「わからないなら、わかるようになればいいと思うわよ」
「おっ、ルカってば良い事言うね~」
「ええ、あやとりと一緒だもの」
「ルカ、貴女ね……」
「……ふふ」