ダーリン・イン・ザ・ストラトス   作:とりマヨつくね

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完全にノリで作っている作品なので、いつモチベがなくなってしまうか自分でもビクビクしていましたが、無事投稿できたので嬉しいです。
それでは本編へ。


入学

 突如、強烈な光が目に入ってヒロの意識は覚醒し、閉じていた瞼をゆっくりと上げた。

 目を開けて広がっていたのは、手術室にあるような円の中に五つのLEDライトをつけた照明だった。

 ヒロは起き上がろうと上半身に力を入れてみるが、両手がつっかえて起き上がらなかった。

 視線を向けると、手には固定ベルトでがっちりと押さえつけられていた。よくみると、両足にも同様のものが付けられ、服装も私服ではなく病衣に着替えさせられていた。

 イメージ的に言えば、某有名な特撮ヒーローの改造室が近いだろう。

 そもそもどうしてこんなことになっているのか、聞けるのなら聞きたい。

 

「お、目を覚ましたみたいだね〜。()()くん♪」

 

 と、やけに明るい声が聞こえて……ヒロは身を震わせた。

 そして次に恐怖、不安、絶望といった様々な負の感情が腹の奥底から湧き上がる。

 だってその声に聞き覚えがあり、その人物はこの世で最も会いたくない人間に辿り着いてしまったからだ。

 部屋の影から声の主が姿を現し、ヒロはサーっと血の気が引いた。

 その人はフリルのついたメイド服に、うさみみのカチューシャと個性の塊のような女性だった。

 

「お、お久しぶりです。束さん……」

「う〜ん、固いな〜〜〜もう少しリラックスしなよ。昔はよく遊んだ仲じゃないか」

「いや……そうは言われても……」

 

 ヒロが今話している女性の名は篠ノ之束。若干十四歳にしてISを開発し、その名を世界へ轟かせた天才である。そして一夏の姉であり、世界最強のIS操縦者・織斑千冬の親友でもある。 

 緊張するのも無理もないのだが、問題はそこではない。

 この人は猛烈な探究心と好奇心の化身であることで、自分の興味のあることに必要ならば平気で他人を巻き込むのである。

 小学校の時、ヒロと一夏は『遊び』と称した実験に何度巻き込まれたことか……それに()()()のこともあってろくな思い出がない。

 

「そんなことより、これは一体どういうことですか? できるなら早く自由にして欲しいんですけど」

「うーん……それは無理かな。今の君は色々とややこしいことになっちゃってるからね〜」

「え、それはどういうことですか?」

 

 ヒロが眉を寄せながら問うと、束はうんうんと頷いて言葉を続ける。

 

「ヒーちゃんはね、ISを動かしちゃったんだよ。それも厄介な子を、ね。ヒーちゃんはライオンみたいなISを覚えてない? ほら、紅白カラーのさ」

 

 そこでヒロはあの機械の獣の存在を思い出した。

 

「あれもISだったのか……ん? ちょっと待ってくれよ、今なんて──────────」

「だからISを動かしちゃったんだよ。私が手塩にかけて作り上げた『ストレリチア』をね」

「ストレリチア……でも一体どうして、その前にISは少しの反応も見せなかったのに……」

 

「そう……だから調べなきゃいけない。でも、ここでめんどくさいことになっちゃってるんだなこれが」 

 

 そう言って束は誰かに合図するかのように、二回手を叩くと天井から小型のモニターが降りてくる。

 ある程度のところまで降りたところで止まると、モニターが点灯した。

 モニターが映し出していたのはニュースであり、その内容は男性IS操縦者の発見……つまりは一夏の話だった。

 

「この通り、今のいっくんは有名人というわけなんだよね。あとこのニュースだと取り上げていないけど、ヒーくんのことも各国のお偉いさんには伝わっているはずだと。多分この後、いろんな国が君達のことを自分の手元に置きたいとやっけになって取り合いをするだろうけど─────────」

「千冬さんっていう、後ろ盾がある一夏はともかく、俺には何にもない……」

「うんうん、理解が早くて助かるよ〜。まともな国に所属できればいいけど、残念ながら世界はそこまで優しいことだらけじゃない。だから……」

 

 束はそこで言葉を区切って、数秒の溜めの後に告げた。

 

「私の会社に入ってくれないかな?」

 

 

 ISによる受験会場襲撃事件から二ヶ月が経過し、ようやく落ち着き始めた頃。

 人々はあちこちで咲き乱れる桜を見ながら、新生活に心躍らせているだろう。

 だが人によっては憂鬱に感じる時もある。

 例えば───────────今の彼のように。

 

(これは……かなりキツイ)

 

 辺りを見渡せば、女、女、女、女女女女女女女女女女女女女女女女女女。

 そう、彼以外には女しかいないのだ。

 何故ならばここがIS学園であるからだ。

 IS学園。東京湾沿岸にある国立高校で、文字通りIS操縦者をはじめ、専門的なメカニックなどの育成を目的とした教育機関であり、ISは女性にしか扱えないことも含めて事実上の女子校となっていた。

 ではなぜ彼がここにいるのかというと、それは彼が世界で()()男性IS操縦者なのである。

 好奇の目を向けられるのも仕方がないことだろう。

 しかし入学式が終わってからずっとこの調子のため、そろそろ限界を迎えようとした時だ。

 クラス中に聞き慣れたチャイムが鳴り響く。

 

 「はーい、皆さん。それではホームルームを始めますよ」

 

 スライド式の扉が開き、メガネをかけた緑髪の女性が入ってきた。

 その時ばかりはクラスメイト達も先生の方へと目を向けて、一夏はようやく脱力することができた。

 

「今日からこの1年1組の副担当となります【山田真耶】です、よろしくお願いしますね」

 

 真耶はそう言って一礼すると、生徒たちも座りながら一礼をして返す。

 

「担任の先生は少し遅れますので、その間に皆さんの自己紹介をしましょう。出席番号順でお願いしますね」

 

 その言葉を聞いた途端クラスメイト達はより一層目を輝かせ、一夏は頭を抱えた。

 

(どうする!? 自己紹介の内容なんて一ミリも考えてないぞ! だけど、ただ名前をいうだけじゃ……ダメだよな。そうだ、趣味にしよう! 趣味、趣味……)

 

 そうやって思考の海に沈んでいこうとするが。

 

「──────むら……むらく……織斑一夏君!」

「あ、はい!」 

 真那の声によって現実世界に引き戻され、一夏は慌てて反応した。

 その様子がおかしかったのか、所々でくすくすと笑う声が聞こえてほんの少し恥ずかしかった。

 

「おっ、大声だしてごめんなさい、びっくりしましたか? でも自己紹介の順番が【お】なんだけど自己紹介してくれるかな?」

「あ、はい、大丈夫です」

 

 そう言ってぎこちない動きで席を立ち上がって────────気づいた。

 今の今まで必死に組み立てていた自己紹介の内容を、綺麗さっぱり忘れてしまった。

 

(ヤバイ、何話そうとしたんだっけ……!?)

  心の中で絶叫しながら、教室を見回す。

  一夏にクラスメイトは何が出るか期待している眼差しを向けていた。

  先程考えていた内容を思い出す時間もなく、仕方なく自己紹介を開始する。

 

「おっ、織斑一夏です……以上です!」

 

 名前のみの自己紹介に一夏以外の1年1組の人間が全員ずっこけた。

 その内容について冷徹なツッコミも入る。

 

「お前はまともに自己紹介もできんのか」

「げぇ、関羽っ!?」

「誰が三国志の武将か、馬鹿者」

 

 大げさに驚いた一夏の頭に神速の何かがぶつかり鈍い音を立てる。

 彼の頭にぶつかっているのは出席簿だ。

 

「いっつぅ……!」

 

 どう聞いても主席簿で叩かれた音ではないとクラスメイト全員が思い、叩いた人物に目線を合わせた。

 

「織斑先生、もう会議は終わられたんですか?」

「あぁ。それに件の奴も連れてこなければならなかったからな……クラスへの挨拶を押し付けてすまなかった」

「い、いえっ、大丈夫です!  副担任ですから!」

 

 一夏の叩いた人物、織斑千冬が黒板の前に立って話し出す。

 

 

「このクラスの担任の織斑千冬だ。私の仕事は1年でISについて科を問わず必要最低限の基礎を叩き込むことだ。私や山田先生の言葉はよく考えて自分のモノにしろ、口答えしてもいいがあまり煩わせるなよ?」

 

 まるで独裁者のような発言だが、その言葉に爆発したかのような黄色い声が教室中から上がった。

 

「キャーっ! 千冬様よっ! 本物っ! 世界最強の【ブリュンヒルデ】っ!!」

「貴方のようになりたくてここに来ましたっ!! 北九州から!!」

「ずっとファンでしたっ!!」

「叱って下さいっ! でも時には優しくてしてぇ!」

 

 年頃の女の子の言葉じゃないようなものが混ざっており、まさに教室は阿鼻叫喚の文字がぴったりの様相になっている。

 その様子に心底鬱陶しそうに千冬が話し出す。

 

「…………毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。逆に感心させられる。それともなにか?誰かが私のクラスだけ馬鹿者を集中させているのか?」

 

 少々語気が荒くなっているが、それは火に油を注ぐだけだった。

 

「キャーっ! もっと叱って罵って下さいっ!」

「我が生涯に一片の悔いなしーっ!」

「まだよっ、まだ終わらないわっ!」

 

 その様子に顔に手を当てて千冬はため息をついた。

 

「……織斑、さっさと自己紹介を続けろ」

「えっ、千冬姉っ、まだやるのっ!?」

「当然だ馬鹿者。それと織斑先生だ」

「……はい、ちふ……織斑先生」

 

 身内への親しい呼び方にひと睨みして無言の圧力をかけ、それにしぶしぶ従った一夏に視線が集まる。

 

「えっ、先生と織斑君って姉弟なの?」

「あ、確かに……苗字同じだし」

「もしかして男でISが使えることにも関係があるのかな」

「……貴様ら、いい加減に無駄口をたたくな、さっさと自己紹介を進めろ」

 

 千冬の鶴の一声で雑談は消え、自己紹介が再開された。

 一夏は、真耶に話しかけられる前に考えていた自己紹介の内容をかろうじて思い出して自己紹介を完遂した。

 ちなみに自己紹介の中には女尊男卑に影響を受けている生徒が数人いたが少数派であった。

 クラス全員の自己紹介が終わったことを確認した千冬が黒板の前に立つ。

 

「さて全員終わったな、知ってのとおりこのクラスには希少な男性搭乗者がいるんだが……実はこのクラスには【もう1人】増えることになってな。おい、入っていいぞ」

 その言葉に教員と一夏を含めて全員が息を飲み、その視線は自然と教室の戸に注がれている。

 再び教室のドアが開かれ、一夏は目を見開いた。

 夜に溶けそうな漆黒の髪と空のように美しい水色の瞳に、自分と比べて少し小さいぐらいの背格好、男性とも女性ともとれる中性的な顔立ち。

 その人物の名は、片空ヒロ。一夏の小学校の時の親友で、彼と同じ白を基調としたIS学園の男子生徒用制服を着ている……ついでに、なぜか頭にカチューシャもつけていた。

 

「ひ、ヒロ!? なんでここに……!」

 自分以外の男性がここにいることに驚きを隠せず、思わず席を立ち上がって問うた。

「えっと……君の適性が判明してから全世界一斉でテストされたじゃないか。ニュースとかでもやってたはずだけど……」

「悪い、初耳だ」

「……今度からそういうのにも興味を持ちなよ」

「ああ、そうするよ」

 そう言って席に着く一夏を見た千冬は、ヒロの方を見て言った。

 

「片空、自己紹介を」

「はい、織斑先生」

 返事をしてヒロはクラスメイトに向かって、簡単な自己紹介を行う。

 

「初めまして、片空ヒロです。趣味は読書。皆さん知っての通り二人目のIS操縦者で、訳あって【紅兎重工】に所属しています。これから三年間よろしくお願いします」

 

 軽く一礼して教室を見渡す

 すると再び教室は黄色い声で溢れ、騒がしくなった。

 

 

 

 

 

 




次回『決闘』
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