ようやく戦闘描写ができて嬉しい次回あたりに機体の設定を投稿しようと思います
カタパルトに射出されアリーナに出たヒロは、そこに広がっていた光景に目を見開いた。
観客席いっぱいの女子生徒たち、クラス代表決定戦の話は噂として広がっていたが、これには流石に驚きを隠せない。
上空制限とシールドバリアによって守られており、彼女たちに流れ弾などが飛ぶことはない。
アリーナの上空ではIS【ブルー・ティアーズ】を装備した、セシリアが両腕を組んでふんぞり返っていた。
『あら? 織斑一夏ではないのですか』
「織斑先生に頼んで順番を変えてもらったんだよ。……というかこの姿でよく気づいたね」
『ふふん、私を誰だと思っているのですか。私はイギリス代表─────』
「あ、そういうのは大丈夫だから。そんなことより、早く始めよう」
話が長くなりそうだと思ったヒロは、セシリアの言葉を切り捨てる。
「なっ……! ふふふふ、そう……そうですかそうきますか。なら、覚悟なさい! 蜂の巣にして差し上げますわ」
セシリアが怒りを表に出しながら、主武装である狙撃銃【スターライトMK-Ⅲ】を展開する。
「うん、よろしく」
ヒロは軽く一礼をすると、拡張領域から出現したランス状の武器【クイーンバイク】を握り、構えた。
両者の準備が完了したところで、カウントダウンが開始する。
その場にいる全員が二人を見つめる中、一秒また一秒と減ってゆくホログラムのカウント。その数がゼロを示し、試合開始のコールがアリーナに響いたと同時に───紅白の姿が消滅した。
そしてなんの前触れもなく、セシリアの前に槍の切っ先が出現した。
勿論本当に消えたわけではないのはわかっている。いくら専用機といえど、そんな武装は搭載されていないし、ISのハイパーセンサーはしっかりとヒロの居場所を伝えてくれている。
ギリギリのところで回避するが、セシリアの額に冷や汗が溢れてくる。
(早い……!? だけれど……!!)
セシリアは冷静に、左手に握っていたスターライトⅢのトリガーを引く。
銃口から放たれたビームが、ヒロめがけて一直線に突き進む。
それに対し、ヒロは後方に下がりながらクイーンバイクを巧みに扱って弾く。
「甘い!」
ブルー・ティアーズのパーツの一部が展開し、そこに備え付けられた四つの砲門からビームを放つ。
ヒロは心の中で舌打ちをして弾き、回避する。
BT兵器。ブルー・ティアーズの最大の特徴であり、イメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器。遠隔無線誘導型の武器で、相手の死角からの全方位オールレンジ攻撃を行う。
(まずいな、このまま調子を乗らせるのは得策ではないな)
直撃を避けるようにはしているが、みるみるとシールドエネルギーが減ってゆく。状況はやや不利と言えるだろう。
他にも武器はあるにはあるのだが、いかんせんこの状況を打開するようなものは持ち合わせていない。
シュミレーションで散々射撃の回避を特訓していたが、これは中々に難しい。
(普通にやってたらこのまま押し切られる……何か弱点があれば……ん?)
そう思考している最中、ある違和感を感じた。
なぜBT兵器による包囲を行なったあとに、ライフルの狙撃を行わないのだろう。
直撃すれば確実に致命打となり、それを狙える場面は何度もあったのになぜ……
そこで違和感の正体に気づいた。
確証はない。だがもしこの予想が本当なら───
「勝てる」
誰にも聞こえない声で呟くと、全てのスラスターを稼働させて一気に加速する。
「真っ向から仕掛けてくるなんて......! やけを起こしましたか!!」
セシリアは接近を許さまいと、ライフルを連射する。
ヒロは身をよじって回避し、クイーンバイクを投擲をする。
投擲された槍はライフルに突き刺さる。そして本体と繋いでいたチューブにエネルギーを流し込む。ライフルは焼きもちのように膨張をしたあと、巨大な爆発を起こす。
「グッ!」
怯むセシリア。そこで生まれた隙を見逃さず、両腕に扇型の武器、【ウィングスパイン】を出現させる。
セシリアはミサイルビットを起動させ発射するが、内蔵したエネルギー光弾を放つ速射砲で撃ち落とす。
装甲の隙間に押し当て────
強制的にパイロット保護機能である絶対防御が発生するが、その代償としてシールドエネルギーがぐんと減りイエローゾーンに入る。
このまま押し切れば、じきにシールドエネルギーをゼロにできるはずだった。
「インターセプター!」
しかしセシリアの瞳にはまだ闘志を失っておらず、右腕に内蔵した接近戦用のショートブレードを展開してヒロに刃を向ける。
「……っ!」
ウィングスパインの角度を変えて、ブレードの攻撃を逸らさせる。
そして即座にもう一つのウィングスパインを叩き、彼女を大きく吹き飛ばす。
セシリアは何とか体勢を立て直すが、満身創痍にもほどがある。
しかし、その表情は────
「まだ……まだ終わってはいませんわ! 勝負はこれからですわ!!」
笑っていた。
それを見てヒロも心の奥底で湧き上がる熱を感じながら、エネルギー残量を確認する。
残りのエネルギーは半分、先ほどの一斉掃射でかなり消費してしまったのは少し痛手だ。これ以上、エネルギーを無駄にすることはできない。
再びヒロはクイーンバイクを装備し、セシリアもBT兵器『ブルー・ティアーズ』
を再集結させる。
風が吹く。それが追い風となるか、逆風となるかはわからない。しかしそれは同時に合図であった。
「お行きなさい、ティアーズたち!」
セシリアが命令すると、四機のブルー・ティアーズの砲門に青白い光がほとばしる。
ヒロはスラスターを全開に稼働させ、橙色の輝きを纏う突撃槍を突きつける。
「はあああああああああああ!」
「ぬおおおおおおおおおおお!」
二つの光は衝突し、残りのエネルギーを全て振り絞るような咆哮を上げ、互いの全力の突きがぶつかり合った。
──両者、エネルギー切れにより引き分け。試合時間、8分13秒──
◇
第2アリーナ ピット内
「すげぇ……っ!」
ヒロとセシリアの試合に目が釘付けになっていた一夏は、試合終了と共に賞賛の声を漏らした。いつの間にか握り締めていた両の手のひらには、汗が浮かんでいた。
隣にいる箒もそれには同意見だ。
「あぁ。まさか真があれ程とは……」
「……やっぱりヒロはすげぇ! 攻撃を躱したり弾いたりして、どんどん武器を替えて言ってさ! 男の意地見せてくれたぜっ!」
一夏が先ほどの戦闘を思い出し興奮しながら言う。
「……一夏、お前はこの後そのヒロと引き分けたオルコットとも戦うんだぞ? 大丈夫なのか?」
この1週間剣道しか一夏は行っていない。
その原因は自分にあるので、箒は負い目を感じているのだ。
「そうだった……けどやるからには全力でいくさ!」
苦笑しつつ、一夏は箒に力強く告げた。
対して教師陣もヒロの戦闘能力について評価を行っていた。
「片空はオルコットと互角か。機体操作も問題なく、近接も高度に扱っている。射撃武器を使うタイミングがもう少し早い方がいいが、じきに慣れるだろう」
「……凄いですね。彼がISに触れた期間はまだ1ヶ月ですよ? たった1ヶ月で代表候補生と互角だなんて」
天才ですね、と真耶が続けるが千冬はヒロの能力について考えていた。
(……入学時にIS適性を見たが一夏と同じ【B】だったはずだが)
入学時にヒロと一夏はそのIS適正を検査されていたのだ。
結果は2人とも適性【B】の判定が出されていた。
(彼女の言うように天才……いや【神童】というやつか。しかもまだまだ伸びしろもある様だ)
ふと一夏を横目で見る。彼はやる気に満ちているように見える。
(……やれやれ、ヒロには感謝をしないとな。一夏にもいい影響を与えてくれている)
ヒロは弟である一夏の幼い頃からの友人であったため、千冬とは親しい仲である。
弟の親友が、いい影響を与えてくれていることに千冬は内心感謝していた。
次は一夏とセシリアの試合。
真耶が慌てた様子で連絡用の携帯を取り出しピットを出て行く。どうやら一夏の専用機が到着したようだ。
(さて一夏はオルコット相手にどれくらい持つのか……見せてみろ、お前の可能性を)
千冬もその後を追う。
◇
第2アリーナ内 第3更衣室
ヒロは先ほどの試合でストレリチアと自己修復機能とパーツの交換で問題なく稼動ができることが判明し、現在整備中である。
そのためインターバルが設けられていた。
「……ふぅ」
プラスチック製のストローを刺したイチゴ牛乳を飲むと、小さく息をついた。
すると、トントンと更衣室のドアがノックされた。
「どなたですか?」
「私です、セシリアです、よろしいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
ヒロが返答すると戸を開けられ、そこにはISスーツのままのセシリアが立っていた。
「お疲れ様です、片空さん」
「何の用ですか? オルコットさんは次も試合なんだから早く準備しないといけないんじゃ……」
ヒロが目を丸くしていると、その様子を確認したセシリアは深く頭を下げた。
「申し訳ありませんでした、飛鳥さん。先日のことは深くお詫びいたします」
「……は?」
いきなりの謝罪に素っ頓狂な声を上げてしまった。
「これまでの数々のご無礼、大変申し訳ありませんでした!」
一度顔を上げてからまた深く下げ、謝意を示す。
誠心誠意。その言葉がぴったりと当てはまる様子に先日から感じていた、刺々しい口調ではなくなっていた。
「……頭上げてよ、オルコットさん」
「でっ、ですが、私は酷い事を……」
「いいから、顔上げて」
ヒロの言葉にセシリアは頭を上げる。彼の表情を見ると苦笑をしていた。
「いきなりでびっくりしたけど……俺は特に気にしていないから別にいいよ」
「片空さん……」
「それでさ、なんでいきなり謝ってくれたんだ? 理由があるんだよね?」
「それは……」
彼女は自身の過去のこと、父親の事、ヒロと父親を重ねて苛立ってしまったことを。そして試合中に感じた事全てをヒロに伝えた。
「オルコットさんはお父さんのこと、大好きなんだね」
「え?」
ヒロの微笑みながら言うと、セシリアは目を見開いた。
「だって人が近ければ近いほど、その人の悪いところが際立つって聞くでしょ。嫌いなところを知っているってことは、それ以上に好きなところを知っていることをたくさん知っているってことでしょ? それは誇って良いことだと思うよ」
ただ純粋に告げるヒロの言葉に、彼女は少し考えるようにする。そしてヒロのことを真っ直ぐ見て告げた。
「片空さん、私とお友達になってくださいませんか?」
しばらくの静寂の後、ヒロは口を綻ばせながら答えた。
「もちろん」
「よっ、よろしいのですか!?」
ガバッとヒロに詰め寄りつつ、セシリアが大声を上げる。
「えっ、うっ、うんっ……」
彼女の綺麗な顔がいきなり近づいてきたので少々距離を取ってから、ヒロは返答する。
「あっ、ありがとうございます、片空さんっ!」
「ヒロでいいよ。もう友達なんだし、俺もそっちの方が慣れてるから」
感謝して頭を下げたセシリアに向かって言う。それに対してセシリアは微笑み返した。
「それでしたら私もセシリアと呼んでください、ヒロさん」
「ああ、これからよろしくな、セシリア」
そう言ってから真は手を差し出す。その手に込められたのは、和解。
「はい!」
セシリアは笑顔で答えた。
それと同時にピンポーンパンポーンとアナウンスが入る。
『セシリア・オルコットさん、ISの修理が完了したためBピットへ向かってください』「それでは行ってまいります」
「うん、俺は一夏を応援するけどセシリアも頑張って」
「それはどっちですの? まあ、無論全力出すのみですわ」
そう言って、セシリアは更衣室をあとにした。
「さて、俺も試合を観戦しy─────」
一人残されたヒロはイチゴ牛乳を一気に飲もうと、席を立とうとして彼はバランスを崩した。
(あれ? さっきまでなんてことだったのに、だんだん意識が────)
そこでヒロの意識は暗転した。
◇
「……想像以上に侵食がひどいね」
世界のどこかにある隠れ家にて、束は珍しく真面目な表情で複数のホロウィンドウに浮かぶデータを眺める。
ヒロがセシリアと模擬戦を行なっている間、ストレリチアとステイメンISスーツから常にバイタルデータが送られていた。
誰にも知られていないが、ストレリチアは世界で唯一の男性にしか扱えないISなのだ。しかし、束がこのことを公表しないのには理由がある。
それはあるはずのない468番目のISコアであり、彼女が二番目に作った自信作であり、呪われている。
ストレリチアに乗ったものは例外なく三回目で
「ヒーくんはあと何回耐えられるかな〜」
束は背もたれに身体を預け、新しい漫画の展開を楽しみする子供のように無邪気に笑った。
次回『知らない幼馴染』