ダーリン・イン・ザ・ストラトス   作:とりマヨつくね

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新年あけましておめでとうございます!
と、同時に新シリーズです。
あらすじの方でも説明しましたが、投稿ペースは亀だと思いますが楽しんでいただけると嬉しいです。
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それでは本編へ!


比翼の鳥

 『比翼の鳥』というらしい…

 

 その鳥は片方の翼しか持たず

 

 雄と雌、ツガイで寄り添わないと空を飛べない──不完全なイキモノ

 

 でも何故だろう……ボクはそんな生命の在り方を美しいと思ってしまったのだ……美しいと感じてしまったのだ……

 

 そして気づいた。ボクは大切な片翼を失っているのだ……とても大切な片翼(ダーリン)

 

◇ 

 

 二月二十一日午前六時三十分、片空ヒロは桜の花びらがひらりひらりと舞い落ちる歩道を読書しながら歩いていた。

 ペラり、とページを一枚めくったところで、硬い何かにぶつかった。

 一瞬電柱にぶつかったかと思ったが、硬さから人のものであるというのはすぐに分かった。

 

「ご、ごめんなさい……って、あ」

 

 ヒロは慌てて謝りながら顔を上げると、あることに気づいた。

 確かに人にぶつかった。だが、そのぶつかった人物に原因があった。

 

「一夏……?」

 

 無意識のうちにその名を呼ぶと、目の前にいる人物は振り向いた。

 

「ん……? お前……もしかしてヒロか!? 久しぶりじゃねえか」

「うん、久しぶり。小学校以来だね」

 

 目の前に立つ少年の名は織斑一夏、小学生の時の友人で親友といってもいい関係だった。

 十年前にとある理由で転校することになってしまい、しばらく関わりはなくなってしまっていた。

 

「ってあれ? この道を歩いているってことは、君も藍越学園を受験をするつもりなのか?」

「まあ、そういうことになるよな。ここら辺の受験会場っていったら、藍越か……あそこしかないだろ」

「それもそうだね。じゃあ、今から俺たちはライバルって訳か」

「そう釣れないことを言わないでくれよ」

「受験はそういうもんだろ。時間ももったいなし、早く行って勉強しよ」

「そ、そうだな」

 

 そうして大した会話もなく、藍越学園の受験会場へと向かう。

 約十分後、藍越学園・IS学園合同入学試験会場と記された立て看板が見えた。

 ヒロと一夏は受付のスタッフに受験票を見せ、そのまま試験会場の中に入った。

 

「さて、特に問題なく到着した訳なんだが……なあヒロ、一つ聞いて良いか」

「うん……多分、俺と同じだから一斉の声で言おうか」

「ああ、良いぜ」

 

 ヒロは、一夏とタイミングを合わせるように大きく息を吸って───告げた。

 

「「広すぎる……」」

 

 そう、広すぎるのだ。

 普通に考えれば二校が同時に試験を受けるのだから、このぐらいの広さが必要なのかもしれないが、ここまで広いと迷いそうになる。実際、受付やスタッフに聞いてもよくわからず、彷徨っている羽目になっている。

 会場の地図を見ようにも、それを場所すらわかっていない始末だ。

 どうしたものか、とが悩んでいると一夏がトントンと肩を叩いてきた。

 

「おい、あそこじゃないか?」

 

 一夏が指差す方向へと目を向けると、そこには受験者の方はこちらと書かれたパネルだった。

 

「え? でもあそこは……」

「行ってみれば、わかるだろ!」

 

 眉を顰めるが、一夏はそれを聞いていないかのように小走りで行ってしまう。

 それを見たヒロは疑念を残らせたまま、そのあとを追いかけて一夏の先導に従って歩く。

 そして最終的に辿り着いたのは……なんとも重々しい鉄の扉だった。 

 とても試験会場には見えないが、一夏はまったく気にしていない様子で手すりに手をかけて扉を開けて部屋の中に入って行った。扉が完全に閉まる前にヒロも部屋に入る。

 その瞬間、俺は目を見開いた。

 部屋の奥には機械でできた甲冑のような物が、まるで主人を待つかのように鎮座していた。

 甲冑の名はインフィニット・ストラトス────通称・IS。女性にのみ纏うことを許されたマルチ・フォームスーツであり、超兵器。

 俺が呆けていると、一夏がISに歩み寄っていた。

 

「ちょ、ちょっと一夏。流石にバレたらまずいよ」

 

 ISはアラスカ条約によって軍事転用は禁止されているとはいえ、その立ち位置は間違いなく兵器だ。

 本来ならここで引き返すべきだろう。

 だがヒロの言葉を聞いていないかのように、一夏はISに軽く触れた。

 その時、ISは眩い輝きを放った───機体の初期起動を証明する光を。

 

 

 八時四十五分、ヒロは刑事ドラマなんかで見る取調室のパイプ椅子に座らされていた。

 相違点を挙げるのならば、目の前にはカツ丼が置かれておらず、また取調委員が強面の男性ではなく黒スーツにサングラスをつけた女性であるぐらいだ。

 そしてなぜ犯罪を犯していない俺がここにいるのかと言うと……

 

「では改めて確認するが、織斑一夏君がISを起動させたのは間違いではないんですね?」

「はい……その認識で間違っていません」

 

 俯きながら肯定すると、黒スーツの女性は額に指を当てながら深いため息をついた。

 そう、俺は人類史上初の男性IS適合者が誕生する瞬間を目撃した人間の一人になってしまったため、現在こうして事情聴取を受けていた。

 これらの一連の事件を起こした一夏は、別の部屋で同じような状況になっているだろう。

  

「今日は話を聞かせて貰い感謝します」

 

 取調委員がヒロに軽く頭を下げる。

 

「いえいえ……全然大丈夫ですよ。それより入試の方は追試はさせて貰えるんですか?」

「ええ、もちろんこちらから筆記テストを受けられるように、藍越学園の方に頼んでおきます。問題なく、受けられるはずですよ」

 

 その言葉を聞いて、ホッと胸を撫で下ろした。

 一夏とは違って、合格圏内に入っていたため、筆記テストさえ受けられれば問題はないはずだ。

 そう……考えている時だ。

 

「ですが……その前にあなたにやって頂くことがあります」

「え? どう言うことですか」

 

 説明することはもう全て話したし、これ以上何をする必要があるのだろうか。

 

「今回が異例中の異例ですので、念のために、あなたにもISを触れてもらいたいのです」

「まあ、そのくらいなら……」

 

 取調委員の要請を了承したヒロは場所を移動し、ISが保管されている部屋に戻ってきた。

 そして目の前には、先ほどと全く同じ位置に一夏が起動させたISが佇んでいた。

 と言っても、一夏に反応示したものとは別の機体だろう。一度、パイロット登録してしまうと初期化(初期化には最低でも八時間はかかる)する必要があるためだ。

 

「これに触ればいいんですよね?」

 

 ISに指を差しながら聞くと、黒スーツの女性は無言で頷いた。

 ゴクリ、と固唾を飲み込むと、目の前のISの装甲に恐る恐る触れた。

 しーん、と静まり返る部屋。そして特にこれといって反応を示さないIS。

 

「……まあ、そう、だよね。」

 

 これ以上意味はないと分かったヒロは、そっと手を離しながら呟いた。

 分かっていたことだが、ヒロにはISは動かせなかった。

 もしかしたら自分も、とほんの少し期待してしまったが現実は残酷だった。

 やはり男にはISは動かせなかった。彼は────選ばれなかった。

 

「あ、えっと……その、お疲れ様でした」

 

 黒スーツの女性がなんとも気まずそうに労いの言葉をかけるが、今のヒロにとっては逆に胸を締めつけさせる。

 

「それではISが起動できなかったため、あなたは準備でき次第追試を受けてもらいます。その間、待合室でお待ちしてください」

「……分かりました」

 

 そうして女性の指示通り、待合室に向かおうと部屋を出ようとした時だった。

 ドオォォォォォン! と、凄まじい轟音が響き渡った。

 

「きゃああああああああああ!?」

 

 それと同時に女性の悲鳴が聞こえ、ヒロは何が起きたかを知ろうと後ろを振り向いて───その表情を驚愕に染めた。

 

「一体何が……!?」

 

 天井がぽっかりと穴が空き、瓦礫となって地に落ちていた。

 こみ上げてくる嘔吐感に耐えていると、不意に何かの存在を察知してその方向へと目を向けた。

 電灯が消えたことによって生まれた暗闇から二つの橙色の光が灯る。

 光はゆっくりと陽光が届く場所へとやってくる。そしてその姿を顕にした。

 それは機械の獣。純白の装甲に赤の差し色に、マグマの如く光り輝くオレンジのライン。鋭く尖った前足の爪と牙はまるで肉食獣のようである。

 ドクンッ、と胸の鼓動が跳ね上がった。だがそれは一瞬のことですぐに現実に引き戻された。

 獣はジリジリと近寄って来て、恐怖のあまり、俺は一歩後ずさりをしようとした所でこけてしまい尻餅をついてしまう。

 

 獣は彼の側まで歩んで、子ライオンのように後襟を咥えて持ち上げた。

 

「なっ! 離せ……離せよ!」

 

 一拍おいてから事態を理解し、ジタバタと暴れてみせるがはっきり言って効果は無いに等しかった。

 そんなヒロの様子を気にした様子もなく、獣は力一杯に地を踏みしめて空いた天井に向けて跳躍し───彼は意識を失った。

 

 

 

 私は──何者なんだろう

 

 

 あの頃の私はそんなことさえ思いもしなかった

 

 

 物心ついた時にはもう──そこに閉じ込められていた

 

 

 もっと古い記憶もあった気したけど、すぐに忘れてしまった

 

 

 そんなある日、私は母親が割りの何かから食事以外の物をもらった

 

 

 それは絵本だった

 

 

 めくる度に目に飛び込んでくる明るい色、色々な形

 

 

 文字も書いていたあったけどなんて書いてあるかはわからなかった 

 

 

 その日を境に、彼女は二度と現れなくなった

 

 

 兎も角も、これが初めてのキレイな物

 

 

 そしてそんなキレイなものは、外の世界にもあると無邪気に思っていた

 

 

 それは半分あっていて、半分違っていた 

 

 

「───ん……ここは……っ!?」

 

 目を覚まし、意識がゆっくりと浮上していく。

 ぼやけた視界の中に映るのは夢の続きではなく、恐ろしい機械の獣の顔面があった。

 

「うわっ!?」

 

 驚きのあまりヒロは飛び起き、すぐさま獣から距離を取った。

 周囲を見渡しててわかったことは、どうやら俺は意識を失った後どこかの廃墟へと連れてこられたようだ。

 一瞬、逃げようとも思ったが。

 

『GRURURURURURU……!』

 

 獣は低い唸り声を挙げながら睨みつけられ、すぐにその考えは頭の中から消滅した。

 まず、逃げたところですぐに捕まるに決まっている。しかし下手に刺激しようものなら、その先にあるのは間違いなく死だ。

 どうしたものか、と脳をフル回転させる。

 そういえば……この獣はやけに落ち着いているのである。

 そもそも獣の行動には色々と不可解な点がある。

 まず、なぜ彼をすぐに殺そうとしないのか。

 もしこの獣が『人を殺す』ことを目的としているのなら、俺はもうこの世にいないはずだ。

 では特定の人物の確保……であるだろうが生憎とヒロはごく平凡な男子だ。

 考えれば考えるほど、機械の獣についての謎が深まっていく。

 だけれど、この獣を見ているとどこか懐かしさを感じてしまう。

 

 

 ─────────ダーリン

 

 

 不意に襲ってきた痛覚とともに湧き上がった、ノイズ混じりのイメージ。

 今のは一体……?

 ヒロはまだ少し痛む頭を押さえながら、そんなことを考えていると獣の胴体が激しく燃え上がった。

 

『GURUAAAAAAAAAAAAAAAA!」

 

 苦痛で悶え苦しむ獣に、銃弾が雨のように打ち付ける。

 ヒロは反射で伏せ、ただひたすらに流れ弾が当たらないことを願った。

 

「射撃中止、中止! 例の少年が近くにいるじゃない。当たったらどうするの!?」

 

 不意に少女の怒号が聞こえ、一旦射撃が止んだ。

 声がした方向へと視線を向けると、そこには水色の髪と真紅の瞳が特徴的な少女がISを纏って立っていた。

 機体の方も、髪と同じ水色を基調としていて、そのデザインは他の量産機とは違っていた。

 

「専用機……」

 

 専用機、読んで字のごとく特定の個人のために調整された特殊な機体であり、それを身に纏うものは相当な実力者でなければ纏うことを許されない。

 

「そこの君! 安全な場所へと避難しなさい! 巻き込まれるわよ」

 

 少女はその手に握られたランスを構えながら叫ぶ。

 

「……っ! はい!」

 

 ヒロは我に返って少女に返答すると、その場を立ち上がって少女に向かって走り出す。

 

「各員、陣形B4を維持しつつ所属不明機を包囲殲滅! 民間人の安全が確保されるまでの時間を稼ぐわよ!」

「「「了解!」」」

 

 少女の掛け声のとともに、後ろに控えていたIS部隊が姿を現し、アサルトライフルを構え一斉掃射される。

 獣は槍状の尻尾を振り回して弾丸を弾き飛ばし、天高く跳躍する。

 それを追いかけるように、アサルトライフルを上へと傾ける。

 獣へと真っ直ぐ突き進む無数の弾丸。本来なら直撃コース、だがそれは叶わなかった。

 獣は何と足場もないところから空を蹴って回避した。

 それを目撃した全員が驚きを隠せず、トリガーを引く力を弱めてしまった。

 その一瞬の隙を逃さず獣は音速を超える速度で突撃し、ISの一群が取っていた陣形を崩し、そのまま槍尾(そうび)で薙ぎ払う。

 そして間髪入れず、その内の一人に向けて爪による斬撃を行う。

 

「はああああああああああああ!」

 

 だが少女のランスに突きによって攻撃を阻まれ、獣は一旦距離を置こうとする。

 

「逃すものですか!」

 

 少女はランスに備えつけられた四連装マシンガンを放ち、獣の行動に制限をかけた。

 

「GRU……GRUAAAAAAAA!」

 

 獣の方も負けじと、槍尾を前面に向けると淡い光を帯び出す。

 あれはヤバイ。それを本能で理解できてしまうほどの威圧。

 だが一方の少女は特に慌てた様子もなく、何ならそれを待っていたと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべた。

 

「あら、もう決めちゃうの? なら、こっちも……」

 

 そう言って少女はランスを構え直す。すると機体の一部が展開し、そこから『水』が発生した。

 『水』はランスへと纏わりつき、獣の槍尾と同様に眩い光を放つ。

 少女と獣の間で交差する視線、風の音が聞こえるほどの静寂、気を抜けば一瞬で押し潰されそうな緊迫が流れていた。

 その緊迫が限界に達して二つの力が衝突する────そう思っていた。

 今まで暴虐無人ぶりが嘘のように、獣は力なく倒れたのだ。

 あまりにも唐突なことで、俺を含めてそこにいた全員が困惑した。 

 そしてあることに気づいた。

 獣の腹部の装甲がひび割れ、そこから血を流すようにオイルがドクドク湧いていた。

 

「─────────まさか」

 

 隠れていた柱からヒロは身を乗り出し、獣が倒れている方向へと足を進める。

 

「なっ……! 危ないわよ!?」

 

 少女が制止の言葉を掛けてくるが、俺は無視して一歩、また一歩と獣に近く。

 

「君は……俺に銃弾が当たらないように、守ってくれたんだよな」 

「GRU……RU……」

 

 獣の装甲をそっと撫でながら言うと、獣は今にも消えてしまいそうな声で鳴く。

 その顔を見て、俺は何とも言えない気持ちになった。何だか目尻も熱い。

 ヒロはそっと獣の顔を持ち上げ、

 

「ありがとう」

 

 短くそう告げて、獣の鼻に渡る部分に唇をつけた。

 その一連の光景を見ていた者は、驚きを隠せないようだ。

 自分でもどうしてこんなことをしているのか、とも思ったがこうするべきだと思ったからだ。

 その時、視界が光に包まれ─────────暖かいものに包まれた。

 

 

 




次回『入学』
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